マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス 作:soul
アンコクノプリンセス編
無数に輝く星々の煌めきによって眩いばかりの星空に包まれる銀河系中心宙域―― 一見無数の恒星が存在する光の世界のように見えるが、そこは超大質量ブラックホール いて座A*の超重力によって周囲の恒星は振り回され、ブラックホールの超重力によって引き寄せられたモノが作り出す降着円盤は重力と摩擦力によって圧縮され高温を発して強烈な放射線を巻き散らす、死の領域でもある。
そんな危険な放射線が渦巻く中心宙域を無数の人工の輝きが進んで行く――2000m級の戦闘航宙艦を中心に構成された改型ゼントラーディ自動制御艦隊と、その中心に位置する『S・M・S』・新統合軍の連合艦隊が目的地まで後1回のワープで到達する距離まで来ていた。
この世界の主流の超光速航法であるフォールド航法は空間湾曲型であるが、連合艦隊を囲む改型ゼントラーディ自動制御艦隊には異星由来の技術である空間跳躍型超光速航法ワープ・ドライブを搭載している。
目的地である異世界との結節点 光の回廊まであと一歩まで来た『S・M・S』・新統合軍の連合艦隊は、長距離センサーの解析結果を踏まえて作戦会議を開いていた。
光の回廊の前には案の定に無数の艦艇――かつて翡翠と名乗っていた異星の少女クリスが擁する『Re:MODELERS・シリーズ』が布陣している事を確認していた。
「……やはり、待ち構えていたな」
連合艦隊の各艦艇に搭載されている通信システムを使って各艦の艦長や実働部隊の隊長クラスの隊員が参加した作戦会議では、長距離センサーによって光の回廊の前に『Re:MODELERS・シリーズ』が待ち構えている事を確認して皆真剣な表情を浮かべている。
バジュラの母星近くで遭遇した億を超える宇宙怪獣の激戦の中で『改型ゼントラーディ自動制御艦隊』というワイルド・カードと共に姿を現した翡翠は宇宙怪獣との戦いで多大な貢献をしてくれたが、その後に価値観の相違から彼女が起こした事件を経て『S・M・S』・新統合軍の連合艦隊と袂を分かち、新たな艦隊『Re:MODELERS・シリーズ』を擁して連合艦隊の前に立ち塞がると宣言をした。
5日後に連合艦隊の前に――いや、白衣を着た謎の人物の言葉を信じるならば、翡翠は姉と呼んだノノ嬢の前に立ち塞がると宣言したのだ――そして、連合艦隊各艦艇に備え付けられた長距離センサーは、目的地である光の回廊の前に布陣する『Re:MODELERS・シリーズ』らしき艦影をキャッチしていた。
『……満を持して待ち構えているようだが、こちらがそれに付き合う義理はない』
『――僕たちの目的はあくまで圧倒的な物量を持つ宇宙怪獣の巣とこの世界を繋げる光の回廊の破壊です』
そう言葉を紡ぐのは今回の作戦の為に用意された二隻のステルス・フリゲート艦に移乗しているスカル小隊の隊長 オズマ・リー少佐とルカ・アンジェローニ准尉の二人――この二隻のステルス・フリゲート艦は、バジュラの母星近隣宙域での戦いの折に大きく損傷した艦ではあるが幸いにして機関部は簡単な修理で補修可能だった事もあり、今回の宇宙怪獣の侵攻ルートである光の回廊の破壊作戦において回廊を破壊する為の無人制御のフォールド爆弾――ディメンション・イーター艦として用意されていた。
『今回の作戦は翡翠嬢の旺盛な闘争心を利用する――本隊の前面の目立つ場所にノノ嬢を配置して、翡翠嬢の注意を引いている隙にDE艦を光の回廊の突入させる』
『その護衛として俺たち特別チームが付く』
『クォーター』のジェフリー艦長が確認がてら作戦の内容を話し、DE艦の突入を援護する為に各艦の起動部隊から選抜された部隊を束ねるオズマ少佐が闘志を燃やしていた。
『……大人をナメ切っている子供には、キツイおしおきが必要だからな』
銀河系中心宙域に開いた別の宇宙への結節点である光の回廊の前には白銀の船体を持つ無数の船が集結していた――全長約1000mの船体は細長く、ほぼ平らな円錐形の船体を構成しているのは白銀に輝く鏡面のような物質で構成された戦闘用艦艇の集団。
かつてこの銀河に一大勢力を築いた古代文明プロトカルチャーが、戦う為に創造した戦闘用種族ゼントラーディの為に用意した自動兵器工廠衛星を利用してこの世界の技術で『
本家本元であるリバィバル級殲滅型戦艦同様に特殊なナノマシンを含んだ流体金属で船体を構成させてはいるが、この世界の技術レベルではリバィバル級殲滅型戦艦の心臓部である圧縮中性子星を八つ用いた『
『Re:MODELERS・シリーズ』の性能は
銀河系中心宙域に開いた別の次元への結節点である光の回廊に近い星間空間に一筋の光が灯るとそれはどんどん広がって、押し広げられた時空連続体の穴から無数の航宙艦が通常空間へと現出して来る――異なる世界の地球が生み出した第六世代型恒星間航行決戦兵器バスターマシン7号旗下の『
バスターマシン7号ことノノの話では、この光の回廊を最初に通ったのは500m級航宙艦である『実験艦―02』だというが、現在観測出来る回廊は『02』が通った時よりも巨大になっていた。
可変攻撃宇宙空母『マクロス・クォーター』ブリッジ
「――ワープ終了、各システムに異常は見られません」
「11時の方向に光の回廊を確認、距離は約20光秒」
『クォーター』のブリッジで艦内ステータスを管理するミーナの報告と共に全天球ホロ・スクリーンに目標である恒星間宙域に開いた別の世界との結節点である光の回廊を確認してモニカは艦長であるジェフリー大佐に報告する――索敵を担当するモニカが全天球ホロ・スクリーン上に表示された情報を読み取り報告を上げる――ブリッジに居る彼らの肉眼でも目的地である次元の結節点である光の回廊が放つ光を確認する事ができ、その輝きの中に黒い小さな無数の点のようなモノも視認できた。
「――やるぞ、全艦戦闘用意!」
「了解。全兵装システム起動、各攻撃機部隊は直ちに発艦せよ!」
遠く離れた光の回廊の前に布陣する黒い小さな点――かつて翡翠と名乗っていた異星の少女クリスが擁する『Re:MODELERS・シリーズ』と呼ばれる未知の艦隊を前に、『クォーター』艦長ジェフリー・ワイルダー大佐の号令の下、400m級と本来の1/4のサイスながらもマクロスの名を冠する可変攻撃宇宙空母がその真価を発揮するべくその身に施された武装を起動しながら右舷飛行甲板から搭載された攻撃機であるVF-25で構成された攻撃部隊を次々と発艦させていく。
「――アルファ小隊発艦完了。続いてグリフォン小隊リフトアップ、直ちに発艦態勢に入れ」
「全ビーム砲台稼働準備、各種ミサイル発射管装填、デストロイド部隊所定の位置で迎撃準備せよ」
「――連合艦隊各艦 陣形を保ったまま攻撃態勢に入りました」
「連合艦隊各艦 攻撃部隊を発艦完了、各バルキリー部隊先行します」
『クォーター』のブリッジからも連合艦隊の各艦から発進したVF-171 ナイトメアプラスの編隊が先行して光の回廊の前に布陣する『Re:MODELERS・シリーズ』へと向かう。
「……さぁ、どう出てくる?」
戦闘態勢が整い、攻撃機が先行して光の回廊へと向かう姿を見据えながらジェフリー艦長は20光秒――地球と月の距離 約38万キロの20倍近く距離があるが、光の回廊の前に布陣する『Re:MODELERS・シリーズ』の未知数の能力がどれほどあるか? ノノ嬢のおかげで味方に付いている『
「――艦長! 前方の艦隊に動きが、各艦のエネルギー指数が急速に高まっていま――砲撃来ます!」
――やはりか、全天球ホロ・スクリーンで前方の艦隊の動向を監視していたモニカより緊急の報告が上がり、ピンポイント・バリアの展開を指示しながら『クォーター』に回避行動を取らせる。
……それにしても、これほど距離が有るのに攻撃態勢に入るとは、『Re:MODELERS・シリーズ』の性能は驚異的と言わざるを得ない……バジュラの母星での攻防戦の途中で出現した宇宙怪獣と呼ばれる億を超える巨大なバケモノ達との戦いの渦中で劣勢に陥った連合艦隊の前に現れた改修されたゼントラーディの自動制御艦隊――異世界の地球が生み出した超技術の結晶たるノノ嬢と異星人である翡翠嬢の二人が持てる技術を結集して強化した『
そんな『
「……20光秒もの距離が有るのに、これほど正確に攻撃が出来るとは……」
前面に展開した改修型ゼントラーディ自動制御艦隊のシールドにより実的被害は皆無だが、今の攻撃は艦隊の中央に位置する『S・M・S』・新統合軍の各艦艇を確実に狙った攻撃だった。
この距離でも届く攻撃も驚きだが、連合艦隊へと攻撃を集中させる事が出来る照準機能も脅威だ……次は何が出てくるか、シェフリー艦長は厳しい表情を浮かべていた。
別の世界への結節点である光の回廊の前に布陣している鏡のような船体を持つ『Re:MODELERS・シリーズ』の中央には他の航宙艦とは一線を画す四方に伸びたパイロンに接続された大型のシステムを持つ漆黒に赤いラインの入った、他の船の半分程度の航宙艦が存在していた。
『実験艦―02』――栗色の髪を持つ翡翠ことクリスの乗艦であり、この世界に迷い込む前に従事していた新型亜空間航行実験用に用意された特務艦である。
以前に行われた実験の終盤に宇宙戦艦『ヤマト』と激突事故という“ありえない”事故を起こしたクリスは、再び実験に臨むにあたって用意された航宙艦に積めるだけの装備を積み込み、船のシステムにも拡張性を持たせた。
その空いたスペースを利用してこの世界に来てから初めて船の内部に設置したのが『Re:MODELERS・シリーズ』を効率良く指揮する為の艦隊指揮所であり、情報表示機能を持つ全天球型スクリーンに覆われたその部屋の中央には藍色の髪とトレードマークでもある眼鏡を掛けた妙齢の女性――レプリケーターで複製したグレーのスーツを着たグレイス・オコナーは、周囲に表示された数値を読み取り旗下の艦隊のコンディションは規定値である事を確認して呆れたように一つ息を付く。
「……分かってはいたけれど、この『Re:MODELERS・シリーズ』に使われている技術はとんでもないわね」
20光秒――地球と月の距離の20倍近く離れた場所からでも正確に相手の位置を把握してこれほど精密な艦砲射撃を行えるとは、改めてこの
『S・M・S』・新統合軍の連合艦隊が到着するまで間、光の回廊から這い出てくる害獣どもを指揮下においた『Re:MODELERS・シリーズ』を用いて撃退する――この艦隊指揮所を使用して旗下の艦隊を指揮する文字通りの完熟訓練をこなして来たグレイスは、『Re:MODELERS・シリーズ』の艦艇を文字通り手足の如く操る事が出来るようになった……なったのだが。
「……あの
まずは超長距離精密砲撃で
「――さて、次はこういう趣向はどうかしら」
どうも、4月も激務が確定しているSOULです。
ついに『S・M・S』・新統合軍の連合艦隊は光の回廊のある宙域へと到達し、グレイスが操る『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊と激突しました。