誤字報告感謝です。これからものろのろ投稿しますのでよろしくお願いします。
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ーヴェサリウス パイロット待機室ー
「D装備だってさ、隊長は要塞攻略でもするつもりなのかね?」
ハンガーで大型のミサイルを装備するジンを窓越しに眺めていた、金髪に褐色の肌をした少年‐ディアッカ・エルスマンのボヤきに、緑髪の優しそうな顔をした少年、ニコル・アマルフィが不安を口にする。
「でも、そんなことをしたらヘリオポリスが…」
「まぁ、しょうがないんじゃない? 中立とか言っておきながらコソコソ連合の新兵器作ってたんだから。明らかにプラントへの利敵行為じゃん?」
「それは…」
ディアッカの言っていることは至極真っ当であった。ザフトとはプラントを守る盾であり、プラントの敵を打ち滅ぼす矛である。士官学校でも散々言われてきたことであり、その士官学校を上位の成績で卒業したのがニコルを含めた一部の精鋭、赤服と言われる者たちであった。
「あれ? そういえばアスランとイザークは?」
「さっきミゲルと話してるの見たぜ? 見送りでもしてんじゃねぇの?」
「…そうですか」
イザークが見送り? と思わないでもないニコルであったが、そのうち戻ってくるだろうと結論づけ、大人しく待機するのであった。
ーアークエンジェル ブリッジー
アークエンジェルのブリッジには、倉庫で作業をしているメアリーと、ハンガーで機体を見ているルークを除く、連合の尉官たちが集まっていた。コロニーの状況を尋ねていたマリューが、受話器を置くと同時に溜息を吐く。
「はぁ…、コロニー内の避難はほぼ100%完了しているということだけど、さっきので警戒レベルは9に上がったそうよ」
「シェルターは完全にロックされちまったって訳か。あぁ、けどあのガキ共はどうするんだ? もうどっかに放り込むってわけにもいかないじゃない?」
「彼らは軍の機密を見たため、ラミアス大尉が拘束されたのです。このまま開放するわけには…」
ゼミ生たちをどうするのかというムウの問いに答えたのはナタルであった。機密を見たものを拘束しておく。軍人として模範的な対応ではあるが…
「じゃあ脱出にも付き合ってもらうってのか? 出てけばド派手な戦闘になるぞ?」
…それが問題であった。ムウの言う通り現在は戦闘中であり、いつザフトが来るかもわからない。そんな中で民間人を乗せたまま放っておくわけにはいかない。
機密を見た子供たちについて思案していると、ポツリとマリューがつぶやく。
「…ストライクの力も必要になると思うのですけど」
「あれをまた実践で使われるのですか!?」
「使わなければ、脱出は難しいでしょう?」
脱出にストライクを使おうというマリューと、実践に出すことに否定的なナタル。アークエンジェルの現状の戦力はストライクとステイシス、それに修理中のMAだけであり、その中でもストライクを操れる人物は1人しかいなかった。つまりマリューは、またキラをストライクに乗せようと言っているのだ。状況的に仕方ないともいえるが、また軍の機密に民間人を乗せて戦わせるというのは、軍規的にも人道的にも、そう簡単には受け入れられるものではなかった。それは提案したマリュー本人も同じ気持ちのようで、その表情は苦悩の色を映していた。
「あの坊主は了解してるのかい?」
「今度はフラガ大尉が乗られては?」
「おおい無茶言うなよ、あんなもんが俺に扱えるわけがないだろ、あの坊主が書き換えたっていうOSのデータ見てないのか? あんなもんが普通の人間に扱えるかよ」
ダメもとでムウに尋ねるナタルだったが、案の定かえってきたのは否であった。ジンを撃破した際にキラが書き換えたOSは到底ナチュラルに扱える代物ではなかったのだ。シンヤの乗るステイシスのOSをコピーする案もあったが、ACとMSは一部の技術を除いてそもそも完全に別物であるため、OSの流用は不可能であった。そもそもそれが可能ならOSの開発が難航したりはしなかった。
「…ステイシス1機での突破は不可能でしょうか? 先の戦闘ではジン1機の撃破と隊長機の撃退に成功したとの話でしたが」
「どうなの? フナミズ少尉」
マリューから話が振られたシンヤが、少し考えるそぶりを見せてから答える。
「
「…単機なら?」
言い回しに違和感を感じたナタルに、シンヤが説明をする。
「ステイシスはあくまで敵の攻撃をかわすことを前提とした機体です。単機なら即座にヘリオポリスを脱出し、コロニー外部で戦闘を行えば良いのですが…」
「
「…フラガ大尉のおっしゃる通りです。それに、先の隊長機か奪われたGのいずれかが来た場合、抑えきれるかわかりません」
奪われた機体について語るシンヤに、今度はマリューから質問が入る。
「フナミズ少尉は、あの機体をザフトが使ってくると?」
「…あくまで可能性の話です。ですがブレード以外全て実弾兵装しかないステイシスでは、厳しい相手になります」
可能性と語るシンヤからは妙な説得力が感じられた。
その後他に現実的な案がでず、ストライクの力が必要との結論に至った一同。その中でも面識のあるマリューとシンヤが、キラの説得に向かうこととなったのであった。
―アークエンジェル 士官用居住区の通路―
打ち合わせを終えたマリューとシンヤが、他の少年たちに見守られながら説得を試みていたのだが
「お断りします! 僕たちをもう戦争に巻き込まないでください!」
「キラくん…」
やはりと言うか、説得は難航していた。いきなり銃を渡されて戦えと言われているようなものだ。二つ返事で受けてくれる方が怪しいだろう。
「たしかにあなたの言っていたことは正しいのかもしれない。今は地球とプラントの戦争中なんだって。でも僕達はそれが嫌で、戦争が嫌で中立のここを選んだんです! 」
「キラの言う通りです。いくらキラがコーディネーターだからって、いきなり戦えって言われても、ただの学生なんです。それに、さっきの戦闘ではシンヤさんがザフトを追い払ってたじゃないですか、なら無理にキラが戦う必要は…」
戦いたくないキラとそれを庇うサイ。マリューが次の言葉を出せないでいると、説得中一切口を開かなかったシンヤが静かに話し出す。
「『俺が守ってやる』、本来ならそう言ってやるのが民間人を守る軍人としても、子供を守る大人としても正しいんだろう。俺もそう思うよ。でも、正しいだけじゃ守れないものもある。だから…」
そこまで言うとシンヤは、キラに向かって深々と頭を下げた。
「キラ・ヤマト君。仲間と艦を守るために、俺たちに力を貸して下さい」
大の大人の男が急に頭を下げたために驚き、何も言えなくなってしまうキラ。一瞬の静寂の後に、艦内放送が響いた。
『ラミアス大尉 ラミアス大尉 至急ブリッジへ!』
「どうしたの!?」
キラと同じく固まっていたマリューが慌てて近くの通信モニターからブリッジへ繋ぐと、帰ってきたのはムウの声であった。
「MSが来るぞ! 早く上がって指揮をとれ! 君が艦長だ!」
「私が!?」
暫定的に現場の指揮をとってはいたものの、いきなり艦長に指定されて驚くマリュー。
「先任大尉は俺だが、この艦のことはわからん!」
「…わかりました。では、アークエンジェル発信準備! 総員第一戦闘配備! フラガ大尉とルーク少尉のMAは?」
「だめだ! 出られん!」
「ではお二人にはCICをお願いします。…聞いての通りよ、また戦闘になるわ。シェルターはレベル9で、今はあなたたちを下ろしてあげることもできない。どうにかこれを乗り切って、ヘリオポリスを脱出することができれば…」
急変した状況に、不安を隠せない少年たち。恋人同士であるミリアリアとトールはたがいに身を寄せ合い、カズイは不安からうつむいている。
すると先ほどまでとは違って、瞳に強い意志をともしたキラがシンヤを見つめる。
「…僕がまたアレに乗れば、みんなを守れるんですよね?」
「っ!? おいキラ! お前…」
「ああ、絶対とは言えないが俺一人よりははるかに可能性が高い」
驚くサイをよそに考え込むキラは、短い沈黙の後、顔を上げた。
「卑怯ですよ…、今この艦で戦えるのは僕とシンヤさんだけで、僕も戦わなきゃ守り切れないかもしれないっていうんでしょう?」
「ああ」
「…わかりました。乗ります。守るために」
「…ありがとう。二人はすぐに機体へ、あまり時間はないわよ」
ハンガーへ駆け出す2人とブリッジへ向かうマリューを、残された少年たちは見送るしかできなかった。
―アークエンジェル 更衣室―
慣れた手つきで専用のパイロットスーツに着替えるシンヤは、隣で地球軍のパイロットスーツに着替えるキラを見る。つい自分が出しゃばったばかりに、キラが乗らない可能性が出た事には慌てたが、誠意をもって頼んだことが功を奏した。もし彼がいなければSEED世界は滅ぶ可能性だってあるだろう。
(ステイシスの存在、ルーク少尉の生存、ランチャーでコロニーに穴が開いていない、すでにいろいろ変わってきている…)
バタフライエフェクトとでもいうのか、原作が始まってからまだ全然なはずなのに様々な齟齬が起こっていた。原作キャラが死んだりはしていないのでまだ致命的な問題はないともいえるが…
(生き残るためにも、仲間を守るためにも、俺も頑張んないとな)
気を引き締めたシンヤは着替え終わったキラを連れてハンガーへ走る。敵を迎え撃ち生き残るために。
先生から理路整然と状況を解かれるよりも兄ちゃんから「お願いたすけて!」って言われた方が高校男子は手伝ってくれそうよなっていう話。
いろいろ書きすぎてヘリオポリスすら脱出できない罠