「しかしお前のイーブイはマジでどうなってやがるんだ?」
マサラタウンにやってきてグリーンとレッドとバトルをしたその日の夜、オーキド研究所の居住スペースに寝泊まりさせてもらっていた俺に対してグリーンが言い放った言葉である。
結局あの後、ミュウに関する事情を包み隠さずに全て話し(もっとも隠すようなこともないが)、博士とグリーンと研究レポートについてディスカッションしたり情報交換したりしているうちにあっという間に夜になり、博士の好意でそのまま研究所に泊めさせていただくことになった。
ワックスでバッチリ決めていたツンツン髪を戻し、服装もオフ用の落ち着いたものに着替えてきた(それでもイケメンは隠せない)グリーンが、すぐ近くの自宅から
普段騒がしいミュウが、黙々とおやつを口に入れ続けているので地味に会話が捗る。
ちなみにレッドは安静にしているピカチュウにつきっきりになっているため、この場にはいない。
「俺の見立てならイーブイのレベルはそんなに高くないと思ったんだよな。ギルガルドの"せいなるつるぎ"でブラッキーもほぼほぼ仕留められると思ってた。レベルに見合わない耐久力……、お前、やっぱり
「……
「ひゅう〜♪ビンゴだぜ」
俺の呟きに無駄に上手い口笛を吹きながらニヤリと口角を上げて答えるグリーン。
……ちょっとカッコいいし真似してみよう……。
「ただ闇雲にバトルさせたってダメだ。トレーナーがポケモンの成長の方向性を示して
そこまで楽しげに矢継ぎ早で語ってから、確信に迫るように鋭い眼光を向けてくる。
「あのブラッキーは
「……ひゅすぅー、ビンゴ」
グリーンのように口笛で返そうとして失敗した。
白い目を向けてくるグリーンに、コホンっと咳払いで誤魔化して、答え合わせをしてやる。
「そのとおり、イーブイはそれぞれの進化先の体で
「っかぁ〜!!本当にズリぃな!!それで技も各形態ごとにバッチリ
───ポケモンの覚える技は
これはこの世界の法則である。
だからこそ、イーブイやピクシー、そしてミュウの異常性が分かるというものだが、限られた技スペースでどの技を選択するかは、本来ならトレーナーの腕の見せ所となるのだろう。
その点で言えば、対イーブイを見越して優秀な先制技の"かげうち"や、タイプ一致技の"アイアンヘッド"をギルガルドに搭載していなかったグリーンは、一般常識やテンプレに縛られない、
そして、そんな彼ならば……
───だから俺は、グリーンを世界最強のトレーナーに至らせるための努力を惜しまない。
「ところでグリーン、同じ種族でもポケモンの個体ごとに能力値に差があることは知ってるよね?」
「あ?そりゃそうだろうがよ。あのギルガルドだってもっと強い個体ならあの一撃でブラッキーを仕留められたはずで──」
「──その産まれたときから変わらない能力値を最大まで鍛える方法があると言ったら?」
「──なんだと?」
グリーンには俺がゲームで得た知識の全てを伝授しよう。
ポケモンの限界を超える可能性を確かめたいという俺にとって、最大の壁となってくれるだろうから。
「その方法は……」
「……方法は?」
「──『すごいとっくん』だ!!」
「バカにしてんのかオメー」
「なんでっ!?」
──────────
グリーンと語り尽くした日の翌朝。
ミュウと一緒に朝日を浴びに外へ出ると、同じように日光を浴びながら空を見上げている人物が目に入ってきた。
昨日からずっと話したいと思っていたので、この機会に近づいて声を掛けてみる。
「おはよう、レッド」
「おっはよ〜」
「……おはよう、アルト、ミュウ」
空に向いていた目線を俺たちに合わせて、ちゃんと挨拶を返してくれた。
初対面ではずっと無言の少年というイメージが強かった彼だが、一度本気でバトルした後は何となく話したいことが分かるようになった気がする。
流石に
「昨日のバトル楽しかったよ。また今度バトルしよう」
「……僕も楽しかった。……でも同じくらい悔しかった。……もっと強くなりたい……!!ピカチュウと一緒に、これから仲間になるポケモンたちと一緒に……!!もっと、もっと……!!」
ギラギラと輝く力強い瞳。
あのバトル中も何度も目にしたその眼は、強くなることへの貪欲さと闘争心に溢れており、それを間近で見た俺は、背筋が冷たくなるような、彼を畏怖する感情が湧いていたことに遅れてから気がついた。
思わず呆気に取られていま俺に対して、横にいた少女はというと……
「じゃあ私がいろいろ教えてあげるっ!!いやぁ〜、一目見た時からこう、ビビビッてキテたんだよね〜。レッドくんとピカくんなら面白いことやってくれそうだって!!楽しみだな〜♪」
どうやら大層お気に召したらしい。
ミュウがここまで乗り気になるのは、イーブイとピクシーを除いてだと初めて見た。
「俺も、教えられる限りのことを教えるよ。ポケモンの技に関しては結構詳しいんだ。強くなって、旅に出て、さらに強くなって。ここぞという時にまたバトルをしよう。今度は6対6の本気のフルバトルで決着をつけよう」
「……うん、ありがとう」
朝日が照り付けて、清々しい風が吹き抜ける中、俺たちは一つの約束と、友情を込めた握手を交わした。
この数年後、マサラタウンから、少年から青年へと成長を遂げている最中の二人の男が、カントー地方の八つのジムを巡る旅に出る。
ツンツン頭の青年は、そのへんの草むらにいたコラッタとポッポを捕まえて「俺は俺のやり方で先に行くぜ」とだけ言うと、さっさと旅立ってしまう。
ヤレヤレと溜め息を吐いたオーキド博士が「せっかくだからみんな連れて行ってくれんかのう」と言って赤い帽子がトレードマークの寡黙な青年に三匹のポケモンを託す。
彼らは、カントー歴代チャンピオン最速最年少記録を樹立させたり、悪の秘密結社をたった一人で壊滅させたりとカントー中にその活躍と名声を轟かせる。
そしてそれらがオマケに見えるほどに、全世界の人々が白熱して見守る中心で、歴史に残るバトルを繰り広げるのだ。
その巨大なバトル会場の特等席には、二人と同年代の青年が三人の少女を引き連れてそのバトルの行く末を見守ることになるのだが、それを知る者は少ない。
ちなみにピクシーは耐久振り、ミュウは何もしてません。基本的に伝説ポケモンは普通のポケモンの枠組みから外れているため常識は通用しません。
今後の少年期では、アルトとミュウによるレッドとグリーンの魔改造が行われています。