ミュウと過ごす楽しいポケモン世界   作:初手零度

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悪戯な妖精

 

☆夜明け・ヒワダタウン・ボール職人ガンテツ宅

 

「連中め……まさか襲撃してくるなんてな……。なりふり構っていられんくなったか、森の守り神様さえ手に入れればどうにかなると踏んどるんか……」

 

 現在、ガンテツさんと作戦会議中だ。

 

「時渡りさえできれば過程は関係無い、ってスタンスみたいですね……。後は時間との勝負かな。あいつらの死にものぐるいの猛攻からセレビィを守りきれればこちらの勝ち、ですね」

「………こっからは命に関わる問題や。お前さんたちはワイの家族と一緒に奥の離れ小屋に避難するといい。後のことは大人に任せてくれたらええ」

 

 決意を込めた神妙な顔付きのガンテツさんからそう告げられる。

 完全に巻き込まれた形なのに、この人は自らの命を賭けてまで、家族を、セレビィを、俺たちを守ろうとしてくれている。

 

 でも、責任を放棄して全てを人任せにするなんて、そんなことは絶対にしたくない。

 

「──俺に考えがあります」

 

 やれることは全部やる。

 幸いにも、こちらの手札にはジョーカー(・・・・・)があるのだから。

 

──────────

 

「若、襲撃の準備が完了致しました」

 

 あたりが静まり返る、夜明けの時間。

 木の陰に身を隠しながら、ボール職人ガンテツの住む家から逃げ出す影がいないか、監視の目をオレ自ら向けていた。

 

 結局、ウバメの森全域をくまなく捜索してもターゲットは見つからなかった。

 クソ重い時空観測機器を現地で組み立てて使い、色濃く『歪み』が観測された場所を土を掘り返してまで探したが、いるはずの存在がどこにもいない。

 

 成果が全く出ず、焦り始めた俺の元に届いたのは、キノコを採りにきたとかいうガキ二人と、やかましいジジイ、ガンテツと遭遇したという報告だった。

 苛立ちながら聞いていた報告も、遭遇場所を聞いた途端に自分の血相が変わったことが分かった。

 

(──こいつらだ。こいつらしかいない)

 

 そこは、最も大きく時空の揺らぎを観測できた場所。

 万が一に備えて人員を多く割いて送り込んだが、ガンテツ(ビッグネーム)と直接向かい合って萎縮した、捜索隊のカスみたいな保身が仇となった。

 だが居場所は分かった。

 後はターゲットを回収するだけだ。

 

「よし、突撃しろ。ターゲットの確保が最優先。邪魔する奴は殺したって構わない。何としてでも捕えろ」

 

 残っていた全財産を使うどころか、莫大な借金までつくってこの計画に全てを賭けたんだ。

 どうせ時渡りの能力さえ手に入れば、金なんていくらでもつくれる。

 過去も未来も、全てが俺の思い通りだ。

 そして俺は人智を越えた神に等しい存在へ──

 

「若っ!!!あれを見てくださいっ!!!」

「……ああ?なんだ───」

 

 思考の海に沈んでいた意識が、側仕えの声によって引き戻される。

 若干癪に障ったが、ゆっくりと顔を上げると──

 

『〜〜♪♪』

「───はぁ?」

 

 

 ──探し求めていた緑色の伝説がいた。

 

 

 小さな羽根をパタパタと機嫌良さげに動かしながら空をゆらゆら泳いでいた。

 なんなら鼻歌を歌いながら優雅な空中散歩を思う存分満喫していた。

 

「はああああぁぁっ!?!?」

 

 あまりにも想定外な事態に思いっきり叫んでしまった。

 だが、これはチャンスだ。

 

 バカな奴らめ。

 伝説の価値を知らない無知蒙昧な愚民だからこんなアホみたいなことをやらかすんだ。

 

 降って湧いた好機に笑いが止まらない。

 

「あいつだ!!あいつを何としても捕えろ!!!」

 

 俺の命令に、慌てたようにポケモンを繰り出した男たちがすぐさま技の指示を出す。

 "ヘドロこうげき"、"ひのこ"、"こごえるかぜ"……威力は低いが事前に調べあげた奴のタイプである草タイプに確実にダメージを与える技だ。

 他にも"いとをはく"や"でんじは"なんかの機動力を奪う技が飛び、万が一に備えて"くろいまなざし"を発動したポケモンたちが後方に控える。

 記録によれば奴自身の戦闘力はさほど高くない。

 実際に親父に追い詰められているらしいので、これだけの数を同時に相手取ることなど不可能だろう。

 

(勝った………!!)

 

 自然と口角が上がり、歯茎が剥き出しになる。

 

 俺の目の前で呑気に空を飛んでいたセレビィへと、一斉に技が吸い込まれていく。

 たまらず墜落するであろうセレビィを取り押さえようと男たちが動き出し───

 

「………!?!?どこにいった!?!?」

 

 ──どこにも姿が見えないことに困惑する。

 

「探せぇっ!!必ず近くにいるはずだっ!!何が何でも見つけ出して必ず──ああっ!?なんだテメェ!?俺の肩に気安く触ってんじゃ──」

 

 話している最中に肩をちょんちょんとつつかれる。

 舐めたマネするやつをぶん殴ってやろうかと激昂して振り返ると…………

 

 

 至近距離にいた緑色の伝説と目が合った。

 

 

『………(フッ)』

 

 なんなら小馬鹿にした顔で鼻で笑われた。

 

 想定外続きで思考が止まった俺は、それでも無意識に伝説を求めて手を伸ばす。

 

 ……一瞬で躱される。

 

「──うがあああぁぁっ!!!!ぶっ殺す!!!!……………いや殺すなっ!!!!死ぬほど痛めつけてからふん縛れ!!!!」

 

 

 ………彼の情緒はもうぐっちゃぐちゃだった。

 

 

 

 そんな男の姿を見た緑色の伝説が、口元に両手を当ててクスクスと可笑しそうに嘲笑(わら)う。

 その間にもとんでもない空中機動で宙を泳ぎ回り、時には"テレポート"で技を躱し、"ひかりのかべ"で攻撃を受け流す。

 さらには反撃の"エナジーボール"や"サイコキネシス"を放つ余裕まである始末である。

 

 たくさんの人間やポケモンたちが混乱に陥り、怒号と悲鳴が飛び交う混沌とした様子を楽しそうに観察するその姿は、客観的に見て、もはやどちらが獲物なのかすら分からなかった。

 

──────────

 

「あれは……なんと、まあ………」

 

 窓の外の騒ぎを呆れたような顔で見ているガンテツさん。

 未だ眠りにつくセレビィの様子を見ながら(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)、そんなガンテツさんへと声をかける。

 

あいつ(ミュウ)の逃走能力は多分冗談抜きで世界一ですから。おちょくるだけおちょくって、時間を稼いでくれるはずです。このまま手玉に取られて遊ばれ続けて貰えるとありがたいんですが……」

 

 セレビィに変身したミュウが遊び始めて(・・・・・)からそこそこの時間が経過している。

 間違えて味方に攻撃したり攻撃されたり、静寂に包まれた早朝での阿鼻叫喚の騒ぎのせいで、近隣住民たちも何事かと遠巻きに集まってしまっていた。

 

「……アカンな。町の若い連中が殺気立ってるわ。場所的にワイの心配をしてるんやろうし、このままアイツらまで巻き込まれたら何人怪我人が出るかも分からんわ。ここは大丈夫そうやしアイツらに軽く事情説明して纏めてきたるわ。ついでにミュウちゃんの援護もせんとな」

 

 そう言うと早速家を飛び出してしまったガンテツさん。

 正義感が強くて行動力の高すぎるご老人にとって、どうしてもここで見ているだけというのは我慢ならなかったらしい。

 

 ミュウも上手くやっているようだし、このまま何事もなく終わってくれると良いのだが………。

 

 ただ、何事も全て上手くいくとは限らないのがこの世の常である。

 この後すぐに、俺はそのことを思い知る。

 

 

 

「───お前が報告にあったセレビィを捕まえたっていうガキだな。今すぐセレビィのボールを俺に寄越せ。拒否するってんなら……どうなるか分かってんだろうな?」

 

 ………ここが正念場だ。

 

 

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