ミュウと過ごす楽しいポケモン世界   作:初手零度

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新しい仲間と共に

 

「本当にすまなかった!!」

 

 目を覚ましたら、目の前に土下座しながら大声で謝罪するガンテツさんがいた。

 

「いや、いや!頭を上げてください!謝るのは俺の方ですから!」

 

 流石に大変お世話になった人生の大先輩にこんな態度を取られるのは居心地が悪い。

 周りを見れば、そこは昨日セレビィを寝せていたガンテツさん宅の和室の中。

 寝場所と布団まで提供して貰っておいて、どうしてこの人を責められようか。

 

「あれだけ偉そうなことを言っておきながら君を危険な目に遭わせたこの体たらく……。心から謝罪する……!その上、森の守り神様も護ってもらって、ヒワダの民としてなんとお礼申し上げたらよいか………!!」

 

 恐悦に打ち震えるガンテツさんを何とか宥めて、その後の後始末の話を聞かせてもらった。

 

 まずはあの男が雇っていた男たちと、地元民の諍いについて。

 セレビィ(ミュウ)に弄ばれて阿鼻叫喚の騒ぎを起こしていた怪しい男たちは、ガンテツさんが直ちに纏め上げたヒワダタウンの若者たちによって無事に鎮圧されたらしい。

 状況が状況なだけに軽い怪我人はいくらか出たが、特に大きな問題も無くおさまったようだ。

 

 次に俺が戦った青年らについて。

 ミュウの後に遅れて駆け付けたガンテツさんは、自宅の中庭の戦闘痕を見て、それはもう愕然としたらしい。

 ヤミカラスと共に地面に倒れていた側仕えの男は幸いなことに命に別状は無かった。

 住居侵入罪及び脅迫罪の現行犯として捕まったこの男は、散々に情報を絞り出された後には牢屋に繋がれることとなるだろう。

 

 問題は草陰で見つかった今回の主犯格の青年。

 驚いたことに、なんとヘラクロスに吹き飛ばされた後も辛うじて息があったらしい。

 だが当然と言うべきかその代償は重く、ほとんど瀕死の状態で緊急搬送されたようだ。

 後日耳にした話ではベッドから二度と起き上がることのできない体となり、元々の自信家ぶりも鳴りを潜めて、すっかり廃人のようになってしまったらしいが………もう俺たちには関係の無い話だ。

 

 そしてあのヘラクロスについて。

 調査に来た協会員とガンテツさんが何やら話をつけていたらしい。

 ニンマリ笑いながらモンスターボールを二つ(・・)掲げるミュウをちらりと横目で見つつ、「はて?見たおぼえが無いな」と笑っていた。

 頑固で融通が利かず、正義感の強いガンテツさんがイタズラをする好々爺じみた顔付きで笑っていたのが印象的であった。

 

 そして最後、伝説のポケモン、セレビィについて。

 セレビィの存在については誤魔化しきれないほどの多数の目撃証言が挙がっている。

 ……が、『時渡り』について知るものは極わずかで、事件を経ても『森の守り神である珍しいポケモン』という認識の者がほとんどであった。

 男たちを散々煽り散らかして飛び去っていく姿が地元民たちによって目撃されており、自然界へと戻っていったというのが協会側の認識だ。

 これは、後日俺が提出したリリース済みの空のモンスターボールが決定打となった。

 

 ………今回のあらましを知り、セレビィに手を出そうとする不届き者が現れる可能性もある。

 だが、ガンテツさんとの関係を良好に保つために、少なくとも表向きはポケモン協会も静観の構えを見せるだろうとのこと。

 

 そんなこんなでセレビィを巡る襲撃事件は大団円を迎えたようだった。

 

 

「これでもうお前を縛るものはないよ。これからは自由に、楽しく、自分のやりたいことをやればいい。なあ、セレビィ(・・・・)

『…………』

 

 ガンテツさんと一通り会話を終えて、俺の側でずっと心配そうに気遣ってくれていたセレビィに声を掛ける。

 どうやら前に俺がしたように、眠りについている間ずっと側で見守ってくれていたらしい。

 本当に優しい子だ。

 

「助けてくれて、ありがとう」

『……………』

 

 俺の言葉に迷う素振りを見せていたが、やがて何かを決めたようで、ふわふわと室外へと飛んでいった。

 

「えー?本当によかったのマスター?過去に戻れるならおやつも食べ放題なんだよ?」

 

 本当にこいつ(ミュウ)にはずっとこのままでいてほしい。

 

 残念そうにしているピンク色の頭を撫でながら、優しいあの子(セレビィ)の今後の幸福を願った。

 

『……………!』

「……あれ?」

 

 これで終わり………かと思いきや、パタパタと羽根を揺らしてセレビィが戻ってきた。

 その両手の中に抱えられているのは………

 

「──わっはっはっは!!いやいや、愉快愉快!どうやら守り神様はもっと君といたいようだぞ、アルト君!ワイが丹精込めて作った会心の出来のフレンドボール(・・・・・・・)や!是非受け取って貰わないと困るぞ!」

 

 大笑いするガンテツさん。

 

 彼の言うとおりセレビィの手の中には緑色の空のボールが収まっている。

 俺の目の前で止まると、コトリと手の上にボールを落とした。

 その表情は、恥ずかしそうで、嬉しそうで………そして、楽しそうで。

 見てる俺まで嬉しくなってしまった。

 

「………分かった。これからよろしく、セレビィ」

『………♪』

 

 こうして、俺はセレビィをゲットした。

 

 

 

『……………ミュ』

「どさくさに紛れてラブラブボールを持ってきても駄目だ。元の場所に返してきなさい」

 

 手癖の悪い子ども(・・・)を叱りつける場面もあったが、涙を浮かべる程に笑ったガンテツさんが「好きなだけ持っていくとええ!!」と言ってくれたことで、本来の目的だったボールも手に入ってしまった。

 

 その日は、ガンテツさんの好意に甘えてもう一泊させてもらい、存分に食べて、語り、大きな声で笑いあった。

 ヒワダタウンを訪れて、恐ろしい目にも遭ったが、最終的には素晴らしい出会いのあった最高の思い出になった。

 

─────

 

「………ター……マスター。起きてください、朝ですよ」

「…………ん、んん……」

 

 心地のいい声音が耳をくすぐる。

 

 昨晩は少々はしゃぎすぎてしまった。

 真っ赤な顔で焼酎をグビグビいってたガンテツさんとは違い、ジュースしか飲んでいないはずなのだが、なぜだか頭が重い。

 

「大丈夫ですか?起き上がれますか?」

 

 それもこれも全部ミュウのせいだ。

 飲み物に変なものを混ぜたりするし謎の料理を俺の口へ放り込もうとする。

 最初は美味しい料理に満足していたはずなのに後半何を食べたか、俺自身も覚えていない。

 

「………もうっ」

 

 そこまで思い浮かべて、俺の顔を覗き込む人影にやっと気がついた。

 

 少しくせ毛になっていて先端がクルリと丸まっている綺麗な緑髪。

 上目遣いでこちらに向けられるジト目の中の、サファイア色の青い瞳。

 色白の肌はツルリと柔らかそうで、見た目年齢相応の幼さを感じさせる。

 

 重たい頭を何とか動かして記憶を辿った結果、過去に同じ経験をしていたことを思い出した。

 

「………おはよう、セレビィ」

「おはようございます、マスター」

 

 朝日に照らされて、ふんわりと控えめに微笑む彼女の顔は、とても美しかった。

 

─────

☆直近レポート兼日記

 

○手持ちポケモン

 イーブイ

 ピクシー

 ミュウ←new

 セレビィ←new

 ヘラクロス←new(療養中)

 ゲンガー←new(調教中)

 

○ヘラクロスはセレビィ(人の姿)に移譲。

 体内に残る『破壊の遺伝子』による副作用をセレビィ自ら治療中。

 克服できれば、自我を保ったまま自在に超パワーを発揮することが可能になるだろう。

 ただし、弱点である機動力の無さは問題か。

 せめてあの石(・・・)さえあれば、遠距離型重戦車として育成することが可能かもしれない。

 セレビィのことは母のように慕っているようだが、ミュウの姿を目にすると攻撃的になる傾向有り。

 ……遺伝子が拒否(・・・・・・)しているのだろうか。

 

○ミュウが()からくすねてきたゲンガーについては再教育中。

 なんでも今回の暗殺未遂を知ったミュウが、常日頃の俺の護衛用に鍛え直すらしい。

 セレビィから「あの時のミュウはヤバイ目をしていました……」と震えながら言われたが、今まで一緒にいてそんなところは一度もみたことはないので気の所為……だと思われる。

 影を操る能力に優れているらしく、"シャドークロー"、"シャドーパンチ"を組み合わせて、近・中距離戦に特化させて育成しているようだ。

 物理ゲンガー……?とか思っていたら『"シャドーボール"の応用』だとか何とか言って、特殊攻撃扱いで放てるようになったらしい。

 前に訓練を見学したら、影に潜んだまま、影の爪や影の腕をいくつも作り出して飛ばしまくっていた。

 潜伏性能と奇襲性能と合わせて、まさに初見殺しと言える性能である。

 ……ミュウに理不尽にしごかれているゲンガーを流石に見ていられなくなって少し庇ったら、凄く懐かれた。

 普段どんな特訓させてるんだ、アイツ。

 

○セレビィはバトルが苦手。

 強い、弱いというよりも、性格的にポケモンバトルに向いていない。

 人の世話を焼くのが大好きらしく、緑茶を淹れてくれたり、手作りのお菓子を差し入れてくれたりと、甲斐甲斐しくお世話してくれる。

 ミュウに引き続き、同年代の少女をお持ち帰りしたことは散々周囲の人たちに擦られたが、なんだかんだ言ってみんな快く受け入れてくれた。

 最初は俺以外の人と話すことを恐れていた様子もあったが、段々と周囲に馴染みつつあり、今では孤児院の幼い少年少女たちの面倒も見てくれるようになった。

 これからは彼女も一緒に、この世界の楽しいことを思う存分満喫するとしよう。

 

 




次回、閑話を挟んで今章は終わり
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