マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス   作:soul

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 アンコクノプリンセス編




 時は少し前に遡る。

 決戦の地である『光の回廊』まであと一回のワープで到達可能な地点まで来ていた『S・M・S』・新統合軍の連合艦隊は、待ち構えているであろう『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊に対して幾つかの作戦を立てていた。

 圧倒的な数を持つ恐るべき侵略者 宇宙怪獣がこの世界へと侵攻する為に必要な別の宇宙への結節点である『光の回廊』を破壊する為にバジュラの母星近辺の戦いで損傷したステルス・フリゲート艦を改造して即席のディメンション・イーター艦を『光の回廊』へと突入させて内部で自爆させて別の宇宙への繋がりを断ち切る。

 『S・M・S』・新統合軍の連合艦隊の大部分の艦艇で正面から突入して『光の回廊』付近の詳細なデーターを測定し、そのデーターを後方で待機する別動隊へと送信――『光の回廊』までの進路を妨害するであろう『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊を一気に飛び越えようというのだ。

 そして最後のワープ前の調整をしている『バトル・フロンティア』に連合艦隊上層部からの要請――『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊と共に待ち受けているであろう翡翠と呼ばれる異星人の少女との激突が予想されている異世界の決戦兵器であるバスターマシン7号ことノノ嬢より、彼女の制御下に置かれている『新生バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)』の指揮権を移譲したいと言う。

 高い戦意を見せる翡翠嬢との戦いは激戦が予想され、彼女との戦いに集中するであろうノノに『新生バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)』の制御まで手が回らない可能性が高いと言うのだ……故に連合艦隊に参加している艦艇の中で地球人類が建造した最大クラスの艦であり、旗艦装備がもっとも充実している新マクロス級宇宙空母である『バトル・フロンティア』に白羽の矢が立ったのだ。

 その要請は長年移民船団を守護してきた新統合軍の旗艦であり、『マクロス』の名を冠する新マクロス級宇宙空母を運用して来た彼らクルーの自尊心を満足させるに足るものであったが、その後に『マクロス・クォーター』から通信が入った事が彼らを困惑させる。

 超時空生命体バジュラに対する意見の相違から袂を分かった『フロンティア・S・M・S』所属の『マクロス・クォーター』から連絡が来るなど一体何の用事なのやら……困惑と若干の警戒心を持ちながら通信を受けると、ホロ・スクリーン上に浮かび上がったのは、『マクロス・クォーター』艦長ジェフリー・ワイルダー大佐と『新生バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)』の指揮権の移譲を提案した異世界の決戦兵器バスターマシン7号ことノノ嬢の姿であった。

 異世界の地球文明が生み出した究極の決戦兵器……概要は『クォーター』から『S・M・S』本部に提出された資料を連合艦隊全体で共有し、『バトル・フロンティア』にも資料が回ってきた。

 高度な自立性を持ち、絶大な戦闘能力だけでなく単機で超光速航法すら成し遂げる究極の兵器……彼女を最初に確認したのは二隻の重戦艦級を要するバジュラの集団の侵攻を受けた時、守るべき巨大都市型移民船『アイランド1』へ重戦艦級の主砲から放たれた重量子ビームが直撃しようとした時、戦場に突然現れて『アイランド1』を守ったのが彼女だった。

 そして『クォーター』の艦長と共に姿を現した彼女から告げられたのは、意外にもこれから戦うであろう翡翠嬢との戦いへの協力要請であった……高い戦意を見せた翡翠嬢との激突は必至であり、これまでにも色々な能力を見せた翡翠嬢との戦いは激戦が予想された。

 ……だがノノの目的はあくまで翡翠嬢の説得であると言う。
 それを聞いた『バトル・フロンティア』の首脳陣は何とも言えない顔をした……彼らが翡翠と接触した事が有るが、それはバジュラの母星侵攻の最終局面――地上への降下を終えて、いざバジュラの指揮中枢である女王を押さえようとした時に、秘かに新統合軍艦艇に仕掛けられていたケミカル物質によって作戦中にあるにも関わらず全てのクルーが享楽的な状態に強制的に陥らされたのだ――それ故に『バトル・フロンティア』クルーの翡翠への印象は最悪なのだ。

「……しかし、果たして彼女は説得に乗って来るだろうか?」

 『バトル・フロンティア』の司令官は不信感も露にするが、ノノはその為にも『バトル・フロンティア』の協力が欲しいと言う。

『……翡翠はノノに『TRANSCENDENT(超越者)』になれと言ってますが、他にもあの子は常々言っていました――『人の持つ輝きをみせて欲しい』と』

 『マクロス・フロンティア船団』がバジュラの襲撃を受けた時、人々を助けようとするノノに対し、翡翠は冷めた表情を浮かべたまま静観を選択した……彼女は人間同士の争いや種族間の戦争を生命体の業だと断じて不干渉を宣言する――そこには異なる世界からの来訪者である自分とは関係がないとドライに切り捨てただけでなく、生命体の業から逃れられない人間への強烈な侮蔑も入っていた。

 ――だが同時に人が持つ可能性を輝きと称して、それを渇望してもいた。

『――そこに翡翠を攻略するカギが有ると思うんです――翡翠のど胆を抜いて、出来た隙を付いてあの子を説得します』





第65話 決着

 

 

 未知の空間から撃ち出されたエネルギーの奔流の直撃を受けた『マクロス・クォーター』と『バトル・フロンティア』だったが、異世界の決戦兵器であるバスターマシン7号ことノノの展開するフィールドに包まれたまま短距離ワープにて危機を脱した二隻の戦闘空母は、脱した勢いのままノノ嬢によって再び短距離ワープを行って翡翠の頭上にワープアウトしてそのまま急上昇を行う。

 

 

 『マクロス・クォーター』ブリッジ

 

「――急速上昇!」

「――了ぅう解ぃい!」

 

  ワープアウト後にも拘らず『クォーター』艦長ジェフリー・ワイルダー大佐の命令を受けて操舵士のボビーは『クォーター』の船体を操作して両脚のエンジンを最大出力で噴出させて加速する――その隣ではキャシーが船体各部の隔壁を閉鎖させて船体の強度を少しでも確保しようと指示を出し、艦内ステータスを管理するミーナより矢継ぎ早に指示が出される。

 

 

 『バトル・フロンティア』戦闘指揮所

 

「――各隔壁閉鎖」

「――姿勢制御システム最大稼働、補助バイパス解放、重力制御システム最大稼働します」

「スタビライザー安定、エンジン出力増大、最大戦速!」

 

 『バトル・フロンティア』を制御する各オペレーターが事前に決められた手順に沿って強行型へと変形した巨大な人型を制御しながら最大出力で加速しながら上昇させていく――同じく上昇を続ける『マクロス・クォーター』と共に一定の距離を上昇した『バトル・フロンティア』は、事前にノノ嬢より提供されたモーションデーターを元に作成されたプログラムに従って千メートル以上の巨大な人型が力を籠めるような態勢になり――本来そのような可動をするような事は想定されていない故に各部に負荷がかかるが、『バトル・フロンティア』と共に上昇した深紅の髪を持つノノが内蔵された神秘の機能『ファジカル・リアクター(物理法則書き換え機関)』によって無理な挙動を行っている『マクロス・クォーター』と『バトル・フロンティア』に掛かる負荷を軽減させながら――ノノにとって伝統の技を再現させた。

 

 


 

 

 ……おいおい、これってまさか?

 

 小ワープなどという小癪な技で『天雷』を回避したノノと二隻の宇宙空母がこの世界の伝統の機能『トランスフォーメーション』を行いながら強行型へと変貌していく……エンジン全開で加速しながら変形する事のよる負荷は、恐らくノノの『ファジカル・リアクター(物理法則書き換え機関)』による周辺宙域の法則を書き換える事によって軽減もしくは消去しているのだろう。

 

 『ファジカル・リアクター(物理法則書き換え機関)』などと言う神の御業といえば聞こえが良いが、周囲の空間の状態をリアルタイムで解析して その物理法則を書き換えるなど、どれだけの演算能力が有れば可能なのやら……やれやれアレだな、そんな苦行のような能力を喜んで使うノノねぇは真正のマゾに違いない。

 

 自らが創り出した輝くリングの向きを変えながらそんな他愛も無い事を考えていた翡翠は、ノノと二隻の宇宙空母が加速を止めた事に気付く……こうして距離を取ったと言う事は、長距離からの攻撃――ノノ自慢の『バスタービーム』や二隻の宇宙空母の最大火力『マクロス・キャノン』の同時攻撃か、ノノねぇの足から生えるミサイル・サイロや空母の能力を最大限に発揮した艦載兵器による面攻撃だろう……そう予想していたのだが、二隻の強行型へと変形した宇宙空母と深紅の髪を持つ義理の姉が周囲に余剰エネルギーを放電しながら見覚えのある構えを見せた。

 

  ――なっ!? あのモーションは!?

 

 彼女達が取ったモーションに覚えがあるのは当然である――ノノとの戦いの狼煙がわりに翡翠自身が用いたモーションなのだから。

 

 全長1600m強の超大型ステルス空母と400m級の可変攻撃空母が天頂方向から猛スピードで落下――いや、加速して翡翠へと向かって来る……この世界人間は航宙艦を人型に変形させる発想はあっても、その人型で格闘戦をしようなんて発想は無いと思うから、これはノノねぇの発想だろう。

 

 ……前々から思っていたが、ノノねぇの思考回路は脳筋気味だと思う――巨大な航宙艦が猛スピードで迫った所で、人間サイズの目標を捉える事が出来ると思っているのだろうか?

 

 1000mを超える巨大な金属の塊が自分を捕らえようと迫って来るが、苦笑を通り越して失笑してしまう翡翠――ほら、インパクトの瞬間に高速回避をすれば相手は自分を捕らえる事無く空しく通り過ぎていくだけだ。

 

(……んっ?)

 

 事実、巨大な金属の塊を易々と回避するが、空しく通り過ぎるだけの金属の塊達の中から何かが飛び出してきて、回避行動を取る翡翠を追撃して来る――『マクロス・クォーター』だ。

 

 『バトル・フロンティア』と共に高速で落下して来た『マクロス・クォーター』は、『バトル・フロンティア』が回避されるや即座に方向を変えて回避する翡翠を捕らえるべく“真横”に落下していく……おいおい。あの航宙艦の船体構造では、こんな急激な方向転換をすれば負荷に耐えられずに船体が崩壊するだろうに。

 

 『マクロス・クォーター』の追撃に加速しながら回避行動を取る翡翠……だが400mの金属の塊はしつこい位に宇宙空間を飛ぶ翡翠を追撃して来る……その速度は、これまでの『クォーター』の最大戦速すら超えていた。

 

(――そうか! 『ファジカル・リアクター(物理法則書き換え機関)』!?  あの変態装備で落下する『クォーター』の周辺の物理法則を書き換えて、落下のベクトルを“真横”に変えたのか!?)

 

 ――しかも、共に落下して来た『バトル・フロンティア』の落下のエネルギーすら上乗せして、目を見張るような猛スピードで此方を追従して来る……いくら慣性の負荷を『ファジカル・リアクター(物理法則書き換え機関)』で書き換えたとはいえ、あんなスピードを出せば船体構造に致命的なダメージを受けて崩壊するだろうに、恐らくノノねぇの変態機関『ファジカル・リアクター(物理法則書き換え機関)』の能力で船体構造を強化しているのだろう……中に居るクルー達の身が耐えられるかどうかはノノねぇが何とかするだろうから、後は光速に近い速度で追従して来る金属の塊(クォーター)を躱すだけだ。

 

 ……3,2,1――此処だ!?

 

 猛スピードで迫って来る400mの強行型の大型のノズルが密集する脚に当たる部分が迫る中、タイミングを計った翡翠は直撃する寸前に急角度で進路を変更して金属の塊を回避する……急角度の方向転換は翡翠の内臓に負荷をかけたが、纏う『GRAVITY・ARMOR(グラビティ・アーマー)』と『SECOND・SKIN(第二の皮膚)』の防御力によって口から出る事は無いようだ。

 

 ……さあ、反撃しようかと回避行動によって距離は開いた輝くリングの向きを調整しようとしていた翡翠は、『マクロス・クォーター』から真紅の髪を持つ白いボディスーツに赤いラインの入った人型が飛び出して来たことに気付く――深紅の髪を持つ人影は翡翠に向けて蹴りの態勢を保ったまま迫る――異世界の決戦兵器バスターマシン7号ことノノだ。

 

『――スーパートリプル・いなずまキッッツクゥクウウ! たぁぁああああ!!』

『――げっふぅ!?』

 

 『バトル・フロンティア』の加速に加えて『マクロス・クォーター』のスピードも上乗せされたノノのスピードは ほぼ光速に等しく無限大質量となったノノの蹴りは翡翠に見事に命中して『GRAVITY・ARMOR(グラビティ・アーマー)』と『SECOND・SKIN(第二の皮膚)』の守りを突破して翡翠の本体に直接ダメージが入り……やっぱりノノねぇは“脳筋だ”と文句を言いながら翡翠は意識を失った。

 

 


 

 

 

 どれだけ意識を失っていたのだろうか? 脳筋なノノねぇらしい脳筋な攻撃の直撃を食らって情けなくも意識を失ってしまったらしい……身を起こしながら体に違和感が無いかチェックするも不調は無いようだ。

 

 さすがに『GRAVITY・ARMOR(グラビティ・アーマー)』は解除されたようだが、常時纏っている『SECOND・SKIN(第二の皮膚)』に問題はないようだ……しかし、光速に近いノノねぇの無限大質量による攻撃くらいで『GRAVITY・ARMOR(グラビティ・アーマー)』と『SECOND・SKIN(第二の皮膚)』の守りを抜かれる筈はないのだが……これがノノねぇが常々言っていた『努力』と『根性』の力なのか? 暑苦しいと思って聞き流していたが、中々馬鹿に出来ないモノである。

 

「……目が覚めた、翡翠ちゃん?」

 

 誰かが……いや、覚醒前に周囲の索敵を行ったので現状は分かっている。視線を向けると、そこには緑色の髪をショートに整えたランカと、彼女の憧れであり共に戦場に歌を響かせたシェリル、そして麗しき義理の姉ノノが自分をのぞき込むようにして見ていた……その他にも少し離れた所に『クォーター』艦長ジェフリー大佐や、妙な色気を持つボビーのおねにいちゃんや怒りっぽいキャシーの姿がある

 

 見れば、ランカを始めとした誰の表情にも若干の緊張が有る……まあ、これまで自分がしてきた事を考えてみれば周りの人間が緊張するというのも納得が出来る――その時、翡翠の身体に掛けられていた布が落ちる……よくよく見れば、自分が横になっていた床の素材の上には厚みのある布が敷かれていた……まったくお人好しな事で。

 

「……翡翠…」

 

 緊張を含んだ声に視線を向けると真剣な表情を浮かべたノノねぇの姿が有った……その後ろ――ジェフリー艦長達の背後には武装したクルーが控えている……まあ、これまでやって来た事を思えば、こうして要注意人物認定されるのは当然だろう……いささか脳筋ぎみだと思うが、確かに人の持つ可能性の光を見せてもらった――ならば歩み寄るのは此方の方だろう。

 

「――はぁ、参った、参りました。けどね、ノノねぇ? 確かに負けたけど、か弱い義理の妹相手に蹴りを叩き込むなんて、脳筋ぎみが進んでいるじゃないの?」

「――しつれいな!?」

 

 翠眼を柔らかく細めながら毒舌を吐いてノノをからかう翡翠の姿に昔の二人の姿を重ねたランカは、これだけ皆を悲しませ心配させながらも本人がケロリとしている事に胸の中に言いようのないムカムカしたものが沸き上がった。

 

「――翡翠ちゃん!」

「――んっ?」

「――このおバカ!」

「――おおっ、ランカねぇちゃんまで!?」

「――たった一人で袂を分かって、心配するノノやみんなの事も考えずにケンカを売って! 結局 翡翠ちゃんは何がしたかったのよ……」

 

 目に涙を貯めて怒りをぶつけて来るランカを宥めながら翡翠は、超時空生命体バジュラとの戦いに駆り出されて人類とバジュラ二つの種族の戦争を止めるべく尽力して来たランカに圧し掛かっていたプレッシャーの重さを思う……さらにそこに宇宙怪獣という害獣どもまで絡んで来たのだ、十代半ばの少女にはいささか荷が重すぎると言うモノだ。

 

「……翡翠ちゃんが言っていた、私の歌があの恐ろしい宇宙怪獣達を呼んだって……何とかしたいと思ったけど、その時には翡翠ちゃんはもう居なくて……」

 

 ……ランカの弱音を聞いた翡翠はバツが悪そうに後頭部をポリポリと掻く……『光の回廊』から宇宙怪獣が出現している事を突き止めた翡翠は探査プローブから射出させたドローンを突入させて――回廊の先に広がる別の世界の巨大銀河『TGD』内で群がる巨大な宇宙怪獣軍団の存在と、その巨大銀河に響く微弱な波動――ランカの歌声を感知したのだ。

 

 その事実を認識した時、翡翠は考えた――これはいけない、頂けない――あんな何もない所でコケたり、可愛くない無気味なグッズを集めて悦に至っているような普通の少女が災厄の襲来の引き金を引くなど、その重圧に耐えられるわけがない――そう考えた翡翠は一芝居打つことにした。

 

 衆人環視の前でランカに殺意を向けて、彼女を異星人に狙われた被害者へと仕立て上げながら人々の害意を一身に受ける……そうする事でランカが受けるかもしれない害意を肩代わりするつもりだったのだ……誰にも相談せずに自らの考えだけで。

 

 ――その結果が、目の前で泣いているランカだった……ヤラかした自覚が芽生えて来た翡翠は、オロオロと泣いているランカを慰める……いわく、あの時はたまたまランカの歌が波動として流れていただけで、それ以外にもこの世界から様々な波動が流れ込んでおり、どの道 知的生命体の活動による波動が流れ込んで遅かれ早かれ害獣どもの侵攻は時間の問題だったと。

 

「――という訳で、たまたまランカねぇちゃんの歌が流れていただけで、あの害獣どもが侵攻してきたのは、別にランカねぇちゃんの所為って訳じゃ……」

 

 翡翠の慰めを聞いていたランカは俯いてプルプルと震えていたが――遂にばくはつした。

 

「――そういう事は早く言いなさい! なんでそんな大事な事を言わないの!? こら、こっちを向きなさい翡翠ちゃん!」

 

 明後日の方に向きながら下手糞な口笛を吹く真似をして誤魔化しにかかる翡翠の顔に手をやって自分の方に向けようと力を籠めるランカ……そんな二人の低レベルな攻防を仲裁しようとしながらも、あっさり無視されてしょんぼりするノノ……そんなグダグダな空気の中、騒がしい妹分達を微笑ましそうに見ていたシェリルは、一つ混ぜて貰おうと未だ低レベルな攻防を繰り広げている困った妹分達に歩み寄る。

 

「……まったく、騒がしい妹達でお姉ちゃんは大変だわ」

 

 今でこそトップシンガーにまで上り詰めたが、彼女 シェリルは天涯孤独の過酷な幼少時代を送っており、そんな彼女には目の前で年下の少女達がじゃれ合う姿に思う所があったのかもしれない……。

 

「……いや、シェリルはフケてるから、お姉ちゃんというよりはお母さ――――あだたたたた!?」

「――余計な事を言うのはこの口かしら?」

「――ゴ、ゴベンナザイ、ギデイナボネゲジャン(ご、ごめんなさい、きれいなおねえちゃん)!?」

 

 余計な事を言うこましゃくれた翡翠とか言う少女のほっぺたを思いっきり抓りながら伸ばすと、涙目になった翡翠が平謝りしてくる……そういえば『アイランド1』で宿泊していたホテルのロビーで、トンデモナイ発言をしてくれたのも確かこの翡翠とか言う女の子だった……両のほっぺたを思いっきり引っ張ってニギニギした後に留飲を下げたシェリルが解放すると、赤くなってヒリヒリする頬をさすりながら涙目になる翡翠。

 

 過酷な宇宙空間での行動も可能にし、致死量の放射線や強い衝撃から守る『SECOND・SKIN(第二の皮膚)』だが、軽い接触のような弱い刺激はそのまま素通りする……そうでなければ、触れた感覚が分からず日常生活にも支障が出るからだ。

 

 文字通り余計な一言によって手痛い代償をもらった翡翠の姿に、誰からともなく笑い声が響き、何時しかそれはその場にいる皆が笑い、当の翡翠も苦笑いを浮かべ――その瞬間、彼女の超感覚が遂に来るべき時が来た事を知らせて、真剣な表情を浮かべた翡翠は鋭い視線を横の方向へと向ける。

 

「……翡翠?」

 

 突然 彼女の雰囲気が変わった事に気付いたノノが訝し気に問い掛けると、横に視線を向けたまま彼女は答えた。

 

「――来た」

 

 翡翠がそう告げると同時に、ジェフリー艦長の前に通信用のホロ・スクリーンが浮かんで艦橋で周辺宙域の警戒を行っているモニカより緊急連絡が入った。

 

『艦長、緊急事態です――方位024、マーク35、距離50億キロ先に強烈な重力場が発生……これは宇宙の外からの干渉です』

 

 

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。

 遂にノノと翡翠の姉妹ケンカにも決着が付き、クォーターの艦内においてランカとも一応の和解をしました。

 ――ですが、それに水を差す事態が起こり、その解決に向けて一丸になって対処する事になります……ですが、その話はこれから書きますのでしばらくお時間を頂きますので、気長にお待ちくださいね。ではでは~。
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