マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス   作:soul

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 アンコクノプリンセス編


第68話 ハートに火をつけて

 

 

 ――別宇宙への結節点である二つの『光の回廊』の前に蠢く数千万の宇宙怪獣の大軍団――それに対するは二万もの異文明の技術で建造された驚異的な戦闘能力を誇る白銀と深緑の二つの艦隊に守られた『S・M・S』・新統合軍の連合艦隊。

 

 今だ動きを見せない宇宙怪獣の大集団の前で密集体形を取る『S・M・S』・新統合軍の連合艦隊と、それを守る『新生バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)』――そして密集体制を取る艦隊の前面に展開している『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊は統括指揮を行うグレイス・オコナーの命によって陣形を変更して円錐台陣形へと変わって行き、回廊前にて待ち構える敵の大集団へと大きく開いた円錐面を向けて――後方の小さな円錐面の前には、『マクロス・クォーター』と『バトル・フロンティア』を先頭にした『S・M・S』・新統合軍の連合艦隊とそれを守る『新生バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)』が布陣する。

 

 

 可変攻撃宇宙空母『マクロス・クォーター』ブリッジ

 

「目標である『光の回廊』まで距離50億キロ、『回廊』前に布陣する敵 宇宙怪獣の集団は推定で約3000万……『回廊』からは未だに敵集団が出現しています」

「――準備は良いかね、歌姫たち」

 

 天球型のホロ・スクリーンに表示される情報を読み取り、索敵担当のモニカが前方に布陣する敵 宇宙怪獣の集団の情報を告げる……敵の数としてはバジュラの母星付近で遭遇した億を超える敵集団を思えば少ないが、それでも決して侮れる数ではない。

 

 敵の情勢を聞いていた『クォーター』の艦長席に座るジェフリー・ワイルダー大佐は、ブリッジに浮かぶ別のホロ・スクリーンに映る特設ステージに声を掛けると、映像の中にある煌びやかなステージの上に立つ銀河の妖精シェリル・ノームと超時空シンデレラ ランカ・リーそして異世界より迷い込んだ姉妹の内の姉ノノが覚悟を決めた表情で頷く。

 

「――行くわよ、二人とも」

 

 シェリルとランカが奏でたフレーズは、この世界の地球人なら誰もが知る一つの歌――この世界に迷い込んだノノと翡翠は、超長距離移民船団に潜伏して宇宙に伝播するフォールド波の発信源をあっさり特定出来た事により、興味本位でこの世界の地球が辿った歴史を調べた所――ノノはその悲惨な歴史を知って絶句した。

 

 圧倒的な物量を以て人類を滅ぼそうとしてくる宇宙怪獣の大軍団の脅威に今も晒されている自分達の地球とは別の形で襲来した破滅の軍勢――巨大な機動要塞を中心とした500万もの戦闘艦隊による衛星軌道上からの無数の艦砲射撃……この世界の地球にはそれに抗う力は無かったのだ。

 

 無数の超高圧のビームが地球を襲い――直撃を受けた場所は蒸発し、地表を襲ったビームの超高熱によって大気は瞬時に膨張して、衝撃波となって地上に存在する全てを破壊する……そんな地獄のような光景を冷めた目で見つめる翡翠。

 

 この世界の地球が迎えた滅びの記録が流れる中、それぞれが無言で凄惨な映像を眺めていると一つの転機が訪れる――1999年に南アタリア島に落下して人類が異星巨人種族ゼントラーディと接触する遠因となった全長1200mの巨大戦艦『マクロス』が、たった一隻で無数の戦闘艦艇を誇るゼントラーディ軍ボトル基幹艦隊へと向かって行き――かの船より大出力広域通信で奏でられる一曲の“歌”が戦場の全てを変えのだ。

 

『……すごい、たった一曲の歌が戦場の流れを変えた…』

 

 多数の民間人を収容していた『マクロス』艦内で頭角を現した伝説の歌手リン・ミンメイが歌う古代プロトカルチャー達の間で流行っていたという流行歌――数奇な運命によって彼女に伝わり、様々な思いを込めて歌われる一つの恋の歌は、戦う事しか知らなかったゼントラーディの将兵の心を揺さぶり――その奇跡の歌は、現在のトップシンガーであるシェリル・ノームとランカ・リーそしてノノによって再現される。

 

 密集体形を取る『S・M・S』・新統合軍の連合艦隊の先陣を務める可変攻撃宇宙空母『マクロス・クォーター』の左舷飛行甲板上に接地された特設ステージ上に立つ三人の歌姫達が奏でるは、一つの小さな恋の歌――かつて滅びの時を迎えた時、圧倒的な大艦隊を前にたった一隻の船から流れ――それまで戦う事しか知らなかった人達に衝撃を与え――人には戦う以外の道をある事を思い出させた歌。

 

 おぼえていますか、と切ない恋心を歌い――歌と共に彼女達から放たれるフォールド・ウェーブを翡翠より提供されたノノ達の世界の兵器『マーシャル音波砲』のノウハウを組み込まれたサウンド・ブースター・システムが増幅して放出する。

 

 アナタを愛していますと切なげに歌い上げた、愛する思いを乗せた『スーパーマーシャル・フォールド音波砲』の超強力フォールド・ウェーブが特設ステージのある『マクロス・クォーター』より放射されて、宇宙を伝わる超強力フォールド・ウェーブは先行して前衛を務める『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊へと伝播すると船体を構成するナノマシンで調整された流体金属を震わせ――何倍にも増幅して前方の二つの『光の回廊』前に布陣する無数の“超”宇宙怪獣の大軍団へと向けて放射される。

 

 銀河の中心に存在する大質量ブラックホール『いて座*』の影響もあって地球の位置する銀河系外縁部とは比較にならない程の星間物質で満ちるこの銀河系中心宙域の宇宙空間に存在する微細な物質を励起させながら『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊によって強化増幅されたフォールド・ウェーブが二つの光輝く次元回廊の前に布陣する数千万もの宇宙怪獣の大集団へ向けて放射された。

 

 


 

 

 可変攻撃宇宙空母『マクロス・クォーター』ブリッジ

 

「――宇宙怪獣の様子はどうか?」

「……現状で変化はありません」

 

 シェリル・ノームとランカ・リーそして翡翠によって強制参加させられた異界からの来訪者であるノノによる奇跡のユニットによる超強力フォールド・ウェーブに乗せて、この世界の人間ならば誰もが知るラブソングが奏でられるが……現状では宇宙怪獣に目立った変化は見られなかった。

 

「……『マクロス』の奇跡よ、もう一度とは行かなかったか…」

 

 彼女たち歌姫の歌が有効だったのは、超時空生命体『バジュラ』達が内包するフォールド細菌の放つフォールド波を用いたネットワークを構築しており、彼女たち歌姫がバジュラ由来のフォールド細菌を持つが故にバジュラたちの構築するフォールド・ネットワークに彼女たちの意志を響かせる事が出来る――故にバジュラとの戦いでは彼女たちの歌が絶大な効果を発揮したのだ。

 

 対して宇宙怪獣は様々な能力を有した宇宙生命体群が絡まり合って混ざり合い、艦隊を組んで知的生命体を根絶するべく大宇宙を席捲して滅びを巻き散らして、ノノ達の地球に侵攻して来た。

 

 彼らに意志など無く反射や防衛など先天的行動を以てして活動し、共生関係にある群体が宇宙艦隊を作って知的生命体を殲滅する為に進撃をするという、もはや滅びという現象のようなものだった――だが現在相対している宇宙怪獣は、別の宇宙に存在している巨大な銀河に生息する古参ともいえる存在であり――その巨大さ故に別世界の大銀河『TGD』が形成されたのは、130億年前に形成されたといわれる銀河系よりも長い年月がかかっていると推察され、銀河系で活動する宇宙怪獣よりもはるか以前より活動していた。

 

 遥かな太古より、巨大銀河『TGD』に存在していた恒星間文明の発するワープドライブの残照に引かれて数多の文明に侵攻して滅ぼし――必死に抵抗する種族との数多くの戦いを経験した別世界の宇宙怪獣たちは、その戦闘経験を蓄積して――何時しか滅ぼす事に特化した、マイナス方面の邪悪な論理を獲得し――それ故にシェリル・ノームやランカ・リーそしてノノのフォールド・ウェーブ波――彼女たちの思いを受けた所で影響は無いのだ。

 

「……敵 宇宙怪獣の前衛に変化あり――エネルギー係数の急激な増加を確認――攻撃きます!」

「――回避行動! ピンポイントバリア急速展開――」

 

 作戦の前提が崩壊したと判断したジェフリー艦長は、『クォーター』に回避行動を取らせる事を選択する――だが、そこに翡翠が通信を繋げて「必要ないよ」と告げて来る。

 

『艦長のおじちゃんは覚えていないのかな? シェリルおねえちゃんとランカねぇちゃんの歌が、ウチの『スピアー』の機動に干渉した事を』

 

 天球型ホロ・スクリーンで敵 宇宙怪獣の動向を監視していたモニカより宇宙怪獣の前衛部隊より無数の光弾が射出されて此方に急速に接近して来る事を告げ――無数の光弾が『クォーター』を含める『S・M・S』・新統合軍の連合艦隊に迫るが、光弾は連合艦隊を捉える事無く的外れな軌道を取って虚空に消えた。

 

「……これって、どうなってるの?」

「……バジュラの母星近くでの戦いでは、あれほど正確で苛烈な攻撃力を見せた宇宙怪獣がどうして?」

 

 恐ろしいほどの数の光弾が急速接近する中で必死に回避行動を取っていたボビーとキャシーが あらぬ方向に飛んで行く光弾を前に状況が理解出来ず呆けた声を上げる中、通信用のホロ・スクリーンの中の翡翠が無い胸を張りながら にやりと笑う。

 

『――『マーシャル音波砲』のノウハウを継ぎ込んだフォールド・ウェーブ発振装置は飛躍的に出力を増大して、超強力なフォールドソングを響かせる……『スーパーマーシャル・フィールド音波砲』は害獣どもに確実に届く――あんなのでも一応は生物に間違いがないから害獣どもに届いた歌は、その体内にある神経伝達ネットワークを掻き乱すのさ』

 

 シェリルとランカそしてノノの歌声が届いた結果が、この光景だと説明した翡翠は、そこで特設ステージ上の三人の歌姫に視線を向ける。

 

『……三人の歌は決して無駄じゃなかった……けれど、害獣どもの冷たい悪意に塗れた意志を揺るがす程じゃないのも事実』

 

 害獣どもの心を震わせるかは、全て三人の歌姫たちの“歌声”に掛かっている訳だ、と特設ステージ上の三人の歌姫――特に先頭に立つシェリル・ノームへと挑戦的な視線を向ける翡翠。

 

『――銀河を震わせるんでしょう、シェリルおねえちゃん? 害獣ども位は震わせる事が出来なきゃね』

 

 翡翠の挑戦的な視線を受けたシェリル・ノームはその身を震わせる――恐怖ではない、普段からこましゃくれた言動が目立つ翡翠からの挑戦に、シェリルはにやりと笑みを返す。

 

『――言ってくれるじゃない“翡翠”――その挑戦受けて立つわ』

 

 凄みのある笑みを浮かべたシェリルは、両隣に立つランカとノノに視線を向ける――そこには同じような笑みを浮かべた二人の姿がある……翡翠からの挑戦状に三人の心に火が付いたのだ――1人1人は小さな火だが、2人そろえば『炎』となる――ならば3人そろえばどうなるか? 瞳に『劫火』の様な強い決意を宿した三人の歌姫たちは、遥か50億キロの前方に立ち塞がる数千万の宇宙怪獣の大集団へと視線を向ける。

 

『――行くわよランカちゃん、ノノ――私たちの歌で、怪獣たちを震わせてやりましょう』

「「――はい!」」

 

 翡翠の挑発で火が付いた3人は決意も新たに前方に展開する数千万の敵 宇宙怪獣の大集団に臆することなくフォールドソングを奏でるべく準備に入る……「アンタたちも私達に恥かかせるんじゃないわよ!」と、無数の光弾が迫る様を目撃して及び腰になっていたバックバンドの面々に活を入れたシェリルは目の前に広がる無数の敵ではなく、眼前にて不敵な笑みを浮かべる翡翠に集中する……言ってくれるじゃない翡翠――見てなさい、アンタも含めてその魂を震わせてやるんだから!

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。
 
 それにしても、どうしてウチのオリキャラはナチュラルに全方位を煽るのだろうか? プロットでは三人の歌姫の歌と共に害獣どもの中を駆け抜ける予定だったのに……解せぬ。

 今回は何故か早く投稿できましたが、次の話はこれから書きますので今しばらくお待ちくださいね。ではでは~。
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