ではどうぞ!
「もうすぐか…」
僕は今年から故郷である神戸を離れ、遠く離れた街の高校に通うことになった。今はこれから住む街…萌香市を目指して電車に揺られている。
「日本とは思えないな。」
外の景色はまるで西洋。長崎や神戸で見た光景とはまるで違った。
「ねえ、隣いい?」
外の景色に見惚れていると声をかけられた。声のした方を見ると、同い年ぐらいの女性がいた。
「別に構いませんよ。」
僕はその人の荷物を見る。僕と同じぐらいの量の荷物だ。多分僕と同じだろう。
「あなたも萌香市に行くんですか?」
「うん!あなたもってことは君もそうなの?」
「はい、引っ越して、今年から。」
僕は隣に座る女性と世間話をしていた。
「へえ、同じ高校なんだ。君はどこに行くの?」
「僕は香風さんというところに。」
「へえ、香風さん…え?」
「え?」
「私と同じとこなの!?」
どうやらこの人も同じところに住むようだ。
「すごい偶然ですね。」
「これはきっと運命だよ!」
「運命…確かにそうかも。」
僕は彼女の言うことは合ってると感じた。
「そういえば聞いてなかったね、君、名前は?」
「須磨有希って言います。」
「私は保登心愛。ココアって呼んでね!」
「分かりま「あ、敬語もなくて良いよ!」
僕は敬語もなくて良いと言われたので外すことにした。
そこからはまた世間話が続いて、外を見ると萌香市街地に入っていた。
『まもなく、終点、萌香です。お忘れ物…』
「もうすぐみたいだね!目的地同じだし一緒に行こうよ!」
「うん、分かった。」
僕たちは降りる準備を始めた。
僕たちが降りた萌香駅は、後から作られたためかガラス張りで普通の駅だった。
「置いてくよー!」
「え、あ、うん。」
僕はガラス張りの駅舎から見える風景に見惚れていた。
「あれ、この道どっちだっけ…?」
「ここはこっちだよ。」
「あ、ありがとう!」
僕はスマホを見ながら歩く。
「ユキくん、ここじゃない?」
ココアが指差した建物にはラビットハウスと書かれている。
「ラビットハウス、もしかしてウサギが!」
「どうだろうね。」
僕は下宿先である喫茶店、ラビットハウスに入った。
「いらっしゃいませ。」
店内はごく普通の喫茶店。うさぎはいなさそうだった。正面に目をやると、頭の上に毛玉を乗せ、青色の制服を着た少女が立っていた。
「こんにちは。本日からこちらで下「あれ!?ウサギがいない!」
ココアは店内を見渡し、ウサギがいないと分かって少し落ち込んでいた。
「まあまあ……」
僕は項垂れるココアを励ました。
「モジャモジャ?」
僕たちはテーブル席に案内されると、水を出された。
「これですか?ティッピーです。一応ウサギです。」
「うさぎ!?」
店員の女の子が説明をすると、ココアは興味を示した。
「ご注文は?」
「じゃあそのウサギさん!」
「「非売品です(でしょ)」」
店員と思いっきりハモった。
そしてココアはさらに落ち込んだ。
「じゃあ…せめてもふもふさせて!!」
「コーヒー一杯で一回です。」
(この人すごいな。)
僕はココアのとんでもない要求にちゃんと対応していてすごいと感じた。
「じゃあ三杯!」
数分後、目の前には三杯のコーヒーが出された。ココアはその三杯のコーヒーを飲み始めた。
「ユキくんは飲まないの?」
「あ、えっと…」
「ほら。」
僕が断ろうとすると目の前にコーヒーが出される。僕は観念して飲むことにした。
「うぐ…やっぱり苦手だ…」
「ユキくんってコーヒー苦手?」
僕は、コーヒー…いや、苦いもの全般が大の苦手だ。
「うん。」
ココアはウサギをもふり始めた。僕はというと、店員に出してもらったココア(飲料)を飲んでいた。
「ノオオオ!!」
「ん?」
僕はココアからダンディーな声が聞こえた。
「今ダンディーな声が聞こえたような…」
「気のせいです…」
店員がそう言うと、ココアはティッピーをまたもふり始めた。
「もう3回過ぎたんじゃない?」
「え?そんなこ「(聞き取れない声)!!」
また聞こえた。今度ははっきりと、そこにいるティッピーから!
「なんかこの子にダンディーな声で拒絶されたんだけど。」
「私の腹話術です…」
(いやいや、無理があるだろ!)
僕は今にもツッコミそうになったが、なんとか抑えた。
「あ、そういえば…僕たち今日からこちらに下宿させていただくのですが、そちらに伝わってますでしょうか?」
「二人がそうだったのですね。私は香風智乃。ここのマスターの孫です。」
「僕は須磨有希っていいます。以後よろしくお願いします。」
「私は保登心愛!ココアって呼んでね!」
僕たちの自己紹介が終わると、僕はマスターに挨拶がしたかったのでマスターの居場所を聞くことにした。
「ところで、マスターさんに挨拶がしたいのですが、どちらに?」
「祖父は去年…」
店員…チノさんは下を向いて答えた。
「そっか、じゃあ今はチノちゃん一人で切り盛りしてるんだね…」
「いえ、父がいますし、バイトの子がもう一人…」
チノさんが喋っている時、ココアはいきなりチノさんに抱きついた。
「ココア何やってんの!?」
僕は戸惑いを隠しきれなかった。
「私を姉だと思ってなんでも言って!」
ココアはチノさんから離れると喋り出した。
「だからお姉ちゃんって呼んで!」
「じゃあ…ココアさん…」
「お姉ちゃんって呼んで!」
「ココアさん…」
「お姉ちゃんって呼んで!」
「あ、えっと…ココア?」
僕はココアを止めようとした。このままじゃ埒が開かない。
「ココアさん…早速働いてください。」
「任せて!」
どうやらチノさんが止めたようだった。
「更衣室に案内するので、ついてきてください。」
僕たちはチノさんについて行き、更衣室に着いた。
「チノさんはこのクローゼットを、ユキさんはこっちを使ってください。」
「分かりました。ありがとうございます。」
「制服とってきます。」
ココアは初めての制服に浮かれているようだった。
「僕、外にいた方がいいかな?」
僕は更衣室の外に出ようとした。だけど…
「ん?ココア、視線を感じない?」
「だよね。誰もいないはずなのに…」
ココアは一番端のクローゼットに近づいた。
そしてクローゼットを開けると…
「うわっ!!」
下着姿の紫髪の女性が隠れていた。僕は咄嗟に目を隠した。
「下着姿の…泥棒さん!?」
「完全に気配を殺したつもりなのに…」
「お前らは誰だ!」
そういうとその泥棒は拳銃をココアに構えた。
「うわっ!」
「えっ?ちょっと落ち着いて!」
僕は目を隠しながら泥棒に呼びかける。ココアは泥棒に自己紹介していた。
「そんなのは聞いてないぞ。怪しい奴め!」
「これで怪しいのはどっちですか!」
僕がツッコミを入れたのと同時、扉が開いた。
「何かあったんですか?」
「あ!チノさん警察に電話して!拳銃持った泥棒が!」
「ち、ちがう!知らない気配がして隠れるのは当然だろう!」
「じゃあその銃は何!?」
「ご、護身用だ…」
泥棒は拳銃からマガジンを抜いた。
「わ、私は父が軍人で、幼い頃から護身術というか…色々仕込まれてるだけで、普通の女子高生だから安心しろ!」
「拳銃持って下着姿で隠れてる時点で信憑性皆無ですよ!!」
僕は当たり前とも言えることを言った。
「あの…制服…」
「あ、チノさん、ありがとうございます。ココア、僕は外で待ってるから。」
「え?うん、分かったよ。」
僕は外でココアたちが着替え終わるのを待った。
「着替え終わったよ!」
「あ、分かった!」
僕はココアたちと入れ替わりで入り、着替え始めた。僕の制服はチノさんたちと同じような制服で、色は赤色だった。そして着替え終わると、さっきの人の紹介が始まった。
「彼女はここのバイトのリゼさんです。」
「本当にバイトだったんだ!」
「リゼさん、先輩としてココアさんたちにいろいろ教えてあげてください。」
「きょ、教官ということだな!」
(え?教官?)
僕はリゼさんの発した言葉に違和感を覚えたが、親が軍人だからという意味不明な理由で心の中で解決させた。
「よろしくお願いします。リゼさん。」
「よろしくね、リゼちゃん。」
「上司に口を聞くときは、言葉の最後にサーをつけろ!」
早速リゼさんの軍隊的指導が入る。
「落ち着いて、サー!」
「いやここはカフェなんですし…そんでもってココアも順応力高いな!」
僕たちはその後リゼさんについて行って倉庫に着いた。
「じゃあ、このコーヒー豆が入った袋を、キッチンまで運ぶぞ。」
僕たちはコーヒー豆を持ち始めた。
「うわっ、この袋重いな…」
「これは普通の女の子にはきついよ!ねえリゼちゃん?」
「た、確かに重いな…ぅ無理だ、『普通の女の子』には無理だ。」
「小さい袋だけ運ぼうか…」
ココアとリゼさんは袋を下ろした。リゼさんはわざと下ろしたように見えたが…
「僕はこの袋でも運べるから、そのまま持っていきますね。」
「あ、ああ、頼んだ…」
僕はそのままキッチンへ持って行き、少しした後に、ココアたちがひと回り小さい袋を持ってきた。
「ふう、疲れた…ユキくん力持ちだね…」
「うん、まあね。」
「ココアとユキ。メニュー覚えとけよ。」
そう言うとリゼさんはメニュー表を渡してきた。
「コーヒーの種類が多くて難しいね。」
「そうか?私は一目で暗記したぞ?」
「この量を一目で…」
「すごい!」
僕はメニュー表を見ながら驚いた。
「訓練してるからな。」
(どういう訓練!?)
僕は一周回ってその訓練をしてみたくなった。
「チノなんて、香りだけでコーヒーの銘柄当てられるし。」
「チノさんすごいな。」
「ただし、砂糖とミルクは必須だ。」
リゼさんがそう言うとチノさんは少し恥ずかしそうに持っていたノートで顔を隠した。
「なんか今日一番安心しました…」
僕は少し笑いながら言った。
「すごいなあ、チノちゃんもリゼちゃんも特技があって…私も何か特技があったらなぁ…」
「ところで、チノさんはさっきから何を見てるんです?」
僕はさっきからチノさんが持っているノートについて聞いた。
「春休みの宿題です。空いた時間にこっそりやってます。」
「ああ、その答えは128で、その隣は367だよ。」
「え?」
僕は問題を一目見て解き、答えを言うココアに驚いた。
「ココア!430円のブレンドコーヒーを29杯頼んだら何円になる?」
「12470円だよ?」
(ココアが問題を聞いてから解くまで5秒かかってない。数学の天才じゃないか。)
「私も何か特技あったらなぁ…」
僕はその特技を見た後だと煽りにしか聞こえないココアの独り言を無視した。
「あ!いらっしゃいませ!」
ココアはお客さんが来たことにいち早く気づき、近寄ってった。
「やったー!私、ちゃんと注文取れたよ!キリマンジャロ、お願いします!」
ココアはかなり喜んでいた。
「お、おお…」
「…えらい、えらいです。」
「チノさん、感情こもってないですよ…」
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数分後には僕たちは忙しなく接客をしていた。ちなみに僕は接客は初めてだったが、一応はできた。
「うわっ!「貴様!?」
すぐそこではリゼさんとココアの衝突が起こり、リゼさんがココアの頭に拳銃を押し付けていた。
「リゼさん!落ち着いて!」
「「ありがとうございました!」」
色々あったが、僕たちの初接客はなんとか終わることができた。
「ねえねえチノちゃん!」
「はい?」
「この店の名前、ラビットハウスでしょ、うさ耳付けないの?」
「いやいや、流石につけないでしょ。」
「だけどラビットハウスだし…」
「うさ耳なんてつけたら違う店になってしまいます。」
チノさんが答える。
「リゼちゃんとか似合いそうじゃない?」
「そんなもん付けるか…」
リゼさんの顔は少し赤くなってた。
「まあ、一応ティッピーも居るでしょ。つける必要はないと思うけど。」
「だけどティッピーウサギっぽくないし、もふもふだし…」
「じゃあどんな店名がいいんだ?」
リゼさんがココアに問う。
「ズバリ!もふもふ喫茶!」
「いや流石に却下でしょ、ねえ、チノさん。」
「もふもふ喫茶!」
「チノさん!?」
そこにいたのは店名を気に入ったチノさんだった…
少し途中になりますが、これで終わりです。そうしないと、文字数が1万近くになってしまいますので…次回は1話の後半にするつもりです。ちなみにこっちは最悪2か月とか開くかもしれませんが、ご了承ください。
ではまた次回!