異世界から帰ってきたら天使様に世話された。   作:たかたけ

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たらたらたらたらたらたん。

と言う事でどうぞ!(?)

あ、サブタイトル付けました。………。それだけっす。


年越しと無防備。その15

 

十二月三十一日、大晦日。

 その年最後の一日であり、年の締めくくりの日である。

基本的には来年に向けての準備や掃除に取り掛かるのだが…。

 

 

「暇だ〜…」

 

 

 俺はソファにグデっと座りながらそう口にする。その言葉に反応したのはエプロンを着て朝からおせちの用意をしている真昼だった。

 

 

「良いことじゃないですか。私は料理がありますけど…ゆうくんには昨日頑張って貰ったので、ゆっくりしていてください」

 

「…あれを頑張ったと言うのか…?」

 

 

 真昼は料理の手を止めずにこちらに微笑を向けてくる。…いつも料理しているからこそできることだろうが、俺からしたら少しヒヤヒヤものだ。

 

 

「ええ、それはもう…大助かりでしたよ。お陰で予想よりだいぶ早く掃除を終わらすことができましたし」

 

「……。あんなことくらいならいつでもするんだがなあ…」

 

「やっぱり凄いですよね。その“異空間倉庫”と言うのは…家具家電も簡単に移動できちゃいます」

 

 

 そう、昨日俺の部屋を大掃除するのを真昼に手伝って貰っていたところで(真昼の部屋はもう終わらせていたとか)真昼に冷蔵庫を動かすのを手伝ってくれと言われたのでそれを披露したのだが…真昼は一瞬で冷蔵庫が姿を消したのを目の当たりにし、その非現実さに暫く放心状態だった。

 真昼はその家電移動などの大変さを身に沁みていた故のその便利さに素早く気付き、目を少しキラキラさせながら「一家に一台ゆうくん…」とボソッと言っていた。…聞こえてるからな?

 

 

「言ってくれたら真昼の部屋も手伝ったんだが…、部屋に入るのは不躾か?」

 

「いえ、とても助かります…。来年の大掃除の時にお願いしますね」

 

「おう…。あ、そろそろいい時間だし、昼飯買って来るけど何か希望はあるか?」

 

「え?こちらで準備しますよ?」

 

「いやいや…、流石におせち作りながら昼飯を作るのは真昼に負担がかかりすぎだ。ほら、早く言ってくれ」

 

「……。では、サンドイッチとカフェオレを」

 

「りょーかい。じゃあちょっくら行って来るわ」

 

「はい、行ってらっしゃい。ゆうくん」

 

「はいよ」

 

 

 真昼の声に返事をして俺は玄関を出た。

 

 

 

 

「ただいま〜」

 

「あ、お帰りなさい」

 

 

 俺が昼食を買ってから家へ戻るとエプロンを脱いだ真昼がリビングからひょっこりと顔を出した。

 

 

「あれ?料理はもう終わったのか?」

 

「いえ、今はひと段落ついたと言うところです」

 

「そうなのか…。じゃあ今のうちに昼飯食っちまうか」

 

 

 俺と真昼は向かい合って椅子に座って机の上に買ってきたものを広げる。そこにはハムやら卵やらサラダやら色々なサンドイッチが置かれた。

 

 

「ほれ、どんなものがいいかわからなかったから適当に買ってきたぞ」

 

「…こんなに食べられませんよ?」

 

「大丈夫だ。俺が食う」

 

「……。では…」

 

 

 真昼はそう言って数あるサンドイッチの中からフルーツサンドを選んだ。

 

 

「ん、あとどのくらいで終わりそうだ?」

 

「そうですね…既製品で賄っているものもありますし、品目も抑えさせて貰ってるのでもうすぐ終わると思いますよ。ゆうくんが好きそうな伊達巻も作りましたよ?」

 

「本当か。でも実は俺、伊達巻食べたことないんだよ…食べてみたいとは思ってたんだがな…」

 

「どうなのですか?では、お口に合うと良いですね…味はほんのり甘い感じにしましたけど大丈夫ですかね?」

 

「真昼の料理で美味しくないもの自体無いからな。大丈夫だろ」

 

「もう…またそんなこと言って…。でも、料理してる側からしたら嬉しいです」

 

 

 真昼はトロッとした蜂蜜のような甘い微笑を浮かべる。俺はその笑みに少し小っ恥ずかしくなり目を逸らす。

 

 

「よくよく考えれば今は一人暮らしの時とは比べ物にならない食生活になってるなあ…。最初、真昼と会ってからこんなことになるとは思わなかったよ」

 

「私は私のやりたい事をしただけです…。それにゆうくんにまだ全然お返しできていませんから」

 

「お返しって…あの事はもう良いって言ってるんだけどな…」

 

「私は満足していません。来年はもっとしっかりした食生活を取ってもらいますよ?」

 

「ははは…。………真昼に胃袋を掴まれたことが運の尽きって事かな…」

 

 

 俺は少し苦笑いしながらそう言った。一方真昼は苦笑いしている俺を見ながらくすくすと楽しそうに笑っている。

 この小悪魔め…。

 

 

✴︎ ✴︎ ✴︎

 

 日が暮れそうになっている頃には全ての品を作り終えて重箱に詰めた真昼は、晩御飯の用意を始めていた。

 

 と言っても、年越し蕎麦なので蕎麦は茹でるだけのものを購入しただけだし、麺を茹でて具材を用意するだけなのだが。

 

 蕎麦の上に乗るであろうかまぼこはおせちの余り物なのでちょうど良いだろうほうれん草は湯掻くだけだしネギは刻むだけ。

 一番手間がかかるのは海老の天ぷらなのだが、真昼は面倒であろう揚げ物を嫌な顔一つせずに揚げている。

 

 

「あと、カボチャが余っていたので、ついでに天ぷらにしておきますね」

 

「…豪華な年越し蕎麦になりそうだな」

 

「たまにはこんなのも良いでしょう」

 

 

 そう言った真昼のよって完成した年越し蕎麦は実家で食べるものより豪華になっている。

 

 大きな海老の天ぷらは1人2匹分用意されているし、おまけのかぼちゃの天ぷらもサックリとした仕上がり。ほうれん草とネギはたっぷり、かまぼこは扇形に飾り切りされていた。

 

 ちなみに真昼は天ぷらはあと載せサクサクスタイルらしく、俺の分も蕎麦とは別の皿に取り分けられている。

 

 

「そう言えば、俺帰ってきてから初めての年越し蕎麦だ」

 

「そうなんですか?では、冷めないうちに召し上がってください」

 

 

 俺は真昼が席についたのを確認してから互いに手を合わせて頂きますと言ってから、そばに手をつけた。

 

 市販品ながらに高めの蕎麦を買ってきたので噛むと蕎麦特有の上品な香りが出汁に負けずにふわりと広がる。

 つゆも濃すぎず薄過ぎず、ほっと一息つけるような塩梅に仕上がっている。腹の底からあったまる、冬にはぴったりの味だ。

 

 

「おお……。これだ、懐かしいな…」

 

 

 俺はつゆを飲んでほぅ……と息を吐きしみじみと呟く。俺にとっては5年と1年ぶりの年越し蕎麦だ。そう考えると感慨深い。

 

 蕎麦を食べながらテレビを見ると言うのも6年ぶり最近良くトレンド入りする歌手ですら俺にとっては過去のものなので全てが懐かしく感じるような気分になってしまった。前を向けば家族の顔が見えたあの机も懐かしい…まあ今座っているのは甲斐甲斐しく俺の世話を焼いてくれる少女なのだが。

 

 

「年越し蕎麦を食べると、一気に年が終わるって実感が湧きますよね」

 

「ああ…本当にな。良く考えればこの一年色々あったな……真昼と会ってからは特にな」

 

 

 と言っても、その色々のほとんどを占めているのは真昼なのだが。

 一人暮らしを始めた時はこんな風に誰かと喋ったりすることすら想像付かなかった。ましてやこんな美少女が飯を作ってくれるようになるだなんて誰も思わないだろう。

 

 

「そうですね…。私もそう思います」

 

「掃除から食事やら諸々助かりまくりだ。あと、真昼と会ってから俺は変わった。勿論良い方向にな」

 

「ふふ…。確かに、初めて会った時よりも、ずっと柔らかい雰囲気になった気がしますね」

 

 

 だが…。と俺は話を一回区切る。真昼は俺がいきなり深刻そうな顔をしたので何事かと目を見開いている。

 

 

「一つだけ…一つだけ悪い部分が出来てしまった……それは…」

 

「……。それは…?」

 

 

 俺は一息ついて、

 

 

「真昼と会ったせいで…俺は駄目駄目になりつつあると言うことだ…!」

 

「…。はあ…、何事かと思ったらそんな事ですか…」

 

 

 真昼は俺の言葉に肩透かしを食らったように呆れたような表情だ。そして俺は本当に伝えたかった事を口にする。

 

 

「だからさ…来年も俺と一緒に過ごして欲しいんだ。真昼への貸しとかそんな事関係なくな」

 

「そ…それってどう言う意味で……?」

 

 

 どう言う意味ってそりゃあ…。

 

 

「どう言う意味って…そのままの意味だが。それ以外に何かあるのか?」

 

「…。そうですよね…」

 

 

 真昼は何故かしゅんとして落ち込んだような様子だ。…俺何かしたか?

 

 

「どうしたんだ?真昼」

 

「い、いえ…私が考え過ぎていただけです…。そうですよね…今日そんな事わざわざ言いませんよね…」

 

「……?」

 

 

 真昼が何を考えてるのかが全く分からない。俺は真昼の考えている事について考えていると真昼はふぅ…とため息を吐いて気付けばいつも通りの表情に戻っていた。

 

 

「本当に…、仕方のない人ですね…まったく」

 

 

 真昼は呆れたと言うには甘過ぎる微笑みでそう言った。なんなのかは判らなかったが真昼は受け入れてくれたようで安心する。

 

 

「ああ、真昼がいないと駄目になっちまったんだ。その責任を取ってもらう」

 

「そうですね。その責任取ってあげます。来年は嫌でも不衛生な生活は出来ないと思ってくださいね」

 

「おお…それはありがたいな」

 

「ふふふ…」

 

「ははは」

 

 

 俺たちは言ってる事が何だか面白くなってしまいしばらく笑い合っていた。

 

 

 

 

 

「そろそろ年が明けますね」

 

「そうだな」

 

 

 年越し蕎麦を食べ終わり俺と真昼はソファに並んで座りながら歌番組を見ながら談笑していると、あっという間に時間は過ぎて日付変更直前に迫っていた。

 俺が歌番組で約6年ぶりに聞く歌に『懐かしいな…』と言うと真昼が『おじいちゃん見たいですね』と言って本気で落ち込みかけたりもした。真昼はくすくす笑っていたが。

 

 中継で除夜の鐘をついている風景に画面が変わっていて、改めて一年の終わりを実感した。

 

 隣にいる真昼は、瞳を伏せながら静かに除夜の鐘を聞いている。

 

 そうこうしている内に百七回めの鐘の音が聞こえてきて──。

 

 

「「明けましておめでとうございます」」

 

 

 俺と真昼は2人同時に新年の挨拶を交わした。

 

 

「おお、揃ったな」

 

「ふふ、そうですね」

 

 

 俺と真昼は見合って軽く笑い合う。姿勢やお辞儀まで揃ったので少し嬉しく感じるほどだ。

 

 

「まあとりあえず…今年もよろしくお願いします」

 

「こちらこそ、今年もよろしくお願いしますね」

 

「いや…むしろ俺はお願いし続ける立場だしな…。まあ出来るだけ頑張ってみるよ」

 

「…。これ以上頑張られると私が困ってしまうかもしてません…」

 

「え?そんなに?」

 

 

 俺ってそんなに役立たずなのか…?と、考えているとその悩みはすぐ解消された。

 

 

「ゆうくんは頑張るとなんでもできちゃうじゃないですか…。私がお世話することができなくなってしまいます…」

 

「……。そんな事無いと思うが」

 

 

 いや、本当に…。そうでなきゃ一緒にいて欲しいだなんてくさい言葉言わないし。

 

 俺がそんな事を考えていると真昼のスマホがブルブルと震える。おそらく友達からの新年の挨拶だろう。…俺も友達早く作ろ…。

 

 

「少し返信しますね」

 

「ああ」

 

 

 そう言うと俺のスマホもブルブルと震え出した。俺がスマホの画面を開くと母さんと父さんから新年の挨拶が来ていた。俺が苦笑いを浮かべてその挨拶に返信する。

 

 俺が辿々しく返信を終えて横を見ると、真昼は慣れた手つきでフリック操作で返事を打ち込んでいく真昼の手際に感嘆する。俺は異世界での5年間のせいか知らないがなぜか機械音痴になってしまった。そもそもスマホを使う機会も少ない。やったとしてもFXでポチポチするくらいだ。

 

 俺がそんな事を考えていたのだが。

 

 ぽす、と二の腕に重みがかかる。じわっと二の腕から熱を感じ、甘い匂いがふんわりと香る。

 

 視線だけを横に向けると、瞳を閉じた真昼がこちらによりかかってきていた。健康などを気にする真昼のことだ…今は午前0時半、いつも眠っている時間はとっくに過ぎているだろう。あとはやはりおせち作りなどの疲労が溜まっていた事が真昼が寝落ちした原因だろう。

 

 真昼の顔を見る。真昼は実に安心しきった安らかな顔で寝息を立てている。長い睫毛や整った鼻筋も桜色の唇も無防備に晒されている。俺はなんだか変な気分になりそうだったので視線を真昼からそらした。

 

 

「真昼、起きろ」

 

 

 視線を逸らしつつ真昼に声を掛けるが、真昼は反応を示さない。

 よほど疲れていたのか睡魔に飲まれて深い眠りの海に落ちているらしく、声をかけても肩を揺らしても覚醒の気配すらない。

 

 色々と試していたのだが真昼の持たれている部分が少しずつずれて前のめりになり始めたので慌てて受け止める。

 

 俺は小さな溜息をついて真昼をお姫様抱っこする。俺は取り敢えず自分の部屋に寝かそうと思った。真昼の部屋に無理やり入ることも考えたがそれは流石にまずいだろう。

 

 

「(めっちゃいい匂い)」

 

 

 お姫様抱っこをすることで真昼の存在がより強く感じる事ができた。さらに洗顔剤のフローラルな香りに加え、本人の匂いなのかミルクのような甘い香りがほんのりと香ってくる。真昼から伝わってくる感覚全てが心地よく出来るならずっとお姫様抱っこしていたいような衝動に駆られるが、異世界で鍛え上げた心でなんとか耐え切る。

 

 真昼が起きないように出来るだけ揺らさない事を意識しながらゆっくりと丁寧に自分の部屋に運んでいく。横抱きしているのでドアノブを開けることに苦労したが、そこを乗り越えればあとはベットに寝かせるだけだった。

 

 華奢な体がベットに沈み込む。

 俺はそっと真昼に回していた手をそっと抜き取り、その上に布団をかけてやる。

 

 置く時など多少振動が真昼に伝わっただろうが、起きる気配は一切見せずにただ一定の寝息が聞こえてくるだけだった。

 幼さを残した端正な美貌は、相変わらず美しくありながらあどけない寝顔に少しの間見惚れる。

 

 俺は彼女を起こさないようにベットに腰を掛ける。真昼のむぼうびな寝顔を暫く眺めた後少しいたずら心のようなものが湧いてくる。

 

「(少しくらい良いか…?)」

 

俺は徐に真昼の頭を撫でる。優しく丁寧にすくように撫でると、その絹のような髪指に引っかからずにサラリと抜け出す。そこからも毎日手入れが欠かさずされているであろうことが簡単に伺えた。

 

 そして指を滑らせてゆっくりと頬を撫でてみる。

 瑞々しくなめらかな白磁の肌は、あまり体温が高くないのか、自分の手と比べればややひんやりとしている。

 さらにマシュマロのように柔らかい頬はスベスベサラサラで撫でているだけで気持ちいい。無意識にずっと撫でていたのか彼女は「ん…」と吐息を漏らし、身じろきをして自分の頬を俺の手に擦り付けてきた。

 

俺は真昼の頬のフニフニ感や弾力を少し楽しんだ後、俺はその部屋を後にしようとそっと腰をベットから上げる。

 

 俺は明日ここで目覚めた真昼はさぞかし驚く事を想像するして苦笑いを浮かべるが自分の不注意のせいなのでそれくらいは勘弁して欲しいところだ。寧ろこのまま一緒の布団に入り込んでやろうかとでも考えたがそれは俺が持たないので勘弁だ。

 

 

「お疲れ様、真昼。おやすみ」

 

 

 寝ている真昼には聞こえていないだろうがそう言い、最後に優しく真昼の柔らかい頬を撫でてから俺は部屋のを出て扉を閉めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




たたたたたったたたたたたたたったったた。

おやすみなさい。

やっぱりオリジナルの回って欲しい?

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  • どっちでも
  • まひるんに手を出すなカス
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