マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス   作:soul

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 アンコクノプリンセス編


第75話 決戦 移動要塞惑星 後編

 

 『S・M・S』のクォーター級や、新統合軍のグァンタナモ級、ウラガ級宇宙空母を中心に、ノーザンプトン級ステルス・フリゲートやステルス・クルーザーで構成された連合艦隊の中心に位置する可変攻撃宇宙空母『マクロス・クォーター』の左舷飛行甲板上に接地設置された特設ステージ上には、赤と黒の煌びやかな衣装に身を包んだ二人の歌姫が立っていた。

 

 銀河の妖精シェリル・ノームと超時空シンデレラ ランカ・リーの二人の前には、巨大な二柱の移動要塞惑星が存在していた。

 

『マクロス・クォーター』ブリッジ

 

「――正面に二つの敵 移動要塞惑星――移動速度変わらず、此方に近付いています」

「――特設ステージの準備、完了しています」

 

 全天球型のホロ・スクリーンにて敵の動きを監視するモニカが報告し、通信を担当するラムが左舷飛行甲板上に設置された特設ステージの状況を伝えて来る。

 

「――オペレーション『シグルドリーヴァ』開始!」

 

 艦長席に座るジェフリー・ワイルダー大佐は準備が整った事を確認すると、現状を打破すべく特設ステージ上に立つ二人の歌姫にGOサインを出す――赤と黒の衣装を纏ったシェリルと黒の中に白いラインの入ったランカが、決意の眼差しを浮かべながら心のこもった歌を歌い出す。

 

 地平線を揺さぶる風

 炎はまだ燃えているか

 震えながら世界の入口に立つ

 想い届けるまで 死ねない

 

 二人の歌姫の歌声は、宇宙怪獣出現以来全力稼働している『スーパーマーシャル・フォールド音波砲』によって強化増幅されて、強力なフォールド・ウェーブとなって特定方向――二柱の移動要塞惑星へと向かって突き進んだ。

 

「……バジュラ達の星系から銀河系中心方向にあるこの宙域に向かう間に、休息中にたまたま一緒になったノノに聞いたんです……『新生バスター軍団(改型ゼントラーディ自動制御艦隊)』をどのように建造し、そして どのような技術が使われているのか、を」

 

 『マクロス・クォーター』のブリッジ内で任務を遂行していたミーナ・ローシャン伍長が唐突に語り始める……当時敵対していた翡翠の待つ『光の回廊』宙域へと向かう『クォーター』のブリッジで、艦内のコンディションを最高レベルに保つべく作業していた彼女だったが、未知の力を持つ翡翠を相手にするだけでなく――その後に控えている、数キロ単位の巨大な肉体を持つ未知の宇宙怪獣を……億を超える大集団を再び相手にしなければならないかもしれない。

 

 それが彼女の精神に負担をかけていた……思ったよりも疲労を感じていた彼女は、貴重な休息時間に偶然ノノ出会った時に戯れに以前より気になっていた事――既存のゼントラーディ艦とは一線を画す能力を持つ改型ゼントラーディ艦をどうやって用意し、どのような技術を以て建造したのかと聞いてみたのだ。

 

「……確保したゼントラーディの自動兵器工廠衛星に残されていた、自動兵器製造ラインの船の設計図に手を加えて、最適化を行いながら、彼女達の持つ技術を組み込んだらしいです」

「……たった二人でそこまでの事をするなんて、確かに凄いと思うけど……それが、今の状況と何の関係が有るのぉ?」

 

 操舵席から振り返りながら疑問の声を上げるボビーに、視線を向けたミーナは静かな口調で語り出した。

 

「改型ゼントラーディ艦に新設された縮退炉……膨大なエネルギーを生み出す夢の動力炉を設計したのは、あの翡翠と言う少女だと言う話です」

 

 ノノの故郷である地球帝国にも縮退炉を建造するだけの技術が有るが、翡翠が設計した縮退炉の方が効率的であり、ゼントラーディの自動兵器生産ラインの規格に合った動力炉を設計出来たのだ。

 

「……ノノ達の地球の縮退炉と、翡翠という少女の種族が運用する縮退炉……二つの縮退炉にはどのような違いがあるのか、を空いた時間で調べてみたんです」

 

 そうしたら面白い事が分かったのだ。

 

「……面白い事?」

「はい艦長――翡翠達の種族の技術で製造された縮退炉の方が、より高度な技術で制御されており、より強力で、より深い超空間でフォールド・ウェーブを発生させる事が可能だと」

「――それって!?」

 

 特設ステージ設置の陣頭指揮を押し付けられたキャシーには、ミーナの言葉は重大な意味を持って居た――特設ステージに増設されている『スーパーマーシャル・フォールド音波砲』はその翡翠より設計図が提供されており、『スーパーマーシャル・フォールド音波砲』の動力源は小型の縮退炉なのだ。

 

 その翼は ヴァルキュリア

 傷ついた戦士の前 ヴァルキュリア

 舞い降りる幻想の 恋人

 その魂 導くため虹の橋を渡る

 ヴァルキュリア

 

 シェリル・ノームとランカ・リー二人の歌姫の熱唱は空間を震わせながら進む――二人の歌姫の熱唱は空間を飛び越えて二柱の移動要塞惑星へと到達した。

 

「……あの時、翡翠が言っていました――あれは、惑星その物を同化変質させたモノであると」

 

 宇宙の何処かに存在した群体が絡まりあって混ざり合い、強力な宇宙艦隊を作り出したと言う――宇宙を彷徨っていた自由浮遊惑星に憑りついた群体が、惑星の構成物質を材料に同化増殖して、強力な要塞惑星へと変貌させたのだろう。

 

「惑星全土を覆う群体生物……そして、これまでに見せた明確な悪意……恐らく、あの要塞惑星にはコアになるモノが在る筈です」

「……つまり、『スーパーマーシャル・フォールド音波砲』なら、あの要塞惑星の奥底に隠れているコアに届くって事ね!?」

 

 『クォーター』のブリッジに居る者達の視線は、ブリッジから見える左舷飛行甲板上に設置された特設ステージへと改めて向けられる――そのステージ上では、煌びやかな衣装に身を包んだ二人の歌姫が全身全霊を掛けて歌い続けていた。

 

 

 ――オペレーション『シグルドリーヴァ』。

 シグルドリーヴァとは、北欧の神オーディンに使える戦乙女ウァルキュリアの一人である。彼女達ヴァルキュリヤの名前は、概して戦いに関連付けられた意味合いを持ち、シグルドリーヴァとは『勝利を促す者』、あるいは『勝利のために鼓舞する者』という意味合いを持つ。

 

 


 

 

 可変攻撃宇宙空母『マクロス・クォーター』から放たれる強力なフォールド・ウェーブは、大口径ビーム砲による攻撃を続ける二柱の移動要塞惑星へと届き――大気層を抜け――蠢く大量の砲塔群を抜け――地表を貫いてマグマの海を掻き分け――表面上は何の変化も無かったが、確実に変化を促していた。

 

 二柱の移動要塞惑星から撃ち出される大口径ビーム砲は嵐の如く『ギガ・バスター』を襲っていたが、二人の歌姫の歌声が戦場に響いた時――これまで豪雨の如き物量で『ギガ・バスター』を苦しめて来た大口径ビームの攻撃に僅かに変化が現れる……正確無比に此方を襲っていたビームの照準に僅かな誤差が現れ、『ギガ・バスター』の装甲を削っていたビームの命中率が僅かに下がったのだ。

 

『――これって、シェリルさんやランカの歌の影響!?』

『……驚いた。二人の放つフォールド・ウェーブが害獣の大気層を抜けて、地表すら貫通して奴らのネットワークに干渉している……』

 

 やるじゃないか、ねぇちゃんズ。映像通信の中で翡翠はにやりと笑っている。驚きを露にする二人を尻目に、連合艦隊の中心に位置する『マクロス・クォーター』の特設ステージ上では、シェリルとランカの二人が魂を込めた歌を歌っていた。

 

 運命に背いても ヴァルキュリア

 涙に引き裂かれても ヴァルキュリア

 夜明け前に 輝かない生命はない

 愛してる

 光の鎧 この身にまとい 空を翔る

 ヴァルキュリア サヨナラノツバサ

 

 それは、傷つきながらも未来を求めて足掻き続ける戦士に向けたエールの歌であり――愛しい人に愛してると呼びかける愛の歌……だが、それを理解するには翡翠の精神は幼すぎたようだ。

 

『……ねぇ、ノノねぇ。ウァルキュリアってアレだよね、ウァルハラって所でタダで飲み食いさせて、代金代わりに戦場に向かわせるって、ぼったくりバーのような物語だよね』

『……翡翠、そんな言葉どこで覚えたの!?』

 

 シェリルとランカの歌を聞いて、そんな感想しか出ないことを嘆き、あんな下世話な言葉を十代前半の翡翠が使った事に、顔を手で覆いたくなるノノ……そういえば、アイランド1で暮らしていた時にバラエティ番組を見て良く笑っていたっけ、翡翠。

 

 ……この戦いに生き残ったら、義理の妹(翡翠)の情緒教育に力を入れようと固く誓うノノ……そんな義理の姉(ノノ)の心情など知らぬ翡翠は、くっくく、と女の子としては微妙な笑い方をしながら広域通信システムを操作している事を知ったノノは、「……翡翠?」と呼びかけるが、それに答える事無くシステムを起動した翡翠は語り始めた。

 

『――この宙域に集った勇敢なる戦士達、そしてランカねえちゃんとシェリルおねぇちゃん……みんなの尽力と、ねぇちゃん達の歌によって全てのピースが揃った――この戦い、わたしたちの勝ちだ! さあ! いっけえぇ、ブレラ!!』

 

 翡翠がそう叫んだ瞬間、二柱の要塞惑星の至近距離の空間に陽炎のような揺らめきが立ち、陽炎の中から複数の物体が飛び出してくる――それは無重力下の恒星間空間にはおよそ似付かわしくない、惑星の大気圏内で運用される移動物同様に両横に翼を広げ、翼の下のパイロンには強力なミサイルが装着されている、パープルに塗装された人類初の主力可変戦闘機VF―1を先頭に、連合艦隊の各艦艇より選抜された精鋭部隊であるVF―171 ナイトメアプラスのカスタム機の編隊が続き、その中にはアーマードパックを装備したVF―25 メサイヤやYF―29 デュランダルの姿もあった。

 

 


 

 

 可変攻撃宇宙空母『マクロス・クォーター』ブリッジ

 

 翡翠の広域思念波通信に応えるように、二柱の移動要塞惑星の至近距離に陽炎のようなモノが現れると、その中から先行していた突入部隊が姿を現した事をキャッチしたモニカが報告する。

 

「――要塞惑星の近距離に複数の機影を確認……先行したステルス・フリケードと護衛部隊です!」

 

 二柱の移動要塞惑星の内のやや後方に位置する要塞惑星の衛星軌道上に、短距離フォールドを行った『光の回廊』破壊の爆弾としたステルス・フリケードと連合艦隊各艦より選抜された護衛のバルキリー部隊が陽炎のように揺らいだ空間より姿を現し――その護衛のバルキリー部隊の中に、アーマードパックを装備したVF―25 メサイヤと対バジュラ戦を想定した試作機であるYF―29 デュランダルの姿を確認して、「部隊の中に『スカル小隊』を確認、健在です!」と告げると、キャシーとボビーが喜びを露にする。

 

 ジェフリー艦長の指示を受けたラム軍曹が通信システムを操作すると、艦橋にホロ・スクリーンが立ち上がる――『スカル小隊』の隊長であるオズマ・リー少佐の姿が浮かび上がると、彼は力強く宣言した。

 

『――『Little Princess(小悪魔)』のオーダーだ、全機『突撃ラブハート』!』

 

 彼の宣言の下、要塞惑星の軌道上から一斉に翼下にポイントされた『MDE弾頭』と『反応弾』を射出して要塞惑星へ一斉攻撃仕掛けた。

 

「……あんな至近距離に一体どうやって?」

 

 いつの間に要塞惑星の至近距離まで接近していた先行突入部隊が今まで探知できなかった事に疑問を浮かべるキャシー……まるで、そんな彼女の疑問が聞こえたかのように、翡翠が広域思念波通信を繋げたまま解説を始めた。

 

『……『光の回廊』を破壊する為に、何か仕掛けて来るだろうって事は予想出来たからね……『02』で暇してたブレラに請われて機体を用意することになったんだよ』

 

 翡翠の話では、連合艦隊を迎え撃つ準備(……おもにグレイスが)や、色々と小細工に忙しい時に、自分用の機体が欲しいと要求してきたブレラにムカついた彼女は、望み通りに『IMPERIAL(いにしえの帝国)』の技術を用いた文字通り(・・・・)特別な機体を用意したのだ……この世界で用意出来る最高強度の素材をベースに、翡翠謹製の謎技術による重力慣性制御技術によって既存の機体を上回る運動性と、戦艦に匹敵する攻撃力を持たせた。

 

『……ついでに、別の並行世界で運用されている遮蔽装置の再現試作機を積み込んでみたんだよね……あの外見は、このクソ忙しい時に余計な仕事を増やしてくれたブレラに対する意表返し、だね』

 

 これは亜空間潜航とは異なり、『重力レンズ』効果と翡翠の謎技術『位相変換システム』によって、自機だけなく周囲の物体ごと姿を消すという技術であり、それを搭載した試作機をブレラに見せ所、明らかに失望したような表情を浮かべたが、そんな彼に向けて翡翠は何時ものシニカルな笑みを浮かべたまま言い放ったのだ。

 

『――そういう事は、あの機体を乗りこなしてからにして欲しいね』

 

 売り言葉に買い言葉で、憤慨しながら用意された機体に乗り込んで初飛行に挑んだブレラ・スターンは、機体の加速性能には何とか耐えたが、急激な軌道変更を可能にする機動力に耐えられずに、生体部分に多大なストレスを受けて安全装置――保護モードが起動して意識を失った(ブラックアウト)ブレラは、意識を取り戻した後にさんざん翡翠に煽られた(プークスクス)事もあり、彼は躍起になって用意されたVF―1もどきに乗り込んで慣熟訓練を行ったのだ。

 

『……本来はブレラに対する嫌がらせ程度のつもりだったんだけど、何が役に立つか分からないものだね』

 

 バルキリーの編隊より放たれた無数の弾頭は、移動要塞惑星の大気圏に突入すると、組成を変更された大気の影響によって溶け出す前に爆発――『MDE弾頭』によって大気圏上層の大気を消し去り、残っているモノも『反応弾』の爆発によって吹き飛ばされて出来た穴に『ディメンション・イーター弾頭』に改造されたステルス・フリケードが突入し――地表近くでフォールド機関を暴走させて『疑似ブラックホール』を形成すると、移動要塞惑星の大半を飲み込み……後には歪な三日月が残されているだけだった。

 

「――よっしゃあ! 敵の要塞の一つを討ち取った!」

 

戦闘モードのボビーの言葉を皮切りに歓声を上げる『クォーター』のクルー達……これまで散々苦しめられてきた敵の要塞惑星の一つを倒した……あとはもう一つの要塞惑星を排除すれば、『光の回廊』への道が開ける。

 

「――残る一つに総攻撃だ!」

 

 




 どうも、しがない小説書きのSOULです。

 劇中歌 サヨナラノツバサ the end of triangleですが、最初は要約した文章を乗せていたのですが、どうにも違和感があったので、歌詞をそのまま使用する事にしました……やっぱり、プロってすげぇわ。

 二人の歌姫の熱唱により、忘れ去られていたであろうブレラを先頭とする突入部隊が総攻撃を仕掛けて移動要塞惑星の一柱を撃破しました。

 申し訳ありませんが、今回はここまで。

 予定としては、後2,3話でこの物語も完結する予定ですので、今しばらくおまちくださいませ……とりあえずヤマトを見に行ってきますので、ではでは~。
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