黒幕希望のクロウン 作:一般通過犬
2日や3日で一話出せる人すげぇよ...
ズキリ、と痛む頭痛で目が覚める。
薄っすらと目を開けて辺りを確認すれば、どこかの廃墟の部屋のようだ。
壁や床の装飾は剥げており、見るからに新しいものでない限りはどこかしらが朽ちている家具ばかりだ。
そして、部屋には護衛の格好をした何者かが数人、部屋の外からだと思われる話し声も聞こえる。
体をそっと動かそうとするが、手足は私が座らされている椅子に括り付けられている。
誘拐
その2文字が頭に過る。金が目的だろうか?
だが、それにしては手際がかなり良い。恐らく何処かに所属している、あるいはしていた傭兵かもしれない。
「...ボス、奴が起きました」
部屋に居た一人が私の方を見ると、部屋の外に向かって声をかける。
そうか、そういえばヘイローで分かるんだったか。すっかり失念していた。
部屋の外から二人の護衛を連れ、腕に赤いスカーフが巻かれた人物が入ってくる。
ボスという発言や一人だけ赤スカーフということから、ここの隊長なのだろう。
「気分はどうだ?」
「...手荒い歓迎のお陰で最悪の気分だよ」
「ふん、問題無いようだな」
「何が目的だ? 社長兼連邦生徒会幹部を誘拐したんだ、金なんてちっぽけな事ではないんだろう?」
私がそう言えば、相手はこちらを小馬鹿にしたやうな態度で話し始める。
「なに、簡単な事だ。アビドスから手を引け」
アビドス。予想外の要求に一瞬目が点になる。
何故こいつらがアビドスから手を引いて欲しがるのか。
単なる誘拐犯にしては異常なほどの練度の高さ。
私がアビドスから手を引くことによるこちらの損害。
それによる向こうの利益。
「お前達、カイザーか」
その言葉で場の空気が一瞬でピリッとする。
半分勘だったが、どうやら当たったようだ。
「天下のカイザー様がこんな真似をしてまで欲しいんですねぇ〜アビドス」
「......」
「でもね、アビドスにはキミ達が探しているものと同価値の素晴らしいものがあるんだ」
ぐっと体を前のめりにし、相手の隊長へ顔を少しでも近づける。
ヘルメットのバイザーの奥に見える
「お断りだよ、
隊長は溜息を付き、部下に持っていた武器をもたせる。
「どうやらこの状況を理解していないようだな」
次の瞬間、私の体が壁へ吹き飛ぶ。
そして、それと同時に体中に痛みが走り、胃液がこみ上げる。
「ぅ、おぁ...」
「威勢がいいのは結構だが、我々は交渉をしているのではない」
床に転がっている私の首を持ち上げ、ギチギチと絞めていく。
「私の体は特殊カスタムでね、リミッターを外せばキミのような生徒でも暫く殴り続ければ殺せる出力が出せるんだよ」
「ぐ、ぅ、ぁ...」
両手で絞め上げる手を解こうとするが、ゆっくりと手から力が抜けていく。
「あまり調子に乗らない方が良い。賢明なキミなら分かってくれると思っているよ」
突如、首を絞める手から力が抜け、そのまま地面へどしゃりと落ちる。
「カハッ...ゲホッゲホッ!」
咳と共に血混じりの胃液が吐き出される。全く本当に容赦がない。
酸素が不足した為か、頭が酷く揺れ、視界も揺れる感覚がする。
「ふん...また縛り付けておけ。それと、アレの手配をしろ」
そう言って二人の護衛を連れて部屋を後にする。
別の護衛が私の体を乱暴に掴み、起き上がらせる。
その衝撃でまた吐きそうになるが、堪える。
そして、再び私の体を縛り、そのまま床へ放置する。
全く、こんなことになるなら信号解読されて追われるリスクを取ってでもGPSを付けておくべきだったか。
部屋には誰もいないが、その代わりに廊下に見張りが居るようだ。
「腕が縛られては、通信機も使えないな...」
先程同様、固く結ばれているようで藻掻いても解ける気配がない。
幸い、換気はされているので吐瀉物の臭いが充満しないのは救いだ。
「待つしか無いな...」
壁までなんとか移動し、もたれかかる。
心配しているだろうか。いや、彼女達のことだ。絶対にしているだろうな。助けてもらったらどう言い訳しようか。
「いや...私悪くないな」
冷静に考えれば、私は攫われた側でこちらに非は1ミリもないはずだ。
まぁ、そんな事を考えても状況は好転しない。今は休もう。
体を壁に預けたまま、目を閉じる。
流石にここからでは外の声は聞こえない。
外の様子は見えないので時間が分からないが、長い間気絶していたわけでは無さそうだ。
だとすれば、まだD.U.地区だろうか?
...本当に彼女達には心配をかけるなぁ。
同時刻、廃墟の外では武装した少女が四人、双眼鏡で覗きながら様子を窺っていた。
「こちら影、車両を発見した」
『ヘリの映像でも確認出来るわ』
双眼鏡を仕舞い、
「妨害に関してはどうすればいい? 鎮圧で良いか?」
『殺しなさい』
その言葉に、隊長は顔を顰める。
彼女としては、尋問をして情報を得ようと思っていた為だ。
『と、言いたいけど可能な限り無力化でお願い』
「...了解」
通信を切り、物陰に隠れながら廃墟に近づく。
『隊長〜見張り2名どうする〜?』
「突入と同時にEMP弾で無力化しろ」
『うぇ〜...あれ結構高いんだけど...』
「非殺傷だ。良いな?」
はいよぉ〜と抜けた声が通信機から聞こえる。
呆れながら、銃を構える。
そして、窓を蹴破りながら突入する。
それと同時に重い銃声が響く。
「...敵は居ないか」
辺りを見渡すが、驚くほど気配を感じない事に首をかしげる。
部屋を一つずつクリアリングする。だが、その間も敵を発見しない。
そして、最後の部屋の扉を開く。
そこには、床に散らばる吐瀉物や血痕、壁にはもたれかかる様に気絶している浅見カナコがいた。
よく見れば顔には痣があり、首には僅かに絞められた痕も見える。
「っ社長...!」
駆け寄りたい気持ちを抑え、辺りを警戒しながら通信機を繋げる。
「こちら影。社長の身柄を確認した」
『様子は?』
「...暴行の痕が見られる」
通信機の向こうからバキッと何かを折る音が聞こえる。
『...分かったわ。すぐに保護して。そちらに救護班を向かわせるから合流して頂戴』
「了解」
銃を構えながらゆっくりとクリアリングを行う。
部屋にはカナコ以外には誰も居らず、不気味さを感じられた。
「社長、私が分かりますか?」
「ぅ...」
意識はあるが、酷く朦朧としているようだ。
安全な姿勢にしようと少し体を退かした際に、あるものが見えた。
それは
00:03
「っ総員退避―――!!!」
部隊員全員に通達し、社長を持ち上げる。
00:02
社長を持ち上げながら部屋の外へと走る。
半ば無理な体勢なため、転びかける。
00:01
部屋の入口から一歩外に出る。
00:00
甲高い電子音と共に爆音と衝撃波、背中を強く押すような風圧が私と社長を吹き飛ばす。
間一髪、下になるように社長を受け止めることで大事に至ることはなかった。
「...」
バイザーが割れ、使い物にならなくなったヘルメットを脱ぎ、その場に捨てる。
廃墟は入るときの面影がない程、綺麗に崩壊している。
少しでも助けるのが遅れれば社長はあの中にいたのだ。
「...ふぅ」
遠くに救護班の車両が見える。
壊れた装備を脱ぎ、社長を持ち上げる。
ゆっくりと転けないように救護班の方へ向かって歩き出した。
今話は文字数少なくて申し訳ない。
2023/06/23:追記
カナコのメモロビとか考えてたら一週間近く経っているのはこの世のバグだと思います。