マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス   作:soul

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 アンコクノプリンセス編


第69話 熱唱 絶唱 大乱戦

 

 銀河系中心宙域――本来なら何もない筈の恒星間宙域には、現在二つ宇宙を繋ぐ別の宇宙への結節点『光の回廊』が存在しており、その開口部付近には無数の黒い点――全ての知的生命体の殲滅を目的とする破滅の使者 宇宙怪獣の大軍団がその偉容を誇っていた。

 

「――さぁ、怪獣たち――わたしの歌を聴けぇええ!」

 

 気合の籠ったシャウトを発したのは、『マクロス・クォーター』の左舷飛行甲板に設置された特設ステージ上に立つ銀河の妖精シェリル・ノームだ――翡翠の挑発によって火が付いた彼女が歌うは、彼女の代表作とも言える『射手座☆午後九時Don't be late』を絶妙な歌声で歌い、それをランカとノノが即興のコーラスとして参加――その歌声は『スーパーマーシャル・フォールド音波砲』のシステムで増幅されて、更に『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊によって更に強化増幅された超強力フォールド・ウェーブが数千万の宇宙怪獣軍団へと放射される。

 

 

 可変攻撃宇宙空母『マクロス・クォーター』ブリッジ

 

「……敵の動きはどうか?」

「……成功です。敵集団の動きに混乱が見られます――攻撃も散発的にあらぬ方向に向けて撃たれてます……シェリルの歌は確かに敵に効果があります!」

 

 シェフリー艦長の問い掛けに天球型ホロ・スクリーンで敵の動静を監視していたモニカは敵 宇宙怪獣の行動に乱れが生じている事を報告し、それを聞いたジェフリー・ワイルダー大佐は操舵主であるボビー・マルゴに増速を命じる。

 

「――この機を逃すな、最大船速!」

「……OK――行くぜぇええ!」

 

 ジェフリー艦長のオーダーを受けたボビーは額に巻いたバンダナを締め直して気合を入れて操舵稈を握り直し、『マクロス・クォーター』は増速すると最大出力で加速して、他の艦艇もそれに追従して出力を増していく。

 

「――怪獣たち、私たちと一緒に飛んで――銀河の果てまで!」

 

 続いてランカ・リーが、彼女が脚光を浴びる切っ掛けとなった曲『What 'bout my star? @Formo』を歌い上げる――貴方と一緒に居られるなんて、なんて素晴らしいことなのでしょう、と彼女の恋心と共に歌い上げた曲は、確実に宇宙怪獣たちの動きに影響を及ぼしていた。

 

「――敵集団まで、あと45億キロ!」

 

 シェリルが、ランカが思いを込めて歌い終わったその次は、異世界からの飛び入り参加……義理の妹によって無理やり参加させられた異なる地球において生み出された第六世代型恒星間航行決戦兵器バスターマシン7号ことノノであった……本職の歌手である二人と違って大舞台で歌った経験のない彼女が何を歌うと言うのか。

 

 異なる世界の地球を含む太陽系を守護する為に生み出された彼女に歌手をした経験など無く、持ち歌などある筈もない彼女だったが意外にもそれに困る事はなかった。

 

「――行きます! 『娘々FIRE!! ~突撃プラネットエクスプロージョン』!」

 

 巨大都市型移民居住艦『アイランド1』に潜入したノノ達は、当面の潜伏先としてサンフランシスコ・エリアのアパートを借りて生活していたのだが、隣に住んでいる住人が伝説的バンド『FIRE BOMBER』の熱狂的なファンであり、それなりの交友を持った影響で事あるごとに『FIRE BOMBER』の事を熱く語られ……かの伝説のバンドの曲を延々と聞かされた事で何時しかノノも『FIRE BOMBER』の曲に付いてそれなりに覚えたのだった。

 

 前回バジュラの母星近辺の戦いの前に、翡翠の無茶ぶりによってシェリル主催の地獄のレッスンに叩き込まれたノノ……そんな地獄のレッスンの貴重な休息時間に歌繋がりで『FIRE BOMBER』の話題になった時、意外な事にシェリルが物凄い食い付きを見せた……後で分かった事だが、シェリルは伝説のバンド『FIRE BOMBER』ボーカルである『熱気バサラ』をリスペクトしており、自分達が歌うならこうするなど熱い議論を交わしたのだ。

 

 それこそがノノが歌う『娘々FIRE!! ~突撃プラネットエクスプロージョン』であり、シェリルとランカも参加して3人の歌姫が歌う曲は『スーパーマーシャル・フィールド音波砲』で増幅され、前衛として円錐台陣形(翡翠命名メガホン陣形)で先行する『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊が強化増幅して二つの『光の回廊』の前に布陣する数千万の宇宙怪獣軍団に向けて放射される。

 

「――あと30億キロ」

 

 天球型ホロ・スクリーンにて戦況を監視しているモニカより敵 宇宙怪獣軍団までも距離が告げられ、『S・M・S』・新統合軍の連合艦隊の攻撃も熱が入る……二つの『光の回廊』前に立ち塞がる敵 宇宙怪獣軍団との距離も半分近くまで到達した――連合艦隊が保有する反応弾やMDE弾頭がここぞとばかりに撃ち込まれ、各艦の最大出力の攻撃が敵 宇宙怪獣軍団へと放たれる。

 

 連合艦隊の周囲に展開する『バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)』も強化された艦載兵器を繰り出し、改型ノプティ・バガニス級決戦型砲撃戦艦の主砲である超大型誘導収束型ビーム砲の強力なビームを改型スヴァール・サラン級戦艦が描くリングによって強化増幅された簡易型『バスタービーム・THE・COMET』が幾重にも放たれ、敵の分厚い陣形を削っていく。

 

「……ノノねぇたちの歌はどうだい害獣ども、刺激的だろう?」

 

 シェリルとランカそしてノノによるフォールド・ソングにより混乱する宇宙怪獣に向けて総攻撃を仕掛ける『S・M・S』・新統合軍と『バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)』を特設ステージから見た後、前方に布陣する敵 宇宙怪獣へと視線を向けた翡翠はにたりと怖気の走る笑みを浮かべたまま独り言ちる。

 

 ――だが相手は別の宇宙において遥かな昔より知的生命体を滅ぼして来た しつこい〇汚れのような害獣どもだ、このまますんなり行くとは考えにくい……通信用ホロ・スクリーンから流れて来るモニカの「――後、25億キロ」という声を聴きながら、翡翠は神経を研ぎ澄まして見当違いの方向に飛んで行く光弾を撃ち出す害獣の群れを翠眼を細めて見据える……さて、どうくるか。

 

 

 シェリル・ノームとランカ・リーそしてノノの三人の歌姫による魂の熱唱は、二つの『光の回廊』の前に布陣する宇宙怪獣の大軍団の艦隊行動に混乱をもたらし、『S・N・S』・新統合軍の連合艦隊とそれを護衛する『バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)』より放たれる攻撃は確実に宇宙怪獣の数を減らしていた。

 

「……と言っても、回廊から次々と湧き出しているんだよね……ホント、台所のアレ並みにしつこいなぁ」

 

 先ほどから翡翠の超感覚に……と言えば聞こえが良いが、単なる彼女のカンが警戒せよと告げて来るのだ。

 

 何万年も――あるいは何億年も、ただ知的生命体を滅ぼす為にマイナス方面に悪意を増大させた害獣どもがこのままで終わるとは思えない……そんな埒もない事を考えていた時、翡翠の超感覚が前方に存在する二つの『光の回廊』の輝きの中に途轍もない悪意を感じ取った――これは、これまでの害獣どもとは一線を画す“何か”が次元回廊の中から姿を現そうとしているのだ。

 

「――『02』! 『Re:MODELERS・シリーズ』全ユニットのシールドを最大出力で展開!」

 

 制御を預けていたグレイスを通り越して『実験艦―02』の制御コンピューターに翡翠は直接指示を送り、それを受けた制御コンピューターは瞬時に新設した艦隊指揮所より『Re:MODELERS・シリーズ』の制御を取り戻して艦隊各艦に最大出力の防御シールドの展開を命じる――シールドが展開されるか否かのタイミングで、二つの『光の回廊』から無数の高出力ビームが撃ち出され――出口付近に布陣している幾つかの宇宙怪獣を蒸発させながら『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊へと殺到し、最大出力で展開される防御シールドを吹き飛ばして数百隻の『Re:MODELERS・シリーズ』艦の流体金属を沸騰させて船体構造に致命的なダメージを受けた『Re:MODELERS・シリーズ』艦は崩壊して原子へと分解されて行った。

 

「――なに、今のは!?」

「敵の攻撃!?」

 

 『マクロス・クォーター』のブリッジに居るボビーとキャシーは、『光の回廊』から撃ち出された無数のビームがこれまで鉄壁の防御を誇った『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊の防御シールドを貫いて数百隻の白銀の船が火球に消えた事に驚愕の表情を浮かべ、艦長席に座るジェフリー艦長は眉間に皺を寄せると呻くような声を上げる……これまで巨大な船体を持ち圧倒的な数で押し寄せて来た宇宙怪獣の大軍団に奇策を持って優位に進めていたが、このまますんなりと行くとは思っていなかった。

 

「……これが敵の本気か」

 

 


 

 

 宇宙に開けられた二つの穴――別の宇宙との結節点である二つの『光の回廊』の一つから撃ち出された無数の高出力ビームは、同じ技術で建造された『バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)』の攻撃を防いだ防御シールドを易々と突破して『Re:MODELERS・シリーズ』の流体金属で構成された船体を破壊せしめたのだ。

 

「――な、なに今のは!?」

「――船が!?」

 

 無数の高出力ビームの衝撃と、それに貫かれて爆散した数百の『Re:MODELERS・シリーズ』艦の衝撃波によって木の葉のように揺れる『マクロス・クォーター』に設置された特設ステージ上で肩を寄せ合って互いに支え合うシェリルとランカは、目の前で広がる数百の爆発光を見て驚愕の表情を浮かべる……翡翠とノノが持つ異世界の技術によって建造された『バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)』と『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊。

 

 登場以来 驚異的な性能を見せたかの船達がなすすべなく火球と変わった……最初は何が起こったのか分からずに呆然としていた――だが、次第に状況が飲み込めて来ると驚きのあまりに目を見開く。

 

「…… 一体何か…」

「……シェリルさん…」

 

 不安げにシェリルの手を握るランカ……そして“ソレ”は周囲の空間を震わせながら、次元回廊からこの宇宙へと現出しようとしていた。

 

 


 

 

 『光の回廊』から突如として飛来した無数の高出力ビームに襲われた『S・M・S』・新統合軍の連合艦隊だったが、幸いな事に連合艦隊艦艇に被害はなかったが前衛である『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊の艦艇に少なくない被害が出たようだ。

 

 これまでにない大出力の苛烈な攻撃に、連合艦隊は攻撃を行った相手を特定するべく観測装置の全てを『光の回廊』へと向けて、恐らく最大の脅威になるであろう敵の姿を探していた。

 

「……ダメです。次元回廊から放出される光子や放射能に妨害されて対象を特定出来ません」

 

 『マクロス・クォーター』のブリッジでは索敵を担当するモニカが必死の形相で先ほどの攻撃を行った相手の位置を特定しようとしていたが、『光の回廊』――別の宇宙からの結節点である次元回廊から溢れ出る光子や放射能そして識別不能な未知の物質によって『クォーター』のセンサーが阻害されて、『Re:MODELERS・シリーズ』艦を撃ち抜く攻撃を行った相手の詳細どころか位置すらも特定できなかったのだ。

 

 翡翠嬢によれば別の宇宙の巣くう巨大な宇宙怪獣の群れは我々の銀河系を遥かに超える規模を持つ巨大銀河『TGD』全域に巣くうというが、恐らく今回姿を現した敵の“先遣部隊”は此方の宇宙に橋頭保を確保する為に送り込まれ、それが思うような戦果を挙げられない事に業を煮やした“何か”が戦況打開する為に送り込んできたのだろう…… 一刻も早く相手を特定して手を打たねば取り返しのつかない事になりかねない。

 

 『クォーター』艦長ジェフリー・ワイルダー大佐は自身の苛立ちを内心に押し込めながら全天型ホロ・スクリーンの前で必死の形相を浮かべるモニカに索敵を続けて相手を特定するように指示を出そうとした時、『クォーター』そのものが激しい衝撃を受けてジェフリー艦長は艦長席に備え付けられているアームレストを持って身体を支える……なんだ、なにが起こった? 

 

「――どうした! 何の衝撃だ!?」

「――周囲の空間が波打っています! これは艦艇や起動要塞クラスで起きる現象ではありません……少なくても浮遊惑星のような天体クラスと接触しなければ起きない現象です」

 

 

 『マクロス・クォーター』を襲った衝撃は当然 左舷飛行甲板上に設置された特設ステージにも伝わり、突然襲った衝撃にお互いを庇うように抱き締め合うシェリルとランカ、そして二人の上から覆い被さったノノ。

 

 そんな三人の居るステージの前に立った翡翠は翠眼を細めて、無数の爆発が収まりつつある『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊のその先――眩いばかりの光量を放つ『光の回廊』の奥に存在する次元回廊を睨み据える。

 

 肌がピリピリするような底知れぬ悪意……害獣どもめ、遂に本腰を入れて来たか。

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。

 サンフランシスコ・エリアのアパートに住んでいた頃の隣に住まうシスコン兄貴の悪影響に影響というか毒されたノノが歌い――興が乗ったシェリルとランカも即興で参加したカルテット――歌と共に快進撃を続ける『S・M・S」・新統合軍の連合艦隊の前に、宇宙怪獣達の切り札が姿を現す

 次回 第70話 愛の歌  12/25 0時更新予定です ではでは~。
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