マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス 作:soul
サヨナラノツバサ編
バジュラの母星に侵攻した『マクロス・フロンティア』船団を束ねるステルス攻撃空母『バトル・フロンティア』の戦闘指揮所では地表の各所にバラまかれた500m級宇宙怪獣である上陸艇から放出された無数の兵隊型宇宙怪獣を示すアイコンが、空を黒く染める程の数で『フロンティア』船団とバジュラたちの
「――バルキリー各部隊が敵とコンタクト!」
「……兵隊級の自爆攻撃により、CVR-693 ベロー・ウッドの動力部に深刻な障害が発生して高度を維持出来ずに下降を始めました!」
「――ダメです! 敵兵隊級の数が多すぎて全てに対処出来ません!?」
中央に設置された大型の全天型ホロ・スクリーンに表示される戦況をモニターしていたオペレーターが戦場の状況を報告してくる……突然姿を現して問答無用で襲い掛かって来た未知の敵である宇宙怪獣を迎え撃ってはいるが奴らの数が尋常ではなく、『フロンティア』側も総力を挙げて迎撃している。だがフォールド・ウェーブ発生装置を占拠されてバジュラたちへのコントロール手段を失った今の戦力では空を黒く染める無数の兵隊型宇宙怪獣を抑える事は物理的に不可能だった。
「――防衛線を突破した兵隊型宇宙怪獣が『アイランド1』に到達――外壁を破壊して内部に侵入しました!」
「――なんだと!?」
そして遂に恐れていた事態になった事に新統合軍『フロンティア』防衛部隊司令官は強張りながらも、周辺のバルキリー部隊や『アイランド1』に駐留している全デストロイドに侵入した兵隊型怪獣を迎撃するように指示を出す……『アイランド1』の艦内には大勢の市民がシェルターに避難しており、戦う術を持たない市民を守る事こそが彼ら軍人の本分なのだから。
都市型移民居住艦『アイランド1』避難シェルター
500万人以上の市民が暮らす移民居住艦である『アイランド1』には不測の事態が発生した時に市民の生命を守る為の強固なシェルターが艦内の至る所に用意されており、今回『フロンティア』行政府の発表によれば度重なる宇宙生物バジュラの襲撃に対抗する為に対バジュラ反抗作戦を行ってバジュラの脅威を払拭すると言う。
バジュラとの激しい戦闘が予想される為に作戦期間中は全ての市民にシェルターへ避難するように指示が出されて、『アイランド1』の各所に設けられた各シェルター内には多数の市民が避難していた。
そんなシェルターの中には当然年端もいかない子供も居て、シェルターに避難してから暫くしてからシェルター内を激しい振動が何度も襲い、それが避難している市民の不安を煽って幼子は母親を頼り、母親は子供を安心させようと優しく抱きしめる……己も感じている恐怖心を押し殺して、せめて子供だけでも安心させようと。
そんな誰もが不安を感じているシェルターが連続して振動に襲われて誰かの悲鳴が上がる――そして遂に最悪の事態が訪れた。突然シェルターの天井部分に亀裂が入ると巨大な“何か”と共に崩れ落ちて行き、巨大な瓦礫が人々を圧し潰す。
瓦礫に圧し潰された不幸な人々は一瞬の内にその命を失った所為で痛みを感じる事は無かっただろうが、大量に小さな瓦礫を浴びた人々は手足が圧し潰されたり、身体の一部分に瓦礫の直撃を受けて口から吐血している……そして幸運にも瓦礫の直撃を受けなかった人々は、
その巨木のような脚は固い殻のようなモノに覆われており、それはシェルターから上へと繋がり――脚の先には赤い複眼が怪しく光り、目の前にある巨木のような脚が鋏角類の節足動物でいう所の触肢であると理解した。
原初の力のない生き物だった事の恐怖が沸き上がって誰もが声を出せない中で、硬い殻に覆われた巨大な触脚が動き出して大きく振りかぶられた。
「――ママっ!」
恐怖に駆られた子供が母親にしがみ付き、母親はせめて子供だけでもと子供を庇うように抱き締める……だが何時まで経っても触脚が振り下ろされる事はなく、子供を抱き締めていた母親が恐る恐る目を開けると、巨大な怪物の身体には無数の赤い杭のような物が打ち込まれていた。
それはかつて『フロンティア』を襲った兵隊バジュラを貫いた硬化テクタイトでコーティングされた赤い杭であった。
「……一体何が?」
軍の人達が助けに来てくれたのだろうか? 母親は赤い杭が飛んできたであろう方向に視線を向ける――そこに居たのは両横に赤い箱を付けた大きな白い球体が複数存在しており、見える三体の白い球体の両横付けられた赤い箱に開いた穴から白い硝煙が出ていた……軍隊が使うバトロイドというロボットにこんな丸っこいのが在ったっけ?
困惑する母親を尻目に三体の白い球体は赤い箱から再び何かを射出すると、それは固い甲羅に覆われた巨大生物の身体に突き刺さって三体の白いボールは巨大生物の身体に突き刺さった銛に繋がったワイヤーを急速に巻き取りながら自分達の倍はある巨大生物をシェルターから引きずり出したのだった。
「……ママ、助かったの?」
「――ええっ、そうよ」
目の前で起きた非現実的な光景に言葉を失っていた親子は自分達が助かった事に実感は湧かなかったが、それでも目の前から脅威が消えた事は理解して固く抱き合った。
かねてより『フロンティア』船団に潜んでいた換装型ドローンは創造主である翡翠の命令を受けて、『アイランド1』の市街地に大量に潜伏していた市街地戦用の装備に換装していたドローンが光学迷彩を解除すると瓦礫と化した市街地に姿を現して、我が物顔で更なる破壊行動を行っていた兵隊型宇宙怪獣へと攻撃を開始していた。
10mほどの白い球体の本体に硬化テクタイトでコーティングされた杭を射出する連装ニードルガンと、ノノから提供された戦闘記録で宇宙怪獣が高圧電流に弱いという弱点を突く為に電流を流すワイヤー付きのアンカーを装備した市街地戦用ドローンは、自分達の倍はある兵隊型宇宙怪獣に複数で対処して赤い杭を撃ち込みながらアンカーを射出して内部へと高圧電流を流し込んで息の根を止めるという戦術で次々と『アイランド1』の艦内に侵入してきた兵隊型宇宙怪獣を仕留めていく。
無数の上陸艇から放出された群雲の如き兵隊型宇宙怪獣の大群に対して、以前より『フロンティア』に潜伏していた翡翠とノノは、怪しい動きを見せる『フロンティア』行政府と事を構える事態を想定して、『アイランド1』の各所にある倉庫の幾つかを借り上げて偽装工作を施したうえで換装型ドローンの保管場所としていたおかげで無数の兵隊型宇宙怪獣の数の暴力に対抗するだけの数を揃えていた。
そして、換装型ドローンの供給源は保管場所としていた倉庫だけではなかった――大型都市型移民居住艦『アイランド1』の上空の空間にさざ波が立つと、それはどんどん大きくなって所々で虹色の光を帯びて大海のような荒々しい虹色の波となり、虹色の光の中から濃緑の巨大な船体が複数浮上してくる――3000mを越えるずんぐりとした円柱のような船体の艦尾に大型降下ポッド用の射出ハッチが並び、そこから銀色の降下ポットの代わりに大量の換装用ドローンを搭載した輸送ポットが射出されて、兵隊型宇宙怪獣に襲われている『アイランド1』の市街地へと向かい――輸送ポットの表面装甲がパージされて搭載されていた換装用ドローンが翡翠の命令を遂行する為に市街地を破壊する兵隊級宇宙怪獣群へと攻撃を開始した。
バジュラたちの母星へ強襲を掛けた重巡級宇宙怪獣群を撃破したが、破片に紛れて地表へと降下した無数の上陸艇より放出された大量の兵隊型怪獣の対処を余儀なくされた『フロンティア』軍は、バルキリーよりも大型の兵隊型怪獣を次々と撃破していったが、如何せん数が多くてその全てを対処する事が出来ずに複数の兵隊型宇宙怪獣が防衛線を突破して地表に降下している『アイランド1』の内部へと侵入していた。
多数の市民が避難している移民居住艦『アイランド1』へ敵対生物の侵入を許した事は、『フロンティア』軍を動揺させる。これまでに超時空生物バジュラの度重なる襲撃によって大きな損害を受けている『アイランド1』は、人類が生存可能な環境を維持出来るのはもって数か月と試算されており、行き場のない500万人以上の市民がシェルターに避難している。
今回のバジュラ母星攻略は、大量の難民となりえる市民を救う為の大規模な援助を受ける為に必要な事でもあったが、バジュラ母星が人類の生存可能な環境を持つ惑星であるという思わぬ僥倖に狂喜したが……一人の
だからこそ、防衛線を破られて『アイランド1』に敵の侵入を許してしまった事に『フロンティア』軍の将兵は忸怩たる思いを感じていた。
大型ステルス攻撃空母『バトル・フロンティア』戦闘指揮所
「多数の敵 兵隊型怪獣が『アイランド1』に取り付きました!」
「――『アイランド1』に駐在している全デストロイドに迎撃命令を出せ!」
戦闘指揮所の中央に設置されている球体状のホロ・スクリーンに表示されている『アイランド1』のアイコンに向けて複数の兵隊型宇宙怪獣を示したアイコンが殺到している様子が映し出される……それはまるで獲物に群がる肉食獣の如き貪欲さ、これまでのバジュラの度重なる襲撃によって防護シェルすらもかなりの損傷を受けている『アイランド1』に防ぐ術はなく、シェルターに避難している市民の生存は絶望的に思えた。
しかしそんな将兵達の悲観的な予想は、良い意味で裏切られる事になる。
『アイランド1』にて宇宙怪獣と戦闘状態に陥っている筈のバトロイド部隊から報告が入ったのだ――『アイランド1』に設置されているフォールド・ウェーブ発生装置を占拠している球体状の機動兵器と同様の球体状の戦闘兵器が多数出現して侵入して来た兵隊型宇宙怪獣と戦闘状態に入ったという報告が。
「――なんだと!?」
通信を受けた士官からの報告に驚く司令官はさらなる驚きの報告を受ける事となる――ホロ・スクリーンに表示された情報を読み取っていたオペレーターの一人が『アイランド1』の上空に空間異常を感知して報告を上げる。
「――『アイランド1』上空3000メートルに空間異常発生! 空間がどんどん湾曲していきます」
オペレーターの報告に『バトル・フロンティア』の首脳陣はホロ・スクリーンを展開して直接『アイランド1』の上空に起こった空間異常の映像を見る――空に浮かんでいた雲が消え去り、周囲の空間が目に見えて歪んで所々に虹色の光が浮かび――虹色の光が荒々しい大海の大波のようなうねりになると、その中から複数の深緑に彩られた円柱の巨大な船体が海原を割るかのように出現してくる。
「……あれは、ゼントラーディの揚陸強襲艦か?」
虹色の波の中から出て来た船を見て参謀の一人が呟いている……古代プロトカルチャーによって開発され、プロトカルチャーの分裂による戦争初期から運用されているというゼントラーディ用の戦闘用艦艇の中でも多数配備されている大型輸送艦である。
艦内には多数の小型艇や戦闘ポットを搭載しており、艦隊への補給任務のほか惑星への戦力投入の際には真っ先に先陣を切る強襲揚陸艦としての機能を持つ船が現れた事に戸惑いを覚えていた。
何故ゼントラーディの揚陸強襲艦が『アイランド1』の上空に現れるのか? 銀河帝国の分裂によって始まった分裂戦争は戦闘用に調整された人造兵士であるゼントラーディと監察軍による代理戦争へと移行し、銀河系中心領域は戦争初期の激戦地として激しい戦いが繰り広げられて現在主戦場は辺境宙域を中心に行われていると推察されていた……それなのに何故? 思考の海に沈んでいた彼らにオペレーター士官より追加の報告が入る。
「『アイランド1』の上空に出現したゼントラーディの揚陸強襲艦は三隻、通常の揚陸強襲艦とは細部に微妙な違いが見受けられます」
分裂戦争初期から運用されている艦故に設計変更されていてもおかしくはない。それこそ今出現した三隻の揚陸強襲艦こそが初期に生産された艦なのかもしれない……だがそうなると、あの虹色の空間から現れた機能は何だろうか? あのような機能があるなら後継の艦にも装備されていてもおかしくはなく、あのような装備があれば戦術の幅も広がる筈なのだが、自分達が知るゼントラーディで使用されている現行艦にそのような機能はない筈だ。
思考の海に浸りながら自分達の知らない機能を持つ揚陸強襲艦に付いて考えていると、ホロ・スクリーンに映った揚陸強襲艦に変化が起こる――左右の船体の艦尾に大型降下ポッド用の射出ハッチが解放されて、そこから銀色の輸送ポットが射出されると『アイランド1』目掛けて降下していき、途中で外装をパージした輸送ポットから大量の球体型をした機動兵器が吐き出されて『アイランド1』へと飛翔していく……アレは『アイランド1』で宇宙怪獣とやらを迎え撃っているバトロイド部隊から報告されたフォールド・ウェーブ発生装置を占拠している球体状の機動兵器と、突然『アイランド1』の各所に現れて兵隊級と戦闘を始めた所属不明だが発生装置を占拠している球体と同じ規格で作られた機動兵器と同じだった……そこで彼らはこの奇妙な状況を造り上げたであろう人物に思い当たる。
「……これは、あの翡翠とか言う少女が作り上げた状況なのか?」
「……あの娘の手はどこまで広がっているのか…」
ホロ・スクリーンの中で輸送ポットから飛び立った球体状の機動兵器が『アイランド1』の防護シェルに開いた損傷個所から内部に突入して、両横に付けられた赤いオプションから同色の杭を連続して撃ち出して我が物顔で闊歩している兵隊級宇宙怪獣を串刺しにしている光景に、『バトル・フロンティア』の戦闘指揮所内の誰もが沈黙している……目の前で行われている非現実的な光景に脳が停止しているのだろう。
しかし脳が停止していられる時間はあまり長くはなかった――戦闘指揮所の中央に設置されている大型のホロ・スクリーンに表示された三隻の見慣れない装備をした惑星揚陸強襲艦が新たな動きを示したのだ。
「『アイランド1』の上空に停止している揚陸強襲艦に変化あり! 船体の各所に設置された対艦対空ミサイルランチャーが起動しています!」
オペレーター士官の報告を聞いて司令官がホロ・スクリーンの映像を三隻の揚陸強襲艦へと向けるように指示を出し、『バトル・フロンティア』の首脳陣が見守る中で映像に映し出された揚陸強襲艦の深緑の円柱のような船体の各所からミサイルランチャーが展開されると一斉に攻撃を開始する――本来は対艦および対空ミサイルを撃ち出すミサイルランチャーから射出されたのは半透明な素材で構成された細長い先端が鋭利な槍のようなモノであり、三隻の揚陸強襲艦の深緑の円柱のような船体に備えられた無数のミサイルランチャーから発射された半透明な槍は狙い違わず全弾が兵隊型宇宙怪獣の硬い甲羅を砕いて命中し――着弾の衝撃で痙攣していた兵隊級が動きを止めると、再び動き出して今度は至近距離に居た同胞たる別の兵隊級宇宙怪獣へと襲い掛かった。
「……揚陸強襲艦の攻撃後に、敵兵隊型怪獣が同士討ちを始めました…」
ホロ・スクリーンに表示されてる混沌とした状況に、困惑気味のオペレーターは報告してくる……自分達も『インプラント弾頭』とフォールド・ウェーブ発生装置を以て襲い掛かって来たバジュラをコントロール下において戦力としたが、これはそれをより効率化したように見える。
兵隊型宇宙怪獣が同士討ちを始めたのは揚陸強襲艦の攻撃の影響だと思われるが、兵隊級をコントロールしているような形跡は感知出来ずにあの半透明な槍のような攻撃兵器自体にあらかじめプログラムされていたのだろう。
「……悪辣すぎる」
ホロ・スクリーン内で展開される兵隊型怪獣の同士討ちの光景を見ながら、己のやって来た事を棚に上げて『フロンティア』行政府大統領首席補佐官レオン・三島は半ば呆れたように呟く……戦場を監視しているオペレータ―士官より、この星系内に侵入してきた宇宙怪獣の本隊と騎兵隊きどりで後を追ってきた『クォータ―』とバジュラによる戦闘宙域近くに多数のデ・フォールド反応と共に『クォータ―』級と新統合軍艦艇が多数出現したばかりか、宇宙空間に虹色の波が立つと『アイランド1』の上空にいる揚陸強襲艦のようにゼントラーディ軍で使用されている深緑の戦闘用艦艇が多数出現してくる。
「――戦闘宙域に『S・M・S』と新統合軍の連合艦隊と、未知の現象と共にゼントラーディと思われる艦隊が出現しました……連合艦隊の数は100隻前後ですが、後から現れたゼントラーディ艦隊は1万を超えています!」
億を超える宇宙怪獣の本隊に比べればまさに蟷螂の斧だが、それでも確かに圧倒的なまでの敵に囲まれた絶望的なまでの この状況に変化の兆しが起きている……趨勢というか風向きが変わる気配を確かに感じたが、それをもたらしたのは恐らく“あの”
「……一体何なんだ、
どうも、しがない小説書きのSOULです。
『アイランド1」の近くで亜空間潜航にて身を隠していた改型ゼントラーディ惑星揚陸強襲艦も翡翠の命令に従い姿を現し、バジュラの母星で猛威を振るう兵隊型宇宙怪獣へと攻撃を開始しました……ノノいわく翡翠の性格の悪さを現しているという自立型蹂躙兵器『スピアー』も猛威を振るい、『バトル・フロンティア』の面々も困惑している事でしょう。
では、次回 46話 New Buster Corps ――新生バスター軍団 10/25 0時に更新予定です。物語の流れを考えると一気に投稿した方が良いかと思い、連続投稿に踏み切りましたが……これで完全にストックが枯渇してしまう……(なみだ~
ごめんなさい。次回タイトルを間違えました、次回は第45話 counterattack ――反撃の狼煙が正しいタイトルです。(汗