マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス   作:soul

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 アンコクノプリンセス編




第67話 絶望を前に立ちあがる者達

 

 別の宇宙の巨大銀河『TGD』より銀河系に存在する全ての知的生命体を滅ぼすべく、別次元への結節点である『光の回廊』に隣接する宙域に穿たれた新たな別次元との結節点を通って巨大な滅びの使者が姿を現す――知的生命体が新天地を求めて旅をする際に使用するフォールド波や文明活動を行う際に発する波動を感知して、ひたすらその方向に向かう習性を持つ宇宙怪獣の大群が姿を現したのだ。

 

 ――光の中から這い出してきて宇宙を埋め付くす様は、宇宙の光景すら変える……かつてノノ達の地球が宇宙怪獣の直接的な侵攻を受けた際に敵集団を発見した観測員が報告した言葉――敵の数が多くて宇宙が黒く見えない――敵集団の放つ光で宇宙の7割が埋め尽くされたと言う恐ろしい光景が再現される……誰もが言葉を無くしていく中に力強い声が響いた。

 

「――顔を上げろ、野郎ども――今 別の宇宙から来ている奴らは、我々の宇宙に土足で足を踏み入れて好き放題しようとしているクソッたれ共だ」

 

 厚かましくも別の宇宙から我々の宇宙に侵攻しようと言う招かれざる客には、この世界の流儀と言うモノを教育してやらなければならない――そしてソレが出来るのは、現在この宙域に居る我々のみだ――さあ諸君。あのクソッたれどもに我々『S・M・S』の流儀を刻み込んでやろう、と。

 

 にやりと男臭い笑みを浮かべたジェフリー艦長の言葉に数人のクルーは顔に生気を取り戻して戦う気概を取り戻したが、目の前に広がる30キロを超える巨体が圧倒的な光量の中から無数に吐き出される破滅的な光景は、歴戦の勇士である『S・M・S』クルーと言えども奮い立つには かなりの勇気を必要としていた。

 

「……“クソったれ”どもに教育してやろうか、良いじゃない気に入ったよ、艦長のおじちゃん」

 

 最初に賛同の声を上げたのは、意外にも翡翠だった。

 楽しそうに、心底楽しそうな笑みを浮かべた翡翠は、近くに居たジェフリー艦長に歩み寄ると楽し気に具体的にはどうするのかと問い掛け、翡翠へと視線を向けたジェフリー・ワイルダー艦長は現在『バトル・フロンティア』の制御下にある『新生バスター軍団』の事を持ち出した。

 

「――君とノノ嬢が作り上げた『新生バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)』には艦艇用の大型の縮退炉が搭載されているだろう?」

 

 総数一万隻の改型ゼントラーディ自動制御艦を『光の回廊』から突入させて、敵の本拠地である別の宇宙に存在する超巨大銀河『TGD』で一万隻に搭載された大型縮退炉を一気に爆発させるのだ。

 

「……ノノ嬢のメモリーにあった、人類の命運をかけて銀河系中心宙域で行われた戦い――その切り札でもあった巨大ブラックホール爆弾『バスターマシン3号』……一万もの大型縮退炉を同時に起爆させれば、それに匹敵するだけの破壊力を得られるだろう」

「……なるほど、悪くない方法だ。けどあの害獣どもの守りをどう突破するの?」

 

 そう問い掛ける翡翠にジェフリー艦長は にやりと口角を釣り上げる……そこは君の『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊の奮戦に期待している、と。

 

「わぁー、丸投げだ」

 

 『新生バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)』と同規模の『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊ならば、現状用意できる最大戦力であるし、“あの”翡翠の用意した艦隊ならば何か奥の手が有るのではと期待したのだ。

 

 双方笑みを浮かべながら謎の攻防を繰り広げていると、男っぷりを魅せたジェフリー艦長の姿に「……コーチみたい……あれっ、コーチってなに?」と謎の混乱をしていたノノが頭上にピカッと灯ったように感じ、目の前に広がる宇宙怪獣の群れを突破する最適解を口にした。

 

「――そうだ、翡翠! あの時の『てんらい』とか言う技を使えば、宇宙怪獣の群れを突破出来るんじゃない?」

 

 良いことを思いついたとばかりにドヤ顔で胸を張るノノ……いかにも名案を思い付いたとばかりのノノに翡翠は後頭部をポリポリと掻きながら一言。

 

「……いやぁ、アレって通常空間から超空間に穴を穿つには膨大なエネルギーが必要だから、一度撃ったらしばらく使えないんだよね」

 

 瞬間固まるノノ……このおバカ(義理の妹)は、そんな代物を姉妹ケンカに使ったと言うのか。

 

「――なんで、そんなモノを姉妹ケンカで使うのよ!」

「……いやぁ、ついノリと勢いで」

「――この、おバカ!」

 

 白いボディスーツの襟首辺りを掴んで翡翠の身体を前後に激しく動かしながら文句を言うノノ……そんな一発勝負のような危険な技を姉妹ケンカで使用するんじゃない、と苦情を言うも当の翡翠は首をガックンガックンと揺らしながらヘラヘラと笑っていたが、襟首を持つノノの手から逃れて距離を取ると真剣な表情を浮かべた。

 

「まぁ、『Re:MODELERS・シリーズ』にはそれなりの装備はあるけど、それだけでは少々心許ない――と言う訳でノノねぇ、はいコレ」

 

 そう言って翡翠はどこからともなく取り出した細いモノをノノに向かって放り投げ、反射的にソレを受け取ったノノは手に持った細長い物を見て頬を引き攣らせた――これは翡翠から受けた無茶ぶりの中でも特大のモノ――シェリルの地獄のレッスンを受けさせられた原因――細長い棒 マイクだった。

 

「――ま、またマイク!? 翡翠まさかとは思うけど……」

「……あのね、ノノねぇ。私が何の為にマーシャル音波砲のノウハウを『クォータ―』に提供したと思っているの? サウンド・ブースター・システムの出力では害獣ども全てを相手にするには少々出力不足だと思ってね、底上げとしてマーシャル音波砲のノウハウを組み込めば その出力は飛躍的に増大する――そして『Re:MODELERS・シリーズ』には隠れた機能が搭載されている……聞いているんだろ、グレイス?」

 

 虚空に向かって翡翠は問い掛け、それに呼応するかのように投影型ウィンドウが立ち上がって一人の女性の姿を映し出す――藍色の髪と眼鏡が特徴的なグレーのスーツを着た理知的な雰囲気を持つ女性――かつてはトップシンガーとして名を馳せたシェリル・ノームを支えるマネージャーの身分を隠れ蓑に、バジュラの持つフォールド・クォーツの独占を図る『マクロス・ギャラクシー』船団により対『マクロス・フロンティア』船団として送り込まれた暗部の部隊の指揮官として暗躍していたが、『フロンティア』の大統領首席補佐官キノコ……レオン・三島によって部隊は制圧されて、グレイス自体は『フロンティア』軍によって虜囚の身となった。

 

 だが、『フロンティア』軍がバジュラたちの母星へと進攻した際に、突如として乱入して来た宇宙怪獣の攻撃によって廃墟と化した都市型移民居住艦『アイランド1』の中でグレイスは翡翠と出会い、彼女のスカウトを経て協力体制を構築していた。

 

「……『Re:MODELERS・シリーズ』の秘めた機能、船体に使用されているナノマシンを含んだ流体金属がスーパーマーシャル・フィールド音波砲のウェーブを共鳴増幅して、害獣ども全てに伝播する――破壊するしか能がないクソったれどもに究極の文化とやらを叩きんでやろうぜ」

『……その調整は私の役目って訳ね』

「では、元敏腕マネージャー……若い頃を思い出して、ミキシングは任せた」

『……誰がおばさんよ。私は今も十分若いわよ、この性悪小娘が』

 

 軽口を叩きながら、翡翠はグレイスに『Re:MODELERS・シリーズ』の船体に使用されているナノマシンの調整を任せる……全てはこの時にために、グレイスに『Re:MODELERS・シリーズ』の指揮権を移譲して『光の回廊』から湧き出してくる宇宙怪獣相手に実戦形式で経験を積ませたのだ。

 

「……翡翠ちゃん、それって」

「――私達の歌が役に立つってこと?」

 

 翡翠に説明を黙って聞いていたシェリルとランカは、銀河系に存在する全ての知的生命体の命運を左右するこの戦いに自分達の歌が重要な役割を担う事にその身を震わせた。

 

 


 

 

 銀河系中心宙域に存在する名も無い恒星間空間に眩いばかりの光を放ちながら その存在を誇示する二つの『光の回廊』――その回廊の出口付近には極彩色の船体を持つ破壊の使者達が布陣していた……宇宙の何処かで固まっていた群体が絡まり合って混ざり合って艦隊を組むと、高度な文明が宇宙を探索する際に発する超光速航法の痕跡を感知して、ひたすらその方向へと向かう習性を持ち、接触した全てを破壊する恐るべき存在である。

 

 ――そんな もはや人の力ではどうしようもない存在――触れれば抗う術無く滅ぼされる、宇宙に定められた絶対の法則に反抗する勇敢なる強者達が艦隊を組んで、二つの回廊の前に布陣する数千万の宇宙怪獣の大軍団の前に立つ。

 

 

 可変攻撃宇宙空母『マクロス・クォーター』ブリッジ。

 

「……『S・M・S』・新統合軍の各艦艇 所定の配置につきました」

「連合艦隊を中心に『新生バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)』密集体形を取ります」

 

 ブリッジに備え付けられた全天球型ホロ・スクリーンには連合艦隊を取り囲むように『新生バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)』が展開して『光の回廊』前に陣取る宇宙怪獣の大群に向けて突撃する態勢を整えつつあった。

 

「ラム君、特設ステージの翡翠嬢を呼び出してくれ」

「了解しました」

 

 程なくしてブリッジの正面に、左舷甲板上に設置された特設ステージに居る翡翠が映し出される……出されたのだが。

 

『――ほら、何時までウジウジしてるのよ! 覚悟を決めてステージに立ちなさい』

『――いやぁ! なんでノノばかり歌わそうとするんですか! 翡翠が歌ったって良いじゃないですか!?』

『……私は害獣どもをブチのめさないといけないから』

「――絶対嘘だぁ!?」

 

 特設ステージを支える構造材にしがみ付いて全身で拒否するノノを引き剝がそうとしている翡翠だったが、腐ってもバスターマシンであるノノの地力の方が勝っているようで中々苦労しているようだ……何故こんな事になっているかと無言のまま痛む眉間を揉んでいるジェフリー艦長……全身で拒否しているノノの言い分によれば、前回のシェリルによる地獄のレッスンが相当堪えたようで、マイクなど当分見たくない程のトラウマになっている所に、再び翡翠の無茶ぶりを食らったと言う事らしい。

 

「……こうなったら仕方ないわね――先生! お願いします」

 

 頑として離れないノノを引き離すべく応援を呼ぶ翡翠……何時の間にか彼女の背後には煌びやかな衣装を纏ったシェリル・ノームがにこやかな笑みを浮かべて立っていた。

 

『――ほら、何時までもわがまま言っていないで、行くわよ!』

『――いやちょっと待って、シェリルさん――引っ張らないで!?』

 

 構造材にしがみ付いているノノをあっさりと引き剥がしたシェリルは、ノノの背中を押しながらステージへと向かう……そんな二人を見送りながら肩を竦めた翡翠はホロ・スクリーンに映るジェフリー艦長に視線を向ける。

 

『翡翠嬢。此方の準備は整いつつある、そちらはどうかね?』

「――ノノねぇなら、今 怖いお姉さんに連れて行かれたよ」

『……そっちではない、君の指揮下にある『Re:MODELERS』艦隊の動向だよ』

「……ああ、そっち」

 

 苦笑を浮かべた翡翠は『マクロス・クォーター』の左舷飛行甲板上に接地された特設ステージ上から視線を前方に向ける――その視線の先には別の宇宙への時限結節点である二つの『光の回廊』の眩い輝きと、輝きの中で蠢く無数の小さな点――宇宙怪獣の大軍団が見える……だが それだけでは無く、『S・M・S』・新統合軍の連合艦隊とそれを守る『新生バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)』の前方宙域に布陣する白銀の艦隊が存在していた。

 

「――準備は良いかい、グレイス」

 

 翡翠の呼び掛けに答えて投影型ウィンドウが展開して『実験艦―02』にて『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊を操作する全天球型の指揮所にて準備を行っているグレイス・オコナーの姿が浮かび上がった。

 

『――艦隊行動プログラムの変更も終了して、後は合図を待つだけよ』

「――よろしい、ならば『Re:MODELERS・シリーズ』全艦に命ずる――全艦隊メガホン陣形へシフトせよ」

『……前々から思っていたのだけれど、貴方のネーミングセンスは最低よ』

 

 

 翡翠のネーミングセンスにダメ出ししながらグレイスは周囲に展開しているホロ・コンソールを操作して、『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊に陣形の変更を指示する――グレイスより送られた指示に従って、白銀の艦隊は陣形を変更するべく移動を開始して円錐台陣形へとシフトしていく。

 

「……『クォーター』とそのお仲間達は殴り込む準備を終えて、周囲に展開する『改型ゼントラーディ自動制御艦隊』が鉄壁の守りとなる……そして『Re:MODELERS・シリーズ』がランカねえちゃんやシェリルおねえちゃん、そしておまけのノノねぇの歌を強化増幅して害獣どもにぶつける」

 

 ――さあ、その歌で害獣どもを震わせてやろうぜ。

 

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。

 翡翠がマーシャル音波砲の話を聞いて『実験艦ー02』で再現したモノを『クォーター」に提供したのはこの時の為、相変わらずヒドイ翡翠のネーミングセンス『メガホン陣形」によって増幅されるのは、シェリルとランカそしてノノによる奇跡のユニットーー害獣軍団も踊りながら逃げていくで事でしょう。

 えー、次回は少しお時間を頂きます。なるべく早く投稿したいと思っていますが、何時になる事やら……気長にお待ちくださいね、ではでは~~
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