マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス   作:soul

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 アンコクノプリンセス編

 ATTENTION! 今回はオリ要素が強く出ます、ご留意くださいませ。


第61話 史上最大の姉妹ケンカ 前編

 

 

 この世界と隣接する亜空間を飛翔するバスターマシン7号ことノノ――彼女は共にこの世界に迷い込んだ異星の少女 翡翠の船である『実験艦―02』の亜空間航行能力をラーニング(習得)してタンホイザーゲートを使用しての超光速航法よりも応用の効く亜空間を利用した跳躍も可能となっていた。

 

 亜空間を使用する事により光の回廊前に布陣する『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊を飛び越えて正体不明の敵の攻撃を受けている突入部隊を掩護すべく飛ぶノノ……これまで早々にあの子の船である『実験艦―02』や肝入りの『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊などが姿を現したが、肝心の翡翠本人の所在が分からない……あの性格だから大人しく『実験艦―02』に乗っているとは考えにくい……必ずどこかの場面で直接姿を現す筈である。

 

 亜空間を飛びながらも警戒していたからこそ気付いた――ノノに搭載された亜空間ソナーが、この亜空間の同じ位相に強力なエネルギーを持つ個体が出現した事を――天頂に当たる方向に視線を向けると、白いボディスーツに蒼い結晶体を散りばめた栗色の髪の少女が周囲に余剰エネルギーを放電しながら力を溜めている姿が見えた。

 

『――反転、イ・ナ・ズ・マ・キッツッッツク!』

 

 見慣れた自分よりも小さな身体を捻りながら回転すると、溜め込んだ力を一気に解放して此方に向けて急速に接近して来る翡翠……これまでの彼女の行動パターンから必ず姿を現すとは思っていたが、こんなタイミングでやって来るとはやっぱり翡翠は性格が悪い。

 

 ――ならば、此方もそれなりの返礼が必要だろう。

 

『――バスタァアアア・トマホォォオク!』

 

 かつてバスターマシンを駆って地球を人類を守り抜いた伝説のバスターマシン・パイロット ノノ・リリの伝説の技の一つ、縮退物質で構成された(本来はダイヤモンド・ファイバー製だが、長い年月が経った事で伝承が歪んでしまった)大型の斧を振りかぶって肩に乗せると、力を込めて翡翠に向けて投げ付けた。

 

『トマホォオク・ブゥウウウメラァアアン!』

 

 第六世代型のバスターマシンの能力で投げ付けられた『バスター・トマホーク』は超高密度の物質故に亜空間の影響を受けずに一直線に飛び、放電しながら急降下してくる翡翠の蹴りと正面からぶつかり――翡翠の蹴りの軌道が僅かに逸れてノノの傍を通り過ぎて行った。

 

『――翡翠! ノノの技で攻撃するなんて、何を考えているんですか!?』

『――そっちこそ、か弱い妹分にでっかい斧を投げつけるなんて人の心はないの!?』

『――どの口が言いますか!』

 

 必殺の一撃同士がぶつかった衝撃で亜空間から弾き出されたノノと翡翠は、白銀の艦隊のど真ん中で対峙しながら口論を始める……しかし翡翠がこんな他愛も無い会話に乗って来るとは、意外に思いながら口の端が緩んでしまう。

 

 白衣を着た謎の人物の言葉――翡翠は自分との戦いを望んでいる――翡翠と戦う事で、自分に超存在『TRANSCENDENT』(超絶者)への道を開く事にあると。

 

 その為に人類への敵対者の道を選び、秘匿していた戦力を披露してこれ見よがしに立ちはだかった……だが自分との戦いを望んでいるだけにしては戦力が過剰すぎるように思える……やはり翡翠には自分と戦うだけでなく別の思惑を持っているようだ。

 

『……翡翠。貴方がノノとの戦いを望んでいると白衣を着た人に聞きました』

『――“白衣”? ああっ、そういうこと……』

 

 人知れず『マクロス・クォーター』の艦内に何時の間にか侵入して、此方の艦内システムの警戒網にまったく痕跡を掴ませない白衣を着た謎の人物から語られた翡翠の目的――ノノと戦い、彼女を超越した存在『TRANSCENDENT』(トゥランセンド)へと導く事にあると言う……それを聞いたノノは怒りに身体を震わせた――独り善がりな思いの果てに突っ走って、なんて身勝手な。

 

『――こおの、おバカ!!』

 

 思念波通信であるのにわざわざ怒鳴り、目の前にいる大馬鹿者(翡翠)に向けて大出力の思念波を叩き付けながら両脚から三重六連装のミサイルサイロが八つ展開するとマイクロミサイルが射出されて大量の小型ミサイルが翡翠へと向けて殺到するが、翠眼を細めて迫りくるマイクロミサイルを見据えた彼女は右手に力を込めて一閃――放たれたエネルギー放射がマイクロミサイルの大群を破壊した……そして細めた翠眼を三角にしてノノに噛みつく。

 

『……バカとはなんだ、バカとはノノねぇのくせに!』

『ノノの癖にとはどういう意味ですか! それは置いておくとしても、おバカ以外のなんだというんですか! こんな独り善がりな方法をとって、何かを抱えているなら相談してくれても良いじゃないですか! 誰かに頼るって方法もあるはずよ!』

『頼れって、誰に頼れっていうのよ!』

 

 光の回廊の圧倒的なまでの光量に照らされた空間を高速で飛翔しながら、軌道が交差した時には繰り出す拳を避け合いつつ大出力の思念波で口喧嘩ならぬ思念喧嘩をする二人。

 

『――貴方がもっと素直なら、みんな手を差し出してくれた未来だってあった筈です!』

 

 急上昇したノノは右脚を大きく振り上げると勢いのまま振り下ろす。

 

『――それが何になるって言うのよ!』

 

 紙一重で避けた翡翠は拳を引き絞り、右腕を守るプロテクター――蒼い水晶が増殖して右腕全体を覆うとノノ目掛けて繰り出す。

 

 バスターマシンであるノノの反射速度は人類を遥かに上回り、繰り出されたパンチを余裕で回避する――した筈だったのだが、想定外の力が働いて身体が引っ張られた。

 

『――くっ!?』

 

 何とか逃れる事が出来たが想定以上に空間が歪んでおり、その原因は翡翠の右手を覆う蒼い結晶体のようだ……まるで巨大な質量によって時空間が歪んでおり、それに引き寄せられた格好になった。そんな訳の分からない蒼い結晶体をその身に纏って翡翠の肉体に影響がないのか一瞬心配になったが……彼女の肉体もその性格同様に無茶苦茶な所もあるので問題ないのだろうと結論付けた。

 

『……お互いの主張がぶつかり合い平行線を辿るか……こうなったら、ヤルしかないねノノねぇ――最初で最後の姉妹ケンカって奴を』

 

 翡翠の瞳が深紅に染まると、周囲の空間に干渉して思念の力で空間を圧縮して無数の空間の歪みを作り上げる――その数は数百――1つ1つは小さいが、空間を圧縮しているが故に巻き込まれれば“唯では”済まず、空間上にある物質も歪められて崩壊する。

 

     《ロンゴミニアド・ジェノサイド モード》

 RHONGOMYNIAD・GENOCIDE MOD

 

 必滅の威力を込めた無数の渦がノノに向けて殺到する。

 

『――さあ! どうするノノねぇ!?』

 

 迫り来る渦に向けて両脚から三重六連装のミサイルサイロからマイクロミサイルが射出され、その爆発力で渦の進行方向を曲げ――対空網を潜り抜けた渦は『ファジカル・リアクター(物理法則書き換え機関)』で書き換えて無力化する――だが、無力化した数の倍の破滅の渦が迫る――それを見たノノの眉間に皴が寄った――あの“頑固者”は!?

 

『――いい加減にしなさい! 何時まで独りよがりな事をしているんですか!』

 

 『ファジカル・リアクター』を稼働させてトマホークと同じく縮退物質で構成された(本来なら…以下略)バッドを形成すると、迫り来る破滅の渦に向けてフルスイングする。

 

『ひっさつ! バスタァアア・ホォオオムラーーン!!』

 

 打ち返された破滅の渦は一直線に飛び――翡翠の至近距離を抜けていく……おいおい、必滅の槍であるロンゴミニアドを打ち返すなんてノノねぇは相変わらず脳筋だな、と嘆息していると信じられない光景が目にして呆けたような表情を浮かべる――あろう事か凶悪なバッドを構えたノノは迫り来る無数の破滅の渦を次々と打ち返して来たのだ。

 

『――なっ、うそだろ!?』

 

『バスタァアア・ホォオオムラーーン・乱れぇえぇえ打ちぃいぃいい!』

 

 自分に向けて正確に打ち返された破滅の渦を避けながら、何考えてんのよ、この脳筋がぁ! と噛みつきながら避けていると――1つだけ破滅の渦とは別の何かが翡翠目掛けて飛んでくる――これは縮退物質か!?

 

『――なんとぉお!?』

 

 正確に飛んでくる縮退物質をギリギリで避けた翡翠は何時の間にかノノが至近距離まで近づいている事に驚愕する――凶悪な威力を秘めたバッドを振りかぶったノノは、それを一気に振り下ろした。

 

『――教育的指導!』

『――どこがだぁあ!?』

 

 周囲の空間を引きずりながら唸りを上げて振り下ろされる凶悪なバッドを紙一重で避けた翡翠だったが、縮退物質が至近距離を通った事により身体が引き寄せられて僅かにバランスを崩す――それを予測していたノノは、バッドを放り出すと翡翠の小さな身体を捕まえて羽交い絞めにする。

 

『――捕まえた!』

『――妹分にあんな凶悪な物質を打ち付けるなんて、人の心はないの!?』

『……さっきも言いましたが、どの口がそんな事を言うんですか――このへそ曲がり!』

 

 ジタバタ暴れる翡翠だが体格で勝るノノに押え込まれて抵抗も次第に小さくなる……とはいえ、このまま大人しく拘束されたままでいるとは考えにくいので、ノノはこの貴重な機会を使って手のかかる妹分を説得するべく語り掛けた。

 

『……翡翠、貴方はノノに自らを超える『トゥランセンド(超越者)』への道を示そうとしている……つまり貴方は自分ではどうにもならない“何か”を抱えている』

 

 貴方が何を抱えているのかは分からないけど、ノノ一人に頼るより、他の人や『クォーター』の人達にも頼った方が道は開ける筈よ――思念波ごしに優しく語り掛けるノノだったが、真空中にも拘らず一つため息を付いた翡翠の返答はNOだった。

 

『――なんで!? ノノに期待するのに、なんで他の人達には期待しないの!? 翡翠も知っているでしょう、この世界の人達は初期文明レベルで星間戦争を行っていたゼントラーディの基幹艦隊と戦って生き残ったんだよ――』

 

 この世界の地球人類は、太平洋南アタリア島に落下した巨大物体――後のマクロスに仕掛けられたブービートラップによって否応なしに戦争状態に突入した。

 

 だが地球での戦闘の最中にゼントラーディでは既に失われた技術 反応兵器の存在を確認した彼らは地球本星への攻撃は控えて、フォールド航法によって冥王星宙域へとフォールドしたマクロスを捕獲するべく何度も攻撃を仕掛けたが、マクロスに関わった兵士達の間に蔓延する未知の現象によって機能不全を起こしていく。

 

 それを創造主であるプロトカルチャーと同じように“文化”を持つ地球を兵士に対する汚染源であると危険視した彼らは、本隊である戦闘艦艇500万隻を誇るボトル基幹艦隊を持って殲滅するべく太陽系へと進出したのだ。

 

 初期の遭遇戦で大半の宇宙艦隊を失った地球に残されたのはマクロスただ一隻……だが彼ら地球人類は生き残る為に足掻き――絶望的なまでの戦力差故に地球は焦土と化して人類も大半は犠牲になったが、敵の中枢を撃破して小数ながらも生き残る事が出来たのだった。

 

『――彼らなら、ゼントラーディの大艦隊と戦って生き残った彼らなら、きっと貴方を助けてくれる筈だよ』

 

 拘束している翡翠を優しく抱きしめながらノノはそう諭すが、翡翠は首を横に振った。

 

『……無理だよ。私程度に圧勝出来ないようじゃ、“アイツ”はおろか“奴ら”にも――十二羅将にすら太刀打ち出来ないよ』

 

 全身の力を抜いて、それでも他人に期待しないへそ曲がり(翡翠)にノノは“ある事”を思い出すように告げる。

 

『……忘れたの翡翠? そんな何も期待していない人達に貴方は後れを取ったのでしょう?』

『……はい?』

『――確か、キノコとか言う首席補佐官に尻尾を掴まれて、『アイランド1』に居られなくなった貴方は、爆発に紛れて逃げ出した……』

『……あのキノコか…』

 

 ノノに指摘されて深紅から翠色へと戻った瞳を細め、顔を顰めて苦々しい顔を浮かべる翡翠……巨大都市型移民居住艦『アイランド1』に紛れて色々と暗躍していた翡翠だったが、元々隠密行動など細かい事を苦手としていたが故に脇が甘く、当時同じ移民船団でありながら敵対勢力と見なされていた『マクロス・ギャラクシー』船団に対する警戒網を構築していた『フロンティア』行政府の首席補佐官 レオン・三島にあぶり出される形になったのだ。

 

『――ねぇ翡翠。キノコ補佐官は小さな違和感から貴方を見つけ出した……これってあなたの予測を超えた事にならない――キノコ補佐官を始め、彼らの将来は可能性はきっと貴方の予測を超える筈です』

 

 真摯に翡翠に語り掛けるノノ……彼女の話を黙って聞いていた翡翠は、抱き締めるノノの腕を押すと宇宙空間を浮遊して距離を取って振り返る……その表情は穏やかなモノであり、ノノは己が言葉が届いたのかと期待した。

 

『……ノノねぇの話は分かった……けれど可能性の話を素直に信じる気にはならないよ』

 

 ――だから信じさせてよ。

 

 翡翠の瞳が再び深紅に染まると、その姿が変化していく――白いボディスーツの表面にあった蒼い結晶体が増殖して彼女の全身を覆い――より鋭利に、より攻撃的な姿へと変貌していった。

||

『――これが我ら『IMPERIAL・GHOST(帝国の亡霊)』の戦闘態勢(バトル・スタイル)、重力結晶に覆われた『GRAVITY・ARMOR(グラビティ・アーマー)』』

 

 深紅の瞳がより輝きを増して栗色の髪すらも深紅の輝きを発し――翡翠は右手を伸ばした。

 

『――『APPORT(アポート)』』

 

 





 どうも、最近力尽きて何時の間にか眠っている、しがない小説書きのSOULです。

 今回、翡翠が真の姿――重力結晶を纏った『GRAVITY・ARMOR(グラビティ・アーマー)』を披露しました。これは以前に時間結晶という概念を知ってから考えていた事なのですよね。

 時間結晶とは、一定の時間と空間に低エネルギーで規則正しく並ぶ状態のこと。条件が変わるなどの外的要因がなくても、ある時間が来ると、ふと我に返ったように解散する不思議な性質を持っているそうです。

 ……とはいえ、時間結晶自体がラボの実験装置止まりで、持続時間も数十分止まりとの事ですが、将来的にはコンピューターチップ内を流れる信号を同期させるシリコンや水晶などを使用した周波数発振器を越える発振器に応用出来るかも? との事。

 重力結晶は、ブラックホールの重力の井戸の奥深くで縮退物質を越える密度ながら重力崩壊を起こさない超縮退物質で構成される破壊不能の鎧。(……現実にはそんな概念すらありませんからね、念の為)



 では次回第62話 史上最大の姉妹ケンカ後編 出来るだけ早く投稿いたしますので、今しばらくお待ちくださいませ。ではでは~。


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