マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス 作:soul
アンコクノプリンセス編
『S・M・S』と新統合軍による連合艦隊とバトル級ステルス空母『バトル・フロンティア』を中心とした『フロンティア』駐留の新統合軍の艦隊は、周囲を囲むように展開しているバスターマシン7号に制御された
第一回目のワープを終了した『S・M・S』所属の可変攻撃宇宙空母『マクロス・クォーター』内に設置されたラウンジには、義理の妹である翡翠に関する情報の提供を求められていた義理の姉ノノが精神に掛かったストレスからテーブルに身体を預けて疲労困憊の様子を見せ、そんな彼女の両隣に座ったランカとシェリルは背中をさすりながら励ましの声をかけるなど気遣いをみせていた。
彼女ノノは厳密にいえば人間ではない――別の世界の地球が生み出した超兵器 第六世代型恒星間航行決戦兵器 バスターマシン7号であり、ナノマシンによって構成された肉体は体温を持って肌の質感までも人間のそれと変わりなく人間を模した内臓機関すら備えていて――ノノがお姉さまと慕うラルク・メルク・マールが属するフラタニティやフラタニティ外郭団体の精密なチェックを通しても彼女をバスターマシンとは見抜けないほど限りなく人間に似せて作られていた。
そしてナノマシンで構成された肉体に宿る精神は普通の少女と遜色がなく、それなりの期間を隣人として過ごして来たランカは傷つき悩みながらも突き進んでいく友人の力になれないかと考える……バジュラとの戦いでは、彼女やシェリル・ノームの歌声によってバジュラたちと分かり合える事が出来たが、これから戦う宇宙怪獣達は歌に含まれるフォールド波に何の反応も見せず、彼女達の思いが籠った歌は悪意が形どったような宇宙怪獣には無意味だった。
「……私にも何か出来れば良いのに……」
「……ねぇ、『S・M・S』には無いの、熱気バサラが使用した『サウンド・ブースター』みたいなのは?」
これから向かう先で予想される激しい戦いで自分も何か出来ないかと呟くランカに、シェリルは彼女が憧れた伝説のバンド『FIRE・BOMBER』のカリスマ・ボーカル『熱気バサラ』の伝説を語る――彼の駆る紅いバルキリーが奏でるサウンドは戦場に響いて、伝説の歌手『リン・ミンメイ』のように当時彼の所属していた超距離移民船団『マクロス7』を襲っていた強大な敵との戦いを歌によって終結に導いたと言う。
「……『サウンド・ブースター』か、さすがに『S・M・S』でも あんなピーキーな装備は配備されていないなぁ……」
配備されても使い道が無いと思っているのか、自身が使えない事を残念に思っているのか、彼自身も『FIRE・BOMBER』の熱烈なファンであるオズマが苦笑まじりに答える……サウンド・ブースター、歌の持つエネルギーを効率よく増幅して、真空を伝播するフォールド・ウェーブに乗せて高出力で対象物に放射するための大型の時空共振サウンドエナジー・スピーカーであり、それを起動するには歌声に力を持つ特殊な人間――熱気バサラやその相棒であるミレーヌ・ジーナスなどのごく少数の者しか扱えず、オプション装備とするには不適切な装備なのだ。
「……もし、サウンド・ブースターがあれば絶対使いこなしてみせるのに……」
「……実は、サウンド・ブースターに匹敵するかもしれないモノが有るには有るんだが……その出所が問題でな……」
本気で残念がっているシェリルにオズマは良く分かっていないような顔をしているノノを見ながら、この装備は『フロンティア』のバジュラの母星侵攻を止める為の作戦を開始する前に、翡翠から提供されたモノという曰く付きの技術であると伝えた。
「……『バトル・フロンティア』を始めとする新統合軍の艦艇に怪しげな仕掛けを施していた事もあって、ルカを始めとする解析班だけでなく連合艦隊の技術部門に協力を求めて総出で不審な点が無いか洗い出しが行われたんだが……今の所、怪しい点は無いようなんだがな……」
「……そう、あの子が…」
オズマの話を聞いたシェリルの脳裏に浮かんだのは、バジュラの襲撃を受けながらも『アイランド1』の中でまかりなりにも平穏生活をしていた頃に義理の姉であるノノと共に現れた翡翠の姿――こましゃくれた年下の女の子として現れた彼女のトンデモナイ発言により深く印象に残っている……もっともそれ以降も“色々”とヤラかしてくれたが。
「で、あの子の置き土産はどんなモノなの?」
「……聞いた話だと、特殊な音源を増幅して敵にダメージを与えるらしい」
シェリルとオズマの話に興味をひかれたのかランカやノノの視線が集中する中、翡翠から提供された技術で生み出された新装備の名前がオズマより語られる。
「……その名も『マーシャル音波砲』というそうだ」
「――マ、マーシャル音波砲!?」
満を持して語られた新装備の名前を聞いたノノが、素っ頓狂な声を上げる……そのあまりの声量に周囲にいたランカやシェリルは思わず耳を塞ぎ、ノノが何を驚いているのか分からず何をそんなに驚いているのかと問い掛けると、ノノは興奮状態のまま捲し立てた。
「――『マーシャル音波砲』は、対宇宙怪獣戦に建造された伝説の超ド級宇宙戦艦『エクセリヲン』においてただ一度だけ使用されたと言う伝説の兵器なんだよ!」
長期間太陽系を守護して来たノノにとっても、遥かな昔 一万年以上前の人類が初めて宇宙怪獣と接触して、宇宙には強力な敵が存在する事を知った人類がそれに対抗する為に建造したのが第四世代型一等航宙戦艦『エクセリヲン』であった。
「――伝説によれば、『エクセリヲン』を指揮していた軍神タシロとその忠実なる右腕フクチョーによって起動したマーシャル音波砲は無数の宇宙怪獣を翻弄して、彼らは踊りながら撤退したそうよ」
妙に熱の籠ったノノの熱弁にさすがのランカやシェリルも腰が引けてドン引きしていた……大体グンシンってなんだ? バジュラたちの母星近くで見たあの巨大な宇宙怪獣達が踊りながら撤退した? どんな冗談だ、それは……。
それからも妙に熱の入ったノノはマーシャルおんぱほうなる武器を装備した『エクセリヲン』なる宇宙戦艦について熱く語り――何時しか話は、彼女ノノが憧れる伝説のバスターマシンパイロット ノノ・リリの事へと移行していく……ここ最近、自身がバスターマシンである事が露見してから隠す必要が無くなった彼女は、事あるごとにノノ・リリの凄さを布教していた――いわく、未完成なバスターマシンを駆って敵の主力を殴り倒しただの、億を超える敵集団を“努力”と“根性”で退けただの、何度も聞かされて耳にタコが出来ると共に話の内容すら覚えてしまった。
頼りになる筈の兄は用事があると言って そそくさと退出していき、シェリルに至っては何故かノノと意気投合している始末……どうやらノノの語る“努力”と“根性”というワードが彼女の琴線に触れたようでノノと熱く語り合っている姿。
このラウンジの中で繰り広げられている光景をどうしようかと途方に暮れているランカの耳にラウンジの入り口が開く音が聞こえて来る――薄情な兄が戻って来たのかと、振り返ったランカの目に映ったのは見覚えのない白衣を纏った妙齢の女性だった。
紫色の長い髪と翡翠と同じ翠色の瞳を持つ整った顔立ちをした女性は古典的なデザインの眼鏡を指先で くいっと上げると、突然見知らぬ来訪者に戸惑っているランカの前まで来て顔を近づけてクラッシックなデザインの眼鏡越しに見つめ……誰かを思い出させるような翠色の瞳に見つめられたランカは戸惑いながらも問い掛けた。
「……だ、だれ?」
「……ふむ、腹部に超空間へとアクセス出来る細菌を飼っているのか、それで超空間を通して銀河に響くほどの波動を歌と言う形で発するのか面白い」
しかし問い掛けられた女性は答える事なく、それどころかランカをしげしげと観察した後に白衣を翻して困惑の表情を浮かべるノノの前まで来ると、彼女の顔に両手を添えて にぎにぎと表情を変形させる。
「……なるほど、ナノマシンで身体を構成して生命体をエミュレートしている訳か、しかも表情筋すら模倣して円滑なコミュニケーションを取れるようにしている、と」
顔の表情を無理やり変えられているノノは、突然現れて傍若無人な行いをする女性の白い手から逃れて「――突然、何をするんですかアナタは!?」と抗議するが当の女性はどこ吹く風で、逆に「……今度は舌を出して――早く!」と妙に迫力のある女性の言葉に圧されてリクエスト通りに口から舌を出して、女性はそれをしげしげと観察する。
「なるほどね。消化器官すらエミュレートするなんて、製作者の並々ならぬこだわり……もはや執念すら感じるな」
うんうんとしたり顔で頷いて自己完結している見知らぬ女性に戸惑いながらも「……誰ですか?」と問うノノを無視した女性は、しげしげとノノの周囲を回りながら「……なるほど、なるほど」と頷きながら見知らぬ女性は背後に回って両手で むずんとノノの形の良い二つの果実を下から持ち上げた。
「……ふむふむ」
「――ギ、ギャアアアア!?」
突然不審者に持ち上げられたノノは身体を捻って逃れると、両腕で胸を隠しながら距離を取って不審者を涙目で睨む。
「――と、突然何をするんですか!?」
「……なるほどなるほど、内面もローティンの少女をエミュレートしているのか、中々の完成度だな」
これはもう愛だな、と頷きながら歩き出した不審者を露骨に警戒するノノ……傍に居たランカとシェリルは奇抜な行動をした女性の濃さに引きつった表情をしながら言葉を失っているようであった……コツコツとヒールの音を響かせながら扉をくぐろうとしていた謎の女性は、歩みを止めると くるりと振り返った。
「……そうそう。あの“バカ娘”は君にご執心のようだ、君にとっては迷惑な話だろうが遠慮はいらん――ブチのめしてやってくれ」
「――それって、まさか翡翠ちゃんのこと!?」
振り返った女性が語った言葉に――あの少女の事を指しているのではと思い至ったランカやノノはラウンジの外へと消えた白衣姿の女性を追いかけたが、彼女を追ってラウンジから通路へと出た時には彼女の姿は何処にも無かった。
『マクロス・クォーター』艦内のラウンジで色々と濃い行動を繰り広げてくれた白衣を着た見知らぬ女性……去り際に気になる事を言って姿を消した女性が白衣を着ていた事から、『クォーター』の中でも技術部門に所属しているのではと当たりを付けたランカは、シェリルやノノと共に艦内にある技術解析室を訪ねて、バジュラの母星への突入前に翡翠より提供されたデーターからランカとシェリルのステージに使用されている歌を力に変えてフォールド・ウェーブに乗せて銀河へと広げるサウンド・ブースターシステムに変わり、特殊な音源が必要だがそれを力に変えて物理的に敵対生物に強力に作用する“らしい”『マーシャル音波砲』を検証して――単純な作りだが確かにサウンド・ブースターシステムを上回る出力を持つ事が判明してサブ・システムとして再現しているルカに白衣を着た女性に心当たりが無いか聞くも該当する女性に心当たりがないと言うつれない返事が返ってきた。
「……さすがにそんな濃い性格をした人物なら色んな意味で目立つでしょうからね……」
「……そう、なら他の艦から来た人なのかしらね?」
しかし来艦記録に該当するような人物の記録は無く、ランカ達が出会った正体不明な人物は知らないうちに『マクロス・クォーター』も艦内に潜り込んでおり、不審者が侵入していたという事実が明るみに出た事で艦内は警戒態勢になって武装した隊員が艦内を捜索したが不審な人物の痕跡は見つからずに徒労に終わってしまったのだが……。
「……結局あの人は誰なんでしょうかね」
謎の人物の手がかりすら掴めなかったランカとシェリルは最初に彼女と出会ったラウンジへと戻って来ており、歩き疲れたランカは備え付けのテーブルに身体を預けてだら~としており、反対側の席に付いているシェリルは へばっているランカを苦笑交じりに見つめていた。
「艦内のシステムにも痕跡がなく、誰も知らない謎の人物か……」
「……ホントに居るのか、そんな奴が?」
訓練の合間の休息がてらラウンジへと足を運んたアルトとミシェルは、テーブルに突っ伏したランカを見ながら正体不明の人物について話題にしていた……作戦行動中の戦闘艦内は高度なセキュリティーによって守られており――バジュラの諍いの中で人知れずケミカル物質なる怪しげなモノを旗艦である『バトル・フロンティア』や新統合軍艦艇に仕掛けたあの悪ガキ《翡翠》が敵対者として立ち塞がるであろう戦いを目前に控えたこの現状故に艦内のセキュリティーは最高レベルのモノが敷かれている……しかし、そんな最高レベルのセキュリティー下において痕跡すら残さず、目撃情報はランカやシェリルそしてノノの三人のみという状況……まぼろしか白昼夢でも見たのかと言われても仕方がない状態であった。
「あの変な女は居たのか居なかったのかは大した問題ではないわ。問題なのは、あの女が語った事――翡翠ちゃんの目的は“ノノ”だと言う事」
「……どういう事だ?」
「……翡翠ちゃんはノノに執着している――つまりはあの子は私達や連合艦隊すら眼中にない、あの子の眼はノノだけに向いていると言うこと」
『マクロス・クォーター』艦長室
「……本気かね?」
『クォーター』の艦長室で実働部隊の隊長であるオズマ少佐と共に来訪者を迎えていたジェフリー・ワイルダー艦長は、来訪者であるノノからの提案を聞いて眉をぴくりと動かして真剣な表情を浮かべて問い掛ける――それほどまでに彼女からの提案は驚くモノであった。
「……はい、翡翠の狙いはノノです。ですから、あの子と戦っている間の
どうも、しがない小説書きのSOULです。
今回登場した新キャラ(?)ですが、その正体はバレバレだと思います。
話の中で登場したマーシャル音波砲の伝説ですが、一万年以上前の事柄故にいろいろ混ざりこんでいて、マーシャル音波砲を起動したのが艦長と副長になっています(…詳しくは、ドラマ 歌え!! 銀河のはてまでも! 「挿入歌」ロックだGO! GO!! ガンバスターをお聴きください)
次回更新は少しお時間を頂きます……少しづつでも書いてはいるんですが、オリ勢力『