マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス   作:soul

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 サヨナラノツバサ編




第47話 Inexplicable withdrawal――不可解な撤退

 

 超時空生命体バジュラたちの母星が存在する恒星系へと侵攻した巨大な宇宙怪獣軍団は、送り込んだ100万体の巡洋艦級怪獣が全滅させられた事実を以て――2億を超える宇宙怪獣軍団は目の前に展開する小癪な小規模の集団を明確な敵として認識した――ならば本能に従い滅ぼさねばならない――この宙域に存在する全ての宇宙怪獣が小癪な敵を滅ぼすべく内惑星圏へ向けて侵攻を開始した。

 

 

 縮退炉というこの世界には存在しなかった夢の動力を搭載した新生バスターマシン軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)の活躍により、宇宙に広がる壁の如き圧迫感を持った100万体もの巡洋艦級宇宙怪獣群を退けたバスターマシン7号ことノノは長距離センサーにより遂に敵の本隊が動き出した事を知る――赤い光に埋め尽くされた宇宙そのものが迫るかのような錯覚を感じるが、臆しているだけでは敵の圧倒的な物量の前に圧し潰されるしかない。

 

 ――そして何より、今の彼女は一人ではない。

 

 ひねくれ者の義理の妹(相棒)が用意した新生バスターマシン軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)という新しい力がある――アドミラル・ホーンを使って新生バスター軍団にノノは指示を出し、彼女の指示を受けた新生バスター軍団を構成する艦艇の中から改型スヴァール・サラン級戦艦の一部が前進するとノノの前に巨大なリングを作り出し――リングに向けてノノは全力のバスタービームを撃ち出した――リング内に形成されたフィールドを通過すると、バスタービームは何倍ものエネルギーを内包して接近中の宇宙怪獣の本隊へと直撃して、億を超える宇宙怪獣の一部を消し去った。

 

 ゼントラーディ自動兵器工廠衛星において兵器生産ラインを動かす設計データーに手を加える際に、改造型戦艦に盛り込む機能について翡翠とノノは熱い――それはそれは熱いディスカッションを行い(肉体言語ともいう)改型スヴァール・サラン級戦艦に盛り込まれたのがバスターマシン7号ことノノのサポートをするという初心に戻り、彼女の攻撃を増幅するフィールド発生装置を搭載したのだ。

 

 ――その威力は凄まじく、ファジカル・リアクターによる純粋数学での物理法則を書き換えて精錬されたビームを最大出力で撃ち出して、それをリング内に形成した増幅フィールドで何倍にも強化された切り札中の切り札『バスタービーム・THE・COMET』は一撃で数百万の宇宙怪獣を蒸発させたのだ。

 

 そして新生バスター軍団の攻撃は続く、他の改型スヴァール・サラン級戦艦もフォーメーションを組んで1000個のリンクを形成して、その中心に位置するのは1000隻の改型ノプティ・バガニス級決戦型砲撃戦艦――この艦種は50年前に撤退する監察軍の痕跡を追って太陽系へと侵入したゼントラーディ軍の第67グリマル級分岐艦隊の旗艦を務めた4000m級の大型戦艦の量産艦を元にしており、艦長兼分岐艦隊司令のブリタイ・クリダニクが人類がプロトカルチャーの文化を継承している可能性に気付いた事が呼び水となり、人類は500万隻もの戦闘艦艇を有するボトル基幹艦隊に勝利する事が出来た事からも、この4000m級中型艦隊指揮用戦艦――通称ブリタイ艦は地球においてマクロスに次いで有名な船であった。

 

 そんな大型戦艦――改型ノプティ・バガニス級決戦型砲撃戦艦の深緑の船体が上下に展開していき船体自体を超大型誘導収束型ビーム砲塔へと変える――それはオリジナルにも装備されている主砲であり、本砲は機動要塞攻略用のものであり艦隊戦では使用されることはまずないとされる――だが、今は2億を超える凶悪な宇宙怪獣から人類を、コミュニケーションが取れる可能性があるバジュラを守る為に主砲にエネルギーがチャージされる――改型であるこの決戦型砲撃戦艦も主機関を大型熱核反応炉から縮退炉へと変更され、最大の特徴は周囲に展開する僚艦からエネルギーを受け取る亜空間を利用したエネルギー伝道空間チューブを装備している事にある。

 

 エネルギー伝道空間チューブにより複数の僚艦の縮退炉からエネルギーを得る事でバスターマシン必殺のバスタービームと遜色ない威力の砲撃を可能としていたが、この世界で戦闘艦の装甲や構造体を製造するのに使用されている素材では最大出力のバスタービームの圧力に耐えられずに、一発発射すればバスタービームの威力に耐えられずに自壊してしまうという欠点を持つが、元とのなった艦の設計思想が優秀な事もあって縮退炉の大出力に裏付けされた通常の誘導収束型ビーム砲塔を持つ砲艦としての活躍を期待されていた。

 

 そして2億もの宇宙怪獣軍団を前に強力な打撃力を必要としたノノは安全ラインである70%の出力での攻撃を決断し――今、深緑の船体の中央に設置された超大型誘導収束型ビーム砲塔――バスタービームが放たれる――その数1000本の深紅のビームが宇宙怪獣の本隊へと伸びて一本一本が数万の宇宙怪獣を原子へと還した。

 

 


 

 

 バジュラたちの母星へと降下した『マクロス・フロンティア』船団に属する大型都市型移民居住艦『アイランド1』は、これまでに受けたダメージに加えて『フロンティア』行政府と軍部が共同で立案したバジュラ制圧作戦の要であったフォールド・ジャミング発生装置に必要な電力を賄う為に『アイランド1』も『フロンティア』軍と共にバジュラたちの母星へと降下した際に受けたダメージによって地表面に建設されていた都市部分は破壊されて廃墟の如き有様と化していた。

 

 そんなもはや二度と飛び立つ事が出来ないほどのダメージを受けた『アイランド1』へ追い打ちの如く未知の生命体 宇宙怪獣の襲撃を受けて避難場所に避難していた市民にも少なくない犠牲が出た……もはや自分達はこの見知らぬ惑星の上で死ぬしかないのか。

 

 誰もがそう悲観した時、『アイランド1』の上空に突如として3隻のゼントラーディの揚陸強襲艦が現れ、それに伴い何処からともなく現れた球体状の機動兵器が、廃墟と化した都市を我が物顔で闊歩する兵隊級宇宙怪獣へと攻撃を始めたのだ。

 

 球体状の機動兵器により都市部に侵入した兵隊型宇宙怪獣は排除され、宇宙怪獣を廃除した球体状の機動兵器はそのまま『アイランド1』を守るように外壁近くに展開し、上空には3隻の揚陸強襲艦が周囲を警戒するように待機していた。

 

 群雲の如き様相を持つ宇宙怪獣の攻撃を撥ね退けた球体状の機動兵器群……彼らが何者で何処から来たのか、『フロンティア』軍からの呼びかけにも一切応答がなくIFF要求にも沈黙している……だが『フロンティア』軍の旗艦である『マクロス・フロンティア』の上層部は、この混沌とした状況を作り出した人物に心当たりが有りすぎた……こんな奇天烈な状況を作りだせるのは、“あの”不可思議生物(翡翠と名乗るキテレツ娘)しかいない、と。

 

 一部の者達よりある意味絶大な信頼(悪い意味で)を受けている当の翡翠は、『アイランド1』の廃墟の中で出会ったグレイス・オコナー(……本人よりそう呼ぶように要望されたので)と共に地表近くまで降下している実験艦―02へと戻ると、初めにしたのはインプラント化した肉体に多大なダメージを受けているグレイスを医療区画へと連れて行って、半壊状態の身体の詳細なスキャンをする事だった。

 

 ベッドの上に横になったグレイスの身体を幾つもの淡い緑色の光が通り、銃撃を受けたのか全身に銃創があり表面の疑似皮膚組織が剥がれて内部構造が露出した痛々しい身体をスキャンし終えた結果が表示されている投影型スクリーンを見ていた翡翠は呆れたようにため息を付いた。

 

「……この状態で良く動けたもんだ、駆動系だけでなく神経伝達システムにまで不具合が出ている……これじゃ動くだけでノイズが走って脳にかなりの負担がかかっただろうに」

「……生きる為に必死だったからな」

 

 呆れを通り越していっそ感心するかのような視線を受けたグレイスは、翡翠と名乗った少女の翠色の瞳を見ながら肩を竦める。彼女の苦労話から雑談に移りながらも翡翠は投影型ウィンドウに視線を向けて思念波でこの船を統括するコンピューターに詳細なスキャンを継続させながら艦内に設置されているシステムに製造を指示する。

 

「幸い脳などの生体部分に目に見える損傷は無いけど、それでもかなりのストレスは掛かっているだろうし……こうなったら丸ごと取っ換えるか」

「……大丈夫でしょうね?」

 

 空中に投影された自身の詳細なスキャンデーターを見ながら不穏な事をブツブツと言っている年下の少女の姿に一抹の不安を感じたグレイスが問い掛けるが、少女は投影されたウィドウに視線を落としたまま答えない……しばらくウィンドウに表示された情報を読み込んでいた少女――翡翠は大きく息を吐くと視線をベッドに横になっているグレイスへと向ける。

 

「詳細なスキャンをした結果、君の義体はかなりのダメージを負っている……君に残されている生体部分に負担を掛けないようにしながら修復する事は可能だが時間が掛かる――だから、君の新しい身体を用意しよう」

「……大判振る舞いだけど、なぜそんなに急ぐのかしら?」

 

 この翡翠と名乗る少女と出会ってからそれほど時間は経ってはいないが、そんな相手がこれほどの大判振る舞いをするにはそれなりの理由がある筈だ……それこそ急がなければならない理由――恐らく『アイランド1』に侵入して破壊の限りを尽くした、あの宇宙怪獣とやらに関係しているのだろう……だが目の前の新しい相棒(傍若無人娘)はグレイスの疑問に答える事無く、妙にきれいな笑顔を向けて来る。

 

「――まぁ、それは追々説明しょう。今はストレスにより負担がかかっている生体部分を休ませる方が先決だろうさ」

 

 投影されたタッチパネルを操作した翡翠が おやすみと声を掛けるとグレイズの意識は急激に遠のいていく……まだ聞きたい事があるのに、このクソ〇キ……次に覚醒した時に必ず報復する事を誓いながらグレイスはセーフモードへと移行していった。

 

 

 眠りについたグレイスから視線を外した翡翠は周囲に浮遊する投影型ウィンドウへと視線を移す……周囲に浮かぶウィンドウにはバジュラの母星から少し離れた宙域で繰り広げられている2億を超える宇宙怪獣軍団を迎え撃つ新生バスターマシン軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)の奮闘が映し出されていた。

 

 1万隻の新生バスターマシン軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)を指揮して戦うバスターマシン7号がリング上に展開する改型スヴァール・サラン級戦艦が形成する増幅フィールドに向けて最大出力のバスタービームを放ち、改型スヴァール・サラン級戦艦達が形成するフォールドに接触するや増幅されて極大のバスタービームが数百万の宇宙怪獣を原子のチリに変える。

 

 そして改型スヴァール・サラン級戦艦が形成するリングは複数あり、他の増幅フィールドの中心にはそれぞれ改型ノプティ・バガニス級決戦型砲撃戦艦が存在しており、深緑の巨大な船体を上下に展開して船体自体を砲身とした巨大な誘導収束型ビーム砲へと変えた1000隻近い改型ノプティ・バガニス級決戦型砲撃戦艦より発射された主砲が改型スヴァール・サラン級戦艦の形成するリングに接触するや増幅されたビームとして数万の宇宙怪獣群をチリへと変える。

 

 本家のバスタービームには出力的に劣るが内蔵した縮退炉の最大出力を使用するとその圧力に耐える素材がこの宇宙には存在せずに改型ノプティ・バガニス級決戦型砲撃戦艦の主砲は70%の出力での運用しか出来ない。それでも既存の火砲に比べれば強力な一撃を加えられる為に採用したが……7号というかノノねぇは偶にノリと勢いで“やらかす”から、最大出力で運用するんじゃないかと不安に思っていたのだが……どうやら忘れていなかったようだ。

 

 幾つも浮遊している投影型ウィンドウ内では強力な砲撃によって消し飛ばされる宇宙怪獣軍団の姿が映り、バスターマシン7号以下 改型ノプティ・バガニス級決戦型砲撃戦艦の増幅砲によって数を減らしていき、反撃の光弾も改型スヴァール・サラン級戦艦の張る強力なシールドの前に空しく虚空へと消えていく。

 

 

 群体が集まって作り上げられた巨体を誇って宇宙の景色すら変える無数の宇宙怪獣軍団を一方的に打ち減らす新生バスターマシン軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)。宇宙怪獣の反撃を強固なシールドで完全に遮断するその様は、ジワジワと追い詰められていた姿から攻守を変えた一方的なワンサイドゲーム。

 

 2億をも超える規模で侵攻していた宇宙怪獣軍団も、バスターマシン7号の放つ『バスタービーム・THE・COMET』や、それには数段劣るが改型ノプティ・バガニス級決戦型砲撃戦艦の強力な連続砲撃により半数近くにまで数を減らした宇宙怪獣群は超・能力を以て超空間への回廊を開いてワープに移行していった。

 

 

 可変攻撃宇宙空母『マクロス・クォーター』ブリッジ

 

「――敵宇宙怪獣が次々と超空間へ撤退……ワープにて星系外に撤退していきます」

 

 モニカ・ラングの視線が見詰める球体状のホロ・スクリーン上に表示された状況を読み解きながら艦長であるジェフリー・ワイルダー大佐へと報告する……オペレーターである彼女や、ジェフリーを始めとした『マクロス・クォーター』ブリッジ・クルーの困惑した表情……確かにバスターマシン7号ことノノ嬢や参戦した新生バスターマシン軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)の活躍によって敵 宇宙怪獣軍団は大きく数を減らしているが、それでも半数以上の数が残っており、今だ1憶以上の勢力が残るこの状況で、余力が残っているであろうこの状況で彼らは撤退を開始している。

 

「……撤退している……なんで? こちらが押しているとはいえ、数は敵の方が圧倒的に多いのに……」

「……想定外の抵抗を受けて一時的な後退をしている?」

 

 操舵稈を握ったボビーが首を傾げている……新生バスターマシン軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)の参戦にによりかなりの数の敵を倒したが残存している敵の数は未だ此方を上回っており、この状況で撤退する理由が分からない……キャシー君の言う通りに不測の事態に遭遇して一時的な後退をしているというのなら理解出来るが、それはノノ嬢の説明にあった宇宙怪獣の特性――彼らには意志などなく反射や防衛など先天的行動を行っているという説明に矛盾が生じる……『マクロス・クォーター』艦長ジェフリー・ワイルダー大佐もまたこの戦いの中で違和感を感じていた……だがともかく、

 

「……これで一息は付けるな」

 

 帽子の鍔を持って調整をした彼は艦長席に深く体を預けるのであった。

 

 

 バジュラたちの母星が属する星系内で群雲の如く襲い掛かって来た宇宙怪獣軍団を撃退した第六世代型恒星間航行決戦兵器バスターマシン7号ことノノは、ワープの光に包まれて星系外へと撤退していく宇宙怪獣群を厳しい目で見ていた……今回の敵宇宙怪獣の行動は徹頭徹尾 彼女の中に存在しているデーターにはないような行動をしていた……まるで宇宙怪獣という外見は同じで中身は別物のような違和感。

 

 ……後は頼んだよ翡翠。

 

 上手く宇宙怪獣の本拠地を特定出来る事を願いながら。

 

 

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。

 新生バスター軍団の介入を受けたにしても、余裕を持ちながらも撤退する宇宙怪獣の不気味な行動……それでも一時的とはいえ戦闘が集結したのは事実――撤退する宇宙怪獣の後を追跡する翡翠は驚愕の事実を知る。

 次回第48話 Facts that become clear ――明らかになる事実 10/28 0時更新予定です。ではでは~……そろそろストックが
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