マクロス・フロンティア 迷い子たちのディソナンス 作:soul
ATTENTION! 今回はオリ設定のみでお送りしますので、
苦手な方はご注意くださいませ。
太古より血と恐怖をまき散らした、『
『銀河系外縁部に存在する……現住生物にはキンモク星と呼称されている、ありきたりな惑星です』
「……この星の原住民は、『位階』を昇っているの?」
投影型スクリーンに表示されている情報の中には、最初に『恭順か死か』を宣告した『
「……ふぅ~ん、なかなか面白いじゃない――『エテルナ』、『ガンマ・レイ』発射形態へ移行」
『……“撒き餌”というわけですか、ならば派手に行きましょう』
目標であるキンモク星の周辺宙域まで進出した『アルテミス』は、流体金属で構成された艦首部分に複数の渦が発生すると、八つの巨大な砲口を生み出す――これぞリバィバル級殲滅型戦艦に搭載されている決戦兵器『ガンマ・レイ』のバリエーションの一つ、膨大な出力を得る『
……さぁ、撒き餌は撒いた。後は、餌に釣られた相手が来るのを待つばかり……自動殲滅艦からの報告によれば、侵入してきた三人の原住民は内包するエネルギーを超える能力を見せ、迎え撃つ全ての迎撃システムを突破したと言う。
一体どんなカラクリがあるのか……もしかしたら新しい可能性を見せてくれるかもしれない……ノノねぇや『ヤマト』のように、予測を超える可能性を見せてくれるかもしれないと思うと、身体の奥底からゾクゾクしたものが込み上げてくる……故に――クリスは気付くのが遅れてしまった。
ゾクゾクしたモノの他に背筋を上ってくる“イヤな”感覚に……それに気付いたクリスは、即座に周囲の空間に“超”感覚を広げて背筋を上るイヤな感覚――これまでの彼女の経験に元ずく感覚――強烈な危機感の正体を探る……そしてようやく彼女は知覚した――この空間に隣接する、此処とは異なる空間より聞こえてくる小さな声に。
……歌?
最初は聞き取れないような小さな声だったが、それは独特なリズムに乗って少しずつ大きくなるが、一体なにが歌っているのか、そもそも本当に歌のか、未知の現象により響いているだけなのかもしれないが、背筋を這い上るイヤな感覚にクリスは覚えがあった。
――これはっ、あの『
遺伝子操作の果てに生み出された“奴ら”が運用する生体母艦が内包する巨大な脳より繰り出される強烈な思念波の津波……それを食らえば一瞬で命の炎を消し飛ばされる破滅の謳……聞こえてくるモノは、どこか『破滅の謳』を彷彿とさせるモノがあるのだ。
聞くだけでムカついてくる濁声が広がるにつれて、漆黒の宇宙に変化が広がっていく――真空ゆえに音もなく――だが確実に無数の空間が歪んでいき、周辺宙域が空間異常によって荒れ狂い――歪みによって限界を超えた空間が引き裂かれ――この宇宙に隣接する悪空間が露出して、その中から無数の蠢く肉の塊が姿を現した。
それは固い甲殻に覆われながらも隙間から肉が脈打ち、リブァイバル級戦艦である『アルテミス』と同規模の肉体を持った巨大な肉の塊――甲殻に覆われた細長い紡錘形の肉体の四方に放熱板のような熱を帯びた翅の様な器官を備えた生命体。
それだけなら
「……『バイオ・シップ』」
『……この宙域に現出した敵『バイオ・シップ』は3000……それ以降もこの宙域に侵入してきます』
次元の垣根を越えて次々と姿を現す『
「……宇宙が、“緋い”…… 変質させられているのか」
『……『バイオ・シップ』艦隊の
宇宙に緋が広がっていくにつれて、この世界とは異なる物理法則に浸食されて未知なる空間へと変貌していく……これまでの手法が通用しなく、形作られていたものが存在を保てずに崩壊していく……それはリブァイアル級殲滅型戦艦である『アルテミス』も例外ではないが、彼女に装備されている『位相変換シールド』――あらゆる攻撃をこの世界に重なった位相の違う異なる世界へと逸らして無効化する無敵のシールドにより船体への影響は皆無だが、それ以外のモノは形を保てずに崩壊していった。
それは宇宙空間の変化だけでなく、そこに存在する全てのモノに影響がおよび――その影響は天体にすら及んで星々が形を保てずに静かに崩壊していき――クリスの攻撃目標であった惑星も例外ではなかった。
『……『バイオ・シップ』のアンサンブルによってこの宇宙が浸食された影響で、周囲の天体が存在を保てません。物理法則が変化した事で、天体を構成する原子が崩壊して崩れています』
『アルテミス』の統合思念体『エテルナ』によって周囲の様子を映し出している投影型の大型スクリーンに崩壊するキンモク星の姿が映し出されている……複数の『バイオ・シップ』による
「……あの星の所為で、“奴ら”の侵攻を食い止めていた『結界』に綻びが生じ……その結果、あの星は崩壊する、か……皮肉な事だな……」
「……ならば“私たち”は、あの星に感謝しなければな」
「――誰だ!?」
思わず呟いた独り言に答えが返ってきた事に視線を鋭くしたクリスは声がした方向に振り返りながら詰問する……高度に自動化されたこの『アルテミス』に居るのはクリスただ一人の筈だ……なのに返答が返ってきたという事は、鉄壁な防御を誇るリバィバル級殲滅型戦艦に侵入者が――それも数々のセキュリティーに感知されずに重要区画であるこの中枢指令室に侵入してきたということだ。
クリスは声のした方向に顔を向けて、『アルテミス」の最深部へt足を踏み入れた“敵”を睨み据える……大胆にもたった一人で侵入してきたのは青い髪をした妙齢の女性だった……青色をした髪と整った美貌がナデシコを率いていたミスマル・ユリカを彷彿とさせるが、決定的に違うのがシニカルに唇の端を上げて笑う、人を食ったような その姿。
……そしてその姿にクリスは覚えがあった……直接的な面識はない――だが、彼女ではない他の『
「――お前は! 『十二羅将』」
――そう、彼女こそクリス達『
「――くらえっ!」
重力結晶により見せかけの質量が限りなく無限大質量となった右拳が侵入者へと繰り出されるが、侵入者である彼女は好戦的な笑みを浮かべているが避ける素振りを見せず、拳が彼女の身体へと炸裂する……が、彼女は微動だにせず――彼女の好戦的な表情が消えて、自らに向けられた小さな拳の持ち主に向けて哀れみすら含んだ視線を向けた。
「……弱い」
「――なにっ!?」
「……君の拳は、私が戦ってきた どの亡霊どもと比べても、格段に“弱い”」
右拳を戻したクリスは、左腕を振り被ってそのまま彼女の顔めがけて繰り出すが、その拳も避けようとはせずにクリスの拳は彼女の顔面に打ち込まれる……だが顔面を殴られても彼女は微動だにしない……哀れみを含んだ表情を浮かべたまま彼女の右手がクリスの頬に添えられる――ただそれだけで、クリスは口から吐血し、鼻や耳そして両目からも血を流して水晶のような素材でできた床に崩れ落ちた。
「……すでに我らは此処に橋頭保を得た――後はこの災厄の地を滅ぼし、我らの世界に安息をもたらす――その為にも滅びろ、『亡霊』」
……勝手な事を。
身体の大半を破壊され、内包した修復システムが身体を再生するには今しばらくの時間が掛かる……その間はまったくの無防備になり、殺される事になるだろう……自身の優位を確信して、哀れみなどという上から目線で己の言葉に酔っているこの女に目にモノ見せてやる、とクリスは思念波を己が半身へと発する。
『……『エテルナ』――『自爆シークエンス』を起動しろ』
思念波通信にて『アルテミス』の統合思念体『エテルナ』に命令を送るが、普段なら即座に反応を返してくる彼女からの応答がない……不審に思いながらも何度も『エテルナ』に呼びかけるが反応が無く、クリスの脳裏に最悪の予想が走る。
「……無駄よ」
「――あぐっ!?」
彼女の振り上げた足がクリスの頭を踏み躙る。
「……『銀の船』を使って何かしようとしているようだけど、『銀の船』すでに掌握しているわ」
クリスの頭を踏み締めながら、彼女は己が優位にある事を疑っておらず――クリスは、そこに勝機を見出す――身体の中で破壊を免れた筋力を総動員して、髪の毛どころか頭皮が捲れるのも構わずに両手に力を込めて彼女の足底から逃れると、全身のバネを使って倒立――気合を込めた両足が彼女の顔面目掛けて繰り出した。
「――くっ!?」
虚を突かれながらも侵入者は身体を捻ってクリスの蹴りをさけるが――クリスの渾身の攻撃はこれだけでは無かった。
「――はっあああああ!」
裂帛の気合を込めた声を張り上げながら両腕の力だけで跳躍したクリスは、両足を大きく広げて連続した蹴りを放つ――蹴りによる連続攻撃が彼女を襲うが、最初は虚を突かれれるも繰り出される攻撃を両手を使って確実に捌いていく、だがクリスの勢いに圧されて彼女の片足がわずかに下がる。
――ココだっ!
両手の力だけで飛んだクリスは床に降り立ち――両脚に込めた力を開放して一気に侵入者へと肉薄――気付いた彼女は迫るクリスを迎撃するが、撃墜しようと繰り出された蹴りを掻い潜ってぶつかる勢いのまま、侵入者にしがみ付いた。
「――くっ、何のつもり!?」
引き剝がそうとするもビクともしない……困惑する侵入者に向けて、顔中から血を流し続けながらもクリスは にたりと嗤った。
こちらの攻撃は効果がなく、逆に一撃食らっただけでボロボロにされしまった……しかも『エテルナ』は沈黙して、自爆する事も叶わない……だが、このまま何も出来ずに殺されるなど、正に“死んでも死にきれない”……だから、何が何でもこの女を道連れにしてやる。
残る力の全てを使って侵入者にしがみ付きながら、クリスは胸の奥にある“領域”からエネルギーを汲み上げる――普段汲み上げる量をさらに超えて、身体が耐えられる量を無視して、限界を超えて自壊する危険性も構わず――ボロボロのクリスから異常なエネルギーの増大を感知した彼女の表情が変わる。
――死なら諸とも!
胸の奥からくる激しい痛みを無視し、てクリスは“領域”から最大限のエネルギーを取り出して限界を超えようとした時、クリスの背中を”何か”が触れた感触を感じ――次の瞬間、身体の芯の部分からさざ波のような波動が起きたかと思うと、それはどんどん激しさを増して強烈な衝撃波となってクリスの身体中を蹂躙する。
「……かっ……はぁ……」
衝撃波が身体中を伝播した事で内臓が傷ついたのか、これまで以上の吐血をしたクリスは力なく床へと倒れこんだ。
「迂闊ね、ミスティ――その子、あなた諸共自爆するつもりだったのよ」
「――これは、お手を煩わせて申し訳ありません」
血の海に沈むクリスと、それを冷たい視線で見下ろすミスティ――そして第三の人物が姿を現す。燃えるような真紅の髪に幼さが残るが美麗な顔立ち、今だ成長途中の肢体を蒼い結晶体を散りばめた黒いボディアーマーで包んだ年若い少女。
血の海に沈みながらも反骨の精神だけで顔を上げようとするクリスの頭を掴んだミスティは、そのまま血の海へと叩きつけた。
「――不敬よ、聖王女のご降臨に首を垂れなさい」
クリスの頭を押さえたまま姿勢を正してミスティもまた首を垂れて、新たに現れた少女――聖王女に敬意を示す。目の前で首を垂れるミスティに微笑んだ聖王女は、そのまま水晶のような鉱物で形作られた中央指令所を見回した。
「……これが、亡霊たちの操る『銀の船』……思ったよりも狭いのね」
「このような場所に御身を置かれなくても」
「……興味があったのよ。太古の昔より我ら神聖王国を脅かす、『
ミスティと聖王女と呼ばれた少女、二人の視線が血の海に沈むクリスへと向けられる……その視線は限りなく冷めており、クリスの事をもはや路肩に転がる石ころ程度にしか認識していなかった。
「見るべきものは見たし、そろそろ……」
ミスティは血の海に沈むクリスを見据えながら片手をあげると、それが手刀の形を取る……冷たい彼女の視線はクリスの首筋へと向けられていた―― 一気に首を切り落とすつもりだ。
ミスティの攻撃で身体の大半の機能を破壊され、最も頼りになる半身も沈黙し……諸共自爆しようと“領域”を暴走させようとすれば、新たに乱入してきた聖王女とやらに止められた……もはや指一本すら動かす事すら出来ず、血の海に沈みながらクリスは悔しさのあまりに歯を食いしばる。
……悔しい、悔しいなぁ。ここまでヤラれて、何も出来ずに殺されるのかぁ……死にたくないなぁ、せめて一撃だけでもやり返さなきゃ、死んでも死にきれない、や……。
動けないクリスの首めがけてミスティが手刀を振り下ろそうとしたその時、水晶のような結晶体で作られたその場に未知のエネルギーを感知して手刀が止まり、彼女は即座に聖王女を庇って臨戦態勢を取る……何が起きても対処出来るように鋭い視線で未知のエネルギーの発生場所を見据える。
結晶体で作られたその場に突如発生したエネルギーは、眩い光を発しながら一人の人物を形作る――シックなドレスに身を包み、長い銀髪を両横から流した作り物めいた美貌を持つ成人女性の姿を。
「……この波動、亡霊どもの仲間ではないな――何者だ?」
聖王女の前に立つミスティが鋭い視線で突如現れた侵入者に詰問するが、侵入者――銀色の女性はミスティや聖王女に関心は無いようで、銀色の瞳を血の海に沈んだクリスへと向けている。
『――彼女は、たった一つの希望』
銀色の女性を中心にまばゆい光が広がり、それが収まった時には銀色の女性の姿は無かった……姿を消して奇襲を掛けてくるかと警戒して周囲の気配を探るが気配は完全に消えており、どうやら本当に姿を消したようだ。
「……一体何だったんだ、アイツは」
突然 光と共に姿を現われたかと思えば光と共に姿を消した……銀色の侵入者の意図が分からず、眉間に皺を寄せるミスティ……ただ一つ言える事は。
「……やられたな」
銀色の侵入者が消えたと同時に、血の海に沈んでいた筈のクリスの姿も消えていたのだ。
―ー『美少女戦士セーラームーン 星たちの輪舞』に続く。
どうも、しがない小説書きのSOULです。
――ついに姿を現した翡翠たちの宿敵『十二羅将』と、聖王女と呼ばれる赤髪の――アンコクノプリンセス。
翡翠はどこに消えたのか? それは次回作で明らかになります。