ではどうぞ!
学校に通うようになってから数日が経ち、パン作りの日となった。
「今日…だったか。」
僕は自室から出てキッチンに向かう。
「千夜、おはよう。」
「おはよう、ユキくん。」
千夜と少しだけ言葉を交わすとすぐにココアが紹介した。
「同じクラスの千夜ちゃんだよー」
「今日はよろしくね。」
「こっちはチノちゃんとリゼちゃん。」
「よろしくです。」
「よろしく。」
3人の紹介が済むと千夜はティッピーの方を見る。
「あら、そちらのワンちゃん…」
「ティッピーのこと?犬じゃないよ。」
僕が千夜に説明しようとするとココアが割って入る。
「この子はただの毛玉じゃないんだよ。」
「まあ、毛玉ちゃん?」
毛玉毛玉と言われまくったせいかティッピーは怒っている様子だった。
「もふもふ具合が格別なの!」
そう言いながらココアはティッピーを撫でた。
「癒しのアイドルもふもふちゃんだね。」
「ティッピーです。」
その状況を見ながら僕とリゼさんは…
「「誰かアンゴラウサギって説明しろよ。」」
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「それにしても、ココアってパン作れるって意外だったな。」
「えへへ……」
リゼさんの発言にココアは照れていた。
「だけど、本当に作れるの?」
「失礼だな〜、ちゃんと作れるよ!」
僕の質問に対してココアは誇らしげにそう言う。余計に心配になってくる…
その後すぐ、ココアにスイッチが入る。
「みんなパン作りをなめたらいけないよ!少しのミスが完成度を左右する戦いなんだよ!」
僕はココアの瞳の中にメラメラと燃える火が見えた。
「ココアが珍しく燃えている……このオーラ…まるで歴戦の戦士みたいだ…!」
リゼさんはそのオーラに驚く。
「今日はお前に教官を任せた!よろしく頼む!」
「任されたよ!」
「私も仲間に!」
二人の輪に千夜は入ろうとしたのか敬礼する。
「3人とも…自衛隊じゃ無いから……」
「暑苦しいです。」
そして3人のそれが終わるといよいよパン作りだ。
「じゃあ各自パンに入れたい材料を提出ー!」
「イエッサー!」
「サー!」
「暑苦しいです。」
僕は陸自の駐屯地にでも居るかのような錯覚を受けた。
そしてそれぞれ材料を机に出す。
「私は新規開拓に焼きそばパンならぬ焼きうどんパンを作るよ!」
「私は自家製の小豆と梅と納豆を持ってきたわ。」
「冷蔵庫にいくらと鮭と納豆とごま昆布がありました。」
「これってパン作りなんだよね?」
僕はそう言いながらウインナーとベーコン、チーズを出す。
「ウインナー?」
「うん、地元のパン屋で売ってたのを再現できるかなと思って。」
「お前はまともだったか…」
リゼさんは安心したような顔つきでこっちを見ていた。
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「それじゃあまずは強力粉と少しの薄力粉、塩をちょっとにドライイーストを混ぜます。」
「ドライイーストってパンをふっくらさせるんですよね?」
「そうそう、よく知ってるね〜」
ココアはそう言いながらチノさんの頭を撫でる。
「ドライイーストは乾燥した酵母菌なんだよ。」
「攻歩菌!?」
ココアから酵母菌の話を聞いた途端にチノさんの顔が青ざめた。
「そんな危険なものを入れるぐらいならパサパサパンで我慢します!」
「あの?酵母菌って発酵の酵に母親の母で酵母ですよ?」
僕はチノさんに酵母菌を説明した。そうした事でなんとかチノさんの勘違いは解けたようだった。
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「次は水を混ぜながら一つの塊にしてこねます!」
ココアのこねかたを真似しながら僕もこねはじめる。
「パンをこねるのってすごく体力がいるんですね…」
「本当に…こんなにきついとは…」
「腕が…もう動かない……」
僕たち初心者組はパンをこねるのに悪戦苦闘。かなり疲れていた。ただ一人を除いて…
「リゼさんは平気ですよね?」
「チノ、なぜ決めつけた?」
リゼさんは力があるのかかなり楽そうであった。ちなみにココアはオーラを出しながらこねている。
「このときのパンがもちもちしててすっごく可愛いんだよ!」
「どこから出るんだそのパンに対する愛は…」
僕は疲れながらもココアのパン愛に驚く。だがそれ以上に気になるのは…すぐ隣で死にかけている千夜だ。
「千夜?大丈夫?」
「大丈夫よ!」
千夜は大丈夫というが絶対無理している。
「健気ってやつだね。」
「頑張るなぁ。」
それを見てココアとリゼさんは感心する。
「ここで折れたら武士の恥ぜよ!生き絶えるわけには行かんきん!」
「なぜ武士?」
疲れすぎてテンションがイカれた千夜を横目にパンをこねる。
「そろそろいいかな?モチモチしててすごく可愛い!」
「生地が!?」
「すごい愛だ…」
僕たちはココアのパン愛に再度困惑した。
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「それじゃあこの発酵したパンを好きな形にしていくよ!」
全員がある程度こねると今度はパンを形作る時間になった。
「チノちゃんはどんな形にするのかしら?」
「おじいちゃんです。小さい頃からおじいちゃんに遊んでもらっていたので…」
「おじいちゃん子なんだね。」
「コーヒーを淹れる姿は尊敬していました。」
そんなチノさんの姿を見てティッピーは微笑んでいる。
おじいちゃんの形にできたのかチノさんはパンをトレーに乗せてオーブンに持って行き…
「ではこれからおじいちゃんを焼きます。」
「のわああああ!?」
狂気じみたチノさんの言葉にティッピーは慌てる。
「チノさん怖い…」
僕はチノさんに初めて恐怖心を抱いた。
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「チノさんがさっきからオーブンに張り付いてますね。」
「チノ、パン見ててそんなに楽しいか?」
「はい、どんどん大きくなってます。」
チノさんはパンが膨らんでいる様子を見ている。僕も少し見ることにした。
「お、確かに面白い。競争しているみたいですね。」
オーブンの中を見ていると各自で作ったパンが少しずつ膨らんでいて、競争しているように見えた。
「あっ、おじいちゃんがココアさんと千夜さんに抜かされました!」
「本当ですね。僕たちは出遅れてるみたいです。」
見ていると僕とリゼさんのパンだけ出遅れていた。
「リゼさんとユキさんが出遅れています。もっと頑張ってください。」
「私に言うなよ…」
「それに関してはどうしようも無いです。」
二人でオーブンに齧り付いているととあることに気づく。
「ココアどこ行った?」
ココアがキッチンから消えていた。
「千夜ちゃん千夜ちゃん!ちょっとこっち来て!」
ココアは一つのコーヒーカップを持って戻ってきた。
「なに、ココアちゃん?」
「はい、これ!千夜ちゃんにおもてなしのアート!」
ココアが持ってきたコーヒーカップにはラテアートが描いてあった。
「まあ!素敵!」
「今日のは会心の出来なんだ!」
「味わっていただくわね。」
そうして千夜が飲もうとした時…
「あっ!」
ココアの声に千夜がコップを口から離すとココアはまた微笑む。
「ああ…」
千夜がまた離すとココアは微笑む。飲んで欲しいがこれまでで一番の出来のラテアートが無くなるのが嫌なようだ。
「……じゃあさ、スマホで撮れば解決じゃない?」
そう言いながら僕はスマホを取り出す。
「確かに…ユキくんそれ名案だよ!」
僕が撮影すると千夜に飲んでいいよと言う。ココアも満足したようだ。
「ああっ!」
「結局かよ…」
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「焼けたよ!」
ココアはオーブンからパンを取り出す。飲み物を出して食べる準備は万端だ。
「「「「「いただきます!」」」」」
「美味しい!」
「ふかふかです。」
「さすが焼き立てだな。」
全員が自分のパンの感想を言っていく。僕はというと、初めてにしてはかなり良かったと思う。実際美味しかった。
「これなら看板メニューにできるよ!」
「この焼きうどんパン!」
「この梅干しパン。」
「このいくらパン。」
「「どれも食欲そそらないぞ?」」
ココアたちのパンは即却下。美味しいかは別としてパンの名前から食欲が湧くとは到底考えられない。
「それならこれはどうかな?」
ココアは一つのバケットをこっちに持ってくる。中にはティッピーの形をしたパンが入っていた。
「じゃーん!ティッピーパンを作ってみたんだ!」
「まあ!可愛い!」
「これなら看板メニューにできそうだね。」
僕を含めて全員の反応はかなり良いものだった。
「早速食べてみましょう。」
「もちもちしてる…」
「えへへ、美味しくできてると良いんだけど…」
食べた感想は美味しかった。しかし…
「うん、美味しいよ。でもね…」
「中身はイチゴジャムだよ!」
「ちょっとグロいかな…」
僕は苦笑いしながらそう言う。口に入れる度に所々から血にも見えるイチゴジャムが出てくる。
「なら、中身を変えてみるのはどうだ?」
リゼさんが提案をする。
「確かにそれならこんな見た目にならずに済みますね。」
「リゼちゃん頭良い!それ採用!」
「これぐらいで頭良いって言われてもな…」
結局ティッピーパンはここの看板メニューにした。勿論イチゴジャムは無しで、別のもので代用した。
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「どんなとこか楽しみだね。」
パン作りの日の帰り、千夜に喫茶店に招待された。
「なんて名前の喫茶店なんですか?」
「甘兎…だったかな。あまり覚えていないですけど…」
僕が千夜の喫茶店の店名を口にした時、隣からダンディな声が聞こえた。
「甘兎とな!?」
「チノちゃん知ってるの?」
「いや、その声ティ「須磨さん?」……」
その声ティッピーから出てたと言おうとしたが直ぐに喉の奥に引っ込めた。なんせ言おうとした瞬間にチノさんから途轍もない圧を感じたからだ。それに名字で呼ばれたし…
ちなみにこの声はチノさんの腹話術…ということにしてある。二人ともなぜ気づかないのか不思議だが。
「はい、おじいちゃんの時代に張り合っていたと聞きます。」
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「あ、ここじゃないですか?」
あれから数分。目的地の甘兎庵に着いた。甘兎庵はラビットハウスのある守町とは萌香運河と大通を挟んでいるため歩きだと少し時間がかかる。
「看板だけやたらと渋い…面白い店だな。」
甘兎庵は欧風の建物に年季の入った木製の看板が掲げられている。看板は「庵兎甘」右から読むようになっている。
「右から…この街らしくないな。」
「オレ…うさぎ…あまい…」
「甘兎庵…ね。」
僕がココアに説明すると甘兎庵の扉を開ける。
「「「「こんにちはー」」」」
「いらっしゃいませ!ってユキとココア!?」
「えっルイ!?」
「ルイくん!?」
甘兎庵に入ると出迎えたのは店員として働くルイだ。
「どちら様です?」
「同じクラスの鎌倉ルイ。」
僕は初対面のチノさんとリゼさんに説明する。
「ユキがほとんど自己紹介してくれましたが、鎌倉ルイです。よろしくお願いします。」
「よろしくです。」
「よろしくな、ルイ。」
二人との自己紹介をし終わるとルイが聞く。
「ところで、なんでここに?」
「千夜に招待されてね。ルイはなんでここで働いてるの?」
「俺はここに住んでるから。お前もだろ?」
ルイはここが下宿先で手伝っているらしい。
「んで千夜呼んでくるから待ってろ。そういえば8番にカエデいるから。」
「カエデちゃんもいるの?」
「らしいね。」
僕は8番テーブルを探す。
「あ、ユキじゃん!」
僕はテーブル席から手を振るカエデを見つけた。
「どうも。」
「ルイには会ったの?」
「うん、カエデはなんでここに?」
僕は少しだけ気になったので質問をしてみる。
「ボク、こう見えてここの常連なんだよね。」
「そうなんだ。」
「だからルイとも仲が良かったの。」
僕はカエデの意外な一面を知った気がした。
「じゃあ僕はみんなの所に戻るね。」
「ここのは美味しいよ!」
僕はみんなのいるテーブルに向かう。
「カエデちゃんには会えた?」
「うん、ここのは美味しいから期待して良いよって言ってた。」
「みんないらっしゃい!」
ココアと話していると千夜が来た。
千夜は初めて会った時と同じ服装で、和を意識した服装だった。
「千夜ちゃん、初めて会った時もその格好だったね。店の制服だったんだ!」
「あれはお仕事でお得意様に羊羹を配った帰りだったの。」
「そうだったんだ〜。あの羊羹美味しくて三本いけちゃったよ〜。」
「三本丸ごと食ったのか!?」
「なんという食欲…」
最近ココアの色々な面に驚かされている気がする…
「あっ、ウサギ!」
ココアは小さいテーブルの上にある黒ウサギの方を見る。眉一つ動かないそのウサギはまるで置物のようだ。
「あんこは余程のことが無いと動かないのよねぇ。」
「あんこって言うんだ。あの黒ウサギ。」
そんなことを話しているとチノさんがあんこに近づく。あんこはチノさんには目もくれず頭に乗っているティッピーに飛びついた。
「じいち……ティッピー!」
今じいちゃんと言おうとしていた気がしたが、そんなことよりもチノさんに怪我が無いかと思い駆け寄る。
「大丈夫ですか!?」
「チノちゃん大丈夫!?」
ココアが手を取ってチノさんを立たせる。
「びっくりしました…」
「なんで飛びついたんだ?」
あんこはティッピーを追いかけている。
「わぁぁぁぁぁ!」
「あれは一目惚れしちゃったのね。」
「は?」
千夜の言ったことに思わずガチトーンで言ってしまった。
「一目惚れ?」
「恥ずかしがり屋くんだと思ったのに…あれは本気ね。」
千夜は笑顔でハートを作る
「あれ?もしかしてティッピーって…」
「メスですよ。」
中身は違うだろと口から出そうになったが引っ込める。言うと色々面倒くさくなりそうだからだ。
ティッピーは叫びながら店外に出ていく。そしてその後をあんこは追って行った。僕たちが座席に着くと千夜が全員分の抹茶を持ってきた。
「私も抹茶でラテアートを作ってみたんだけど、どうかしら?」
「どんなの!?」
「ココアちゃんみたいに可愛いのは描けないんだけど、北斎様に憧れていて…」
「浮世絵……」
さすがのことにあのココアすら驚いている。
「あと、俳句も嗜んでいて…」
そこには「ココアちゃん、どうして今日は、おさげやきん」と書かれていた。
「風流だ!」
「芭蕉様にも憧れていて…」
「風流……なのかこれ?」
これは風流とは少し違う気がする。千夜ってココアに……これ3回ぐらい言っている気がするが気のせいか?
「あ、千夜。メニューを見たいんだけど…」
僕が千夜に頼むとすぐに出してくれた。
「はい、お品書きよ。」
「ありがとう。」
僕が品書きを開くととんでもないものが書いてあった。
「煌めく三宝珠、雪原の赤宝石、海に映る月と星々‥なんだこの漫画の必殺技みたいなメニューは…」
リゼさんの言った通り、メニュー名はみんな厨二病の人が考えたような感じで想像すらつけさせてもらえなかった。
「これじゃよく分かりませんね。」
僕の他にリゼさんやチノさんも悩んでいたが、唯一ココアだけが分かっていたようだ。
「わぁ抹茶パフェもいいしクリーム餡蜜白玉ぜんざいも捨て難いなぁ〜」
「分かるのか!?」
「なぜこのメニュー名で分かる…」
ココアの読解力に全員驚く。
「じゃあ私、黄金の鯱スペシャルで!」
「なんかよくわからないけどこの海に映る月と星々で。」
「花の都三つ子の宝石で。」
「僕は煌めく三宝珠で。」
僕は苦くなさそうな三色団子を頼んだ。
「分かったわ、じゃあちょっと待ってて。」
全員の注文を聞くと千夜は厨房に入っていく。
「和服ってお淑やかな感じがしていいね〜」
千夜の後ろ姿を見てココアが呟く。そしてそれを聞いたリゼさんが後ろ姿をまじまじと見る。
「着てみたいんですか?」
「い、いやっ!そんなことは!」
リゼさんの気持ちを察してチノさんが聞く。
「リゼさん…分かりやすいですよ。」
「大丈夫!リゼちゃんならきっと似合うよ!かっこいいよ!」
こんなことを話していると頼んでいたものが来た。
「お待ちどうさま、リゼちゃんは海に映る月と星々ね。」
「白玉栗ぜんざいだったのか。」
「チノちゃんは花の都三つ子の宝石ね。」
「餡蜜にお団子が刺さってます!」
「ユキくんは煌めく三宝珠ね。」
「やっぱり三色団子だったか。」
予想通りだ。苦いものを引かなくてよかった。
「ココアちゃんは黄金の鯱スペシャルね。」
「わぁ!美味しそう!」
「鯱=鯛焼きって無理がないか?」
「あんこは栗羊羹ね。」
「うさぎなのに羊羹を食べるのか…」
僕が少し驚いているとあんこはココアの持っている食べ物の方を向く。
「どうしたの?」
「こっちのを食べたいんでしょうか?」
ココアはスプーンでアイスを掬うとあんこに食べさせようとする。
「しょうがないな〜、ちょっとだけだよ?その代わり、後でもふもふさせてね。」
だがあんこは本体に突っ込んでバクバク食べる。
「本体まっしぐら!?」
「あらあら…あんこったらダメじゃない。」
千夜があんこを抱きかかえてパフェから離すが、ココアのパフェはすでに食べ尽くされていた。
「ああ〜私のパフェが……」
「仕方ないな…これ食べなよ。」
僕は三色団子を渡す。
「いや、だけどこれはユキくんのでしょ?」
「今あまりお腹減ってないしさ、ここにはまた今度来ればいいじゃんか。」
「ほら、食べないの?」
ココアは葛藤する。なんでここで葛藤するんだか…
「美味しい三色団子だよ?」
ちょっとココアを煽ると僕の手から三色団子を持って食べた。
「美味しい〜」
ココアは団子を頬張っている
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「「「「ごちそうさまでした」」」」
食べ終わって各々話しているとチノさんがあんこに近づく。
「触らないの?」
「チノはティッピー以外の動物が懐かないらしい。」
「ティッピーはすごい懐いているのに不思議ですね。」
こうは言ってるが理由はなんとなく分かる。あの中はどうせ亡くなったチノさんの祖父なのだから。
「っ!」
少し触るとあんこの耳が少し動く。それに驚くもまた触る。
背中を撫で、最終的にはいつものように頭の上に乗せた。
「すごい!もうこんなに仲良く!」
「頭に乗せなきゃ気が済まないのか!?」
「うさぎは頭に乗せるっていう決まりなんじゃないですか?」
チノさんは嬉しそうな表情をしている。
「私の下宿先が千夜ちゃんの家だったら、ここでお手伝いさせてもらっていたんだろうなー」
ココアがもしもの話を語る。
「今からでも来てくれていいのよ?従業員は常時募集中だもの。」
「それいいな。」
「同じ喫茶店ですしすぐに慣れますね。」
千夜の話にリゼさんとチノさんが乗っかる。ココアも何かを察する。
「じゃあ部屋を空けておくから早速荷物まとめてきてね。」
「誰か止めてよ…そ、そうだ!ユキくんは私の味方だよね!?」
ココアが僕に詰め寄ってくる。
「え?う〜ん、甘兎庵でも頑張ってね!」
「そんなぁ…」
僕はココアの助けを求める手をバッサリと切り捨てる。
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「千夜ちゃんまたね〜」
「ごちそうさまでした。」
「ごちそうさま、また来るよ。」
「またなー」
勘定を済ませると店を出て帰路につく。
「ん?何か忘れてるような……」
「気のせいじゃないのか?」
僕の独り言にリゼさんは否定する。
「いや、だけどいつもある何かが…ってチノさん!それあんこですよ!」
よく見るとチノさんの頭に乗ってたのは白いアンゴラウサギではなく黒うさぎだった。
店に戻るとティッピーは不満そうな顔をして、宥めるのに少々時間がかかった。
ということでこれで終わりです。早く上げるといっていましたが思いっきり1ヶ月経ってしまいました…
次回から3羽に入ります。黄髪のうさぎ嫌いの少女が出てくるかもです。
ではまた次回!