現在放送中アニメ分より先のネタバレを若干含むのであらすじ割愛。
オリ主分類すべきかもしれないが、原作登場人物はほぼ登場しない。
「ん……」
男「ようやく目を覚ましたか」
「ッ! みんなは?!」
男「安心しなよ、君たちは無事に陸に着いたよ。これで『みんな』なのかは俺には分からないけどね」
「陸……? ここは、私たちの島……ではない、ですよね」
男「この辺りはもともと俺しかいないから、たぶん君の知ってる場所ではないだろうね」
「あ、ええっと……私は巫女。貴方は?」
男「俺は、男だ」
男「俺が君らを見つけた時には、6人しか見当たらなかったよ」
巫女「そうですか……」
ほとんど見つからない舟の残骸とともに、彼らは海に散っていったのだろう。
かける言葉は分からないが、それでも生き残った者は進むしかない。
男「起き抜けで悪いけれども、まだ目を覚まさない君の仲間のために色々と手伝ってほしい」
巫女「……分かりました」
男(俺以外の人間。本当は色々と聞きたいのけども……こんな状態の人達にずけずけと聞くのはちょっとな)
巫女(島の外の人間……。私たちより前に島を出た人、なのかな)
男「とりあえず場所を移そう。ここだと風も避けられないし、開けすぎていて何が来ても無防備だし」
巫女「何がって、近くに何かいるんですか?」
男「こんな世界じゃ何がどこにいるか分からないだろう? 現代じゃないんだから」
巫女「?」
男「ん? まあとにかく、あっちに俺が作ったキャンプがあるからそっちに行こう」
男「とはいえ、意識のない大人3人と子供2人を運ぶのはしんどいからね」
巫女「なにか良い案があるのですか?」
男「人が乗るようなクオリティじゃないが、リヤカーがあるんだ。それを持ってくる。ちょっと見張っててほしい」
巫女「リヤ……?」
巫女「この中に5人を乗せるんですか……」
男「まあ、狭いし固いし……揺れるが、現実的に俺たちが彼らを運べる手段はこれくらいしかないかな」
巫女「落ち葉を敷きましょう。そうすれば固いのと揺れるのは少し和らぐはずです」
男「落ち……マジか。いやまあ君らがそれでいいならいいけどさ。中々思い切った自然派だね」
巫女「? 落ち葉を緩衝材にするのはよくある事じゃないですか?」
男「よくある……あるかなあ?」
男「リヤカーに乗せるだけでもそこそこ重労働だね……。ん、なんだこれ? 石……いや」
巫女「あ、それは」
男「持ってきたものなの?」
巫女「開祖の、墓標なのです」
男「墓標?」
男(なんでそんなものを)
巫女「……島はもう、戻れないかもしれないので」
男「……そうか」
男(やはり色々と事情がありそうだな)
「ぐっ……」
巫女「あなた! 大丈夫?!」
「巫女……? ここは……?」
巫女「島の外です。あの嵐で陸に辿り着いたみたいです」
「陸……そうか。私たちは逃げ切れたのか。みんなは?」
巫女「っ……、見つかったのは私たちと、あと4人だけです」
男「ただいまー、お、一人起きたね。その人は?」
「っ、こいつは?」
巫女「やめてください貴方。この人は私たちを拾って介抱してくださった男という方です。男、この人は夫です」
夫「……失礼した。私は夫というものだ」
男「男だ。よろしく」
夫「ああ」
男「これで全員の目が覚めたね」
夫「あの後、ほかに浜に流れ着いた者がいないか探しに行ってみたが、誰もいなかったよ……」
巫女「貴方……」
巫女友「無事なのは私たちだけ、ってことなの……?」
男児「お母さんお父さんは……?」
女児「……」
夫友「……まあまあ! 僕らだけでも無事だったんだ。今はとにかくそれを喜ぼう!」
夫「ああ、そうだな」
男「さて、各々整理できていない事もあるだろう。それでもひと段落したと思うから、聞きたい事が色々あるんだ」
巫女「そうですね。私たちも、話さなければならない事、聞かなければならない事があります」
男「だろうね。ひとまず、こちらから先に一ついいかい?」
夫「助けてもらった恩がある。当然、一つと言わず先にそちらからなんでも聞いてくれ」
男「ありがとう。じゃあまず、君たちはその『島』で生まれ育ったのかい?」
巫女友「? ええそうね。島の外に出るのは初めてよ」
男「それじゃあ、あの石化光線の事も知らないんだね」
夫「! お前、あれを知っているのか?! あれは一体なんなのだ?!」
男「は? いや、君たちは石化された事がないんだろう? なんで石化光線を知ってるんだ?」
巫女「貴方、落ち着いて下さい。私たちと同じように、男も知らない事を知ろうとしているのです」
夫「……ああ、すまない。石化光線、というか、大量の石化装置が島に降り注いだのだ」
男「石化装置?」
夫「ああ。距離と時間を声で指定すると、その範囲に石化光線が拡がり、浴びると石化する装置だ」
巫女「私たちは、その装置によって恐慌状態になった島から逃げ出してきたのです」
巫女友「本当はもっとたくさんいたんだけど、賊の目を逃れるために嵐の中で出港したから……」
男「そんなものがあるわけ……いや、あり得ないと言うにはあまりに最初からファンタジーか」
男「その話は一旦置いておくとして、つまりその装置が降り注ぐまでは石化光線について知らなかったんだね?」
夫友「そうだね、初めて見たし、初めて聞いたよ。人間が石化するなんて」
夫「いや、人が石化する話自体は前から知っていたよ」
巫女「っ」
男「知っていた?」
巫女友「もしかして、巫女の百物語?」
夫「ああ、そうだ。百物語其の百『石神千空』。この中で祖先以外のすべての人間が石になった、と言われている」
男「『石神』? 今、石神と言ったかい?」
夫「ああ。その物語の主人公の名前が『石神千空』と言うんだ」
男「千空……」
夫友「知っている名前なのかい?」
男「『石神』は多分、知ってる。その話、聞かせてもらえないだろうか」
男「石神先生……、そうだったんですね……」
夫「なあ、もしかして君は……」
男「俺は、数千年前の石化から蘇った、君たちの開祖の教え子だった人間なんだ」
巫女友「え、え、どういうこと?」
男「夫、ちょっといいかい?」
夫「どうした?」
男「巫女の百物語のことだけれども、これからもずっと、ちゃんと続くようにしてほしいんだ」
夫「言われるまでもなく、そのつもりだ。が、巫女が受け継ぐものだからな」
男「そこなんだよ。巫女は島の件で其の百の伝承を嫌がるかもしれない」
夫「だろうな」
男「その時は、申し訳ないのだけれども、新しい巫女に正しい話を聞かせてやってほしい」
夫「……分かった」
男「ただ、今回の石化装置の話は忘れた方がいいかもしれない」
夫「いいのか?」
男「もしその話を聞いて、島に戻ろうとする者が現れたら本末転倒だろう? それに、誰しも忘れたい事もあるだろうしね」
夫「心遣い痛み入る」
男「はは、ただの我儘だよ」
夫「本当に行くのか?」
男「うん」
夫友「君のおかげでようやくここも村らしくなってきたっていうのに」
男「もともと、俺はこの時代の人間じゃないって言うのもあるんだけれどさ」
男「なにより自分が目覚めたという事はきっと、『千空』やほかの人達も目覚める可能性があると思うんだ」
男「その時、俺はきっと、先生と同じようにもういない」
男「だけど、先生と同じように何かを遺したいと思うんだ」
男「君たちの島には『石化装置』があるというが、君たちはそれを忘れ、失いたいと思ってる」
男「それを否定できるほど、俺は合理的になれない」
男「けど、俺と同じように石化されそして目覚めた未来の誰かが、その究明をしたいと思う欲求を否定できないのも、俺なんだ」
男「なら、俺に遺せるものは」
男「君たちの平穏と彼らの好奇心、その間を俺は繋ぎたい。……そう思ったんだ」
夫「……そうか」
夫友「それならせめて、何か君がいた証を……そうだ、村の名前を男村にしようか」
男「はは、それはちょっと気恥ずかしいからやめてほしいな」
男「……ああ、でも俺が名前を付けても良いと言うのであれば、良い名前がある」
夫「ほう、なんだ?」
男「――――石神村」
石神村って名前を百夜が自分でつけるか(誰がわざわざそうしようと言うか)? とか、島脱出って賭けになんで墓標持たせた? とか、石化装置を何故わざわざ一つだけ残した? とか、作劇の都合と思われる微妙な違和感を自分なりに再構築してみた。
彼が千空達より数百年も早く目覚めた根拠とか彼らの生活も設定は考えたりしたけれど、本編側の掘り下げが目的なのと表現・知識の都合で割愛。