黒幕希望のクロウン 作:一般通過犬
不定期で好き勝手に投稿していくのでごゆっくりしていってください。
アリウス自治区から姉妹を攫ってから数か月たった。
単なる子供だと思っていたが、吞み込みが早い上に素晴らしい連携を取っていると報告が上がっている。
アリウス自治区では内戦ばかりと描写されていたし、やっぱりそこで生きていると自然と身に着くものなのか...?
とりあえず、子供は追々詰めていくとしよう。
次の目的は...連邦生徒会だ。
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場所は自社の社長室。
と言っても便利屋68の子たちと同じような感じの内装にしてある。ここにお金をかけても仕方ないからね。
まぁ、後々改装するつもりではあるけど。
そして、社長室で椅子に座る私の対面に座っている人物が一人。
我が社の副社長であり、秘書の「倉持 アキラ」だ。
本来ならばヘルメット団のあの子でも連れてこようかと思ったが...先生と一ミリでもかかわりのあるキャラクターは決して本社には採用しない。
もしそれで、それが原因で大きく未来が歪んでしまえば、全てが水の泡となってしまうからだ。
「それで副社長...ここに呼んだのは他でもない、連邦生徒会の事だ」
「はぁ...連邦生徒会ですか」
私の言葉に、不思議そうな顔をしながらオウム返しの様に応える。
「私の野望の為にはこの企業を大きくするだけでは足りない...連邦生徒会に入り、ポストに就く。そこから色々と根回しをするつもりだ」
「社長の野望がどのような物かは分かりませんが...つまり、連邦生徒会に食い込むということですね?」
「分かってくれて嬉しいよ。直ぐに次期選挙の準備をしてほしい」
副社長はため息をつきながら手元のミレニアム製端末を操作し、ホログラムを投影する。
「社長、これほどの出費になりますがよろしいですか? ただでさえ新分野への出費が嵩んでおりますが」
ホログラムを見れば、確かに利益に対して決して少なくない額が新分野への投資として使われている。
今は中等部二年。早めに入らなければ「エデン条約」に関与できない。
だが、会社自体が倒産すればそもそも意味がない。
「...分かった、ならまずは下地を整えよう。副社長、関係企業に選挙に出るとの噂を流しておいてくれ。あぁ、くれぐれも"社内から流出"したように見せかけてくれ」
「畏まりました...ですが、わざわざ噂を流して何になるのですか?」
「雰囲気だよ雰囲気、少なくとも流しておけば取引がある企業との話のタネになる。それ対して相手が好意的であればこちらもよろしくやっていこうという事だ」
「はぁ...畏まりました」
副社長は端末をいじりながらホログラムを選挙費用の物から次のスケジュールの物へと変える。
私はそれを見てつい、顔を顰めてしまった。
「社長、次のスケジュールですがカイザーインダストリーとの商談です」
「カイザーか...あぁ、分かった」
椅子から立ち上がり、伸びをしながら鞄を取る。
「あぁ、そうだ...副社長、製造部門は今どんな調子?」
「製造部門ですか? ...良好に稼働中、利益も上げ黒字ですが」
製造部門はカイザーとは可能な限り商品を被らない様にしている。勿論、被る時もあるがその時はあえてカイザーよりは多少高めに設定している。
そうすれば安いカイザーを購入して向こうは大きな被害を出さない。こっちはそもそもの製造ラインを少なめにしておけば被害は目を瞑れる。
それに、意外と自社の製品だからと言って買ってくれるユーザーもいて助かっている。
「ならそろそろ新しいものに手を出そう」
「新しいものですか...それは?」
今後展開していく事業形態の中で一番の金食い虫になる可能性が高い部門...PMC。
それをどれだけ出費を減らすかによって今後立ち回りの幅が変わる。
故にやることは一つ。
「製造部門の管理下で軍需工場を作ってくれ。PMCへの事業展開へ向けて作っておきたい」
「...我が社には軍需のノウハウはありませんが」
「分かっているさ、ここに関しては潰れかけの古工場を社員ごと買収する。それを子会社として独立させておこう。新規開発に関してはブラックマーケットにミレニアムの元生徒...あるいは、ミレニアムにいる現生徒でも構わん、開発者として数人程雇おう」
「...分かりました、細かい修正はこちらの方で行います」
「いつも助かるよ、それじゃあ商談に行ってくるね」
私はそう言って、社長室を後にする。
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さらにそこから少し時がたち、現在は中等部三年生。
会社も順調に大きくなり、連邦生徒会にも入ることが出来た。
...まだポストには付けていないが。
しかし、ポストに就くためならばなんだってやっている。
裏工作、証拠偽造、賄賂、狂言...ここに来るまでに、多くの生徒の人生を壊してきた。
だが、それでも進み続けるんだ。未来のため、先生の為に。
「まぁ...私は、先生には許されないでしょうけど」
「ん? どうしたのカナコ?」
ふと隣を見れば先生に仕事を押し付け明太ポテトを貪る生徒...由良木モモカの姿がある。
今もその手には明太ポテトがあり、貪っている最中だ。
「いや、何でもないよ。ただの独り言」
「へぇ~、カナコが独り言なんて珍し~」
彼女はそう言ってパリパリと小気味良い音を立てながらポテチを食べている。
彼女も現在はポストに就いてはいない...が、遅かれ早かれ就くことにはなるだろう。
「さて、私はそろそろ用事があるので失礼しますね」
「ありゃ、どこ行くの?」
立ち上がり、その場を向かおうとしたがそう問いかけられ足を止める。
「少し、"アビドス"まで」
私はそう言って、その場を後にした。
「さて、着いた...ここが、アビドス」
ゲームで見たような風景程ではなくとも、確かに砂漠化が進んでいる。
かつてはキヴォトス最大と言われたアビドス高等学校だが、今では歩くだけで疎らに人と会うくらいだ。
シャッターが閉まった飲食店や空き家が乱立しており、静けさと相まって酷く悲しいものを感じる。
「...感傷に浸って場合じゃないな。さっさとアビドス高校に向かわないと。迷わない様に地図を持って来たから先生みたいにはならないはず」
それに、今はまだシロコちゃんは居ない。あんなイベントが起こるとは限らない。
手に持っているアタッシュケースを持ち直しながら深呼吸をする。
...とりあえず、向かうとしよう。
「さて、今ならまだバスかタクシーかは...」
と、辺りを見渡してみるが、それらしきものは見当たらない。
嫌な予感がしながらバス乗り場へ向かい時刻表を見てみる。
「...廃線、かぁ」
すでに廃線になってた。つまり、現状の移動手段は徒歩のみである。
ため息をつきながら電話を取り出し、ある人物にかける。
「...副社長、助けて...」
暫く駅で待っていると副社長が手配してくれた護衛部隊が車に乗ってやってくる。
私の前で停車すると、隊長と思わしき人物が車から降りて私に敬礼する。
その人物は護衛部隊の中では珍しいオートマタではなく、生身の女性だ。年も私より少し下だろうか。
見覚えがあるような気がするが、護衛部隊の中に彼女の様な子を入れただろうか...
「お待たせ致しました。こちらにお乗りください」
彼女は手慣れた動作で車のドアを開け、乗るように促す。
「...君は見かけない子だね。いつ護衛部隊に?」
本来ならばさっさと乗るべきなんだろうが、つい気になって尋ねてしまう。
彼女はほんの少し、目を見開いた後にこちらへ敬礼し直す。
「はっ、先週からであります。それまでは副社長の下で訓練を受けていましたので」
副社長が...彼女が訓練をつけるなんて珍し...あ...
そうだ、思い出した...そう言えば仕事で忙殺されてすっかり忘れてた...!
「副社長の下で...なるほど、ずいぶん成長したから分からなかったよ」
内心冷や汗をかきながら悟られない様に微笑みを作る。
本当に忘れてた...副社長に頼みっぱなしだった...!
彼女は一瞬嬉しそうな顔をするが表情はすぐに戻る。
「ありがとうございます。しかし社長、時間も押しておりますので」
「あぁ、そうだったね。また今度時間があったら話をさせて欲しい」
そう言って車へ乗り込む。彼女は車の扉を閉めた後に助手席に乗り込み、運転手へ合図を出す。
よく見れば、同じ車に乗っているほかの護衛たちも皆、あの時の子供だ。
時間の流れは速い。彼女達はそれをしみじみと感じさせ、それと同時に私はわずかな焦りを抱いた。
速いからこそ、じっとしてはいられないのだ。少しでも早く、多く工作をしなくては。
アビドス高等学校の校舎は何度も何度も移転していたと聞くが、やはりその様で今いる校舎もだいぶ砂漠に吞まれつつあった。
助手席に座っていた彼女が車を降り、私が座っている隣のドアを開ける。
「さて、正念場だ...」
ぱちんと頬を叩き、いつもの胡散臭い笑みを浮かべる。
ドアを開けてくれた彼女に軽く礼を言いながら車を降り、アビドス高等学校の校門をくぐる。
本編ほどの生徒の少なさはないとはいえ、かなり静かだ。
そのまま校舎の方へ歩いていけば、校舎から二人の生徒が歩いてくる。
現アビドス高等学校生徒会長と...
...
心臓がドクンと強く脈打つ。それについ顔を顰めてしまいそうになるが、表情を崩さずに軽く礼をする。
「...初めまして、アビドス生徒会のお二人方。私、連邦生徒会に所属しております浅見カナコと申します」
私は、彼女を...殺す羽目になる。その事実が、ただただ私の心臓の鼓動を速めた。
挨拶をした後に生徒会室へ場所を移し、商談を始める。
「現在、アビドス高等学校は多くの土地を持っていますが...その多くは砂漠化しているようですね。その公害の対策にも多くの資金を投資していますが砂漠化は進むばかり...」
アビドス高等学校の現状を事前にまとめた資料を読み上げながら彼女たちの前に差し出していく。
それに対し、彼女達は口を噤んだままだ。
「そこで、一つご相談がありまして...土地の一部を貸していただきたいのです」
「...土地の一部、ですか」
口を噤んだままだった彼女たちは不思議そうにこちらを見ている。
「えぇ、新事業を始めるための土地探しをしておりまして。土地を買い上げる、というのも考え付いたのですが...流石に、
そう言いながら書類をいくつか取り出す。土地借用書や誓約書などをまとめた物を一枚一枚説明していく。
「あなた達は砂漠化した土地が多く、その対応に追われている。さらに資金も足りない。私達は新事業の土地が欲しい。欲を言えば、連邦生徒会に目を付けられないようにしながらあなた達を支援したい」
「...支援ですか。なぜ私達に?」
「その疑問はもっともです。私達は元々、とある目的のために様々な事業展開をしておりまして...細かい内容はお話しできませんが、ここが廃校になる事は私にとっては大きな損害に繋がるのです」
説明しながら、持ってきていたアタッシュケースを机の上に置き、中身を見せる。
そこには現ナマ...賄賂が詰められている。
「これ...」
「えぇ、アビドスへの支援金です。私個人と、会社からです。連邦生徒会のポストに就ければもう少し大掛かりな援助が行えるのですが...力不足で申し訳ない」
そう言って頭を下げる。彼女達は慌てて私の頭を上げさせる。
これで、彼女達は少なからず私に恩があると思うだろう。
それに、イレギュラーが起きてもこの支援金で何とか持ちこたえることもできるはずだ。
頭を上げ、軽い世間話をした後に誓約書をスッと前に出しペンを置く。
「それでは...もしよろしければ、ここにサインを」
商談は難無く進んだ。正式に土地を借りることが出来た旨を電話で副社長に伝える。
「...というわけだ、早速取り掛かってくれ」
『了解しました、すぐに建設に取り掛かります』
副社長はそういって電話を切る。電話を仕舞った後に護衛が待っている車へと向かう。
彼女たちは最初の位置と全く違わない場所で待っていてくれた。
そして、私を見るや否や敬礼をして車のドアを開けてくれる。
「...助かる」
そう一言礼を言って車へ乗り込む。すぐに車のドアは閉められ、出発する。
先生が来るまであと2~3年...まだ、備えが足りない。
先生を導くには、時間も物資も...犠牲も足りない。