マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス 作:soul
サヨナラノツバサ編
バジュラの母星が属する恒星系に侵攻して来た未知の敵 宇宙怪獣軍団を辛うじて退けた、『マクロス・クォーター』と『S・M・S』と新統合軍の連合艦隊は一時の平穏を得る事が出来た。その貴重な時間を行方不明者の捜索や負傷者の手当、損傷した艦艇の修復へと当てながら、上層部は未知の存在である宇宙怪獣の残骸からサンプルなどを採取したり、戦闘時に観測した宇宙怪獣の行動原理を解明しようとしたりと対策へと繋がる手段を得ようとしていた。
それと同時に連合艦隊上層部はこの星系へと派遣される元となった長距離移民船団『マクロス・フロンティア』船団によるコミュニケーションの可能性のある超時空生命体バジュラへの侵攻という銀河条約違反に対する査問会を開いた。
査問会においてバジュラが知的生命体の可能性を持つと認識していたのかを問い掛ける連合艦隊上層部に対して、『フロンティア』行政府大統領首席補佐官であるレオン・三島は度重なるバジュラの襲撃によって受けた損害が蓄積していって『フロンティア』船団は全滅の危機に瀕していたと主張し、オフザーバーとして参加していた『クォーター』のジェフリー・ワイルダー艦長は、バジュラとの接触以前より研究されていた事とバジュラの本星に侵攻する際に大ダメージを受けていた大型都市型移民居住艦『アイランド1』を同行させた事を上げて、首席補佐官の弁には矛盾があると断じ、尚も矛盾点を突こうとした時、彼の携帯端末が翡翠からの通信を受信してその通信内容に視線を鋭くした。
『宇宙怪獣の本拠地と、奴らがこの宇宙にやって来た理由が分かった』
内容の重要性から通信内容を連合艦隊上層部にも伝えて、未知の宇宙怪獣の重要な情報が得られる事から『フロンティア』側も同意して査問会が一時中断され、ジェフリー艦長より示された艦隊内のネットワーク内のアドレスにアクセスして査問会の会場に大型のホロ・スクリーンが展開されて映像が表示され――そのインパクトに誰もが唖然としてしまうのだった。
可変攻撃宇宙空母『マクロス・クォーター』左舷格納庫
空母としての機能を持つ『マクロス・クォーター』の左舷側にはバルキリーやクァドラン・レアなどの搭載機が普段は鎮座しているのだが、今それらの機動兵器群は格納庫の隅に押しやられて格納庫の中央に広いスペースが設けられていた――そのスペースには一段高くて広い台座が置かれ、突然現れた凶悪な敵 宇宙怪獣に付いて重大な事実が判明したとの報と共にこの格納庫で発表されるとして『クォーター』のクルーの殆どがこの場に集められていた。
実働部隊を束ねるオズマ少佐を筆頭にスカル小隊のミシェルやルカそしてアルト。ピクシー小隊のクラン・クラン大尉やビー・マルコー大尉、カナリア・ベルシュタイン中尉やキャサリン・グラス中尉の姿もあった。その他にも『S・M・S』隊員も集まっており、その中にはシェリルやランカの姿もあった……しかしこの大切な場面に集まった一同は、目の前で繰り広げられる光景に唖然としていた。
『みんな~~、あつまれ~~、なぜなに『マクロス』はっじまるよぉお!』
『はっ、じっ、まるよぉおおお!?』
どこかで見たような栗色の髪をウルフカットに整えた白いボディスーツの所々に蒼い結晶体を付けた翠色の瞳を持つ少女が台座の上に乗って小さな口に両手を添えてノリノリで告知をしており、その隣には何故かバニーガール姿のノノが頬を染めながら やけくそのように叫んでいた。
「……なにやってんだ、アイツら?」
呆れ混じりで呟くアルトと肩を竦めるミシェル……当然、その呟きは高性能イヤーを持つノノの耳にも届いており、赤く染まった耳が更に赤くなる……何故こんな格好をしているかと言うと、宇宙怪獣軍団が撤退して残敵掃討も終わらせたノノが『クォーター』で休んでいると、突然転送ビームで乗り込んで来た翡翠に捕獲されて、こんな恥ずかしい姿に着替えさせられたのだ……当然猛烈に抗議したが、普段からホットパンツにハイソックス姿のノノねぇが、何を今更恥ずかしがるのかと、あっさりとスルーされて二、三打ち合わせをした後にそのままこの台座に放り込まれた。
翡翠の話によれば、この場で追跡した宇宙怪獣に付いて発表すると言うが、その詳細を聞いてみたが翡翠は悪戯っぽく微笑んで「お楽しみはみんなと分かち合った方が楽しいよ」などと、普段の彼女を鑑みればどの口が言うかと思うようなセリフではぐらかされた。
「ねぇ、ねぇ、お姉さん。今回は宇宙怪獣に付いての話なんだよね?」
「そうだよ、ウサギさん。今回は突然現れた害獣ども――宇宙怪獣に付いての話だ。宇宙の何処かで固まっていた群体が絡まり合って混ざり合い、宇宙艦隊を組んではた迷惑にも知的生命体が運用するワープ・ドライブの残照に引かれて寄って来るという厄介な相手だ」
「……そうだね。倒しても倒しても、やって来てキリが無かったよ」
「……そんな迷惑な性質を持つならば、噂や記録が残っていなければおかしい……だが、これまで宇宙怪獣なんて害獣の記録は無かった。ならば奴らは何処から来たのか――ここから銀河系中心方向の約300光年先の恒星間空間に、その痕跡があった」
翡翠の後ろに大きなホロ・スクリーンが立ち上がって、映像の中に何の変哲もない宇宙空間が映し出される――これは事前に放った探査プローブからの映像であると翡翠は説明して、しばらくすると何の変哲もない宇宙空間に無数の超空間との結節点が輝いて、光の中から警戒色に彩られた巨大な宇宙怪獣が現出してくる。
だが宇宙を警戒色で埋め尽くした宇宙怪獣群が向かう先は何の展哲もない恒星間空間――だがその恒星間空間に小さな光が灯ると、それは急速に大きくなって周囲の時空連続体を押し広げて巨大な光の回廊――別次元への結節点を造り上げた。
「あの光の回廊は、別の宇宙へと繋がる回廊――奴ら宇宙怪獣は別の宇宙からやって来たんだ」
だから奴らは撤退した――別の宇宙からの来訪者ゆえに奴らには時間制限があったのだ。
「――時間制限?」
多元宇宙論もしくはマルチバースと呼ばれる理論によれば複数の宇宙が存在する可能性があり、それぞれの宇宙が独自の法則を持っており物理法則や物理定数、および素粒子の種類は異なる世界も存在する――それを総じて並行宇宙と呼ぶ。
「宇宙にはそれぞれの秩序があり、別の宇宙から来た物など異物でしかない」
アルト達には秘しているが、翡翠もノノもそして実験艦―02もこの世界の存在ではなく、別の宇宙から迷い込んで来た
当然その問題はヤマトに保護されていた翡翠も把握しており、ヤマト時代に乗艦を失って苦労した経験から実験艦―02に積めるだけの機能を盛り込んでいるお陰で、異なる世界でも問題なく活動出来るように翡翠やノノそして実験艦自体を包む微弱な亜空間フィールド発生装置を作成して対策としていた。
だが宇宙怪獣達がそんな対策をしている筈もなく、彼らの活動には時間的な制限があったのだ。
「はぇ~、あの撤退にはそんな意味があったんだ」
「――だが、それで害獣どもの数の暴力は脅威であり、億を超える数が逐次投入なんかされたら厄介な事この上ない」
能天気な事を言ってはいるが、ノノとて宇宙怪獣の数の脅威は十分に認識しているだろう――彼女の世界において宇宙怪獣の残党から太陽系を守り抜いたのだから……オズマを始めとする実際に宇宙怪獣軍団と戦闘を行った者達の顔が渋面を作る――想像したのだろう、群雲の如く迫りくる『マクロス』すら超える巨体を持つ宇宙怪獣が絶え間なく襲来する光景を。
「――だから奴らの本拠地を把握するべく、探査プローブからドローンを射出して光の回廊――別の世界への結節点へと突入させた」
話が確信に近づいた事でこの場に集まった全ての者が緊張した趣になる……遂に恐ろしい数で突然襲い掛かって来た、あの宇宙怪獣達の本拠地の――しかも今までの話によれば別の宇宙にある敵の総本山に付いての話になるのだ。
「光の回廊へと突入したドローンがたどり着いたのは、別の宇宙だけでなく別の場所だった」
「……別の場所? どういう事だ、別の宇宙だって言うなら当たり前だろう?」
話が上手く呑み込めずに疑問の声を上げるアルト。
「……ドローンがたどり着いた場所――それはこの銀河から遠く離れた場所にある別の銀河系――この世界だと2億2000万光年離れた場所にある『じょうぎ座銀河団』に相当する位置にある銀河団の中心にある、この銀河系よりも遥かに巨大な大銀河だった」
じょうぎ座銀河団――地球から約
それはこの世界も同じで地球から
そんな人跡未踏の未知の領域に存在しているという巨大な楕円銀河の映像が見れるというのだ――この場に集まったギャラリーの注目が翡翠の後ろに広がる巨大なホロ・スクリーンへと向けられ――そこに映し出されたのは一面の警戒色の群れ――襲い掛かって来た3000m級の宇宙怪獣を遥かに超える巨体を持つ宇宙怪獣の大群が画面を埋め尽くす勢いで映し出されていた。
「……これは」
「……なんて数だ」
なまじ巨大なホロ・スクリーン故に画面一面に映る無数のこれまで以上の巨体を持つ警戒色に彩られた宇宙怪獣の群れは、どこまでも、どこまでも続く――それは此処とは異なる世界の、此処とは違う銀河を埋め尽くすかのような勢いを見せた。
「――この「じょうぎ座銀河団」にある巨大銀河は、その半径は400万光年を越え、巨大銀河の全体を包み込むように希薄な星間物質や 球状星団がまばらに分布している球状――ハローを含めれば、その大きさは1憶光年を越える……私達はこの巨大銀河を『〇%$・&〇#@%$・%$#〇%@%$#〇%』……ああっ、この発音は人類の言語に無いのか……」
つい昔のようにポリポリと後頭部を掻いた翡翠は暫く思案する。
「……そうだな。人類の言語で一番近い意味合いで発音すると、あの巨大銀河を私達は『THE・GREAT・DESTRUCTION』と呼んでいる……巨大銀河の中心にある超大質量巨大ブラック・ホールは君達の太陽の質量の800億倍もあり、周囲の銀河を――宇宙の構造体である銀河団を引き寄せている怪物だ」
ポリポリと後頭部を掻いて思案顔をしていた翡翠は苦笑と共に説明する――大宇宙を形作る巨大な構造体である銀河団や超銀河団は、無数の銀河がそれぞれの重力で引き寄せ合っているモノもあれば、中心部近くにある巨大質量によって纏まっているモノもあると。
「つまりこの『
映像の中にある無数の警戒色に彩られた滅びの使者 宇宙怪獣はこれまで観測された個体よりも遥かに巨大であり、一体一体が5000mを越えるモノや、二体の怪獣が融合したモノ、さらには天体クラスの巨大な個体すら無数に存在していた。
「……これが、宇宙怪獣の本隊…」
その呟きは誰のものだったのか、画面の中には宇宙空間を埋め尽くす警戒色に彩られた無数の宇宙怪獣の威容が埋め尽くし――恐らく画面に映らない場所にも広がり、巨大銀河の中心領域全てを埋め尽くしているのかもしれないし、もしかしたら巨大銀河の全ての領域に及んでいるのかもしれない。
宇宙を埋め尽くす巨大な宇宙怪獣群の中でも一際異彩を放つのが天体規模の威容を持つ巨大宇宙怪獣の姿――惑星規模の宇宙怪獣は惑星の直径と同規模のパノラマを持つ母艦クラス級しか確認されていないが、その巨大宇宙怪獣はパノラマの代わりに砲台級に搭載されている筒虫が密集している楼閣の様な巨大な筒砲を更にスケールアップした5000m級怪獣よりも巨大な筒砲を無数に備えた、一斉射すれば地球を焼き尽くした500万隻の艦隊を率いたボトル基幹艦隊以上の苛烈な攻撃によって惑星を砕きかねない恐ろしい攻撃力を秘めた砲台を持つ惑星級が複数体見て取れる。
映像に映る惑星級を厳しい目で見つめるノノ……翡翠に無理やりバニースーツを着せられているが、彼女は宇宙怪獣の残党から太陽系を防衛する為に作り出された第六世代型恒星間航行決戦兵器であり、長きに渡って旗下の無人バスターマシン兵器群『バスター軍団』と共に戦ってきた歴戦の戦士である――その彼女が今まで遭遇した事のない規模の怪獣――戦艦級とでも呼ぶべき巨大な宇宙怪獣や、想像を絶する規模の惑星級など――もしも、この本隊がノノの地球へ――お姉さまやフラタニティのみんなが居る地球に侵攻したとしたら……そう考えると、ノノの表情はより厳しいものになる。
「……まぁ、この軍勢をみれば、この宇宙へと侵攻して来た宇宙怪獣どもがノノねぇの持っていた今までの宇宙怪獣の行動解析データーと違う行動を見せたのも分かる――奴らはノノねぇ達が戦ってきた宇宙怪獣どもよりも遥か昔から存在しているんだろう。故にノノねぇが戦ってきた宇宙怪獣どもよりも、この巨大銀河に存在する宇宙怪獣どもの方が豊富な戦闘経験を持つ――言わば古参の強者と言った所か」
ふん、と鼻を鳴らしながら解説する翡翠。反射や防衛本能のみで行動する宇宙怪獣が、どのようにして戦闘経験を継承していくのかは分からないが、巨大銀河である『TGD』でも同じように知的生命体の痕跡を探知しては多くの文明を滅ぼして来たのだろう。
『マクロス・クォーター』の格納庫に設置された台座の周りに居る誰もが言葉を失い――それはジェフリー艦長からこの敵 宇宙怪獣に付いての説明会の情報を得てリアルタイムで説明会のライブ映像を見ていた『S・M・S』と新統合軍の連合艦隊の上層部も同様であった――バジュラの母星が属する恒星系に侵攻して来た2億を超える想像を絶する規模の敵との戦いに辛うじて生き残ったというのに、敵の本拠地にはそれ以上の常識を無視した巨大な宇宙怪獣が存在していたとは。
考えるまでもなく彼らはいずれこの宇宙に再侵攻して来るだろう……その時、あの惑星規模の超巨大宇宙怪獣相手に抗える術は有るだろうか? あまりに自分達の常識を超える存在ゆえに現実感が無く、ほぼ思考停止に陥っている者達に翡翠の説明が続く――それはあまりに無情な現実だった。
「……送り込んだドローンがプログラムに従って詳細なデーターを測定していた時、奴らが超空間を介した波動を発している事に気付いた……それは全ての宇宙怪獣が同じ波長で放っている波動で、それを人類の言語に変換すると、意味合いの取れるモノに変換出来た――それがこれだ」
片手をあげた翡翠が指を鳴らすと、照明などを制御している実験艦―02のAIが効果音を流していたスピーカーの音源を切り替える――それは何の感情も乗せていないような平坦な声が低く、とても低く、ただただ壊れた音源のように音程の外れた不気味な声の合唱……聞くに堪えないような声が奏でる
ガラスをすり合わせたような音の中で、かろうじて意味合いを聞き取れる単語を合わせて出来た歌詞を認識した時、台座を囲う観衆に紛れて見ていたランカやシェリルは顔色を変えた。
「……これって」
「――まさか」
――それは、本来は愛の唄と呼ばれるものであった。
どうも、しがない小説書きのSOULです。
じょうぎ座銀河団は銀河系の反対側にあり、明るい銀河系中心部の光との星間ガスに邪魔されて光学観測が難しく、電波望遠鏡などを利用して観測する事で少しづつ銀河系の向こう側が分かり始めたって所ですね。
数億光年に渡る宇宙の領域内にある銀河とそれが属する銀河団の運動に及ぼすほどの超重力源『グレート・アトラクター」の中心に近く、関連性が研究されているそうです。
念の為ですが、オリ宇宙怪獣は惑星級が最後ですからね(力説
じょうぎ座銀河団の巨大銀河も捏造ですからね。
では次回 第50話 crack ――亀裂 11/9 0時更新予定です。ではでは~。