マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス 作:soul
アンコクノプリンセス編
異世界の決戦兵器バスターマシン7号ことノノと、彼女を中心とする無人兵器群『
その傍らで、この世界において義理の姉妹を名乗った二人 異世界において第六世代型恒星間航行決戦兵器として太陽系を守護して来たノノと、別の宇宙では邪悪の極致と恐れられた『
――そして今、最後の戦いの幕が上がろうとしていた。
姉妹ケンカというには大規模な諍いだったが、それも決着が付いて『マクロス・クォーター』左舷飛行甲板上に設置された特設ステージ内に集ったシェリルやランカそして『クォーター』のクルー達の前に意識を失った翡翠を抱えたノノが降り立ち、用意された毛布の上に翡翠を優しく下ろす。
暫くして翡翠が目を覚ました事に緊張が走るが、意外な事に翡翠は素直に自らの敗北を受け入れて、昔のようにノノやランカそしてシェリルと漫才のような会話をして周囲の笑いを誘う――だが、その時翡翠の超感覚が『光の回廊』とは別の大規模な重力異常を察知し――遂に来るべき時が来た事に視線を鋭くする。
「……どうしたの、翡翠?」
「――来た」
立ち上がった翡翠は、『マクロス・クォーター』の進路上に見える圧倒的な光量を放つ『光の回廊』より少し右上に向けて鋭い視線を向ける……これまで様々な能力を見せた翡翠の雰囲気が変わった事に戸惑いを見せる者も居れば不安げな表情を見せる者も居る……どちらにせよ、何か異変が起こっていると感じた「クォーター」のクルーは表情を引き締める。
――そんな中で「クォーター」艦長ジェフリー・ワイルダー大佐に向けてコールが鳴り、彼の前に通信用のホロ・スクリーンが立ち上がる……通信を送って来たのは、「クォーター」の艦橋で艦周辺宙域の監視をしていたモニカだった。
『艦長、緊急事態です――方位024、マーク35、距離50億キロ先に強烈な重力場が発生……これは宇宙の外からの干渉です』
艦橋で周辺宙域の警戒を続けていたモニカは、全天球型ホロ・スクリーン上に表示される以上に気付いて詳細なスキャンをした結果、目的地である「光の回廊」の右上50億キロの宙域に異常な重力場を感知したのだ。
「……翡翠嬢、君はこれを予測していたのか?」
モニカから報告が来る前に彼女が反応を見せていた事から、ジェフリー艦長は翡翠がこの異常事態を予測していたと確信して問い掛けると、鋭い視線で『光の回廊』の少し右上――異常重力場を見据えていた翡翠は視線を外さぬまま説明を始める。
「まあね、元々『光の回廊』の前に『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊を布陣させたのは、連合艦隊を迎え撃つ準備と同時に『光の回廊』から湧き出てくる害獣どもの先行部隊を叩く為……」
橋頭保を確保しようと次元回廊を通って害獣ども――宇宙怪獣の小規模……と言っても数万の集団が絶え間なく来襲して この宇宙に湧き出ていたが、『Re:MODELERS・シリーズ』の指揮訓練に丁度良いとばかりにグレイス・オコナーに害獣どもの迎撃を一任したのだ。
「……それは、なんというか……」
話の内容というか、相変わらずの翡翠の無茶ぶりにドン引きするノノ……義理の姉妹として『アイランド1』に潜伏している間にも、思い出したかのようにとんでもない事を強制して来る翡翠の一番の被害者であるノノは引きつった表情を浮かべる。
巨大都市型移民居住艦『アイランド1』内でアパートを借りて共に生活している時も、時折 翡翠の無茶ぶりに苦労させられたノノ……菓子折りを持っての挨拶に行けだの、裾の短いチャイナドレスを用意してバイトに行って来いだの――極めつけは、『フロンティア』船団がバジュラの母星に侵攻するのを止める為に介入しようとした時に――経験が無いにも関わらず突然歌うようにマイクを渡されたのだ。
……しかもノリノリになったシェリルが地獄のレッスンを行い……本当に、本当に大変な目にあったのだ……グレイスも可哀そうに。
「……つまり君は我々の宇宙を守っていたと、言いたいのかね?」
ピクリと片眉を上げて冷たい声で詰問するジェフリー艦長……例え宇宙を守る為に行動していたと言えど、これまでの彼女の行動を擁護する事は出来ないと考える彼は厳しい言葉を使ってしまうが、翡翠は冷笑を浮かべて振り返りながら「そんな訳ないじゃない」と肩を竦める。
「――もう、『光の回廊』を破壊した所で意味が無いんだよ」
翡翠の背後に巨大な投影型ウィンドウが立ち上がり、眩いばかりの光が映し出される。それは別の世界からの次元回廊から噴き出す大量の光子の輝き『光の回廊』の映像から視点は逸れて右上50億キロ先の宙域を移す――そこでは強力な重力場によって空間が歪み、無数に輝く星の輝きが歪に歪んで引き延ばされている。
「以前にも説明したでしょう? 別の世界に存在する害獣ども――宇宙怪獣の本拠地である巨大銀河『TGD』にいる、はた迷惑な害獣どもはノノねぇの世界の害獣どもよりも古くから存在しており、故に豊富な戦闘経験を持つ古参の強者だと」
「ああ、確かにそう説明を受けたな」
「――つまり、こういう事だよ」
そう言って翡翠は視線を再び映像へと向け、人々の視線も翡翠の視線を追う様に巨大なウィンドウへと向けられ――映し出された異常重力場は極限まで歪んで、その負荷に耐え切れなくなった宇宙空間に亀裂が入って眩い光――次元回廊の輝きが溢れ出してくる。
「――これは『光の回廊』? なんで回廊が!?」
「……バカな!? このタイミングで新たな回廊が開いたというのか、信じられん……」
「……別の世界への回廊が隣接して開くなんて、とても自然現象とは思えないわ……」
巨大なウィンドウに映し出されたのは、宇宙怪獣と呼ばれる別の世界からの侵略者達がこの宇宙に侵攻する為に使用する次元の回廊である『光の回廊』と、それに隣接する形で出現した眩い光を包まれた新たな次元回廊の姿。
何故このタイミングで新たな回廊が開いたのか、しかも強烈な輝きを放っている『光の回廊』に隣接する形で……とても偶然とは思えなかった。
“ソレ”は、最初は小さな点であった――この世界の時空連続体を歪めてその大きさをどんどん広げ、“ソレ”は眩しいほどの光量を放ちながら以前から存在する『光の回廊』と遜色ないほどの大きさになると、光の中から無数の黒い点が湧き出してくる。
光の中から姿を現したのは、文明の痕跡を感知しては群雲の如き大群で押し寄せて全てを灰塵に帰す全ての知的生命体の天敵 宇宙怪獣の大軍勢―― 一体一体がこの世界のゼントラーディの戦闘艦の全長を優に超え、三十キロもの巨体を鈍い光を放つ外殻に覆われて外殻の隙間から見える肉の壁が不気味に脈打っている。
バジュラの母星近辺に出現した数を思えば比べるまでもない位の数だが――それでも30キロを超える巨体を持つ宇宙怪獣が数百万という一つの星間国家に匹敵するだけの数がこの宇宙に現出したのだ……『光の回廊』という別次元からの回廊内の大きさゆえに億単位の現出はなかったが、それでも『
そんな無数の宇宙怪獣軍団の中でも比較的小型の部類に入る鋭利に伸びた船体を持つジャックナイフ級の集団が、吐き出された勢いのまま大きく弧を描くと隣接する『光の回廊』へと向かい、『光の回廊』の入り口付近に敷設された機雷源へと殺到し――無数の巨大な爆発を引き起こした。
「――ジャックナイフ級が!?」
「……何だ、何の爆発だ? ジャックナイフ級は一体何を攻撃しているんだ!?」
『光の回廊』へと殺到するジャックナイフ級に大群は、回廊その物ではなくその手前の宙域で“何か”に向けて攻撃を加える映像に状況が分からず困惑した表情を浮かべる『クォーター』のクルー達……ウィンドウの中で起きている無数の爆発を見ていた翡翠は、そんなクルー達に視線を送ると肩を竦めてウィンドウ内で何が起こっているのかを説明を始めた。
「害獣どもが攻撃しているのは、『光の回廊』の出口を封鎖していた機雷群だよ」
「機雷群? 君はそんなモノまで用意していたのか」
「まぁ、グレイスに『Re:MODELERS』の運用に慣れてもらう為に、回廊から湧き出てくる害獣駆除をさせていたんだけど撃ち漏らしが出るとめんどくさいからね、出口付近には機雷源を敷設していたのさ」
……実戦形式でグレイス・オコナーを鍛えていたらしいが、“あの”翡翠が行ったのだがらスパルタであった事は間違いがない……一万年以上もの間 人類に脅威を与え続けて来た天敵を前にして不謹慎かもしれないが、ノノは心の中でグレイスに合掌していた。
「――まぁ、そんな些細な事はどうでもいいんだけどね」
余計な事を考えているであろうノノを一睨みで顔を青くさせながら、翡翠は話の軌道修正を行う――問題は二つ目の回廊が開かれた事自体が問題だと。
「……どういう意味だね。確かに敵である宇宙怪獣が出現するポイントが増えたのは問題だが――」
「そうじゃないよ、艦長のおじちゃん――あの新しい回廊は害獣どもがこの宇宙に繋げた回廊――つまり、あの害獣どもは、この宇宙を特定したって事だよ」
この雨中の外側に広がる未知の超空間『
「……ノノねぇ達が遭遇した害獣どもには意志や知性など無く、ただ反射や防衛などの本能に近い活動しかしないが故に行動自体は読み易かった」
だが、この宇宙とは異なる別の宇宙に存在する巨大銀河『TGD』には、はるか古代から活動してマイナス方面に全振りした邪悪な知性を持った害獣ども――知的生命体への悪意を増大させた“超”宇宙怪獣ともいえる害獣どもは、もはや執念と言っても良い鋼の意志でこの宇宙を特定して新たな“道”を構築するや、この宇宙の知的生命体を滅ぼす為に攻め込んで来たのだ。
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「……タダでさえ本能のままに襲い掛かって来る宇宙怪獣もウザいと思うけど、悪意に塗れた意志をもったアイツ等も
この世界の知的生命体を殲滅する為に、奴らは必ず来襲して来る……しかも、この宇宙を特定した以上は攻撃のイニシアチは相手にあり、億を超える規模を持つ相手との戦いが、さらに厳しいモノになった。
そして入り口を塞いでいた機雷源が破壊された事で、『光の回廊』からもこの世界のゼントラーディ艦を遥かに上回る巨体を誇る宇宙怪獣軍団の別動隊が溢れ出してくる……それはまるで黙示録に記された地獄の窯が開かれたかのような絶望感を人々に与える。
目の前の二つの次元回廊から姿を現す30キロを超える巨体を持つ個体群を中心に これまでにも確認された10000mを超える体長を持つ重巡級や5000m級の巡洋艦級などが見える……そんな人類がこれまでに経験した最悪の脅威であるゼントラーディ基幹艦隊500万に匹敵するか それを超える規模の敵性勢力が回廊から吐き出される光景は、歴戦の戦士といえども絶望を覚えるに足る光景だった。
「……もう終わりだ……あんな数をどうしろって言うんだよ」
絶望的な光景に『クォーター』の左舷甲板上に設置された特設ステージ内が静寂に包まれる中、誰かの呟きが嫌に広がる……二つの回廊から湧き上がる破滅の軍勢を前に抗う術すら思い付かない。
それに以前翡翠が言っていたではないか――バジュラの母星の属する星系に現れた億を超える宇宙怪獣の大集団、別の宇宙の存在ゆえにこの宇宙での活動には制限が有るが――それがもし別の宇宙から次々と増援が送られて来るとしたら、と。
『――だが、それでも害獣どもの数の暴力は脅威であり、億を超える数が逐次投入なんかされたら厄介な事この上ない』
あの、散々手を焼かされた翡翠ですら厄介と称すような事態が、今目の前で現実なモノとなった……誰もが絶望感に苛まれている中、声を上げたのは“彼”だった。
「――顔を上げろ、野郎ども。今 別の宇宙から来ている奴らは、我々の宇宙に土足で足を踏み入れて好き放題しようとしているクソッたれ共だ」
よそ者に好き放題されるなど許せるのか。我々の宇宙でデカい面している奴らを食い止める事が出来るのは、今現在この宙域に居る我々だけだ、と『S・M・S』所属『マクロス・クォーター』艦長ジェフリー・ワイルダー大佐は にやりと獰猛な笑みを浮かべた。
「――あのクソッたれどもに、我々『S・M・S』の戦いを教育してやろう」
どうも、しがない小説書きのSOULです。最近酷暑が続き、ひどい風邪をひいてノックダウン寸前になりました……皆様体調には十分ご注意ください。
別の宇宙から この世界へと侵攻を企てる宇宙怪獣軍団は、小規模な(それでも数万単位)集団で既存の『回廊」に幾度となく攻撃を加えては『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊に撃退されていましたが、その裏では別の侵攻ルートを模索し、遂にその姿を現しました。
これから風呂敷を畳んで行きます。
では次回 第67話 絶望を前に立ちあがる者達 9/8 0時更新予定です。
ではでは~~