マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス   作:soul

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 アンコクノプリンセス編


第64話 神代の一撃

 

 巨大な輝くリングの下で翡翠は対峙する深紅の髪を靡かせる異世界の超兵器バスターマシン7号ことノノと、この世界の力の象徴たる『マクロス』の名を冠した二隻の戦闘用空母 『マクロス・クォーター』と新マクロス級『バトル・フロンティア』を前に悠然と立っていた。

 

『……アレは何なのですか、翡翠? 途轍もないエネルギーを感じるのに、それが何なのか解析出来ない……』

 

 困惑した表情を浮かべてノノは問い掛け、彼女の疑問に対して翡翠は解説を始める。

 

『アレは無数の並行世界が漂う場所……数え切れないほどの並行世界が生み出される、まさに全ての母ともいえる空間――超空間としか言いようのない場所だよ』

 

 ノノ達の視線が輝くリングの内側に広がる何色にも見える不思議な光を発する空間を見上げながら翡翠は語る――自身が創り出した輝くリングによって、この宇宙と付属するサブスペースを貫いて宇宙の外に広がる超空間――『BULK(バルク)』が露になったと。

 

『ノノねぇが解析出来ないのも当然だよ、超空間――『BULK(バルク)』とは無数の宇宙いわゆるマルチバースが存在する場所であり、物理法則や常識が通用しない場所』

 

 輝くリングの内側に広がる超空間は強力なエネルギーに満ちた人知の及ばない空間であり、そこには自分達の良く知る秩序――物理法則すら無い、いわば混沌とした世界であった。

 

『そして、マルチバースを――無数の並行世界を生み出すだけのポテンシャルを秘めた空間、それが『BULK(バルク)』……超空間と呼ばれるモノだよ』

 

 誰もが輝くリングの内側に広がる超空間――『BULK(バルク)』に目を奪われる中、翡翠の説明が続く。

 

『これから私は最大の技を放つ、これが決まれば私の勝ち……だけど、この技を防ぎ切ったとしたら……ノノねぇ、これで死んだら許さないからね』

 

 眩い輝きを放つリングの中心が盛り上がり、この宇宙へと超空間より“何か”が現出する。

 

『――天雷』

 

 翡翠の言霊と共に輝くリングの内側に広がる超空間の中央部分が盛り上がり、限界を超えると今まで以上の輝く“何か”が通常空間へと現出する――それはこの世界にはどこにも存在しないモノ、人の理解出来る範囲を大きく超えた原初のエネルギー。

 

 計測機器による測定は出鱈目な数値を出すか反応を見せないかのどちらかなので、眼前に迫る輝く“何か”がどのような性質を持つのかは分からない――だがあの翡翠がわざわざ宣言までして放つモノなのだ、凶悪な威力を持つに違いない。

 

「――緊急回避!」

「……ダメです! 大きすぎます、未知のエネルギーが到達するまでに安全圏に離脱するのは不可能です!?」

 

 輝くリングより撃ち出された膨大なエネルギーは進路上の空間を変質させつつ、より規模を大きくしながら迫る……その直径は『クォーター』や『バトル・フロンティア』を飲み込むばかりか、方向転換をして離脱しようとしても膨大なエネルギーの波に飲み込まれてしまうだろう……『マクロス・クォーター』のブリッジから未知の輝きを放ちながら迫るエネルギーの奔流を見つめるジェフリー艦長。

 

「……万策尽きたか」

 

 既にリバルシィフ・フールドは最大出力で展開しているが、目の前に広がる未知のエネルギーの奔流相手ではどこまで耐えられるか……絶望的な状況ながら何か方策は無いかと必死に思案していると、船を庇うかのように深紅の髪を靡かせたバスターマシン7号ことノノ嬢が正面に移動すると未知のエネルギーの膨大な奔流の前に立ち塞がって食い止めようと前面に力場を展開する。

 

「――『ファジカル・リアクター(物理法則書き換え機関)』か!?」

 

 ノノの張った力場が障壁となって極彩色のエネルギーの濁流を食い止めている……この世界の地球が経験した無数の戦闘艦艇を従えたゼントラーディの基幹艦隊をも上回る圧倒的な勢力を誇る宇宙怪獣の脅威に晒された別の世界の地球が生き残るために、幾つものブレイク・スルーを越えて生み出した守護の女神バスターマシン7号に搭載された『ファジカル・リアクター(物理法則書き換え機関)』――効果を及ぼせる範囲に限りがあるとはいえ、空間の物理法則を書き換える事やエネルギーや重力子すら生成できると言う。

 

 現在の地球文明はおろか古代プロトカルチャー文明すらも上回る、まさしく神の御業と呼ぶべきモノ……事実、ノノ嬢の操る『ファジカル・リアクター(物理法則書き換え機関)』によって何度危機を救われた事か。

 

「――ノノの張った障壁によって未知のエネルギーの進行は食い止められています……ですが、未知のエネルギーの威力は強力のようでノノの張った障壁が何時まで持つか……」

 

 未知のエネルギーとノノの張った障壁のせめぎ合いをモニターしていたモニカは、ノノの張った障壁が徐々にだが未知のエネルギーの威力に圧され始めている事を告げて来る……その言葉に障壁とエネルギーの境界線を見れば、一見拮抗している様に見えるが徐々に未知のエネルギーに圧され始めている様だった。

 

 

 翡翠が創り出した輝くリングから放たれた未知のエネルギーの奔流の前に躍り出たノノは、内蔵された『ファジカル・リアクター(物理法則書き換え機関)』によって迫るエネルギーの進行を止めようとしたが、何故か上手くいかずにジワジワと障壁が削られて行く。

 

 ……『ファジカル・リアクター(物理法則書き換え機関)』で止められない?

 

 彼女を第六世代型のバスターマシンたらしめている、如何なる物も変化させて望むものを作り出す事が出来る英知の結晶たる『ファジカル・リアクター(物理法則書き換え機関)』で止められないとは……一体なぜ?

 

『――『ファジカル・リアクター(物理法則書き換え機関)』では、それは止められないよ』

 

 視界を覆いつくす未知の性質を持つエネルギー体を解析しようと内蔵されたあらゆるセンサーを総動員するが、“これ”が何なのか解析の糸口すら掴めず焦りを見せるノノ……そんな内心を知ってか知らずか、この未知のエネルギー体を撃ち出した翡翠の放つ思念波通信が届く。

 

『……ノノねぇは以前に言っていたね、『ファジカル・リアクター(物理法則書き換え機関)』はこの世界のあらゆる物理法則を書き換える事が出来ると――つまり、この世界の“外”のモノに対しては『ファジカル・リアクター(物理法則書き換え機関)』は効果を及ぼす事が出来ない』

『――翡翠!?』

『……この世界だけでなく無数の並行世界が浮かぶ超空間――『BULK(バルク)』には無数の宇宙つまり並行世界を生み出すだけの、まさに無限のエネルギーを秘めている――さぁノノねぇ、どうしのぐ?』

 

 翡翠の思念波が響く中、まかりなりにも未知のエネルギーの勢いを食い止めていた障壁が突破されてノノを含む二隻の戦闘空母は光の濁流飲み込まれて行った……その様を見ていた翡翠は小さく嘆息する。

 

 異なる世界の地球が外宇宙の脅威から母星を守る為に生み出した第六世代の技術の粋を集めた太陽系絶対防衛線の中枢たるバスターマシン7号ことノノ――そして、この世界の地球において特別な意味を持つ『マクロス』の名を冠した銀河を旅する移民船団を守ってきた『マクロス・クォーター』と新マクロス級『バトル・フロンティア』二隻の戦闘用宇宙空母。

 

 彼女の世界の英雄『ノノ・リリ』に憧れ、少しでも彼女に近付こうと自己研鑽をするノノ、初期文明の段階で星間戦争を繰り広げる500万を超える戦闘用艦艇を誇るゼントラーディ基幹艦隊との戦いを生き残ったこの世界の地球人類の力の象徴ともいえる『マクロス』の名を冠する彼らなら――いずれ自らを超える存在へと至るかもしれない。

 

 そう考えた翡翠は己が秘儀――無数の並行世界が浮かぶ、すべてを生み出すだけのポテンシャルを内包する超空間『BULK(バルク)』をこの宇宙に顕現させ、その神秘の力を用いた『天雷』を見せたのだ――全知全能であり、全てを思うがままに操る『高位存在』を超える『TRANSCENDENT(超越者)』へと至るなら、これくらいは凌いでもらわなければ話にならない。

 

 さあ、どうするノノねぇ? 『天雷』はこの宇宙の物理法則の外からの一撃、ノノねぇ自慢の『ファジカル・リアクター(物理法則書き換え機関)』では打ち消す事は出来ない――もし本当にこれでヤラれたら……許さないからね、ノノねぇ。

 

 深紅の瞳で言語化不可能な輝きが流れるを見ていた翡翠は、バスターマシン7号ことノノと二隻の『マクロス』の名を冠した戦闘空母が『天雷』の光に飲まれた場所を見つめる……『BULK(バルク)』から導いた理解不能な輝きに飲まれたまま今だ動きを見せない……ノノねぇなら、一万周期もの間 地球を含む恒星系を守り抜いたバスターマシン7号なら、『天雷』の光に飲まれても何かをやってくれるかもしれない。

 

 ……だが、何時まで待っても彼女の望む変化の兆しはなく、『天雷』の輝きが消えた後、ノノ達の姿は何処にも無かった……それでも翡翠はノノ達が居た宙域を見つめていたが、小さく――本当に小さく溜めていた息を吐くと、『実験艦―02』へ帰還しようとしたその時、彼女の超感覚が頭上――天頂方向に違和感を感じる。

 

 ――まさか!?

 

 天頂方向に視線を向けると、そこには宇宙空間が湾曲して隣接する亜空間が露出し――二隻の『マクロス』の名を冠した宇宙空母と紅い人影――バスターマシン7号ことノノの姿が現れる。

 

 ……ワープで二隻ごと跳躍して避けたか――さすがノノねぇ、そうでなくちゃ!

 

 満面の笑みを浮かべた翡翠は自身が形成した輝く巨大なリングの向きを天頂方向に向けるが――如何な翡翠とて直ぐには巨大なリングの向きを変える事は出来ず――それが勝敗を分けた。

 

 ――なっ!? あのモーションは!?

 

 ワープから脱した二隻と一人は、その勢いのまま距離を取ると周囲に余剰エネルギーを放電しながら見覚えのある構えを見せる……見覚えがあるのは当然だろう。

 

 ――彼女も使った構えなのだから。

 

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。

 今回放たれた『天雷」は超空間より導き出される、無数の並行世界を生み出す原初のエネルギーを相手にぶつけるという、翡翠でも数発しか放てない奥の手中の奥の手。

 とはいえ、翡翠の目的はこの勝敗に関わらず果たされ、後はノノがどのようにしてこの『天雷」を対処するかに興味は移っています……故にノノが『天雷』に負ける事を許さない……自分勝手ですね翡翠は。

 では次回 第65話 決着 7/2 0時更新予定です。
 ではでは~。
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