マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス   作:soul

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第52話 IMPERIAL・GHOST ――帝国の亡霊

 

『……甘いよ翡翠、私が今まで何もしなかったと思うの?』

 

 凄みの在る笑みを浮かべたままノノは頭頂部に生えているアホ毛――アドミラル・ホーンを振ると、その動きに呼応したかのように実験艦―02の両翼に展開していた改型ゼントラーディ自動制御艦隊が02の制御を離れて前進を開始して、ノノの傍まで来ると彼女の両翼を固める新生バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)

 

 自らの傍を離れる改型ゼントラーディ自動制御戦闘艦群を見ながら小首を傾げた翡翠は思念波でノノにカラクリを問い掛けた。

 

『……ノノねぇ、一体何をやったの。元々改型の制御は02のコンピューター制御が基本設定になっているのに?』

『……翡翠、貴方が『アイランド1』に居た頃から独自の動きをしていた事は分かってたわ……元々、改型ゼントラーディ自動制御艦隊は不穏な動きをする『L・A・I』や『フロンティア』行政府に対して備えたモノ……だけど、改型ゼントラーディ自動制御艦隊が完成した後も、貴方は独自の動きをしていた……』

 

 『フロンティア』船団に潜入した翡翠とノノはランカの周囲に見え隠れする怪しい気配を感じ取り、『フロンティア』と事を構える事を想定して破壊されて放棄されたゼントラーディの自動兵器工廠衛星を確保して、修理した生産ラインで自分達の技術を盛り込んだ改型ゼントラーディ自動制御戦闘艦を製造し始めた。

 

 ランカの周囲をそれとなく監視しながら『アイランド1』の市街地で生活している内に『フロンティア』船団を守る新統合軍の動きに違和感を感じて、調べていくとこの銀河中心宙域を航行するもう一つの移民船団『マクロス・ギャラクシー』の存在を知った――『フロンティア』船団が『ギャラクシー』船団との緊張状態にある事を知った翡翠は、対『ギャラクシー』船団を想定して更なる備えをするべく行動を起こしていたが、そこでノノはその翡翠の行動に疑問を覚えた。

 

 ノノと翡翠の二人が持つテクノロジィを用いて改修した改型ゼントラーディ自動制御戦闘艦隊ならば、『フロンティア』船団と『ギャラクシー』船団の二つの移民船団を相手取っても問題が無いほどの能力を有しているのに何故戦力を増強するのか?

 

『貴方が『フロンティア』船団や『ギャラクシー』船団と事を構える事だけでなく“別の”相手に対しても備えていた……考えたくなかった、信じたくなかった……』

 

 ――翡翠。貴方は“私”との戦闘も想定して準備を行っていたんでしょう、と。

 

 宇宙怪獣との戦闘時に新生バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)を指揮下に置いたノノは、戦闘の傍ら改型ゼントラーディ自動制御艦隊を完全に制御下に置くべく幾つかの“仕掛け”を施した――来るべき義理の妹(翡翠)との戦闘を想定して――そう説明された翡翠は唇を綻ばして にたりと怖気がつくような笑みを浮かべた。

 

『……さすがだねぇ、ノノねぇ。そこまで気付いていたんだ』

『改型ゼントラーディ自動制御艦隊は、これでバスター軍団として私の指揮下に入った――戦力の均衡は此方に傾いた……翡翠降伏して』

 

 いくら色々な能力を持つ02とは言え、一隻だけではこの局面を覆すのは無理だよ。ランカに危害を加えようとしたけれど、それは未遂に終わった――貴方が考え方を変えてくれさえすれば情状酌量の余地がある筈よ、と通信越しとは言えノノは翡翠に真摯に語り掛ける……それを翡翠は黙って聞いていた。

 

 そこへ以前に02との通信に使用されたコードで『マクロス・クォーター』より広域通信が送られ、ジェフリー・ワイルダー艦長も翡翠の説得に加わった。

 

『……翡翠嬢、ノノ君の気持ちも考えてみたまえ。彼女は君の事を本当に心配しているのだ。我々としても宇宙怪獣との戦いで多大な貢献をしてくれた君を拘束するのは忍びない……君が歩み寄ってくれれば、和解の道もある筈だ』

 

  ジェフリー艦長の提案を黙って聞いていた翡翠だったが、途中から身体を小刻みに震わせて最後には声を出して笑い始めた。

 

『あはぁはははぁ! この程度で優位に立ったつもりだなんて、私も舐められたモノだな――その甘い幻想を叩き潰してあげるよ』

 

 翡翠の翠眼が深紅に染まり――実験艦―02の周囲に無数の輝きが灯ると、その輝きの中から巨大な水晶の様なフォルムをしたモノが姿を現す……それは全長1000mと改型ゼントラーディ自動制御戦闘艦に比べればコンパクトに感じられる。船体は細長くほぼ平らな円錐形をした白銀の物体であり、磨き抜かれたかのように輝く表面は傷一つなく輝いて周囲の宇宙を映し出していた。

 

 そんな未知の鏡の様な船体を持つ航宙艦が実験艦―02の周囲に展開している――その数は約1万隻は居るだろう……そんな新たな艦隊の登場に、『クォーター』のジェフリー艦長を始めとしたブリッジ・クルーは元より連合艦隊の前面にて翡翠を説得していたノノの眼も大きく開かれる――これはなんだ? ここに来て新たな艦隊が登場するなんて。

 

 02のブリッジにあるたった一つの席から立ち上がった翡翠は、深紅の瞳を爛々と輝かせて宣言した。

 

『――これぞ、我が艦隊。ゼントラーディの自動兵器工廠衛星の生産ラインを持って我が『IMPERIAL(いにしえの帝国)』の技術のみで作り上げた艦隊――『Re:MODELERS・シリーズ』』

 

 歌うように高らかに宣言する翡翠……彼女が『IMPERIAL』という言葉を口にしたのはこれで二度目になる。それが彼女の属する勢力の名称か。

 

『……翡翠、貴方…』

『どうだい、ノノねぇ。この宇宙で再現した『IMPERIAL(いにしえの帝国)』の戦闘艦隊――我が半身には劣るがノノねぇのバスター軍団の相手には不足は無い筈だよ』

 

 言葉を失うノノを尻目に彼女――翡翠は高らかに謳い上げる。

 

『――我が名は『クリス・エム』――宇宙に血と怨嗟をまき散らす邪悪と称された『IMPERIAL(いにしえの帝国)』の力と恐怖を司る愚蒙(ぐもう)なりし『IMPERIAL・GHOST(帝国の亡霊)』が一柱』

 

 だが、このまま混乱した君達を討っても面白みが掛ける――だから仕切り直そう。

 深紅の瞳を爛々と輝かせたまま、翡翠――クリスは語り掛ける。

 

『次元の結節点を通って害獣どもの再侵攻まで地球標準時で一週間と言った所か――五日、五日後に私は障害となり壁として君達に立ち塞がる……では我ら『IMPERIAL・GHOST(帝国の亡霊)』が紡ぐ蹂躙劇――特等席でとくとご覧あれ』

 

 大げさな動作で翡翠が一礼すると、実験艦―02と共に新たに出現した『Re:MODELERS・シリーズ』と呼ばれた鏡の様な船体を持つ艦隊の周囲に虹色の光に包まれると次元潜行を行って亜空間へと潜航して姿を消す……ノノは自身に備わる亜空間ソナーを使用して翡翠の痕跡を探すが、亜空間に潜行したはずなのにノノのソナーは彼女達の行方を探知する事は出来なかった。

 

 ……翡翠、貴方は本気で戦うつもりなの。

 

 虹色の光と共に翡翠達の艦隊は姿を消し、何もない空間をノノは悲し気な表情で見ていた。

 

 

 サヨナラノツバサ編 了

 

 


 

 

 

 終章 アンコクノプリンセス編 予告

 

 バスターマシン7号ことノノと共にこの宇宙へと迷い込んだ翡翠は、突如姿を現した知的生命体の天敵たる宇宙怪獣軍団を退けた後に本性を現して『マクロス・クォーター』や『S・M・S』と新統合軍の連合艦隊と袂を分かった。

 

 彼女 翡翠が姿を消す前に語った――一週間後に宇宙怪獣の本隊が本格的侵攻してくるという情報を重く見た上層部はその対策に奔走される中、スカル小隊のルカ・アンジェローニによりある作戦が提案される。

 

「別に宇宙怪獣の全てを相手にする必要は無いんです――別の世界に繋がる通路を破壊すれば、奴らはこの宇宙に侵攻する術を無くす筈ですから」

 

 ルカの作戦を採用した連合艦隊は、宇宙怪獣がこの世界へとやって来る次元の結節点がある銀河中心部の恒星間空間へと向かう――そして、遂に彼女――翡翠が『Re:MODELERS・シリーズ』と共に姿を現して連合艦隊の前に立ち塞がった。

 

 翡翠の操る『Re:MODELERS・シリーズ』に対抗する為に、バスターマシン7号ことノノは旗下にある新生バスター軍団で立ち向かう。

 

『――さあ、始めようか7号……いやノノねぇ。最初で最後の姉妹ケンカを』

 

 2024年度 投稿予定。

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。

 遂に翡翠が本性を現し、バスターマシン7号ことノノや『マクロス・クォーター』と敵対の道を進みます――私がトップをねらえ!2をクロス先に選んだ理由は、手前味噌ながら本気の翡翠と戦う相手にはバスターマシン7号こそがふさわしいと考えたからです。

 地球帝国の絶頂期の超技術の塊ながらメンタルは普通の少女のように強大な敵に怯えたり、それでも人々を守る為に死力を尽くして戦う彼女の姿――それが翡翠のメンタルにも影響を与え――宇宙戦艦ヤマト迷い子達のアンサンブル 愛の戦士編での翡翠の柔軟な(周囲には はた迷惑だが)思考に繋がります。

 えー、終章はこれからプロットを再調整して書き始めますので、ちょっと時間を頂きます。更新するときにはまた告知しますので、気長にお待ち下さませ。ではでは~。
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