マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス   作:soul

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アンコクノプリンセス編

 『マクロス』の名を冠する船を中心とした『S・M・S』・新統合軍の連合艦隊は、異世界の技術によって生み出された『新生バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)』と『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊と共に、無限に湧き出す敵性生物 宇宙怪獣軍団の本拠地である別の宇宙への結節点である二つの『光の回廊』を破壊するべく、歌姫たちの力を借りながら宇宙を埋め尽くす勢いで立ち塞がる宇宙怪獣軍団の分厚い壁を切り崩していった。

 歌姫たちの奏でるメロディーは戦士達に力を与え、このまま宇宙怪獣の群れを突破出来るかと思った時――『光の回廊』から姿を現したのは巨大な二つの影――惑星質量を持つ宇宙怪獣の切り札――寄生されて同化変質した移動要塞惑星が出現したのだ。

 その苛烈な攻撃力は無敵の盾であった数百の『Re:MODELERS・シリーズ』艦を破壊し、再び凶悪な砲火が『S・M・S』・新統合軍の連合艦隊に向けられた時――翡翠は切り札中の切り札を切った――すなわち、対高位存在用最終決戦兵器『ギガ・バスター』というカードを。



第73話 決戦 移動要塞惑星 前編

 

 

「……ほら何時まで倒れているんですか、とっとと起きなさい」

 

 煙を上げて倒れ込む翡翠の襟首を掴んで引き起こしたのは、異界の最終兵器バスターマシン7号こと麗しき義理の姉ノノであった――二つの巨大な移動要塞惑星が再び攻撃態勢に入った時、それを阻止するべく飛び出した彼女は、自身を造り上げた地球帝国の超技術の結晶たる『ファジカル・リアクター(物理法則書き換え機関)』をもって敵の攻撃を相殺しようとした。

 

 だが要塞からの攻撃はノノの処理能力を超え――高出力ビーム群が着弾する寸前に、事前に翡翠が呼び寄せていたバジュラたちによって阻止されて事なきを得た……が、義理とは言え姉である自分に何の相談もなく『新バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)』以外に内緒で戦力を構築し、人の話を聞き流していたかと思うと『新バスター軍団達(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)』に合体機能を取り付けるなどなど勝手に動く翡翠(小悪魔)

 

 あろうことか彼女の切り札ともいえる『ダイバスター』をセンスが悪いと貶して、トウヨウの三面六臂の仏様よろしくシェリルさんとランカの顔をくっつけるなど……このまま放っておいたら“何をしでかすか”分かったモノではない……今だ悶絶している翡翠を引き起こしたノノは、ぶら~んと揺れている義理の妹を冷めた目で見ていた。

 

「……ノノ、帰って来たんだ」

「……こんな時に何処に行っていたの?」

 

 翡翠請われて共に歌っている最中に敵に向かって飛び出した筈のノノが何時の間にか『クォーター』に帰って来ていて、センスの無い事を本気で言っていた小悪魔(翡翠)のこめかみを抉って沈めた事に苦笑したシェリルとランカが問い掛けると、ふんっと鼻息荒いノノは2.3深呼吸して気持ちを落ち着けた後に綺麗な笑みを浮かべて二人に答えた。

 

「……最近ノノは学習しました」

「……なにを?」

「――この子を野放しにしたら、ろくなことが無い事を」

 

 ――いまさら!?

 

 生暖かい視線を送るシェリルとランカを尻目に、翡翠をとっ捕まえたノノは片手に翡翠を持ったまま飛翔して一気に特設ステージを飛び出した。

 

「――行きますよ、『動力源(翡翠)』!」

「――なっ! せめて『制御システム(オール・コントローラー)』か『航法安全装置(ナビゲーション・セーフティ・デバイス)』とかにしてよ!?」

 

 グダグダな言い合いをしながら特設ステージを飛び出したポンコツ姉妹……惑星規模の二柱の敵移動要塞の威容、その恐るべき攻撃力の前に怖気付いていた者達は毒気を抜かれ、シェリルやランカと言った比較的近しい者達は、こんな時でも変わらぬ賑やか姉妹に乾いた笑いのような物を浮かべていた。

 

 


 

 

 翡翠とノノの超技術によって生み出された『新バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)』と『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊の集合体である対高位存在用最終決戦兵器《ギガ・バスター》――約2万隻の戦闘用航宙艦の集合体であるその威容は全長1000キロを超えて、全体的には改型の前身であるゼントラーディ艦同様にグリーンを基本に紅いラインの入った異界の最終兵器である『バスターマシン7号』ことノノのバトルスーツと同じデザインであり……幸いな事に『ギガ・バスター』の頭部はノノをモデルにした顔だけであり、翡翠の事だから何か“ろくでもない”装備を搭載しているのでないかと心配していたノノは一応まともな造形をしている事に安堵していた。

 

 ――今、彼女ノノは翡翠が用意した対高位存在とやらへの決戦兵器である『ギガ・バスター』の頭部に設けられた制御システムの中枢として組み込まれている――そうすることによって、この巨大な人型兵器を自分の手足の如く操る事が出来る……しかし、この『ギガ・バスター』に搭載されている制御システムは驚くばかりである。

 

 此方の指示を伝達する速度がどう考えても物理法則を越えており、一体どこで何を仕入れたのかシステムより読み取れた情報によれば思考を光速を越えて伝達できる『亜空間ネットワーク』が全身に張り巡らされて、イナーシャルキャンセラーとは別系統の慣性制御システムによって千キロはある巨体であっても周囲の空間に影響を与える事無く素早い動きを可能としているらしい……一体いつの間に用意したのやら。

 

『――そこら辺はどうなの、翡翠?』

『……私、『動力源』だからわかりませ~ん』

 

 ……この子は!?

 

 バスターマシン2号機のように『ギガ・バスター』の動力制御や火器管制を担当している翡翠は『動力源』扱いされたのがよほど不服の様で、不貞腐れて投げやりな返答をしている……どうやら本人は知性派を自称しているらしい……似合わない事この上ない。

 

『――バカな事を言っていないで、敵は目の前にいるんだよ!』

『……惑星規模だけにデカい顔をしてからに』

 

 真面目にやれと叱りつけると少しは真面目な返答を返してくるが毒づいている所が翡翠らしい……やれやれと心の中で嘆息したノノは意識を目の前に存在する二柱の移動要塞惑星へと向ける――二つの艦隊が結集したこの『ギガ・バスター』は千キロを超える巨体を誇るが、惑星規模の相手の前では文字通り小粒程の存在感しかない――それでも目の前に聳え立つ巨大な壁を突破し、次元回廊である『光の回廊』の先にある宇宙怪獣達の巣窟 超巨大銀河『TGD』へと到達して宇宙怪獣達を殲滅しなければならない。

 

『――やるよ、翡翠!』

『了解、各縮退炉 最大出力にて同期開始――各部兵装スタンバイ、対空砲および対艦ミサイル用意――』

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 そして翡翠が放つ思考通信の中に『破滅魚雷(デットエンド・トービトゥ)』装填と聞きなれない単語が混ざっていたの『ギガ・バスター』の兵装を再チェックしたノノは、頬を引き攣らせて翡翠に噛みついた。

 

『――翡翠! このおバカ、何てモノを準備しているのよ!?』

『……ん?』

『聴きなれない装備だったから確認してみれば、ストレンジ物質を内蔵した魚雷なんて使える訳ないでしょう!』

 

 巨大兵器の中でギャーギャー言い合う二人……何時もの通り、グダグダである。漫才姉妹が言い合いをしている内に、外では動きがあった――『光の回廊』の前に陣取っていた二柱の移動要塞惑星が周囲の空間を波立たせながら移動を開始したのだ。

 

『敵の方が動き出した――翡翠!』

『了解……とはいえ縮退炉の複数同期は、船の構造材の問題でそれほど長くは持たないからヤルなら短期決戦だよ、ノノねぇ』

 

 『新バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)』と『Re:MODELERS・シリーズ』艦隊 約二万隻に搭載されている縮退炉を全て同期させるなど現実的ではなく、幾つかのグループに分けて同期させる事で『ギガ・バスター』は稼働している――ノノは、その中でも両腕部で同期可動している縮退炉群に指示を送り、指示を受けた縮退炉群を管理する端末は周囲の構成素材を変形させて両腕を巨大な砲塔へと変化させた・

 

 バスタァァアァ! ビィイィイイムゥゥウウ!!

 

 鋭い――ノノの放つ裂帛の気合を体現するかのように千キロの巨体が両腕を大きく振り上げて、込められたエネルギーを解き放つ――初代バスターマシン ガンバスターに搭載されたバスタービームは-1億度の冷凍砲であり、ノノことバスターマシン7号のそれは星をも貫き、決戦兵器『ダイバスター』のバスタービームは更に高出力である。

 

 ノノと翡翠の科学と技術と趣味そして情熱が込められた『ギガ・バスター』には徹夜明けのハイ・テンション(脳内お花畑)状態の翡翠によって様々な極悪兵装が搭載されており――絶対零度を超える負の温度に到達した『ギガ・バスター』のバスタービームは「この世の何よりも熱く」――あらゆるモノを破壊する……はずであった。

 

 『ギガ・バスター』の両腕から放たれた高出力のバスタービームは周囲の原子を励起させながら突き進み――赤黒い大地が広がる移動要塞惑星に到達する寸前に、まるで定められていたかのようにその軌道が曲がって要塞惑星から逸れて周辺宙域へと空しく消えていく。

 

『――なっ!?』

『……空間歪曲か、小癪な事を――ノノねぇ、ビームは利きが悪い、軌道修正出来るミサイルや魚雷でダメージを与えよう』

『……わかったわ』

 

 ――バスタァアア・ミサイル!

 

 『ギガ・バスター』の身体を構成している無数の改型ゼントラーディ自動制御艦から既存のミサイルだけでなく、翡翠が設計図を書いてゼントラーディ自動兵器工廠衛星のラインが製造した光子魚雷や量子魚雷なども次々と撃ち出されて二柱の移動要塞惑星へと向かう――これはこの世界とも、翡翠やノノの元の世界とも異なる並行世界で一大勢力を持つ惑星連邦の航宙艦で運用されている兵器である。

 

 一発一発が大都市を蒸発させるだけの破壊力を有する光子魚雷が豪雨の如く移動要塞惑星へと降り注ぐ……が、要塞惑星の大気圏に突入した途端に想定以上の高熱に包まれて爆発飛散してしまった。

 

『――光子魚雷が!?』

『……あんにゃろ、大気に何か混ぜやがったな』

 

 戦闘を開始した直後からまるで手の内を読まれているかのように攻撃が無効化された事にノノは驚き、繰り出した攻撃を無効化する害獣どもの切り札にギリギリと歯噛みした翡翠は次なる手を打つ。

 

『――スピアー、マグネトロン・モードに換装――全射出装置発射!』

『ちょっ――翡翠! いくら極悪なスピアーと言えども、惑星クラス相手では火力不足だよ!?』

 

 なにをトチ狂ったのか、翡翠は『ギガ・バスター』に搭載されているミサイル発射システムから対艦ミサイル程度のサイズしか持たない自立型蹂躙兵器『スピアー』を連続して射出させる。

 

 しかし惑星サイズの――しかも光子魚雷の飽和攻撃を無効化する敵相手では、10メートル前後の『スピアー』程度では有効打にはならない……そう考えていたノノだったが、射出されたスピアーの軌道がおかしい事に気付く。

 

 ……狙いは要塞惑星じゃない?

 

 『ギガ・バスター』の全身から放たれた無数のスピアーの軌道が二柱の移動要塞惑星ではなく、未だ周囲に存在する敵宇宙怪獣へと向かっていた……なに、八つ当たり?

 

 此方に向かって攻撃してきてはいるが翡翠謹製の重力慣性制御システムによってまるで蝶のように舞う『ギガ・バスター』に有効打を撃てずに居る怪獣軍団を相手にするより、問題である二柱の惑星質量をどうにかするのが先決だろうに、無駄な攻撃は慎むように叱責しようとしたノノだったが、敵宇宙怪獣軍団に命中したスピアーが敵の弱点である高圧電流を流すでもなく、翡翠の性格の悪さそのモノと言った相手のコントロールを奪う機能を使わずに ただ突き刺さっている事に違和感を覚える。

 

 ……また、ロクでないモノを仕込んでいるかしら。

 

 翡翠の性格の悪さを体現していると言ってもいいスピアーがおとなしい(・・・・・)事に疑念が募り……翡翠が言っていたマグネトロン・モードとやらに付いて検索したノノは目が点になった。

 

『――翡翠! マグネトロン・モードって、何をする気なの!?』

『――決まってる、害獣どもの度肝を抜いてやるのさ! マグネトロン・ウェーブ最大出力で照射!』

 

 『ギガ・バスター』より高出力なエネルギーがマイクロ波として放射されて、敵宇宙怪獣の硬い外殻に突き刺さっていたスピアーがマイクロ波を受信して自身の動力炉からのエネルギーと共に7000mを越える混合型宇宙怪獣の巨体を無理矢理動かして引き寄せる。

 

『――宇宙怪獣が!?』

『――電磁誘導最大! くたばれ、デカブツ!』

 

 『ギガ・バスター』から放射されるマグネトロン・ウェーブにより無理矢理軌道を変えられた無数の敵宇宙怪獣達が電磁誘導によって一点へと投げ込まれる――二柱の移動要塞惑星へと無理矢理軌道を変えられた敵宇宙怪獣達は強力なマグネトロン・ウェーブの誘導によって次々と重力に捕らわれて要塞惑星の大気圏へと突入していく。

 

『――これぞ、バスター・害獣落とし!』

『……何でもかんでも、バスターを付ければいいって訳じゃないよ……』

 

 むふ~、と思考通信なのに鼻息を荒くする翡翠に呆れるノノ……スピアーを撃ち込まれた哀れな宇宙怪獣達は強力なマグネトロン・ウェーブの誘導に抗えずに次々と移動要塞惑星の大気圏へと突入して地表に激震を起こして巨大なクレーターを作っていく……光子魚雷が大気圏に突入した時、大気に何か細工されているのか突入時の温度が想定以上に上って外圧に耐え切れずに全て爆発したが、スピアーによって無理矢理大気圏に放り込まれるも強固な外殻が宇宙怪獣の船体を守り、キロ単位の船体が原形を保ったまま地表に落下したのだ。

 

 太古の地球に飛来した直径10キロの小惑星の衝突は当時地球を支配していた恐竜を絶滅させた――宇宙怪獣の地表への激突は、それと同規模あるいはそれ以上の破壊力を有しており、普通の惑星であれば地表は引き裂かれて崩壊するだろう。

 

 ――だが、相手は普通の惑星では無かった。

 

『……あれだけブツけているのに頑丈だな。ノノねぇ、害獣惑星が砲撃態勢に入った、くるよ!』

 

 臨界状態に達した二柱の移動要塞惑星の火山を模した無数の大口径砲から強力なビームが射出されて周囲の空間の水素原子を励起させながら『ギガ・バスター』へと迫る。

 

 ――バスターシールド!

 

 もはや伝統芸となった巨大なマントを広げて無数の高出力ビームを防ぐ……全長千キロの『ギガ・バスター』を覆う布状の装備などシュールだと思うが、翡翠本来の船『IMPERIAL(いにしえの帝国)』の『アルテミス』が装備する位相変換シールドを再現した事のより、あらゆる攻撃を別位相の壁で阻む。

 

『……こりゃ中々苦労しそうだ』

 

 お互い有効打を打てない状況に唇の端を上げた翡翠が零した。

 

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。
 時間がある時にちまちま書いていましたが、前回から時間が経ちすぎたので、切の良い所まで投稿に切り替えました。

 さて、凸凹姉妹は『ギガ・バスター』を駆って果敢に要塞惑星に戦いを挑みますが、相手も一筋縄ではいかず苦戦を強いられています。

 では、次回 第74話 決戦 移動要塞惑星 中編 4/10 0時に更新予定です。
 では、では~。
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