ミュウと過ごす楽しいポケモン世界   作:初手零度

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ゆびをふるで好きな技が出せるとなったら、真っ先に何を思い浮かべますか?


ウバメの森・遭遇戦

 

☆ジョウト地方・ウバメの森

 

「………セレビィ?」

 

 ウバメの森を捜索していた男たちを見た時に、その可能性も一応考慮はしていた。

 ……なにせうちにはピンク色の伝説がいる。

 

 だけど可能性としてはかなり低いと思っていたので、何の因果か自分が偶然にも関わることになってしまって本当に驚いた。

 

「……ボロボロで力を使い果たしている?

 ……っ!?冷たっ!?こおりタイプの技による凍傷……これは"こごえるかぜ"か……?それに急所を避けている鋭いカギ爪状の割と新しい傷跡……、だとするとニューラによる攻撃か?ウバメの森には生息していないから明らかに人為的な攻撃。さっきの男たちに攻撃されて逃げてきたのか……?

 ……なんにせよ、このまま放っておくわけにはいかない、か」

 

 抵抗して逃げる気力すらないほどに消耗しているセレビィの状態を慎重に確認しながら、状況を把握するために推測を重ねていく。

 時間さえあれば、手持ちの応急治療セットか、ミュウに回復してもらいたいところだが、近くの茂みをガサガサとあさっている男たちの足音が徐々にこちらへ近づいてきている。

 

 今はモンスターボールの保護機能で一旦安静にさせて、ここを脱出してから治療するのがベストだろう。

 

「ごめんよ」

 

 空のモンスターボールを取り出して、意識が朦朧としているセレビィの額に優しくボールを押し当てた。

 セレビィの体がボールの中に吸い込まれてから、ボールがフルフルと左右に震える。

 やがて、カチッと音を立てて捕獲が完了したことを報せてくれた。

 これで後は急いで脱出するだけだ。

 

「ミュウっ!!緊急事態だ!!すぐに帰っ──」

「──お前たちっ!!そこで何をしているっ!!」

 

 木々の合間から二人の男たちがこちらに向かって走り寄ってくる。

 

 タイミングが最悪だ。

 

 (いや、さっきまで同じことをやってきたんだ、落ち着いて本当のことを言えば大丈夫……)

 

 早まる心臓の鼓動を何とか抑えつけて、極力顔に出ないように気を付けながら、驚いたように振り向きつつ言葉を返す。

 

「うわぁっ!?あっ、あのぉっ、俺は妹と一緒に山菜採りに来てて……。俺たち、何かしましたか……?」

 

 男たちの視線が山菜とキノコを詰め込んだバスケットに向くように動かして、反対の手に持つセレビィの入ったモンスターボールをズボンの後ろのポケットにゆっくりと押し込んでいく。

 この頃にはミュウが側に戻ってきていて、毒々しくて赤い謎のキノコを手に持ちながら、無邪気そうに俺の隣で首を傾げていた。

 

「嘘ではない、か。君たち、今この森には危険なポケモンが迷い込んでいて我々はその捜索にあたっているんだ。ここは危ないから早く家に帰りなさい」

「はっ、はいっ!!今ちょうど帰るところでした!!」

 

 薄暗い森の中で突然大人の男に話しかけられて不安がっている少年を演じながら、狙い通り彼らから距離を取ろうとする。

 

「───待て。今後ろのポケットに入れたモンスターボールはなんだ?何か珍しいポケモンでも捕まえたのか?」

 

 思わず舌打ちが漏れそうになった。

 適度な緊張感を醸し出しつつ、なるべく自然に見えるように不思議そうな顔をしてみる。

 

「えっと、さっきそこでキャタピーを捕まえましたけど……、それがどうかしたんですか……?」

「……なら、そのボールを見せてくれ」

 

 ……秒速で破綻した。

 

 こうなったら最終手段を取るしかない。

 

 ────最終手段とは……ゴリ押しである

 

「嫌だ!!このキャタピーは俺のものだ!!世界最強のバタフリーに育てるんだ!!絶対にお前たちなんかには渡さないぞ!!いけっ、ピクシー!!」

「……えっ?マスター、急にどうしたの?ダメだよ、変なキノコを拾い食いなんてしたら」

 

 うるさい変なキノコ持ってるお前が言うな。

 ガチで俺の頭を心配するのはやめてくれ。

 

「な、なんだこいつ……頭おかしいのか……?」

「……念のためだ。おとなしくさせてからさっさと確認して早くターゲットの捜索に戻るぞ」

 

 やめてくれ、そんな目で俺を見ないでくれ。

 仕方ないとはいえ結構傷付く。

 

 だが俺の心へのダメージと引き換えに、とりあえずこの場を有耶無耶にできた。

 後はこの男たちを黙らせるだけである。

 

『………』

 

 いつも通りの無言無表情のまま登場し、場の空気を感じ取って敵対者に向けて指を構えるピクシー。

 突然トチ狂った俺に対してドン引きしていた男たちの隙を見逃さず、先手必勝で技の指示を出す。

 

「"しんぴのまもり"」

 

 "ゆびをふる"ことで狙った技を発動したピクシーと、俺とミュウの周りを神秘的な光を纏ったベールが優しく包み込む。

 

「……チッ!!いけっ、エアームド!!」

「やれ、ベトベトン」

 

 男たちが繰り出したのは、頑丈な鋼の鎧に身を包んだ鳥ポケモン……エアームドと、紫色のヘドロでできた体を地面に降り立たせ、そこに生えていた草花を蒸気を上げて溶かし始めたポケモン……ベトベトンであった。

 

「エアームド、"はがねのつばさ"!!」

「ベトベトン、"どくづき"だ」

 

 先手を許した代わりに、フェアリータイプのピクシーに有利なポケモンを繰り出した二人が、ピクシーにとって効果抜群の技の指示を出す。

 上空のエアームドが、頑強な翼をピクシーに打ち付けるために狙いを定めて降下し、地上のベトベトンが草木と地面をまとめて溶かしながら、巨大な毒の腕をピクシーに叩き込むために這いずり迫る。

 

 迫りくる驚異にも一切表情を変えないピクシーが、二匹を同時に相手取るために、いつもやっているように、"ゆびをふる"。

 

 

「───"キノコのほうし"」

 

 

 それは数多のライトユーザーもヘビーユーザー(ポケモン廃人)も、纏めて地獄に突き落としてきた最強(最凶)の技。

 

 「覚えさせるならまずこれだよな」と考えていたアルトが、訓練場を燃やしたり凍らせたり爆発させたりしながら紆余曲折の苦労の末にピクシーに習得させた技だ。

 技の性質上、発動した瞬間にピクシー自身が自滅して眠り状態になるという問題点もあり、実用化に至るまでは本当に苦労の連続であった。

 

 ──ただし、その苦労を考慮してもお釣りが大量にくるレベルの超極悪技である。

 

 ピクシーの指先から大量の白い茸の胞子が煙のようにばら撒かれる。

 溢れ出る胞子に触れた、上空から接近していたエアームドが意識を失って地上に墜落し、迫りくるベトベトンが昏睡状態でその場で倒れ込む。

 

「なぁっ!?……クソッ!!交代だ!!ゴルバット!!」

「……チッ!!アリアドスっ!!」

 

 男たちはそれなりに手慣れたトレーナーらしく、状況を完全に理解しきれなくてもこのままでは不味いと判断し、素早くポケモンを入れ替えた。

 

「あいつに近づくな!!"エアカッター"だ!!」

 

 "キノコのほうし"の範囲外から、遠距離攻撃でピクシーの体力を削り取る算段なのだろう。

 実際、"しんぴのまもり"の効果が切れると、ピクシーどころかアルトたちまで巻き込まれて昏睡してしまうため、時間稼ぎは正しい選択である。

 さらに言えば、このバトルが長引くほどに男たちの仲間が増援として駆け付けてくる可能性が高くなるため、仮にこのバトルで俺が勝利したとしても、戦術的観点から見れば敗北となるだろう。

 

 ───だが、俺が仕込んだピクシーが、この程度で終わるはずがない。

 

「───"かぜおこし"」

 

 ピクシーが再び"ゆびをふる"ことで発動するひこうタイプの技。

 威力が低く、駆け出しのトレーナーとレベルの低いポケモンくらいしか使用しない技だ。

 

 だが、ピクシーの周囲に漂う"キノコのほうし"を巻き込み、風に乗せて強引に相手に押し付けることができるこの場においては、途端に凶悪な技と化す。

 

「ぐぅっ!?しまっ……た……」

「……くっ……」

 

 胞子を乗せた風にあおられて、アリアドスの動きが止まり、"エアカッター"を放とうとしていたゴルバットが地上に墜落する。

 さらに、地上にいた男たちがとっさに自分の口元を覆った手の隙間から、彼らの呼吸器へと催眠効果を持った胞子が侵入して、瞬く間に昏倒させてしまった。

 

 まともなバトルではないため、複数催眠だろうがトレーナーへのダイレクトアタックだろうがなりふり構わない指示を出したアルト。

 万能の対応力を手に入れたピクシーも、トレーナーの要望にしっかりと応えている。

 

『………』

 

 二人のトレーナーを同時に相手取って容易く無力化させたピクシーが、突き立てたままの己の指をジッと見つめている。

 その様子は、ここまで"ゆびをふる"の技術を昇華させたことへの実感と達成感を無表情ながらも感じているようであり……

 

 

──同時に、相手にとっては絶好の隙でもあった。

 

 

『…………!!』

 

 これまで地面に倒れて動かなかったアリアドスが、戦闘態勢を解いて油断していたピクシーへと突然に猛スピードで襲い掛かる。

 鋭い牙に猛毒液を滴らせて、油断している獲物を確実に仕留めるための"どくづき"であった。

 

 もはや"ゆびをふる"も間に合わない。

 その痛烈な一撃は、驚愕しつつも無防備な態勢のピクシーへと吸い込まれるように突き立てられ──

 

「"サイコキネシス"」

 

 ──"どくづき"が当たる直前に、ポケモンの姿に戻ったミュウの念動力によって、アリアドスが近くの樹木の幹に向かって吹き飛ばされた。

 

「アリアドスの特性は「ふみん」だ。あいつは眠らないから"キノコのほうし"は効かないんだよ。くさタイプのポケモンには効かないってことと、状態異常対策の技については勉強したけどポケモンの種族ごとの対策はまだだったもんな。……少しずつでいい。少しずつでいいから一歩ずつ確実に成長していこう」

 

 目の前で起きた一連の流れを見て、己のトレーナーの言葉を聞いて、思い詰めたようにギュッと拳を握ったピクシー。

 何度も練習したコンボが実戦で通用したことにただ満足していた己を恥じて、帰ったら他の種族のポケモンの勉強と、さらなる"ゆびをふる"の特訓を重ねることを心に決めた。

 

「さて、こいつらが目を覚ます前にタマムシシティに早くかえろ──」

 

「──どうした!?何があった!?」

 

「またかよ………」

 

 どうやら増援が到着してしまったらしい。

 あっという間に男たちの別の仲間に取り囲まれてしまった。

 とっさに透明化することでミュウは隠せたが、昏倒している男たちとポケモンたちに関してはもはやどうやっても誤魔化しようがない。

 

 厳しい顔付きでモンスターボールを握る男たちの中心で、必死に思考を巡らせて打開策を考える。

 

(………詰んだな、これ)

 

 もはや強行突破以外、思いつかなかった。

 

 




キノガッサを許すな(風評被害)

実際ピクシーから突然キノコのほうしが飛んできたら思考バグると思います。知っていれば対処できますが最悪の初見殺しですね。
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