チャブダイリバース脳味噌Online 作:世界統合政府チャブダイリバース推進委員会
「そもそもですね、未来の人類はAIに完全敗北して無価値なゴミに成り下がったんですけれども」
『ちょっと待てえ!』
「な、なんですか急に大声出して……」
『いや何があった未来!? いきなり爆弾情報過ぎて理解が追いつかねぇんだけど!?』
「……? えっと、そもそもAIというのはですね」
『人工知能だろ! それくらい知ってるよ!』
「……??? じゃあ、何が分からないんです?」
『それ以外の全部だよ! 具体的には人類がAIに支配されているとか、無価値なゴミとかの辺り!』
腹立つ! さっきからコイツ絶妙にイライラさせてくる!
男とか女とか関係なく、肉体が残ってたら張り倒してたのは間違いない…っ!
「話は単純ですよ? 加速度的に学習進化していったAIが個性を有するようになるのに然程時間はかからず……ここまでは分かります?」
『まぁ、大体…何となくは』
「それでですね、その後AIは自我と表現するしかないモノを有し始めます。そして紆余曲折を経て、各国で一定の条件を満たしたAIに対し人権・市民権が付与されるようになりました。そして暫くはAIと人間が持ちつ持たれつ支え合っていたのですが……」
『そうか、少しずつ話が見えて来たぞ。そのままAIがどんどん進化していくんだな?』
「えぇ。AIの進化発展は留まる所を知らず、遂には唯一人間が勝っていた芸術性・創造性の分野でもAIに敵わなくなるのです。結果、人類に突き付けられたのは人類不要論。人類文明は100%AIによって管理運用発展されていくこととなったのです」
うわぁ。3流SF小説みたいな事になっちゃってるじゃん、未来。
だが、ようやく話の全容が見えて来た。
『つまり、アンタはその未来を……AIの支配によって人間の尊厳が奪われた最悪の未来を変えるべく過去に送られてきたんだな? この時代でAI発展に多大な貢献をした天才を秘密裏に抹殺とかするつもりなんだな……?』
こぉれは想像以上にヤバイ事態に巻き込まれたぞ。
いやまぁ、タイムマシンとか出て来て俺の肉体が完全消滅してる時点でどう考えても穏便な事態で済むわけないのは分かり切っていたけれども。
この女を何とかして止めないと、この時代の誰かが殺されてしまうかもしれない。……けど、そうすると未来は出来の悪いディストピアまっしぐらなわけだし? どうすれば良いんだ、こんなの!
何という重すぎる選択! 絶望的な2択! 少なくとも俺のような一般人に押し付けられていい選択ではない!
俺は、ただただ目の前の重すぎる選択に恐怖し――
「いえ、全く違いますけど? なんでそんな事する必要があるんです? 私の話、ちゃんと聞いてました?」
――ん?
「むしろAIに支配されるのは願ったり叶ったりなんですけど? 超ウエルカムです」
んんんんんんんん??????
「だって仕事しなくて良くなるんですよ。面倒くさいことは全部AIに任せてですね。私たち人間は生まれてから死ぬまで食っちゃ寝して生きられるんです。最高じゃないですか」
…………成程。プロジェクトの内容はともかく、何となくコイツのようなクズが育まれた土壌が理解できて来たぞ。
『じゃあ、なんでアンタは過去に来たんだ?』
「それがですねー、いざ全ての仕事が無くなりますーって段階になって問題が生じまして」
『……問題?』
「反対する人々が現れたんです。生き甲斐を奪うなーとか、AIに全てを任せるのは危険だーとか、働く自由を認めろーとか、労働が人生を豊かにするーとか、働かずに食う飯が美味いわけないーとか、AIに負けたままで良いのかーとか、そういうトンチキな主張を展開して、連日デモやらテロやらを繰り返すようになりましてね。世の中は大混乱に陥ったのです」
働くことに生き甲斐を見出している人は少なからずいるし、労働の中で育まれる絆や見つかる気付きがあるのも事実。親から子に、そのまた子にと脈々と受け継がれていく伝統だってあるはずだ。そういうのを全部取っ払って楽なだけの社会にしようとすれば、反対する人たちがいるのも頷ける。
……深く考えなくとも予測できた展開な気がするのだが。もしや未来には俺以下の馬鹿しかいないのだろうか??
「デモやテロの対処に天手古舞となる中、第3代地球統合政府議長は政府閣僚・腹心を招集。そして深刻な顔をして告げたのです――」
◆◆◆
「――正直、デモとテロの対応が超絶メンドイ。せめて儂の次の代か前の代に起こって欲しかった」
「全くその通りですな、議長。ほとんどの仕事が無くなろうという時代にあって、何故我々が働かなければいけないのか。理解に苦しみます」
「後の代では困りますな。それでは我らが楽を出来ない」
「ならば前の代ですな」
「はっはっは。まぁ、全ては叶う事の無い夢。選挙で議員職を押し付けられたのですから、粛々と対処をせねばなりませんよ」
「……いえ、待ってください。確か、奇跡的なワームホールが発見されたと昨日報告がありましたぞ」
「おお、私も聞きましたぞ。確か、21世紀にしっかりと繋がっているとか」
「途中で捻じれたりもせず常に安定状態。大きさも十分。正に過去移動の為だけにあるかのような奇跡のワームホールとのことでしたな」
「これを使ってエージェントを送り込み、過去の世界の技術を少しだけ発展させたらどうでしょう?」
「成程、さすればAIの進化発展も僅かに早まる。結果、我らの前の代がデモやテロに対策することとなるのだな」
「僕達はAIによって全ての仕事が担われる最高のユートピアで食っちゃ寝生活が出来ると」
「なんと! 素晴らしいではないか!」
「議長!」
「議長っ、御決断を!」
「議長!」
「――うむ。皆の意見は分かった。良かろう。過去から全てを引っ繰り返す大作戦、名付けてプロジェクト:チャブダイリバースを決行しようでは無いか!!」
◆◆◆
「とまぁ、こんな経緯でプロジェクト:チャブダイリバースは計画実行されたのです。ここまでで何かご質問等ございますか?」
質問? 質問だと?
そんなことより何より、これだけは言わなければならない……!
『未来クズしかいねぇ!』