チャブダイリバース脳味噌Online 作:世界統合政府チャブダイリバース推進委員会
1.うるさい脳味噌ですね
◇◇◇
「先ず、今の状況を一言で説明しますと。アナタはタイムマシンの下敷きになって死亡しました」
問。朝起きたら謎グリーンウオーター漬け脳味噌inガラス管になっていて、見知らぬ青髪美少女に死亡宣告突き付けられた者の心情を答えよ。
――答。
『…………はぁ?』
◇◇◇
『…………はぁ?』
目が覚めたら……いや、覚めてるのかコレ? 夢? そもそも仮に夢じゃなくても死んでるなら覚めてない判定なのか?
てかタイムマシン? 何、どういう事?
「この時代の医療水準では、という注釈は付きますけれど。ともかく、貴方の肉体は重量約700㎏のタイムマシンが亜光速で衝突して爆発四散しました。お判りいただけましたか?」
『今の説明で何を理解しろと??』
てか今気づいたけど、俺の台詞が機械音声になっている。脳味噌だけで口も喉も無いのだから当然といえば当然……なのかな? もう何1つ分からん。
いや、待て。冷静になれ。思考を手放すな。
夢を疑うような状況であっても、万が一にも現実だったらと考えて冷静に行動しろって、昔誰かに……そうだ。中学2年の時のクラスメイト長野から教わったじゃないか。
今までに出てきたワードを整理しろ。
タイムマシン、未来、下敷き、死亡、この時代の医療……ん?
『……なぁ。この時代の、という言葉が出てくるってことは、アンタがタイムマシンに乗ってやって来た未来人って解釈で間違っていないか?」
「えぇ。素晴らしい理解力です。話が早くて助かります」
成程、成程。
彼女が乗って来たタイムマシンが俺を轢き殺したんだな?
ってことは。
『要するに下手人お前じゃん!』
「…………はい?」
『いやだから! 俺殺したのアンタ! 俺被害者、アンタ加害者! そういうことだろ!』
「……ちっ。気付きやがりましたか。原始人の癖に察しが良くて面倒ですね」
『舌打ちした!? 今舌打ちした!?』
「…………耳ざといですね。耳無い癖に」
『誰のせいだと!?』
さっきから態度酷過ぎない? 全ての元凶コイツでしょ?
「いえ、全てを私の責任とするのは少々無理筋です。全ては運が悪かったのです」
『……一応、聞いてやる。どういうことだ?』
コバルトブルーの髪と目の女は、お餅モグモグ緑茶ゴクゴクしながら言葉を紡いでいく。因みに、どちらも俺の家を漁って無断で集めてきたモノだ。性格ゴミ過ぎるだろ。
「予期せぬ時空震に直面して計器が故障。時間軸はともかく位置座標が大幅にズレてしまったのです。そして、運悪くズレた位置に貴方がいて下敷きになった……。要するに不幸な事故だったのですよね」
『……つまり何か? ただの事故だから謝罪の必要性すらないと?』
「あ、そういえば謝罪がまだでしたね。本当すみませんでした」
『誠意が欠片も感じられねぇ!! そもそも、ごめんで済んだら警察は要らねぇんだよ!』
「なら謝罪するだけ無駄では?」
『そういう事じゃねぇんだよ! 未来ではそんな所まで効率化なの!? 倫理道徳置き去りにして末法の世まっしぐらなの!?』
「そもそもの話。タイムマシンに取り付けられていた、たった1つの緊急用生命維持装置。これに脳味噌を私が入れなければ、そのまま貴方は死んでいたんです。むしろ私は命の恩人です。感謝されるべき立場です」
そうか、このガラス管+緑色の謎液体は生命維持装置か。何かあった時に、この女が使うためのモノだったのだろう。
脳味噌だけなのに音や景色が認識判別できるのも、機械音声とはいえ言葉が発せられるのも、全てはこの生命維持装置に備え付けられた機能の一環なのかもしれない。
そんな高性能な装置を惜しげも無く使ってくれて、一命を取り留めてくれている。そう考えれば、成程、俺は彼女に感謝するべき……
『……って、そんなわけあるかぁ!! 事故起こしたら傷病者の救護するのは当然の責務だろうが!』
タイムマシン&未来人に適用されるかは知らんけども! でも、この時代の道路交通法はそうなっている!
「うるさい脳味噌ですね……。これ以上騒ぐようならば電源切りますよ?」
『ついに脅迫し始めた! 分かった分かったから、先ずはちゃんと話し合おう! だから電源は切らないで!』
「分かれば良いのです。対話による相互理解は実に文明的な選択ですね」
間違いなく、都合が悪くなったら生殺与奪権を振りかざしてくる蛮人が言っていい台詞ではない。
が、ここは口を噤む。余計な一言でこれ以上状況を悪化させたくはない。
「コホン。あぁ、自己紹介すらまだでしたね。私は未来からやってきました、コードネームを
『……俺は
誰かさんのせいで、という言葉は辛うじて飲み込む。
他にも、コードネームが意味不明過ぎるとか、お見知りとか冗談じゃない永遠に関わり合いたくない等々、言いたいことは山ほどあるけど我慢。我慢だ。
今はコイツを変に刺激しないように、優しく穏やかに会話を進めていく事を優先しよう。暴走して装置の電源を落されたら、冗談抜きで死んでしまうのだから。
「私は世界統合政府所属のスーパーエージェント。ある一大作戦を実現すべく、遥々23世紀の未来からやって来たのです。その作戦の名こそ――」
そう、今はただ忍耐の時……
「――プロジェクト:チャブダイリバース!」
『どう考えてもゴミみたいな作戦だな!!』