マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス   作:soul

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 アンコクノプリンセス編





第71話 ――切り札中の切り札

 

 銀河系中心宙域に開いた別の宇宙への結節点である二つの『光の回廊』から出現した惑星クラスの大質量体から撃ち出された無数の高出力ビームが『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊を捉える寸前に空間そのものに亀裂が入ると、無数の高出力ビームは虚空の彼方へと消えて行った。

 

「……一体何が…」

「……これは、フォールド断層!?」

「……これほど広範囲のフォールド断層を張るなど、一体誰が?」

「――艦長! 『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊の中心に複数の時空震動を感知……何者かがデ・フォールドして来ます!」

 

 可変攻撃宇宙空母『マクロス・クォーター』の艦橋で、迫り来る無数の高出力ビームを前にピンポイント・バリアを最大出力で展開すると同時に各障壁を閉めて攻撃に備えるように指示を出して攻撃に備えていると、攻撃が前衛として展開している『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊の前に淡い光が灯るとそれは周囲の空間へと広がり、宇宙の空間を引き裂いて次元の断層が出現し――無数の高出力ビームは虚空へと消え去ったのだ。

 

 このタイミングで起きた現象ゆえにとても自然現象とは思えず、三次元空間を引き裂いて断層を発生させるなど誰が行ったのか疑問に思っていると、3人の歌姫たちの歌を強化増幅する為に円錐台陣形を取っていた『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊の一部の艦が何時の間にか移動して艦隊の中央部にスペースが設けられて――そこに幾つものフォールド・アウトの輝きが灯ると航宙艦と見紛う巨大な生物達が姿を現した。

 

「――バ、バジュラ!? なんでバジュラがここに?」

 

 『クォーター』の艦橋で操舵稈を握っていたボビーはこの局面で登場したバジュラの姿に驚きを隠せず、隣にいるキャシーもまた驚きのあまりに口元を両手で覆っていた。

 

 


 

 

 超時空生命体バジュラの登場に『S・M・S』・新統合軍の連合艦隊のクルーは驚愕に包まれた――敵宇宙怪獣が出現するまで彼らバジュラとは交戦状態にあり、バジュラの攻撃によりバイオプラント方式を採用していた超長距離移民船団『マクロス・フロンティア』船団は全滅寸前にまで追い込まれ、起死回生の対バジュラ反抗作戦『ヒプノシス』を発動させてバジュラが使用するフォールド・ネットワークに干渉してコントロール下に置くと言う奇策により戦力としたバジュラを率いて彼らの母星に侵攻したのだ。

 

 バジュラと『フロンティア』軍との激しい戦いの渦中に、未知の敵である巨大生物 宇宙怪獣の襲来と翠の瞳を持つ小悪魔の暗躍によって戦闘は中断し、バジュラとの間には奇妙な休戦状態へと移行したのだ……そんなバジュラが何故この戦場に? しかも空母型や戦艦型に守られるようにしている一際巨大な――金色に輝く四つの翅を広げた数十キロ……あるいは数百キロはあるだろう巨大バジュラは、恐らく彼らの女王なのだろう。

 

 普段は母星に作られた巨大な(ネスト)の奥深くに鎮座している女王すらもこの戦場に姿を現すとは、なんらかの思惑があるのだろうか?

 

 驚きと困惑は『マクロス・クォーター』の左舷飛行甲板上に設置された特設ステージにいる者達にも広がり、ホロスクリーンに映し出された女王バジュラを中心とした集団の登場に目を丸くしているランカとシェリル……そんな二人を尻目に、翡翠は妙に男前な笑みを浮かべて呟いた。

 

「……おそいじゃないか、女王バジュラ(グラン・マ)

 

 翡翠の呟きを聞いたランカとシェリルは悟った――なぜ翡翠がこのタイミングでアイモを歌ったのか――なぜ自分達に一緒に歌うように頼んで来たのかを。

 

「――翡翠、あなた…」

「……突然アイモを歌い出したのはバジュラ達を呼ぶために!?」

 

 振り返った翡翠は驚きの表情を浮かべるシェリルとランカに にやりと笑みを浮かべたまま答えた。

 

「……ノノねぇとの“姉妹ケンカ”の前に甲虫どもの巣にお邪魔したのさ……」

 

 『光の回廊』の前で『マクロス・クォーター』を筆頭とした『S・M・S』・新統合軍の連合艦隊を待ち受けている時に単独でワープを行って、『光の回廊』に向かって連合艦隊が出撃した後のバジュラ達の母星に忍び込んで(ネスト)の奥深くに鎮座していた巨大な女王バジュラと接触――巨大なバジュラの腹部に手を置いた翡翠は、知り合いの悪魔の様な修行僧に強制的に習得させられた『精神融合』を行使して女王バジュラとの接触していたのだ。

 

「……ホント、何が役立つか分からないものだね」

 

 後頭部をポリポリと掻きながら翡翠は、かつて悪魔のような修行僧の下から脱走しようとして それを阻止するべく悪辣な罠を張り巡らされて激しい攻防戦を繰り広げていた当時を思い出していた……ホント、良く生きていたな私。

 

 気を取り直して説明を続ける。

 

「まぁ そういう訳で、(ネスト)の奥に引きこもっていた甲虫どもの女王様と同調して合図を送ったら乱入してもらう段取りを付けたんだ」

「……よくそんな段取りが付けれたわね」

 

 翡翠の小柄な姿を見ながら呆れ混じりに嘆息するシェリル。

 そんなシェリルに顔を向けた翡翠は自慢げにない胸を張った。

 

「まぁ 害獣どもがこの宇宙に襲来したら、女王バジュラ(グラン・マ)も次の恋どころじゃないからね、本気になるだろうさ」

 

 翡翠がそう言った瞬間――円錐台陣形を取っている『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊の最前線に立つノノは、艦隊の中央部に現れたバジュラの集団に守られた女王バジュラの頭部にある複眼のそばに青筋が浮かんだ事に驚き――『マクロス・クォーター』の左舷飛行甲板上に接地設置された特設ステージの高い所に紅い光が灯ると、その中から緑の小さな塊が飛び出してきて特設ステ―ジの傍で能天気に笑っている少女目掛けて急降下をし――途中でその身を丸めて高速回転した緑の塊は、そのまま翡翠の後頭部目掛けてダイレクトにアタックした。

 

 ――ピィィィイイイイイ!

 

「――あ痛ったたた!?」

 

 高い所から急降下しながら途中で回転を付けた緑色をした物体に後頭部をしこたまダイレクトなアタックを受けた翡翠は、衝撃によって涙目になりながら後頭部を押さえながらしゃがみ込む……『SECOND・SKIN(第二の皮膚)』によって真空の宇宙の強烈な放射線や超存在『Q』の攻撃すらモノともしない防御力を持って居るのに何故こんなにも痛いのか?

 

 涙目になりながらブツかって来たモノに目を向けると、半透明な翅を広げながら「ピ~~」と気の抜けた鳴き声を上げながらランカの所へぷよぷよと飛んで行く緑色をしたバジュラの幼体の姿が見える。

 

「……お、お前まさか『02』に潜り込んでいたのは、私を監視する為か!?」

 

 ランカに抱かれてご満悦なバジュラの幼体……あい君が ぴぃと小首を傾げている。その姿にムカついた翡翠は不埒な小動物を捕まえようと手を伸ばすが、その前にランカが小動物――あい君を庇って両手に抱えたあい君を高い位置に持ち上げて、それを掴もうとぴょんぴょんと飛ぶ翡翠……グダグダである。

 

『……何時まで馬鹿な事をしているの』

 

 グダグダな空気の中、翡翠の近くに投影型のウィンドウが開いてジト目を浮かべたノノがあきれ顔で未だぴょんぴょん飛んでいる翡翠に声を掛け、それを聞いた翡翠は若干頬を赤く染めながら んんっと咳払いをして仕切り直そうとする。

 

「……まぁ、女王バジュラ(グラン・マ)が展開している次元断層によって要塞惑星からの攻撃は遮断されている訳だけど、それも何時まで持つか分からない」

 

 これまでにも敵宇宙怪獣は、その驚異的な数もだが個々の能力も驚異的なモノがあった……たとえば、ジャックナイフ級と呼称される宇宙怪獣は放熱板を重ねた強靭な薄膜で相手の装甲を貫くだけでなく、戦艦バジュラの張るフォールドバリアすら貫いて見せた……そして極め付けは自由浮遊惑星を用いた移動要塞惑星だろう。

 

 惑星規模の相手を同化変質させて、恐ろしい程の攻撃力を持つ存在へと仕立て上げたのだ……彼らの驚異的な能力は決して侮っていい物ではない。

 

「……そんな相手にどうするの?」

 

 翡翠の説明を聞いていたシェリルが絶望的なまでの戦力差をどう埋めるのかと問い掛け、問われた翡翠は んふふっと不敵な笑みを浮かべて「相手が非常識なまでの戦力を持って居るなら、こちらも非常識な方法を取るまでさ」と答えて、周囲の視線を集めた翡翠は高らかに宣言する。

 

「――決まっているでしょう、みんな大好き『合体』だぁあ!」

 

 


 

 

『――決まっているでしょう、みんな大好き『合体』だぁあ!』

 

 『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊の最前線で二柱の移動要塞惑星という最大の脅威に立ち向かおうとしていた異世界の決戦兵器バスターマシン7号ことノノは、敵要塞惑星の動向に注視していた所で義理の妹(おバカ)が高らかに宣言した内容に、無重力の宇宙空間であるにも関わらず器用にズッコケた。

 

 ……な、何を言ってるのよ、あのおバカ(翡翠)は。

 

 ジト目を向ける義理の姉(ノノ)の心情など知らず、『クォーター』の左舷飛行甲板上に接地設置された特設ステージで高らかに宣言した翡翠は矢継ぎ早に彼女の船である『実験艦―02』の制御コンピューターに指示を出し、制御コンピューターの出した指示に従って『Re:MODELERS・シリーズ』の各艦だけでなく『S・M・S』・新統合軍の連合艦隊をサポートしていた『新生バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)』もメインノズルを吹かして前進して、丁度両艦隊の中間点に集結していく。

 

『――『02』、合体シークエンス開始』

『YES・Ma'am』

 

 翡翠の宣言の下――複数の改型スヴァール・サラン級戦艦の二対のエンジン部分より先の船体が上下に開閉して近くに存在していたRe:MODELERS艦の流体金属で構成された船体に突き刺さり、二対のエンジン・ノズルの噴出量がさらに増大して突き刺さったRe:MODELERS艦ごと進んで――その先にある同じように変形した改型スヴァール・サラン級戦艦突き刺さったRe:MODELERS艦と融合し……巨大な物体へと変貌していく。

 

 ……これって、まさか!?

 

 そういえば、この宇宙に流れ着いた当初に暇を持て余した翡翠と確保したゼントラーディ自動兵器工廠衛星で既存のゼントラーディ艦の設計図に変更を加えて改良型のゼントラーディ艦のロールアウトを待っている間に話した彼女ノノの仲間――同じ第六世代の技術で生み出された本来のバスター軍団――自己修復・自己進化機能を搭載したサポートメカ達の話を興味なさそうに聞いていたくせに、まさか『新生バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)』や『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊にこんな隠し機能を加えていたなんて……

 

 ……あの子は!

 

 とりあえず、次に会った時にはあの能天気な顔をしたあの子(翡翠)の良く伸びるほっぺたを思いっきり抓らなければ気が済まないノノであった。

 

 


 

 

 戦場に乱入して来た女王バジュラ率いるバシュラ艦隊によって展開されたフォールド断層によって二柱の移動要塞惑星の攻撃から守られた『マクロス・クォーター』の左舷飛行甲板上に接地設置された特設ステージでは、大型の投影型スクリーン上で展開される『新生バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)』と『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊による合体の様子が映し出されていた。

 

「……なに、これ?」

「……船が次々に合体して……まるで積み木のように何かを形作っていく……」

 

 元々は巨人種族ゼントラーディが使用する事を前提とした宇宙戦艦を改造して建造された『新生バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)』――元となった標準戦艦同様に2000メートル級の船体を持つ無数の改型スヴァール・サラン級戦艦や4000メートル級の改型ノプティ・バガニス級決戦型砲撃戦艦が変形をしながら翡翠が持つ『IMPERIAL(いにしえの帝国)』の超技術によって建造された全長1000メートル級のRe:MODELERS艦の流体金属で構成された船体と結合して、流体金属で構成されたRe:MODELERS艦の船体が変形を続ける改型ゼントラーディ艦に出来た隙間を覆うように融合して行き……塊となった無数の船だったモノが更に結合して行って段々と形になっていく。

 

「……これは、大きな手?」

「……あっちは足のつま先……翡翠ちゃん! 一体何を作っているの!?」

 

 問われた翡翠は、んふふと不敵な笑みを浮かべた後に高らかに宣言した。

 

「――これぞ切り札中の切り札――対高位存在用最終決戦兵器『ギガ・バスター』だあぁあ!」

 

 ……翡翠は何処まで行っても翡翠であった。

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。

 小さい生き物であるが油断ならない相手とバジュラに認識されていた翡翠の傍には、何かあった時には即座に伝わるように一体の幼生体が張り付き、幼生体から得られた情報は女王バジュラにすら流され――その物言いにカチンときた女王バジュラは、幼生体を使って不埒な発言をする愚か者(翡翠)に制裁を加える――あい君が翡翠の防御を突破したのは、長い観察によって彼女の殆どを覆う別位相の膜である『SECOND・SKIN(第二の皮膚)』を解析してバジュラの持つ能力であるフォールドウェーブで別位相の幕を打ち消して、直接本体にブツかって行った訳です。

 翡翠が用意した切り札中の切り札『ギガ・バスター」も登場し、二柱の移動要塞惑星とのガチバトルに入る次回……書き上げる時間がまったく取れず、こうなったら最後まで書きあげてまとめて投稿しようかと思っております。

 では、またいずれと言う事で、ではでは~。
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