マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス   作:soul

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 アンコクノプリンセス編




第62話 史上最大の姉妹ケンカ 後編

 ――だから信じさせてよ。

 

 翡翠の瞳が再び深紅に染まると、その姿が変化していく――白いボディスーツの表面にあった蒼い結晶体が増殖して彼女の全身を覆い――より鋭利に、より攻撃的な姿へと変貌していった。

 

『――これが我ら『IMPERIAL・GHOST(帝国の亡霊)』の戦闘態勢(バトル・スタイル)、重力結晶に覆われた『GRAVITY・ARMOR(グラビティ・アーマー)』』

 

 深紅の瞳がより輝きを増して栗色の髪すらも深紅の輝きを発し――翡翠は右手を伸ばした。

 

『――『APPORT(アポート)

 

 


 

 

 光の回廊の前に布陣する『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊を前に『S・M・S』・新統合軍の連合艦隊は一進一退の戦いを繰り広げていた――異世界の超兵器バスターマシン7号ことノノの指揮下に置かれていた『新生バスター軍団』(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)の深緑の船体を前面に出して、新設された縮退炉の大出力に裏付けされた強力なビーム兵器を用いて鏡のような船体を持つ艦隊を攻撃するが、『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊の強力なシールドに阻まれて中々有効打を打てずにいた。

 

 超大型ステルス宇宙攻撃空母『バトル・フロンティア』

 

 『フロンティア船団』から参加した新統合軍の中でただ一隻の旗艦級の超大型戦闘用航宙艦である『バトル・フロンティア』の戦闘指揮所では、巨大な全天型のホロ・スクリーンの周囲に居る多数のオペレーター達は、ホロ・スクリーン上に表示された情報を読み解いて各方面に指示を出していた。

 

「敵『Re:MODELERS・シリーズ』の一部が側面に回りこもうとしています」

「――右翼の改型ゼントラーディ自動制御艦隊に対処させます」

 

 連合艦隊の中で唯一の新マクロス級である『バトル・フロンティア』は その巨体に見合うだけの装備を備ており、大小さまざまな艦船の集合体である移民船団を守る新統合軍艦隊の旗艦として運用されていた――そしてその旗艦としての旗下の艦艇を効率よく指揮してきた経験と様々な装備を見込まれ、『S・M・S』・新統合軍の連合艦隊上層部より『新生バスター軍団』(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)の指揮を任されたのだ。

 

 『新生バスター軍団』(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)は異世界の超兵器であるバスターマシン7号ことノノの指揮下にあったが、今回 光の回廊を攻略するにあたり最大の問題点――『マクロス・クォーター』と袂を分かった異星の少女 翡翠嬢が障害となって立ち塞がると宣言し、『クォーター』からの情報――翡翠嬢の目的がノノ嬢ただ一人であり、翡翠嬢は必ずノノ嬢の前に現れる筈だと言うこと。

 

 翡翠と戦う事になれば恐らく『新生バスター軍団』(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)の制御まで手が回らない……太陽系絶対防衛システムを構成していた本来の『バスター軍団』は高度な自立システムを有しており、ノノの指揮が無くてもある程度の自立行動を可能にしていたが、この世界で建造した改型ゼントラーディ自動制御艦隊にはそこまでの自立性はなく、指揮をする誰か――基本コマンドを入力する誰かを必要としていた。

 

 本来は高度なコンピューターを持つ『実験艦―02』が改型ゼントラーディ自動制御艦隊を統括する予定だったのだが、今やかの船は敵対して太陽系絶対防衛システムの中枢であったノノがその任に当たっていた……だが翡翠との戦いを控えている以上、別の誰かに改型ゼントラーディ自動制御艦隊の指揮権を移譲する必要性が出て来て――そこで旗艦装備を持つ『バトル・フロンティア』に白羽の矢が立った。

 

 移民船団を守護する無数の新統合軍を統括し、無人戦闘機であるゴーストAIF-7Sの運用実績もある事から『バトル・フロンティア』へ突入部隊の援護に向かったバスターマシン7号より指揮権を移譲され、短距離ワープにて戦闘宙域へと向かった彼女が予想通りに現れた翡翠との戦闘に突入した事により両翼に布陣する『新生バスター軍団』(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)は『バトル・フロンティア』の指揮下へと入っていた。

 

 『S・M・S』・新統合軍の連合艦隊の両翼を固める『新生バスター軍団』(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)の性能は凄まじく、連合艦隊全艦を包む強力なフィールドを持って空間跳躍型のワープ航法を可能とし、今目の前に立ち塞がる『Re:MODELERS・シリーズ』と呼ばれる鏡のような船体を持つ艦隊と長距離砲撃の撃ち合いで驚異的な砲撃能力と精密な照準能力を見せる……もしも彼の艦隊が居なければ遠距離から一方的に攻撃を受けていただろう。

 

「……凄いモノだな『新生バスター軍団』(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)とは」

 

 戦闘指揮所の指揮スペースに居る『フロンティア』軍の司令官は『新生バスター軍団』(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)の驚異的な戦闘能力に驚嘆していた。

 

「――この技術を習得出来れば、我々は更なる力を手に出来ます」

「……その為にも、この難局を乗りこねなければなりませんな」

 

 後ろに控える幕僚達は口々に改型ゼントラーディ自動制御艦隊の驚異的な戦闘能力を称賛し――その力を手に入れる為の方策を思案する……そんな彼らを冷めた目で見ている人物がいた。

 

 『フロンティア』大統領府首席補佐官レオン・三島、本人の強い希望でオフザーバーとして『バトル・フロンティア』に乗船していた……小さな悪魔(翡翠)に良いようにされた彼は、受けた屈辱を晴らす機会を求めて些か強引な手段を用いてこの戦いに参加していたのだ。

 

 視線を天球型のホロ・スクリーンへと向ければ、周囲に浮かぶ情報が投影されたスクリーンの一枚を注視する……そこには突入部隊の援護に向かったバスターマシン7号ことノノ嬢がフォールドの途中で妨害を受けて『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊のど真ん中にはじき出された光景が映されている……そして彼女と対峙する小さな悪魔(翡翠)の姿も映し出されていた。

 

 ……ようやく現れたか、この悪ガキめ。

 

 投影されたスクリーンの中ではノノ嬢と小悪魔(翡翠)が殴り合いのケンカのような事をしている……異世界の超兵器と異星の生物兵器の戦いにしてはえらく小規模な戦いというか子供のケンカのような事をしている……そして大出力の思念波で言い合いをしている事もあり内容は此方でも傍受出来るが――キノコとは自分の事だろうか? 

 

「……誰がキノコだ、この悪ガキ(翡翠)め」

 

 内容のあまりのくだらなさに眉間に皺を寄せながら毒づいていると、艦の周囲を監視していたオペレーターが悲鳴のような声を上げた。

 

「――正面宙域に異常発生!」

 

 彼女によれば前方宙域の空間に歪みが発生し、それは瞬く間に『バトル・フロンティア』全体を包み込んで、1600mの巨体は通常空間から消失した。

 

 


 

 

 ――『バトル・フロンティア』が消えた。

 

 目の前で起きた事象を理解出来ずに、『S・M・S』・新統合軍の連合艦隊の各艦艇は混乱の渦に陥っていた。

 

 全長1600mもの巨大なバトル級可変攻撃宇宙空母が忽然と姿を消した……撃沈された訳でもディメンション・イーターで跳ばされた訳でもなく、これまで『フロンティア船団』を守って来た守護神の突然の消失は新マクロス級の力を知る者――特に『フロンティア船団』で長く過ごして来た『マクロス・クォーター』のクルーに衝撃を与えていた。

 

「――何が起きた!?」

「……『バトル・フロンティア』の周辺宙域に異常が発生し、まるで強力な重力源でも有るかのように空間が湾曲して耐えきれずに時空連続体が崩壊しました」

「……ですが、確かに強力な空間湾曲波でしたが『バトル・フロンティア』のリパルシブ・フィールドなら十分に耐えられる強度があった筈です」

 

 目の前で新マクロス級の巨体が消失した事を見たジェフリー艦長は、敵『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊の攻撃を疑い……しかし戦闘宙域をモニターしていたモニカは『バトル・フロンティア』の存在していた空間そのものに異常が発生したと報告し、計測された数値では『バトル・フロンティア』の防御を突破出来ない筈だとミーナは推察する。

 

「……つまり、『バトル・フロンティア』が消失したのは目の前の『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊の仕業では無いと言う事か……ならばやはり……」

「十中八九、あの子の仕業でしょうね……」

 

 ジェフリー艦長の呟きに操舵稈を握ったままボビーが追従する……二人だけでなく、『クォーター』の艦橋に居る誰もが思っていた――『バトル・フロンティア』を消し去ったのは“あの”悪ガキ(翡翠)であると。何時の間にか都市型大型移民居住艦『アイランド1』に潜み、裏で色々と暗躍しながら独自の戦力を整えていた異星の少女――宇宙怪獣という未知の脅威の来襲を受けた『クォーター』の窮地に姿を現し、『バジュラ』の母星へと進攻した『フロンティア』軍を手玉に取って宇宙を埋め尽くした宇宙怪獣という脅威を退け――オズマの義妹 ランカに殺意を向けて袂を分かった翡翠と名乗る少女の仕業であると、ある意味確信のようなモノを感じていた。

 

 遂に直接的な攻撃……いや、『バトル・フロンティア』単艦をターゲットしている事から何らかの意図がある筈だ……それが何なのかは分からないが、彼女の干渉はこれで終わりとは思えなかった――そしてその推測は正しかった。

 

「――『クォーター』の周囲の空間に異常が発生! 周辺宙域の空間が歪み、歪みに捕らわれて『クォーター』は行動不能です!?」

 

 球体状のホロ・スクリーンを監視していたモニカより緊急の報告が入る――これは『バトル・フロンティア』が消失したのと同じ状況であった。

 

「――この船もターゲットか!? エンジン全開、なんとしても振り切れ!」

「――こなくそぉおお!」

 

 操舵を担当するボビーがメイン・エンジンの出力を最大にまで上げて補助ノズルや各スラスターも総動員するが歪みに捕らわれて脱出する事が出来ない――そして『マクロス・クォーター』は奇妙な光に包まれて、気が付いた時には周囲の景色が一変して先ほどまで随伴していたノーザンプトン級ステルスフリゲートやウラガ級・グァンタナモ級宇宙空母の姿はなく、代わりに白銀の船体を持つ無数の鏡のような船体に囲まれていた。

 

「……これは『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊か……我々は敵艦隊の中に短距離フォールドさせられたのか?」

「――艦長、本艦の後方2000キロの所に『バトル・フロンティア』を確認しました」

 

 ――無事だったか。

 モニカの報告に安堵の息を付くが、それでも敵艦隊に囲まれた危機的状況である事に変りはない。『バトル・フロンティア』との通信状況を確認しながら一刻も早く合流するべく行動を開始しようとしたその時、『クォーター』に乗り込む全てのクルーの頭の中に直接声が響いた。

 

『――これで役者は揃ったね』

 

 これはノノ嬢と翡翠嬢が多用していた思念波による通信か、ジェフリー艦長の推察を裏付けるように索敵を担当するモニカが天球型ホロ・スクリーン上に先行して戦っていたノノ嬢と翡翠嬢の姿を確認する。

 

『……かつて宇宙戦艦『ヤマト』は、ナデシコや惑星連邦は、逆境に陥っても諦めずに足掻いてそれを撥ね退ける力を見せた――君達はどうかな?』

 

 ノノ嬢に対峙している翡翠嬢はこれまで纏っていた白いボディスーツ姿では無く全身を鋭利な蒼い結晶体に包まれた攻撃的な姿をしている……望遠レンズにて映し出された彼女は にやりと笑った。

 

『――さあ、私に人が持つ可能性を、輝きを見せてよ』

 

 

 ――それじゃ、続きを始めようか。

 

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。

 今回は、キノコ補佐官ことレオン・三島首席補佐官が良い味を出していると思うんです……煮物にしても鍋に入れても美味しいからな、キノコ。(オイ

 現在完結に向けて風呂敷を畳んでいます。

 今回ストックが切れてしまったので、続きは少しお時間を頂きます。ではでは~。
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