マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス   作:soul

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 アンコクノプリンセス編




アンコクノプリンセス編
第53話 暗中模索


 

 銀河系中心宙域で超時空生命体バジュラたちの母星が属する恒星系で、別の宇宙へと繋がる次元の結節点を通って襲来した全知的生命体の天敵である巨大な宇宙怪獣の大軍団を辛うじて退けた可変攻撃宇宙空母『マクロス・クォーター』と『S・M・S』新統合軍の連合艦隊は、戦闘終了後に起こった大問題――異文明からの協力者である翡翠・エムによる民間協力者ランカ・リー殺害未遂事件を受けて翡翠・エムを拘束しようとしたが、彼女は事件現場である『クォーター』の格納庫から逃走――乗艦である実験艦―02と新たに現れた『Re:MODELERS・シリーズ』という鏡の様な船体を持つ艦隊と共に明確な敵対行為を行ったのだ。

 

 人類文明とは異なる『IMPERIAL(いにしえの帝国)』と名乗る異文明の船と敵対関係になった事も問題だが、敵対者である翡翠の語った事――別の次元に存在する巨大銀河を埋め尽くす宇宙怪獣の本隊が地球標準時間の一週間後に本格的侵攻が開始されると言うのだ……一つの銀河を埋め尽くす宇宙怪獣の大軍団を相手に地球は――人類は生き残る事が出来るだろうか?

 

 


 

 

 銀河系中心宙域にてバジュラたちの母星が属する星系に留まっている『S・M・S』と新統合軍の連合艦隊は、この星系で遭遇した巨大な生物 宇宙怪獣との戦闘データーを地球の新統合政府や軍司令部へと送信して、ボトル基幹艦隊との遭遇以上の未曽有の脅威――別の次元の巨大銀河すら埋め尽くす天文学的な数の宇宙怪獣が一週間後には本格的な侵攻を開始するという情報。

 

 敵対関係となった翡翠からの情報である為に信憑性に懐疑的な者もいたが、敵性生命体である宇宙怪獣の本隊が襲来するという重要な情報ゆえに無下にする事も出来ず――実際、この星系から銀河系中心方向の約300光年先の恒星間空間に次元の結節点らしき現象を確認出来た事もあり、彼女 翡翠からの情報は信憑性が高いと言う事となった。

 

 宇宙怪獣の本隊がこの宇宙に現れるまで後一週間しか時間が無いが、これ以上の戦力増強は時間的に難しいと思われたが、『マクロス・フロンティア』船団より旗艦でありバトル級超大型可変万能ステルス宇宙攻撃空母『バトル・フロンティア』と旗下の新統合軍艦艇の三分の一が対宇宙怪獣戦に参戦したいとの申し出があったのだ……バジュラの星の大気圏に降下した大型都市型移民居住艦『アイランド1』は、それまでの戦闘や襲来した兵隊型宇宙怪獣の攻撃によって移民居住艦としての機能に障害が出ており、もはや二度と飛び立つだけの力は残されておらず、その『アイランド1』を守る艦艇やバジュラや宇宙怪獣との戦闘で損傷した艦艇など約三分の二の艦艇がバジュラの星に残って『アイランド1』を守る事になっていた。

 

『――我々とて宇宙怪獣の脅威は理解している』

 

 『バトル・フロンティア』で指揮を執っている『フロンティア』軍司令官はそう言って、未曽有の危機を迎えつつある人類全体の為に微力ながら協力したいと言って連合艦隊への参加を打診して来た……もっとも参加者の中に何故かレオン・三島首席補佐官の名もあり、『バトル・フロンティア』のクルーも妙にやる気に漲っていた。

 

 実は彼らは憤っているのだ――銀河系中心宙域という未知の領域を航海する移民船団を守護する新統合軍の中でも『マクロス』の系統であるバトル級超大型可変万能ステルス宇宙攻撃空母「バトル・フロンティア」のクルーに選抜された彼、彼女らは軍の中でも優秀な士官であり――そんな優秀な士官達がケミカル物質なる怪しげなモノを船に仕掛けられて醜態を晒してしまった事は、彼、彼女達のプライドは居たく傷つけたのだ。

 

 ……そんなケミカル物質なる怪しげなモノを仕掛けた当事者は場を引っ掻き回した挙句に本性を現して言いたい事を言って姿を消した……やりたい放題の傲慢不遜な態度の不可思議生物(翡翠)に、大人としてきっちり教育してやらねばなるまい――つまり、ケミカル物質なるモノを知らない内に仕掛けられるという失態を犯してプライドを大きく傷付けられた彼、彼女達は怒り心頭な訳である。

 

 


 

 

 可変攻撃宇宙空母『マクロス・クォーター』

 

 翡翠・エムによるランカ・リー殺害未遂事件の影響は400m級戦闘空母『クォーター』の中に色々な影響を及ぼしていた――隣人として交流を持ち、年下の少女故に妹のように可愛がっていた翡翠から殺意を向けられたランカは意気消沈して部屋に籠りがちになり、それを心配したシェリルが頻繁に彼女の部屋へと赴いて慰めていた。

 

「……ランカちゃん元気を出して、きっと何か誤解があったのよ」

「……けど、シェリルさん。あの時の翡翠ちゃんは本気で私を……」

「……ノノも言ってたけど、私達とあの子では価値観にかなりの隔たりがあるのよ……だからこそ話して隔たりを埋めて行かなきゃいけないわ」

 

 シェリルの言葉を聞いたランカは落ち込んだ表情をしていたが、何かを決意したかのように唇をきゅっと噛み締めるとシェリルを決意を込めた瞳で見つめながら宣言した。

 

「――私、もう一度翡翠ちゃんと話したいです」

 

 

 『マクロス・クォーター』の艦内で来るべき戦いの準備を行っていたオズマは、連合艦隊そのものに敵対を宣言した翡翠に対処する為に他の部隊長と協議を行っていた。

 

「……あの娘は五日後と言っていた……しかも、まだ引き出しの中に何かを隠している可能性がある……『クォーター』を守りつつ、実験艦に集中攻撃を掛けるのが常套か」

 

 妹を害されそうになったオズマは当初は荒れていたが、時間が経つにつれて落ち着きを取り戻して行って、今まで裏で暗躍していた翡翠が明確に敵対を宣言した意味を考えていた。

 

 これまでまかりなりにも慎重に行動していた彼女が手の平を返したかのように衆人環視の中でランカに殺意を向けた……しかし、あんな大勢の前で事を起こしても阻止される事は分かっていた筈だ……一体彼女の目的は何なのだろうか?

 

 

 そして翡翠とそれなりに親交があったアルトやミシェルそしてクランの三名は、来るべき戦いに備えてシミュレーターを使用しての訓練を行っていた……翡翠が呼び寄せた新たな艦隊『Re:MODELERS・シリーズ』なる敵との戦いを想定して、改型ゼントラーディ自動制御艦隊の戦闘力を3割増しにして訓練を行っていた。

 

『――くそっ! でっかい針金の分際で!?』

「――アルト、回避行動がコンマ3秒遅い! ノノの話では、翡翠ちゃんの持つ技術の中でも慣性制御技術が特に優れているらしい――相手の動きを予想して回避するんだ」

『――分かってるんだが! 相手の動きが非常識すぎる』

 

 深緑の船体に取り付く前に、翡翠が用意しているだろう球体型のドローンの攻撃を回避している間に視認しにくい半透明な槍の様な物が突っ込んでくる――ノノによれば、アレは機動兵器の一種で『スピアー』と呼ばれる文字通り槍のような見た目をしており、どういう理屈で飛んでいるのか分からないが猛スピードで相手に接近すると、その勢いのまま装甲を突き破って相手の機能を奪うという翡翠の性格の悪さそのものと言った兵器であった。

 

「ならどうする、諦めるか?」

『――冗談じゃない! あのバカをとっ捕まえて、ランカに謝らせてやる!』

 

 

 まかりなりにも仲間だと思っていた翡翠の裏切りに、傷つきながらも前を向いて歩き出す者達……彼らは今出来る事をしながら、来るべき戦いへと備えていた。

 

 『S・M・S』は民間の軍事プロバイダーであり、移民船団政府と契約に基づいて平時であれば船団予定航路の先行偵察や要人護衛、軍用装備品の評価試験、補給、兵站など新統合軍の支援任務を主任務としているが、時には政府や船団を警護する新統合軍の要請により様々な任務に就く事もあり、『S・M・S』の隊員達はメンタルを立て直す術を持って早期に自らが出来る事を始めていたが……そんな周囲の姿とは裏腹に、未だ立て直せない者もいた。

 

 『マクロス・クォーター』の中でも外装に近い通路――翡翠の敵対宣言により次なる戦へと準備しているクルー達を尻目に、誰も居ない通路に一人の少女の姿があった。座り込んだ彼女の長い桃色の髪は床に広がり、愁い秘めた翠色の瞳は通路にはめ込まれた透明な素材の先に見える宇宙をただ見詰めていた。

 

 どれほどそうしているのだろうか、床に座り込んで壁にもたれ掛かりながら宇宙を眺めている少女 ノノ。彼女はただ壁にもたれ掛かりながら宇宙を眺めていると、誰も居ない筈の通路に足音が響く――しかもそれは一つではなく複数の足音が聞こえて来る。

 

「……ここに居たんだね、ノノ」

 

 近づいて来た足音、それはランカと彼女に付き添ったシェリルの二人であった。近付いて来る二人に気付いたノノは、腰を上げて立ち上がると傍まで来た2人に向き直った。

 

「……ランカ、それにシェリルさんも、どうしたの一体?」

「……大丈夫、ノノ?」

 

 たった一人でこんな通路に座り込んでいたノノを気遣うランカ……彼女の気遣いの言葉に儚げな笑みを浮かべるノノ……翡翠の離反は未だノノの心に深い影を落としているようだ……会話が途切れて暫く無言の時間が過ぎ、決意の表情を浮かべたランカはノノに向けて切り出した。

 

「――ノノ、私は翡翠ちゃんともう一度話したいの……そして、別の方法は無いのか一緒に考えてほしいってお願いしてみる」

「……ランカ」

「……だから力を貸してほしいの、ノノ」

 

 ノノと翡翠ちゃんが隣に引っ越してきて、たまに姉妹ケンカをしていたよね? けど最後には仲直りをして元の仲の良い姉妹に戻っていた……きっと一杯話し合ったんだと思う――だから、私も翡翠ちゃんと話したい。

 

「――私も、翡翠ちゃんのお姉ちゃんのつもりだから」

「……ランカ」

「……ランカちゃん」

 

 ランカの決意に見守っていたシェリルだけでなくノノも感銘を受ける……何をしていたのだろうか、自分は。翡翠とはこれまでにもぶつかり合いながらも言葉を尽くして折り合いを付けて来たではないか――真の強さとは、あきらめずに足掻き続ける心の力――それが、憧れたノノ・リリが示し、お姉さまより諭された人間の力――“努力”と“根性”だ。

 

「……ランカ、ノノも決意が固まりました――あのトウヘンボク(翡翠)をとっ捕まえて、必ずランカの前に連れてきます!」

 

 ランカの決意を感じて己を立て直して、ノノは決意を新たにする……そんな中で通路に新たな足音が響いて来る。通路の先からこちらに近付いて来る人影、それは未だ幼さを残した風貌を持つスカル小隊に属して電子戦用に調整されたバルキリーに搭乗しているルカ・アンジェローニであった。

 

 ノノ達の近くまで来た彼はノノやランカ達に挨拶をした後に、ノノに向けて用件を切り出した。

 

「貴方と翡翠ちゃんとの会話に出ていた、ノノさんの星で繰り広げられた宇宙怪獣との戦いに付いて詳細を聞かせてもらえませんか?」

 

 


 

 

 可変攻撃宇宙空母『マクロス・クォーター』のブリーフィング・ルームでは、対宇宙怪獣戦における妙案があるとしてルカ・アンジェローニの要請によって艦長であるジェフリー・ワイルダー大佐とスカル小隊を預かるオズマ・リー少佐が彼より説明を受けていた。

 

「敵性生命体である宇宙怪獣の規模は我々の想像をはるかに超える規模なのは間違いありません。まともに戦えば敗北は免れないでしょう……まともに戦えばですが」

「……別の宇宙の巨大銀河を埋め尽くす敵の総数など想像すら出来ないからな」

「――そこでこの作戦です。僕達の宇宙と宇宙怪獣達の居る宇宙を結ぶ次元間の回廊にフォールド機関を改造した艦艇を突入させて、即席の『ディメンション・イーター』として回廊内で起爆させて、フォールド機関の暴走で引き起こされる超重力によって回廊を崩壊させ――僕達の宇宙と宇宙怪獣達が居る宇宙との繋がりを断ち切るのです」

 

 翡翠の語った事実――宇宙怪獣はこの世界の存在ではなく、別の世界からやって来ている。つまりそれは別の世界の法則によって形成された肉体のままこの世界に来ている――故にこの世界に取っては文字通り“異物”でしかなく、かつて宇宙戦艦『ヤマト』が体験したように世界は自浄作用として異物を廃除しようとする。

 

 しかし宇宙怪獣のポテンシャルは計り知れず、別の世界では天体クラスの宇宙怪獣が確認されているが、そのほとんどが別の世界に存在しており――今回ソコが重要である。宇宙怪獣が別の世界に留まっている間に次元間の回廊を破壊すれば、この世界は宇宙怪獣の脅威から解放される寸法だ……しかも、それは可及的速やかに行われなければならない――もしも、進出して来た宇宙怪獣がこの世界に適応でもしたりしたら……それは人類……いや、全ての知的生命体の滅亡を意味する。

 

 


 

 

 突然妹のように可愛がっていた翡翠より害意を向けられた事により憔悴していたランカだったが、シェリルの慰めやノノとの会話の中で決意を固めた事により、翡翠と向き合う事を決め――義理の兄であるオズマや親交のあるアルトやミシェルに助力を求めたが、彼らからの反応は芳しいモノではなかった……妹であるランカが傷つく事を心配したオズマは難色を示し、逆に直情型であるアルトは翡翠の危険性を指摘しながらも協力を約束してくれたものの、訓練に付き合っていたミシェルから未知の艦隊を要する翡翠を拘束するのは難しいと現実を突き付けられた。

 

 姿を消す前の翡翠は高い戦意を見せていた……彼女は必ず自分達の前に姿を現す筈だ、あの未知の艦隊を率いて……翡翠と話すには、あの未知の艦隊を越えて彼女の元へと辿り着かなければならない。

 

 色々と隠し事が多い翡翠が満を期して呼び出した未知の艦隊……その戦闘能力は現在ノノの制御下にある『バスター軍団』(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)に匹敵するか、あるいは凌駕するほどの能力があるかもしれない。

 

 ――如何にしてあの未知の艦隊の守りを突破するか。

 

 ……専門家であるオズマやミシェルの見立てではそれも難しいと言われた……だが、だからと言って翡翠と膝を突き合わせて話す事を諦めたくはない……どうしよう? ままならない現実に嘆息するランカ……彼女は思う、あの子は今何をしているのだろか、と。

 

 


 

 

 ……そして、件の少女は『実験艦―02』のラウンジで両腕を組んで唸っていた。そんな彼女の傍には藍色の長い髪とトレードマークになっている眼鏡を掛けた長身の女性 グレイス・オコナーは。先ほどから腕を組んで難しい表情をしながら唸っている少女を呆れたように見ていた。

 

「……さっきから何を唸っているのクリス? そろそろ鬱陶しいのだけど」

 

 かつて翡翠と名乗っていた少女は本性を現すと共に本来の名前であるクリス・エムへと戻った少女は、水晶の様な素材で作られたテーブルの“一点”を見ながら両腕を組みながら眉を寄せて難しい表情を浮かべながら首を捻っていた。

 

「……いや、現在『02』は亜空間に潜伏……しかも通常の亜空間よりも深い階層に潜っているのに“コイツ”はどうやって潜り込んで来たんだろか?」

 

 翠色の瞳に困惑の色を浮かべたクリスは、水晶の様なテーブルの上に居る緑色の体毛に覆われた小柄な生物がその愛くるしい黒い瞳で見つめながら小首を傾げていた。

 

 




 >暗中模索( 将来ものがどうなるかが明確に分かっていないさま)

 どうもクリスマスなんか縁のない、しがない小説書きのSOULです。

 私からのプレゼントとしてアンコクノヒメギミ編の始まりの話を投稿しました。
 このアンコクノヒメギミ編の終わりを持って、この話も完結します。

 と言っても激務にて執筆速度が大幅に遅くなっているので、アンコクノヒメギミ編の開始は24年度になりそうですので、気長にお待ち下さませ。ではでは~。
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