マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス   作:soul

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 アンコクノプリンセス編


第59話 シルバーレイン(スピアーの脅威)

 

 可変攻撃宇宙空母『マクロス・クォーター』ブリッジ

 

 最初にそれに気づいたのは全天球型のホロ・スクリーンを監視しながら索敵を行っていたモニカだった――『クォーター』を始めとする連合艦隊から少し離れた直上の宇宙空間に僅かだが空間異常を感知したのだ。

 

「――艦直上に空間異常、わずかながら重力傾斜を感知――これは亜空間潜航を行っているモノがいます!」

「――回避行動!」

 

 モニカの報告に即座に反応したジェフリー艦長が回避行動を指示し、操舵を担当するボビーが舵を大きく切ると共に各部スラスターを小刻みに吹かして乱数回避を行い、キャシーは船体各所の対空砲座のみならず配備されたデストロイド部隊に対空砲火を指示する。

 

 『新生バスター軍団』(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)の中央に布陣する『S・M・S』・連合艦隊の天頂方向の宇宙空間にさざ波のような歪みが立つと、それはどんどん周囲の空間に波及して行ってこの世界の時空連続体が歪んでいき隣接する亜空間が露出して、そこから虹色の光と共に無数の何かが現出して来た。

 

 虹色の空間から現れたのは、半透明な素材で構成された細長い先端が鋭利な槍のようなモノが無数に現れて各観測装置をフル稼働させて分析したミーナが表面上は表情を変えずに淡々と報告する。

 

「現れたのは、ノノさんから説明のあった自立型蹂躙兵器『スピアー』……出現数は3万5532機。周囲の改型自動制御艦隊は無視して、連合艦隊に向けて急速接近してきます」

 

 全天球型のホロ・スクリーン上では無数の光点で表示された自立型蹂躙兵器『スピアー』――バジュラの母星で遭遇した巨大な宇宙怪獣との戦いにおいて改型ゼントラーディ自動制御艦隊から射出された大量の銀色の槍は恐ろしいスピードで戦場を駆け抜けて、そのスピードのまま兵隊型宇宙怪獣の硬い甲羅を貫いた。

 

 しかもそれだけではなく貫かれた衝撃で大きく痙攣をした兵隊型怪獣は鋏状の脚部を振り上げると近くに居た同族へと攻撃を仕掛けたのだ――《スピアー》の攻撃方法は自身の硬い船体を用いた体当たりの他に相手の機能を奪うハッキング能力を持ち、その能力は生物の神経組織すら操る事が出来る。

 

 被弾すれば船の機能を奪われるばかりか周囲に居る友軍の船に攻撃を仕掛けかねない厄介な相手が大挙して押し寄せて来る――連合艦隊の各艦艇は対空装備をフル稼働させて迎撃準備を整えると、『マクロス・クォーター』艦長ジェフリー・ワイルダー大佐は、左舷飛行甲板上でセッティングを完了した特設ステージ上の二人の歌姫へと声を掛ける。

 

「――準備は良いかね、歌姫たち」

 

 『クォーター』の左舷飛行甲板上で強力なシールドに守られた特設ステージ上では煌びやかな衣装を纏ったシェリル・ノームとランカ・リーが意志の籠った力強い瞳で正面を見つめる――彼女達の視線の先のはるか遠くには眩い光を放つ宇宙現象 光の回廊の姿が見える――そして彼女達の眼には見えないが、その光の中には無数の黒い点 かつて翡翠と名乗っていた少女 クリス・エムが用意した『Re:MODELERS・シリーズ』と呼ばれる鏡のような船体を持つ集団が待ち構えている。

 

 光の回廊のある宙域へと進んで行く間の時間を連合艦隊の将兵は無駄にはせず、光の回廊の破壊の前に現れるであろうクリス・エムが擁する鏡のような艦隊を如何に退けるかを考えて効果的な戦術を模索し続けていた――彼女 クリスが属する文明である『IMPERIAL(いにしえの帝国)』の技術を再現して建造された未知数の艦隊……しかし幸いな事に未知の技術を再現したゼントラーディの自動兵器工廠衛星で同じく建造された『新生バスター軍団』(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)を解析する事で、『Re:MODELERS・シリーズ』の艦艇の能力を推察して対策を検討していた。

 

 戦闘種族であるゼントラーディ用に設計された既存の艦艇を魔改造したモノが『改型ゼントラーディ自動制御艦艇』であり、改型艦の主動力である縮退炉は既存の熱核反応炉の出力を大幅に上回り――戦闘用艦艇の船体を再設計して船体の強度を強化する構造維持フィールドを採用し、縮退炉の膨大な出力に裏付けされた防御シールド発生装置と交換された動力炉の出力に耐えられるように改造を加えた誘導収束ビーム砲を搭載して既存のゼントラーディ艦とは一線を画す性能を持っている。

 

 そして厄介なのは搭載されている遠距離、近接共に運用出来る自立型蹂躙兵器『スピアー』の存在である――流体金属で生成された機体を持ち、ほぼすべての光学兵器を無効化するだけでなくミサイルなどの質量兵器から生じる衝撃を受け流すだけの柔軟性を持つ。

 

 しかも内蔵された武装を持って攻撃を行いながら相手のシールドを食い破って船体に到達すると流対金属の船体を変形させて艦内システムへと侵入して掌握してその武装を操って同士討ちをさせるなど、義理の姉を名乗っているノノいわく翡翠の性格の悪さを体現したような悪辣な兵器だという。

 

 細長い船体故にそれほどスペースを取らずに搭載出来るが故に各艦にかなりの数が搭載されており、物量を以て相手に脅威を与える兵器の存在は連合艦隊の技術者達を悩ませていたが、解決策は意外な所から齎された――シェリルとランカの衣装を担当するホログラム衣装のデザイナーの一人がバジュラの母星で行われた宇宙怪獣との戦いの折に縦横無尽に戦場を駆け巡っていた銀色の集団の話題になった時に呟いたのだ……前に見た映画の様だ、と。

 

 レトロな映画のファンだというその人物が言うには、件の映画の中で主人公が乗る宇宙船に無数の小型宇宙船がイナゴの如く襲い掛かり、数の暴力を持って主人公の乗る宇宙船や巨大宇宙基地を翻弄する内容だったと言う。

 

 対『スピアー』戦術を研究する技術者の一人がその話を聞き、煮詰まっていた彼はその映画を鑑賞し――そこから対『スピアー』戦術の足掛かりを得たのだ。

 

 

『『あたし達の、歌を、聞けぇええええ!!』』

 

 

 『マクロス・クォーター』の左舷飛行甲板上に設置された特設ステージ上で魂のシャウトを発したシェリルとランカの声に呼応するように特設ステージ下部に設置されているサウンド・ブースター・システムが全力稼働して、二人の歌姫の声を全銀河に届けとばかりに唸りを上げる――そして、『新生バスター軍団』(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)を統率する異なる地球が生み出した第六世代型恒星決戦兵器バスターマシン7号ことノノは、旗下の艦隊に指令を送る。

 

『――全ユニット、『スーパーマーシャル・フォールド音波砲』起動!』

 

  思念波による彼女の指示を受けた全ての改型ゼントラーディ自動制御艦がこの日の為に作業用に換装したドローンの総力を以て設置した新兵器『スーパーマーシャル・フォールド音波砲』を起動して、迫りくる白銀の群雲を迎え撃つ――この新兵器はバジュラの母星に侵攻した『マクロス・フロンティア』を止める為の戦いの前に、翡翠より提供された特殊な音源を増幅する『マーシャル音波砲』のノウハウを流用する事でこれまでのサウンド・ブースター・システムよりも広い範囲に効率的に響かせる事が可能になった。

 

 ――迫りくるは3万を超える自立型蹂躙兵器『スピアー』。

 両翼を『改型ゼントラーディ自動制御艦隊』に守られた連合艦隊のみを標的に迫りくる『スピアー』の大群に向けて二人の歌姫が歌うのは、14年前に活動していた伝説のロックバンド『FIRE BOMBER』の楽曲を熱狂的なファンであるオズマより提供され、それを『FIRE BOMBER』のメインボーカル熱気バサラをリスペクトするシェリルが編曲した楽曲が『クォーター』の甲板上に設置された特設ステージよりフィールド・ウェーブと共に放たれ、両翼に展開する『新生バスター軍団』(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)に搭載された『スーパーマーシャル・フォールド音波砲』によって増幅された歌声が、迫りくる白銀の集団へと向けて放たれる。

 

 シェリル・ノームとランカ・リー 二人の歌姫の放つ歌声はフォールド・ウェーブとして超空間を伝播していき、マーシャル音波砲のノウハウによって増幅された歌声が白銀の集団へと到達すると、完璧な統制の下に迫っていた『スピアー』の大群は突然軌道が乱れて密集状態だったのも災いして隣を飛行する『スピアー』と接触して大爆破を起した。

 

 

 『マクロス・クォーター』ブリッジ

 

「シェリル・ノームとランカ・リーのサウンド・ウェーブは『スーパーマーシャル・フォールド音波砲』によって増幅され、接近中の『スピアー』の集団と接触、彼らの動きが混乱しています」

 

 全天型のホロ・スクリーン上に表示されている敵『スピアー』の大群をモニターしており、シェリルとランカの二人の歌声が銀河に響きながら迫りくる『スピアー』の大群へと到達すると、彼らが編隊飛行をする為に必要な情報を送り合う相互通信を阻害して密集状態で接近していた彼らの飛行を乱すと『スピアー』同士が激突して大破していく。

 

「――やった! 彼らの軌道が乱れたわ!?」

「……周波数すら変更していないなんて……あの子はノノだけを目的にして、私達や連合艦隊すら眼中にないと言う話が現実味を帯びて来たわね」

 

 ホロ・スクリーン上に表示される接近中の敵機動兵器が軌道を乱れさせて隣を飛行する僚機と激突大破する様を見た操舵士のボビーが喜びを浮かべる傍らで、キャシーは以前に『クォーター』内に侵入した白衣を着た不審人物が語っていた事――翡翠の目的はノノだけであり、『クォーター』を始めとする連合艦隊など眼中にないと言う話が本当である可能性が高いと思う。

 

 翡翠が擁する鏡のような艦隊と対峙した時の為に同じ自動兵器工廠衛星で建造された改修型ゼントラーディ艦を調査する傍らで、搭載されていた艦載機の役目を持つ自立型蹂躙兵器『スピアー』の調査も行われていた。

 

 船体を構成する流体金属の構成分子の一つ一つに解析不能なナノマシンが含有され、武装は流体金属内で用途ごとに組み上げられる事が判明して細身の船体の何処に多才な武装が内蔵されているのかと言う謎は解けた……そして自立型と銘打たれた制御プログラムが入っているであろう心臓部は完全にブラックボックスとなっており、『クォーター』のみならず連合艦隊の技術将校ですら解析どころか分解する事すら出来ずにお手上げ状態であった。

 

 だが収穫が無かった訳ではなかった――ブラックボックスに付属する亜空間通信システムの一部は解析ができ、通信が行われている亜空間通信の周波数は判明したのだ……改型ゼントラーディ自動制御艦隊が此方側にある以上は周波数が変更されている可能性があったが、マーシャル音波砲のノウハウを次ぎ込んだ『スーパーマーシャル・フォールド音波砲』の大出力ならば敵『スピアー』の受信システムに障害を発生させる事が出来るのではないか、そして『クォーター』に現れた白衣を着た人物の語った事――翡翠にとって『クォーター』も連合艦隊すらも眼中にないと言う言葉。

 

「……眼中にないと言うのなら、無理やりにでも視界にいれてもらおうか――ラム君、突入部隊に光の回廊付近の詳細なデーターを送ってくれ」

「――了解」

 

 ジェフリー艦長の指示を受けたラムは連合艦隊の艦艇とのリンクに使用している通信システムに後方で待機している別動隊へと光の回廊付近の詳細なデーターを送信する……それによって別動隊はより精密なワープが可能となる予定だ。

 

「……さあ、あの騒乱娘(翡翠嬢)に一泡吹かせてやるか」

 

 


 

 

 『実験艦―02』艦隊指揮所

 

 白銀の船体を持つ『Re:MODELERS・シリーズ』の中央に鎮座する『実験艦―02』の内部に新たに設置された艦隊指揮所で『Re:MODELERS・シリーズ』をコントロールしているグレイス・オコナーは、亜空間に潜行させた複数の白銀の船体から発進して連合艦隊を強襲しようとしていた自立型蹂躙兵器『スピアー』をあっさり無力化した連合艦隊の手腕――グレイスが手塩にかけて育てたシェリルの歌声が銀河に響き渡った事に苦笑を浮かべていた。

 

「……さすがね、シェリル。ランカちゃんも良い歌だったわ」

 

 苦笑浮かべながらもシェリルとランカを称賛したグレイスだったが、周囲に展開している白銀の艦隊のステータスを表示している艦隊指揮所のセンサーが艦隊の至近距離の空間の重力分布に微細な変化が現れた事が表示されて表情を引き締める。

 

「……これは…」

 

 些細な変化だったが周囲に原因となるファクターが見受けられなかった事から警戒レベルが上がってグレイスに報告される――最初は小さな変化だったが重力の変化はどんどん大きくなっていき、遂には時空連続体が押し広げられてこの宇宙に隣接する超空間が剥き出しになり、中から二つの人工物が現出する――それは新統合軍で運用されている二隻のステルス・フリゲード艦であった。

 

 『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊の近隣宙域にワープ・アウトした二隻のステルス・フリゲート艦からは船体各所に張り付いていたバルキリー部隊が離脱して、ステルス・フリゲート艦を守るように陣形を組んで『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊に突入する――無人艦故に突然の状況の変化に対応出来ない白銀の艦隊の中を最大船速で突き進む二隻のステルス・フリゲート艦とバルキリーの編隊を呆れたように見ているグレイス。

 

「……呆れた。クリス(不可思議娘)の予測通りに本当に来たわね」

 

 光の回廊から湧き出てくる宇宙怪獣達を迎撃する傍ら、襲撃の間の短い時間を使って『S・M・S』・新統合軍の連合艦隊がどんな戦術を取るかを協議した事があった……戦力的には圧倒的な差があり、常識的に考えれば撤退して戦力を整えてから攻勢を掛けるだろうが、今回のケースは宇宙怪獣が再侵攻をする前に彼らの通る光の回廊を破壊しなければならないと言う時間との戦いもあったのだ。

 

 宇宙怪獣の再侵攻の前に未知の艦隊を突破して目標である光の回廊に到達しなければならないとすれば、どのような戦術を用いて来るのか? 新統合軍ではなく民間軍事プロバイダーである『S・M・S』に属する『マクロス・クォーター』は軍組織を踏襲しているが、クルー達の気質は統率された軍人というよりも個人の気質を優先する独立部隊……クリスの話ではノリの良い愚連隊のようなモノだという話だが。

 

 彼女によれば、『マクロス・クォーター』のクルー達は自らの技能にプライドを持っており、逆境においても自らの技能に誇りを持つ彼らはリスクの高い作戦であろうとも危険を承知で挑んでいくだろうと。

 

「……本体を囮に小数の部隊で突破を図る……けどね読んでいるのよ、此方も――出番よ、ブレラ」

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。

 今回、連合艦隊を襲った銀の雨―『スピアー』の大群に向けて行われた反撃の元ネタが分かる方はどれだけ居られるでしょうか? マイナーだからなぁ~あの映画。

 現在激務が続き、執筆活動の時間が殆ど取れません……ですので、続きは少しお時間を頂きます。更新するときには事前に告知いたしますので、今しばらくお待ちくださいませ。

 ではでは~。
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