マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス   作:soul

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 アンコクノプリンセス編




第60話 過去からの刺客

 

 銀河系中心宙域の明るい宇宙空間を見据えながら早乙女アルトは新たな愛機であるYF―29のコックピットで意識を集中させながらその時を待っていた。

 

 光の回廊の前にワープ・アウトした『S・M・S』・新統合軍の連合艦隊は、回廊の前に布陣する『Re:MODELERS・シリーズ』から小手調べとばかりに超長距離砲撃を仕掛けて来る事に対処しながら、各艦の長距離センサーをフル稼働させて光の回廊付近のデーターを計測したモノを精査して彼が属する別動隊へと送信。

 

 送られて来た正確な光の回廊付近の空間分布図を受け取った別動隊はそれを元に短距離フォールドにて待ち受ける『Re:MODELERS・シリーズ』に肉薄し、その防衛線を一気に突破して光の回廊を破壊する任務を帯びていた。

 

 愛機のシステムに変化が起きる――フォールド通信を介して連合艦隊より目標宙域の詳細なデーターが送信され、フォールドの座標設定の為の精密な計算に必要な目的地付近の詳細なデーターを受信した二隻のステルス・フリケードがフォールド機関を起動してフォールドを行う準備を始める。

 

 本当なら短距離フォールドで『Re:MODELERS・シリーズ』を飛び越える事が出来れば良いのだが、その後方に存在する光の回廊の影響で『Re:MODELERS・シリーズ』後方の宙域には短距離フォールドが阻害されるので、『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊を突破する必要が有るのだ。

 

 データーを用いて精密な計算を終えた二隻のステルス・フリゲードは短距離のフォールドを行い――デ・フォールドした二隻の前には巨大な『光の回廊』の威容と、その前に布陣する無数の鏡のような艦隊が存在していた。

 

 

『――全機出撃!』

 

 突入部隊の指揮を執るオズマ・リー少佐の号令を受けて、突入部隊の面々は二隻のステルス・フリゲード艦から愛機であるバルキリーを切り離すとステルス・フリゲード艦を囲むようにしてトップスピードで進む――目指すは光の回廊――だがそこに到達する為には、光の回廊の前に布陣する『Re:MODELERS・シリーズ』の艦隊を突破しなければならない。

 

『俺達が受けたオーダーはただ一つ――目の前のガラクタどもを突破して、目的地へとエスコートする事だ――やるぞ野郎ども、全機! プラネット・ダンス!!』

「――了解!」

 

 広域通信で突入部隊に参加している全てのパイロットに檄を飛ばすオズマの機体に負けないようにYF―29を加速させる――二隻のステルス・フリゲート艦の前面に展開したバルキリー部隊はエンジンをフル稼働させて、1万を超える『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊の陣形へと突入していく。

 

 バルキリーの姿が映り込む巨大な鏡のような敵艦隊の中を、2隻のステルス・フリゲート艦を先導するように飛行するバルキリー部隊……光の回廊へと到達する為に待ち構えている『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊の陣形へと突入した以上は苛烈な攻撃を予想したのだが、鏡のような集団の合間を縫うように飛行しているのに一向に攻撃が来ない。

 

「……どういう事だ、何故攻撃してこない?」

 

 敵艦隊の中央を強行突破しようとしているバルキリー部隊に向けて一発の対空砲撃すら飛んでこず、まるで存在を無視している鏡のような敵艦隊の姿が逆に不気味に見えてコックピットの中で思わず呟くアルト……彼の任務は即席のフォールド爆弾である二隻のステルス・フリゲートを光の回廊までエスコートするモノなのだが、当然阻止する為に激しい攻撃を受けると予想していた。

 

 なのに相手はまるで自分達の事など気付いていないかのように無反応なのが、逆にこの先に途轍もないモノが待ち受けているのではないかと不安を煽る……そもそもこの鏡のような艦隊を用意したのが“あの悪ガキ(翡翠)”なのだ……『アイランド1』に潜伏しながら、裏でコソコソ暗躍していたような奴が用意したモノが、このまま簡単に通してくれるとは考えにくかった。

 

 ――だが敵艦隊の中を猛スピードで飛ぶバルキリー部隊はおろか、軍艦としては足の速い部類に入るステルス・フリゲート艦とはいえ確実にバルキリーよりは遅い航宙戦闘艦すら攻撃を受けずに航行している……不審に思いながらも機体を操るアルト達は鏡のような戦艦の隊列を抜け――目の前に凄まじい光量を放つ目的地 光の回廊が広がった。

 

「――これが『光の回廊』……」

 

 目の前に広がる視界全てを覆う暴力的なまでの光の奔流に言葉を詰まらせるアルト……ノノの話では最初は彼女達が乗る『実験艦―02』が通れるだけの大きさだったらしいが、今は視界一杯に眩い光が広がっている……その光量はバルキリーに搭載されているセンサーにすら影響を与えて索敵範囲に障害が出ている――ゆえにアルトを始めとした突入部隊に選ばれた戦闘機乗りは気付くのが遅れる。

 

 視界一杯に広がる暴力的なまでに光の壁の一角から、それ以上の光の線――収束されたビームが宙を走って最大出力で張られたリバルシィフ・フールドと正面からぶつかるとフィールドを打ち破ってステルス・フリゲードの艦首と接触――その装甲を貫いてそのまま内部構造を破壊しながら艦尾まで貫ぬかれたフリゲート艦は爆発四散する。

 

「なっ!? どこだ! 何処からの攻撃だ!?」

『――正面だ!』

 

 オズマからの指摘にアルトは悪影響が出ているセンサーを調整しながら何とか攻撃を行った“敵”を捕捉しようとし――ようやく敵を捕捉する事が出来た。

 

 光の回廊が放つ眩いばかりの光量の影響で発見が遅れたが、各バルキリーのパイロット達は攻撃を行ったモノの詳細が判明するにつれて困惑した表情を浮かべた……アレはバルキリー乗りなら誰もが知るモノだ……優れた汎用性と発展性を持つ可変戦闘機の代名詞とも言える機体だった。

 

「……何であんな機体がこの宙域にいるんだ?」

 

 全長14.23m、ファイター・ガウォーク・バトロイドと三種類の形態を取る事により戦場を選ばず戦闘を可能にし、既存の戦闘機よりも高い機体強度を持つ傑作量産機――それはかつて地球が経験した巨人種族ゼントラーディとの星間戦争の折に活躍した主力可変戦闘機 VF―1だった。

 

 『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊を通過して光の回廊へと向かう突入部隊の前に立ち塞がったのは、パープルに彩られた遥か昔に第一線を退いた筈の可変戦闘機VF―1ただ一機……しかし、VF―1の通常装備ではステルス・フリゲードを一撃で破壊するほどの威力は無く、それこそボトル基幹艦隊との決戦で使用された大型反応弾でも使用しなければそれほどの破壊力は発揮出来ない筈なのだが。

 

 今の攻撃は、威力はけた違いだったが粒子砲――紅いバジュラが放つ生体重粒子反応ビーム砲とそん色ない威力のビーム攻撃を現役を退いて久しいVF―1が放った事に居戸惑っている間にパープルの機体は双発のエンジンを吹かして急速に此方に近づいて来ていた。

 

「――何だこの加速は、これがVF―1の加速か!?」

 

 レーダーに映る敵機の速度に驚愕するアルト。

 50年も前の機体であるVF―1の最高速度はM3,87しか出せない筈なのに、この速度は現行機の中でも最新鋭であるVF―25の最高速度はおろか新しい愛機であるYF―29デュランダルの速度すら上回っていた――しかもこのVF―1の取っている軌道は残ったもう一つのステルス・フリゲートへと向かっている。

 

『――全機、あのバルキリーを近づけるな!』

 

 オズマに言われるまでもなく護衛部隊として選別された各バルキリーのパイロット達は急速に迫って来る敵機を迎撃するべく、それぞれインターセプトコースを取って迫りくるVF―1もどきへと攻撃を仕掛けるが、30機以上のバルキリー部隊の攻撃がVF―1もどきを捉える事はなかった。

 

『――くそっ! 外した!?』

『――何だ、この動きは!?』

 

 連合艦隊の各バルキリー部隊から選抜された腕利きのバルキリー乗りがあらゆる方向から攻撃を仕掛けるが、その全ての攻撃をVF―1もどきは軽快な機動で躱していく……50年も昔の機体の姿をしているが、その機動は最新鋭のVF―25やYF―29に迫るか凌駕するような回避能力を見せた。

 

「――何てぇええ、機ぃぃい動ぅぅうだ!?」

 

 対バジュラ戦用に試作されたYF―29には高純度なフォールド・クォーツを使用した慣性蓄積コンバーター『ISC』が搭載されているが、VF-1もどきの変則的な機動に必死に食らい付くには機体の性能を限界まで出す必要があり、パイロットであるアルトの身体にはこれまで以上に対G限界が高められている『ISC』でも殺しきれないほどのGが彼に圧し掛かっていた。

 

「うっ……ぐうっぅぅうう!?」

 

 背後を取ろうと加速すると軽快な機動でひらりと躱し、スラスターを小刻みに吹かしてダンスをするかのような機動を描いて此方を小馬鹿にするかのような様子を見せる……それで躍起になったパイロットがバルキリーで肉薄するとありえないような機動で突き離す。

 

「……何なんだあのバルキリーは……いや、本当にバルキリーか? それにあの動きは――まさか! ブレラか!?」

 

 VF―1もどきがVF―171のカスタム機を翻弄する姿を見ていたアルトは、あのVF―1もどきの機動に覚えが有った……かつて『マクロス・フロンティア船団』に襲撃をかけて来るバジュラへの反抗作戦として彼らの巣へと攻撃を仕掛けた時に、バジュラ達の巨大な母艦と戦ったアルトは損傷個所から内部に突入していくブレラへの対抗意識から後を追ったが、ブレラの駆るVF―27 ルシファーの軽快な飛行からの的確な回避行動に自分との“腕の差”を痛感したからこそ、その動きは目に、脳裏に焼き付いていた。

 

『――おい! お前ブレラだろう? お前、なんで“あのバカ”に協力するんだ!?』

 

 思わず目の前を飛ぶVF-1もどきに向けて通信越しに怒鳴りつけるアルト……返信があるとは思っていなかったが、それでも怒鳴らずにはいられなかった。

 だが驚く事にVF―1もどきは速度を落としてYF―29の横に並ぶと、通信機越しに何度か聞いた声が流れて来る……これは間違いなくあのブレラ・スターンの声であった。

 

『……あの時の『S・M・S』のパイロットか、良く分かったな』

「……お前、ブレラ! 何で“あのバカ”に与する? アイツはランカに殺意を向けたばかりか、『光の回廊』を破壊して宇宙怪獣どもを封じ込めるという作戦すら邪魔しているんだぞ! お前は人間が、ランカがどうなっても良いと言うのかよ!?」

 

 畳みかけるように己が思いを吐き出すアルト……だが返って来たのは冷たい返信だった。

 

『……悪いが俺は人間の未来にそれほど関心がない……なにより今の俺は『ギャラクシー』に変わってあの娘(クリス)にインプラントを制御されているから、お前たちに手心を加えるつもりもない』

「――ならランカは!? ランカはお前の妹なんだろう? ランカが犠牲になっても良いっていうのかよ!?」

『……ランカは俺に残った最後の肉親だ。あの子は俺が守る――例え俺を支配しているクリス相手でも、ランカに手出しは二度とさせない』

 

 一抹の望みをかけてアルトはブレラに妹であるランカの事を問い掛ける……肉親の情に訴えかけてみるが、インプラントで感情を制御されている『ギャラクシー』のサイボーグ兵の呪縛を解く事は出来ないかもしれないと思っていたが……意外な事にブレラはランカを気遣うような事を言ったのだ。

 

「……おまえ」

 

 矛盾した物言いだが、そこには確固たる意志があった。

 

『……そういえば、お前は妙にランカと近しかったな』

「――いや、俺は別に……」

 

 通信越しに妙な事を言い始めたブレラに顔を引きつらせるアルト。

 それからも通信越しに、事ある事にランカと共に行動しているかと思えばシェリルとも街を散策していただのと、『ギャラクシー』時代にシェリル・ノームのボディーガード兼監視をしていた時に度々目撃したアルトの行動をつらつらと上げてアルトは頬を引きつらせていた。

 

『――お前のような男はランカに相応しくない』

「――違う! 俺は別に……」

『そうでないと言うのなら、俺にお前の力を見せて見ろ』

 

 話が妙な方向に向かい、慌てて方向転換を図るも聞く耳を持たないブレラ……やるしかないかと腹を括ったアルトが動く前に通信機が新たな音声を流し始めた。

 

『――そういう話なら俺も参加しないとな』

『――隊長!?』

『俺はあの日からランカを守って来た――それこそ、ぽっと出の男や、11年もの間ランカをほおっておいた兄とやらに任せる事など出来るかよ』

 

 三機のバルキリーはお互いに牽制するような軌道を取りながら絡み合うかのように飛んで行った。

 

 


 

 

 この世界と別の世界を繋げる結節点である光の回廊付近にワープ・アウトした『S・M・S』・新統合軍の連合艦隊は、進路上で待ち受ける白銀の艦隊『Re:MODELERS・シリーズ』を射程距離に捕らえていた。

 

 連合艦隊の両翼に展開する『新生バスター軍団』(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)と共に長距離砲による攻撃が行われるが、『Re:MODELERS・シリーズ』の障壁を抜く事は出来ずに反撃とばかりに『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊より攻撃が加えられるが、『新生バスター軍団』(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)が張る防御シールドが敵艦隊からの攻撃を完全に防いでいた。

 

「……これではまるで千日手だな」

 

 同じゼントラーディ自動兵器工廠衛星で建造された『新生バスター軍団』(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)と『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊は共通する部分も多く、それ故に基本的な性能では同等の艦隊同士の戦いであり双方が決定打を持たないか――それを繰り出すタイミングを狙っていた。

 

 朗報と言えば、後方からショートワープで『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊の至近距離にワープ・アウトした突入部隊は攻撃を全く受けずに敵艦隊の合間をぬって突破して光の回廊間近まで到達した事か。

 

「……何故攻撃しない? 何か思惑があるのか……」

 

 朗報ではあるが、敵の思惑が理解出来ずに『クォーター』のジェフリー艦長は眉間に皺を寄せて考え込み――直ぐに敵の思惑を理解した。

 

「艦長! 突入部隊の二隻のステルス・フリゲートの内一隻が轟沈しました!」

「――待ち伏せか!? 船を沈めた相手は何だ?」

「……センサーによれば全長14m、バルキリークラスの敵が一機」

 

 鏡のような敵艦隊が突入部隊を素通りさせた理由が分かった、光の回廊の前に迎撃する為の罠を張っていたからだ……ステルス・フリゲードが撃沈させた後、残る一隻を守るように護衛として随伴しているバルキリー部隊が正体不明の敵を近づけまいと奮闘しているが、相手の動きが変則すぎてバルキリー部隊は対応出来ずに苦戦しているようだ。

 

 天球型のホロスクリーン上に表示されている敵の動きは正しく変幻自在と言う言葉通りのモノであった……かつては新統合軍の腕利きパイロットとして活躍していたジェフリー・ワイルダー艦長の眼にも敵の機動は可変戦闘機の機体強度を越えたGが掛かってどんな機体であろうとも空中分解してもおかしくない機動を取っている。

 

 いくら慣性制御技術である『ISC』のようなモノがあるとはいえ、効果範囲はコックピット周辺であり機体の全てを覆うようなモノはまだ登場していない筈だ……なのにあの敵機は重力や慣性と言った物理法則にケンカを売っているような動きをしている。

 

『――ジェフリー艦長!』

 

 敵機の機動のカラクリに付いて考えていると、艦隊の正面で戦っているノノ嬢より通信が入った。

 

『……行きます』

 

 短く告げた後に彼女は艦隊から先行して飛翔していく……異なる世界の地球が生み出した超技術の塊である彼女は加速すると目の前の通常空間が歪んで行き亜空間が剥き出しになる――一気に加速を増した彼女はその剥き出しになった亜空間へと飛び込んでいった。

 

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。

 光の回廊を前に、ついに両軍が激突しました。
 ブレラ・スターンが駆るVFー1もどきは、翡翠が用意した『IMPERIAL』の技術で再現した悪質なジョーク。機体全体を覆う重力・慣性制御を装備し、遮蔽装置すら搭載したバケモノです。

 それと誤字を指摘くださった方 adachi 様、交錯くん様、Lynn様、有難うございます。

 読み返して誤字が無いようにしようと思ってはいるのですが、思い込みって怖いですね。(汗) 何時も助かっております。現在は時間が無く、時間が空いた時にでも改めて読み返して修正していきたいと思っています。

 では次回 第61話 史上最大の姉妹ケンカ 前編 出来るだけ早く更新したと思ってますが……いつになる事やら(汗 ではでは~。
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