マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス   作:soul

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 サヨナラノツバサ編





第48話 Facts that become clear ――明らかになる事実

 

 銀河系中心宙域――中心にある太陽質量の431万倍もの超大質量のブラックホール いて座A*の超重力によって引き寄せられた星間ガスや塵などがブラックホールに凄まじいスピードで飲み込まれてまだ飲み込まれていないモノも物凄いスピードで周回して降着円盤として凄まじい熱量と大量の放射線をまき散らしている――そして いて座A*の超重力は周囲に存在する恒星にも影響を及ぼしてブラックホールの周りを物凄いスピードで公転させている――それはまさに物凄い力で振り回される無数のハンマーのようであった。

 

 そんな危険極まりない銀河系中心部より少し離れた宙域、いて座A*の超重力の影響力が比較的低い恒星間宙域に一機の探査機が待機していた――翡翠の駆る『実験艦―02』より射出された長距離探査用に各種センサーを装備したレベル4の探査プローブがプログラムされた命令に従い遮蔽装置(クローキング・デバイス)を作動させて指定のポイントで待機していた。

 

 『遮蔽装置』――それはかつて接触した並行世界で一大勢力を誇る惑星連邦の航宙艦でもごく一部の船にのみに搭載された機密技術である。重力レンズ効果を利用して遮蔽シールドに突入した光(電磁波)を、シールドに沿って人為的に誘導して反対側で再び宇宙空間に放つ事により相手のセンサーに感知されないという技術なのだが、それは連邦の理念に反するという理由で長年連邦宇宙艦隊は導入を見送っていたのだが、昨今の連邦を取り巻く情勢の悪化を受けて一部の戦闘を目的とした航宙艦であるディファイアント級護衛艦に搭載されている。

 

 指定ポイントにて長期間の間、母船にてプログラムされた指示に従ってこの宙域にて待機している探査プローブに搭載された亜空間ソナーに無数の物体が此方に接近してくる事が関知されると共に、周辺宙域の時空連続体に捻じれの様な現象を感知して探査プローグはその情報を母艦である実験艦―02へと送った。

 

 


 

 

 バジュラの母星が属する恒星系内 

 

 億を超える空前絶後の数の敵性生命体 宇宙怪獣の大軍団を辛うじて退けた可変攻撃宇宙空母『マクロス・クォーター』は、共闘していた超時空生命体バジュラの戦闘艦艇や援軍として来訪した『S・M・S』と新統合軍の連合艦隊と共に残っている残敵――主にバジュラの母星の地表にて未だ攻撃を続けている兵隊型宇宙怪獣を殲滅する為にバジュラの母星の大気圏へと降下して、バジュラの女王の居る巣(ネスト)や交戦状態にある『マクロス・フロンティア』船団を襲っている兵隊級宇宙怪獣へと攻撃を掛けようとしていた――が、地上の戦闘は既に終盤に差し掛かっていた。バジュラの母星の大気圏に突入した『マクロス・クォーター』と連合艦隊の眼前では球状の機動兵器や半透明の槍状の機動兵器が次々と兵隊型怪獣を蹂躙している光景があったのだ。

 

 

 可変攻撃宇宙空母『マクロス・クォーター』ブリッジ

 

「……何これ?」

 

 宇宙空間において億をも超える宇宙怪獣の大軍団を辛うじて退け、バジュラの母星に降下した大型都市型移民居住艦『アイランド1』に残されている避難民を救出する為に逸る気持ちを押さえて、いざ地表に降下すれば――群雲の如き軍勢で『フロンティア』船団とバジュラの女王の住まう巣(ネスト)に襲い掛かっている筈の宇宙怪獣が、丸っこいボールのような機動兵器の繰り出す無数の赤い杭に撃ち抜かれ、半透明な槍の様な機動兵器に貫かれた兵隊型怪獣は痙攣した後に隣に居る別の兵隊型怪獣に襲い掛かっている。

 

「……これもあの娘の仕込みなの……一体どれだけ仕込んでいるの?」

 

 外部の情報を移すホロ・スクリーンの映像に映る兵隊型怪獣を蹂躙する異形の機動兵器群を見ながらキャサリン・グラス中尉は、宇宙怪獣との初接触の折に異星の航宙艦に乗って現れた一見ローティーンの少女の事を思い出す……スパイとして死刑が確定していたシェリルを収容していた『アルカトラズ刑務所』からの救出作戦の終盤に爆発に巻き込まれて行方不明になったオズマ少佐と共に現れたのが最初であった……能天気なオズマの姿にすこーーしヒートアップしてしまったが、そこに場を引っ掻き回すかのように悪質なジョークを入れて来たのが翡翠と言う少女との出会いであった。

 

 彼女の言葉を信じるならば彼女と姉を名乗るノノは異星の船である実験艦―02のクルーであり、アクシデントでこの銀河系へとやって来たと言う。バジュラの母星に侵攻しようとしていた『フロンティア』船団の対処と、未知の敵である宇宙怪獣の情報を得る為に『クォーター』内に招き入れた……艦内での彼女はミハエル・ブラン中尉や早乙女アルト准尉とじゃれ合い、お姉さん相手にこましゃくれた物言いをする捻くれた女の子……の擬態をしている油断ならない相手だと感じた。

 

 『クォーター』のラウンジで彼女達を迎え入れた時、一瞬見せた周囲の配置や人物を観察していた冷たい目――冷静に周囲を把握する冷徹な視線……彼女が宇宙怪獣に対抗する為にあの改修型ゼントラーディ艦隊や目の前の機動兵器を投入したのは間違いがない……だが、この不安感はなんだろうか?

 

 


 

 

 新生バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)の介入もあり、勢力を半減させた宇宙怪獣軍団はバジュラの母星が属する星系から撤退していった……勢力を半減させたとはいえ、未だ憶を越える勢力を残して相手が撤退したという事は戦力を再編しての再侵攻の予感を感じさせるものであった。

 

 この貴重な時間を利用して『マクロス・クォーター』とバジュラの残存艦隊そして『S・M・S』と新統合軍の連合艦隊は、バジュラの母星の地表に降下して未だ多数の兵隊型宇宙怪獣と交戦状態にある『マクロス・フロンティア』船団を救出する為にバジュラの母星の大気圏へと降下し、新生バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)の半数を率いたバスターマシン7号ことノノも『フロンティア』救出を支援する為に共に降下しており、残る半数の新生バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)を再び制御下に置いた実験艦―02のブリッジでは、水晶の様な素材で出来た椅子に座った翡翠が真剣な表情を浮かべて投影型スクリーンに表示されている情報を読み取っていた。

 

 ――先ほど、宇宙怪獣がこの世界へと来訪したと思われる地点――翡翠達がこの世界へと流れ着いた銀河系中心部の何の変哲もない恒星間宙域にて待機しているレベル4の探査プローブより亜空間ソナーにて接近して来る無数の物体を感知したとの連絡が入ったのだ……恐らく撤退した宇宙怪獣の部隊であろう。

 

 ふと思いついた翡翠は思念波で探査プローブに指示を出して光学情報を送信させ、投影型ウィンドウに無数の宇宙怪獣が超空間の結節点より姿を現す映像が映し出される――それは圧巻の光景であった。3000mを越える巨体を警戒色で彩る宇宙最強の生物――共生関係にある群体が絡まり合って混ざり合い、宇宙艦隊を組んで知的生命体の痕跡に反応してそこへ群がる……知的生命体の起こした文明と接触した後は本能に従って徹底した破壊活動を行う。

 

 地球人の流儀に従って洒落て表するなら、アズラーイール(死告天使)の群れとでも言うべきか、恒星間空間を無数の光で彩って見る者に絶望と死をもたらす最悪の存在――まさに虚空の破壊者と呼べるだろう。

 

 レベル4の探査プローブのセンサーが向けられる中、周辺の空間の重力勾配が急速に変化して行って何の変哲もない恒星間空間の時空連続体が押し広げられるや超空間への巨大な結節穴が開いて、暗黒の宇宙に眩いばかりの光の回廊が形成された――そして形成された光の回廊へと宇宙怪獣は整然とした隊列を組んで進んで光の中に消えていく……その映像を見ていた翡翠は思念波によって探査プローブへと指示を送り、それを受けた探査プローブの船体から複数の小型ドローンが射出された。

 

「――そのまま、害獣どもに付いて光の回廊へ飛び込め」

 

 翡翠の指示の下、探査プローブより射出された高性能センサーや強化された通信システムを内蔵した複数の小型ドローンは、搭載されている光学迷彩システムを起動して宇宙怪獣に気付かれる事なくその隊列へと潜り込んで光の回廊の中へと突入して――回廊の先で計測したデーターを母機である探査プローブへと送信し、内容を精査したデーターを亜空間通信機能を用いてはるか先に存在するバジュラの母星の属する恒星系にて待機している実験艦―02へと送られ、それを見た翡翠は水晶の様な素材で作られたシートに身体を預けると、深いため息を吐いた。

 

「……などほどね、そういう事か」

 

 宇宙怪獣どもがこれまでにない行動をした事も、何故奴らがこの世界に来たのかも、全てに得心がいった。

 

 探査プローブにその場で待機して警戒網を敷くように指示した後、翡翠はブリッジを出て通路を歩く……光の回廊の先で判明した事を考えれば宇宙怪獣の再襲撃は確実であり、“彼女”の立場は宇宙怪獣の襲撃に伴い悪化するだろう……主幹エレベーターの前まで来た翡翠は光子で出来た台座に乗ると下の階層へと向かう……宇宙怪獣の脅威が高まれば、それに伴い“彼女”への当たりも酷くなるだろう……目的の階層まで来た翡翠は台座から降りて再び水晶のような素材で作られた通路の中を歩く……宇宙怪獣との戦いは激戦になるだろう、そうなればかなりの犠牲が出来る事は想像がつく。

 

 しばらく通路を歩いていた翡翠の視線に目的地が見えて来る……戦いが長引けば犠牲が多くなり、ストレスを抱えた人間は戦いの原因を求め、生贄を狩り出すだろう(でっち上げる)……気に入らない、そんな流れはとことん気に入らない――ならば、流れをぶち壊そう――状況が激流となって降り注ぐなら、その全てを吹き飛ばそう……目的地へと着いた翡翠は思念波で扉を開けて中へと足を踏み入れる。

 

 そこはかなり広いスペースを持つ部屋であった。だが普通の部屋と違うのは部屋の中には幾つもの小部屋があり、それは半透明の壁で仕切られており、その一つの小部屋には一人の男が備え付けのベッドに座りながら半透明の壁ごしに翡翠を見つめていた。

 

「……何故、子供が?」

「ずいぶんなご挨拶だな、ブレラ・スターン」

 

 訝し気なブレラの物言いにシニカルな笑みを浮かべながらも翡翠は拘束室の住み心地はどうだい? と問い掛ける――ここは実験艦―02に設けられた危険な人物を拘束する為の施設であり、『フロンティア』の特殊部隊と対峙した時に彼らから逃れる為に『アイランド1』の外壁を破壊して宇宙空間へと逃れた翡翠は、爆発の衝撃で同じように宇宙空間に飛ばされたオズマとブレラを見つけ、ついでとばかりに二人を実験艦へと連れてきた翡翠は、グレイス同様にブレラの身体の詳細なスキャンを行い、インプラント技術で作られた義体は常人よりも強靭な肉体であり五感も強化されている反面、精神は脳に施された手術によって抑圧されているようだった。

 

 スキャンを終えた翡翠はブレラを処分しようとしたのだが、オズマ達への事情説明の後にランカと話した他愛無い会話――ブレラはランカの実の兄の成れの果てだという話――それを聞いた翡翠は慌ててブレラの処分命令を撤回して損傷した身体の修復――そのまま直すだけでは面白くないから、色々魔改造するのも楽しそうではないか、と02のコンピューターにブレラの身体の再設計を指示したので今の彼の身体は完全に修復されていたが、バジュラの母星へと向かい宇宙怪獣どもと事を構える可能性が高かったので、修復されたブレラは拘束室の中に押し込めて半透明の壁――フォース・フィールドで拘束していたのだ。

 

「単刀直入に言う――私と手を組め、ブレラ・スターン」

 

 


 

 

 宇宙怪獣が撤退した後、星系内に残る兵隊級などの残敵を掃討した『マクロス・クォーター』と『S・M・S』と新統合軍の連合艦隊はバジュラの母星の衛星軌道上に待機して、これからの事に付いて協議をしていた――今回 連合艦隊が派遣されたのは、コミュニケーションの可能性があり知的生命体である可能性が高い超時空生命体バジュラと『マクロス・フロンティア』船団の衝突を止める事が目的であり、宇宙怪獣の襲撃という不測の事態によって両者の衝突は結果的に不発に終わった。

 

 兵隊型宇宙怪獣群の襲撃によって多大な被害を被って事後処理に奔走されている『フロンティア』軍と行政府の首脳陣だったが、連合艦隊司令部よりの出頭命令を受けて多忙な中で渋面を浮かべながらも出頭した『フロンティア』軍の司令官と参謀そして行政府を統括する大統領と首席補佐官を筆頭としたブレーン達……問題となっているのは彼らがバジュラが知的生命体の可能性を認識していたかどうかであり、もしも認識していたのならそれは明確な銀河条約違反となる。

 

 それに対して主に首席補佐官が反論する――当時の『フロンティア』船団は未知の敵であるバジュラの衝撃をたびたび受けて船団は多大なダメージを受けており、環境クラスター艦である『アイランド1』も大量の有機物を失うと言う致命的な損害を被って生存可能な環境を維持出来るのは後数か月という事態に陥っていたと。

 

「……人類の生存圏から遠く離れた銀河系中心部、そんな場所を航行する移民船団からの救援要請に果たして答えてくれたでしょうか?」

 

 首席補佐官レオン・三島は対面に座る連合艦隊からの参加者を目ね付けながら、環境クラスター艦を修復するには大量の資材を必要であり、銀河系中心部という遠く離れた所を航行する移民船団の為にそこまでしてくれるのか、とシニカルな笑みを浮かべながら問い掛ける。

 

「――そんな極限に置かれた我々に、襲って来るバジュラに知性があると考える余地があったと思うかね?」

 

 ふん、と鼻を鳴らすレオン・三島。そんな彼に『S・M・S』本部と新統合軍司令部に通報した『クォーター』の艦長として事態の行く末を見届けたいとオフザーバーとして参加しているジェフリー・ワイルダー大佐が、バジュラの襲撃を受ける前から彼らが内包する希少物質『フォールド・クォーツ』について研究しており、バジュラと接触してからは彼らの死骸から『フォールド・クォーツ』を採取している事を指摘する。

 

「補佐官、貴方達はバジュラを資源として見ていたのではないかね? その為に開発したフォールド・ジャミング装置を動かす動力として、バジュラの本星を攻略する際に『アイランド1』を同行させた……貴方の言う多大なダメージを受けた『アイランド1』を戦場に同行させるなど、本末転倒も良い所ではないか」

 

 きびしい表情を浮かべたジェフリー大佐の問いかけに三島首席補佐官は、断続的に襲撃して来るバジュラとの戦闘によって『フロンティア』軍は疲弊して移民船へのダメージも蓄積して行って、移民船団である『マクロス・フロンティア』船団は居住可能な星を求めての航海の継続は難しくなっていき、最悪全滅の可能性もあった。

 

「――そんな船団を救うには大規模な援助を受けて、大量の有機物などを喪失した移民船を立て直すしかない……だが果たして、それだけの援助を受ける事が出来るのか? こんな人類の生存圏から遠く離れた銀河の中心で」

 

 ――ならば、彼らが喉から手が出るほど欲しいモノを用意して、それを対価に大規模な援助を受けるしかない――それこそが、次世代の通信やフォールド航法を可能にする希少物質『フォールド・クォーツ』であった――古代プロトカルチャーの文明を継承して様々な超技術である重力・慣性制御や反応兵器そして超光速技術フォールド航法などを用いている今の人類にとって、今の技術を発展させる為に必要不可欠な物質それこそが『フォールド・クォーツ』なのである。

 

 レオン・三島――過酷な環境の中で幼少期を過ごし、その反動からか強烈な上昇志向を持つ彼だが、彼なりに『フロンティア』船団の事を思っての行動だったのかもしれない……そんな事を考えていたジェフリー艦長の個人端末に通信が入った事を知らせてくる……会議中の為に掛け直すように伝えようとした彼だったが通信の送り主が動向を注視している翡翠嬢であり、内容が看過出来ないモノであった。

 

『宇宙怪獣の本拠地と、奴らがこの宇宙にやって来た理由が分かった』

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。

 最初に宇宙怪獣が出現したであろう場所で、増援が出て来るか、撤退して来る宇宙怪獣が逃げ帰るか、と待ち構えていた翡翠の前に撤退した宇宙怪獣が現れて、彼らが明けた次元の結節点へとドローンを送り込んで――驚愕の事実を知りました。




 えー、遂にストックが底を付いたので、次回の投稿は少しお時間を頂きます。
 また投稿するときは告知を置きますので気長にお待ちくださいね。ではでは~。
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