「ムゥ・ラ・フラガが護衛してた正規パイロットが全滅するのは覚えてんだけどなぁ」
ぼやきながら歩く。なにせ最後にSEEDを見たのが前世の10歳くらいでおよそ26年前なのだ。
ぶっちゃけ詳細は覚えていない。パイロットたちが来るのは明日なので、明日以降に
「キラはたぶん学生だし、それが巻き込まれたんなら夜中とかではなさそうよなぁ」
「なーにぶつくさ言ってんのよ?」
いつの間にか隣に立っていたメアリーに突っ込まれる。
「何でもないよ。メアリーは明日の予定は?」
「例のOSが届きしだいテストに入りたいから倉庫に詰めとくわ。あんたもいつもみたいにふらふらしてないで近場にいなさいよね」
「へいへい」
原作では確かOSが間に合わなかったんだっけ?いやでもアレもなかったと思うからその辺はずれててもおかしくないなぁ。
5機とは離れた位置にある、壁面にFと書かれたやや小さい倉庫を遠めに見つめつつ思考するが、深く考えたところでわからないものはわからないので諦めた。
「じゃ、また明日」
「おう、気をつけてな」
いつも通りの別れをして家路につく。確実にその時は近づいていた。
C.E.71 1月25日
今朝から上官連中はいない。パイロットたちを迎えに行くものや新造艦アークエンジェルのドックに行っているのだ。倉庫内の事務所にはシンヤとメアリーの二人だけだった。
「珍しいわね?上官がいないのにおとなしくデスクにいるだなんて」
「いや、ちょっとね?そんな気分だったんだよ」
「ふーん?」
二人きりの事務所で雑談をする。まだ例の新型OSのデータは届いていない。上官がいないこと以外はいつもと変わらない。
なのになぜか落ち着かない。
「なんだかなぁ~」
「どうしたのよ?」
「なんか落ち着かないんだよな~」
「外の空気でも吸ってきたら?」
そんな会話をしていると、突如爆発のような音が鳴った。
「きゃあっ!」
「っ!大丈夫か!?」
よろめいたメアリーを支えつつ音の方向を思い出す。確かあっちは……
「アークエンジェルのドックがある方じゃなかったか!?」
「ええっ!?」
「メアリー!すぐに上官連中に連絡を取ってくれ!」
「あなたはどうするの!?」
「外の様子を見てくる!」
叫ぶなり倉庫から飛び出す。すると降下してくるザフト軍MSジンと迎撃に出て片っ端から破壊される味方の戦闘車両たちの姿がみえた。
まずい、始まってしまった。目の前で蹂躙される友軍と逃げ惑う市民。シンヤは即座に倉庫に引き返した。
幸いまだ連中はこっちの倉庫を気にしていないようだった。となればやることは一つ!
倉庫の梯子を急いで登り、慣れ親しんだシートに腰掛ける。そのタイミングでメアリーが出てきた。
「誰も連絡が取れな……ってあんた!なにしてんの!?」
「町がザフトのMSに襲われてる!G兵器さえ動けばあれくらい蹴散らせるはずだ。ならそれまで時間を稼ぐ!」
叫びながら慣れた手つきで起動シーケンスをこなしていく。
「無茶よ!ろくに補給もしてないのに、ハチの巣にされるわよ!?」
「いけるさ!こいつ用のOSは残ってるだろ?ならやれる。使える武器を装着してくれ!」
「んもうっ!死ぬんじゃないわよ!」
言いながらパネルを操作するメアリー。両腕と肩に武装が追加される。
「実弾兵装がほとんどよ!わかってると思うけど左腕のブレードは消費が激しいし取り回しが悪いわ、それと……」
「大体わかった!行ってくる!」
「あ、こら!」
各部にジョイントされたアームが外れ、機体が自由になる。
「よし……行くぞ! シンヤ・フナミズ 〝ステイシス゛ 出る!」
漆黒の機体が地を滑る。
―ヘリオポリス モルゲンレーテの工場―
G兵器が保管された倉庫では、マリュー・ラミアスが指示を飛ばしていた。
「105と303を起動させて!とにかく工区から出すわよ!」
なぜ情報が漏れたのか、どうしてこの倉庫を狙わなかったのか、様々な疑問に襲われるがこのひっ迫した状況においては施行する時間さえ惜しかった。
艦長からはザフト艦の接近とアークエンジェルへの積み込み指示以降連絡が途絶えている。
「ラミアス大尉!何者かがザフトのMSと交戦しています!」
「あれは……」
特大のバーニアをふかしながら地面をすべるように移動する黒い機体が見えた。記憶が正しければあれは……
「F倉庫においてあったステイシス!?」
G兵器より先に開発されながらも様々な問題点から日の目を見ることがなかったAC(アーマードコア)計画の産物。まともに戦えるような代物ではないと聞いていたが……
まさか彼が…?
「時間を稼いでくれているならありがたいわ!早く作業を進めるわよ!」
今は藁にでもすがりたいのだ。マリューはおのれの仕事を果たすべく指揮に戻った。
―市街地―
「おおおおおおっ」
シンヤはひたすらに攻撃をかわして引き付ける。それだけ聞けば簡単そうだが、相手の弾をかわすために常に高機動で動き回らなければならない。
左肩のミサイルポッドは市街地では使えず、頼みのマシンガンも長らく放置されていたためかジンを一機破壊したあたりで給弾不良を起こしてしまった。
ましてや慌てて飛び出たものだからパイロットスーツ等着ていないので、機動でかかるすべてのGが生身にかかっている。
いやまじ舐めてたわ。自分、鍛えてますから、とか思ってたわ。パイロットスーツって偉大だったんだなぁとか思いながら歯を食いしばっている。
「だがもう少し、もう少しの辛抱だぁっ!」
3機のGが乗ったトレーラーが出ていた。おそらくザフトの接近を察知してアークエンジェルに積み込もうとしていたのだろう。
いくらOSが悪くたってG兵器はG兵器だ。実弾をほぼ無力化するPS(フェイズシフト)装甲にビーム兵器まで積んでいるんだから動きさえすれば状況は動く。
というか動いてくれなきゃほぼ手詰まりだった。
すると例の3機、デュエル・バスター・ブリッツが立ちあがった。
「やっと動いたか!そこの3機!手伝ってくれ!」
「悪いがそれは聞けないな」
「っ!?誰だお前!?」
連合士官にしてはやけに若い、明らかに少年の声が返ってきた。これは……
「おいおい!盗られたってのか!」
「ご明察、悪く無い機体じゃないか、もらっていくぜ?引くぞ!」
「なめくさりやがってこのガキ!!」
そのまま侵入してきた方角へ飛び立とうとする3機。追おうにもすでに推進剤は底をついていた、そのうえ
「後2機は?……まだ出てないのか!」
直後に倉庫の方角から爆発が起こった。
「くそっ離れすぎたか」
現場に駆け付けたころにはPSがダウンしてディアクティブモードになったストライクと、爆発跡だけが残されていた。レーダーにはすでに敵影はなく、一時的に戦闘が終息したことを悟ったシンヤはそのまま気を失ったのだった。
AC計画
G兵器より先にあった新型兵器の計画。
試作機のステイシスをくみ上げ、専用のOSまで用意したが、機体の使用がピーキーであり、各パーツの消耗の激しさや、相手の攻撃はすべて回避することが前提なため扱いが難しい。また推進剤の消費量が多いために継戦能力に問題があるとされ、計画は中止された。
バグじみた精密操作と超人的な目を持ったシンヤのみが扱える状況。
少し踏むだけであほほど加速するAT車ようなものなので、シンヤ並みの精密操作技術か、もしくはコーディネーターのMSと同等に複雑なOSと、それを手足のように扱えるレベルの並列処理能力でもあればだれでも?操縦できる。