お隣に天使様が住んでるけど、もう片方の隣に住んでるカプ厨には命を狙われている件 作:周くんと真昼ちゃんいいよね
※勢いで書き連ねたのでちょっとかきなおした。
今年高校一年生となった柴崎光輝が住むマンションの左隣には、天使様と言われる少女が住んでいる。
絹の様な亜麻色の髪、透き通る様な美しい肌。麗しい容姿に常に好成績を残す完璧超人、かつ謙虚な性格という、これでもかと属性をぶち込んだ美少女。それが天使様ーーもとい、椎名真昼という少女だ。
まぁ光輝からすればどれだけ言っても所詮はお隣さん。ぶっちゃけ特に興味もないし関わるつもりはかけらも無い。
無いの、だが。
「何者よ貴様ぁ……何処から湧いて出たぁ!」
「ちょっっっと待てッ!! いったんその包丁おろせ! いきなり入って来るなり何言ってんだお前!? っていうかちょっと刺さってる! 刺さってるから!?」
なぜ俺は自分の部屋に侵入してきた目の前の見知らぬ美少女に首を絞められながら包丁を突き立てられているのだろうか。最初は本当に理解できなかった。なんならこの後受けた説明も意味がわからなかった。
これが俺、柴崎光輝と朝比奈こころの最悪の出会いだった。
「惚けんじゃないわよ……貴様も天使様の恋路に踏み入る有象無象の愚か者の1人でしょうが! 駄目人間と天使様のカップリングに土つけようなんて千年早いのよ、この腐れ転生者!!」
「お前と俺って一応初対面だよな!?いや一応同じ制服だから顔見知りか……って言ってる場合か!!っていうか転生者ってなに!? 駄目人間と天使がなに!? まじで一回説明してくれ!!」
ギリギリと目の前の少女の腕に抑えられる体からのSOSに従ってなんとか窮地を脱しようと踠くが、女性の細腕から出ているとは思えない力によって、全く拘束から抜け出せない。ゴリラでももう少し容赦がある。
「力強っ……お前ほんとに女子かよ!」
「こっちはチート能力フル活用してんのよ……お前程度に振り解ける程柔な俺TUEEじゃないっての!!」
「言ってる事とやってる事がしっちゃかめっちゃか過ぎてその温度差で風邪ひきそうなんだけど!? まじでどう言う状況なんだよこれは!!」
「そら見ろ風邪ひいて天使様のおかゆにありつこうって魂胆なんでしょ! あんたは大人しく地獄の血の池でも啜ってろ!!」
「お前まじで警察呼ぶぞ!!??」
とにかく、目の前の危険人物からとにかく離れたい。それだけだった。
「私の名前は朝比奈こころ。高校一年生の恋のキューピッド。よろしく」
「お前その自己紹介手足縛りつけた人間の目の前で包丁光らせながら言う事じゃねぇぞ」
「黙って名前と所属を吐きなさい。苦しみぬいて死にたくはないでしょ?」
「おいこれ自己紹介じゃなくて尋問とか拷問の類だろ。なんだよ所属って「あ?」……柴崎光輝。高校一年生です」
ドスの聞いた声と共に音を立てて目の前に突き刺さる包丁の怪しげな光をみて、言われた通り名前を告げる。彼女からの返答次第で存在ごと抹消されそうである。シンプルに怖い。
「で? なんであんたここにいるの?」
「ここ俺の部屋だからどっちかって言うとそれ俺の台詞な?俺の存在全否定? お前人権って知ってる?」
「人の恋路を邪魔するカスに人権なんてあるとでも?」
「いやまじでさっきから何言ってんの?天使って隣の部屋にいる椎名の事か? え、恋人いるのに俺がお邪魔虫ってこと? なして?」
「べらべらとうるさい舌ね……あんたは聞かれた事だけに答えればいいのよ。切り落とされたいの?」
「理不尽」
信じられない暴言の数々と理不尽な尋問を交えながら説明されたが、朝比奈曰くここは彼女が知るライトノベルの世界との事で、そのメインキャラが隣にいる天使様こと椎名真昼。そしてそのお相手がそのもう一つ向こうに住む藤宮周という少年だと言う事。
些細なきっかけからはじまった2人の関係は言葉では表せぬほどの至高の領域との事。歯痒く、焦ったい感情を募らせ互いを求め合う姿はまさしくイチャラブの王道。
だがしかし、その道に翳りを指す存在が俺、柴崎光輝らしい。なるほどわからん。
「私の知る限り、このマンションにあの2人以外の高校生は物語に登場しなかった。少なくとも、私の記憶に柴崎光輝なんて登場人物は居ないはずよ」
「いや、お前も高校生だろ」
「私はイレギュラー、あんたとは違うのよ」
「なんでお前がOKで俺がNOなんだよ」
突拍子もない話だが、天使様の反対側のお隣さんである彼女は一度死亡し、その後神様からの特典によりこの世界に作為的に捩じ込まれた存在らしい。与えられた力は最強の戦闘力と何度でも転生できる運命力。例え敵が世界を滅ぼす事のできる魔王でも、棒切れ一つあれば簡単に死滅させる程の巨大な力を持っているらしい。この現代社会においては紛れもなくオーバーパワーである。どう考えても勿体なさすぎる。
二つ目の能力は全ての尊いカップルの姿を至近距離で見る為に受けた力。この世界に来る以前にも数えきれない作品のあらゆるカップルの行く末を絶好のポジションで見守ってきたらしい。出歯亀根性も生まれ変わってまで行いたいなんて所まで来れば大した物だ。正直ちょっと軽蔑する。
「それで? 自称転生者様は藤宮と椎名がくっつくのにどうして俺が邪魔になるっていうんだ? いいじゃん付き合うなら。俺別に邪魔なんてしないけど?」
「物語っていうのはたった一つの小石に躓くだけでも大きな変化があるのよ。例えば雨が降ってる今日はこの世界、『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』という作品が始まる日なの。あんた、誰かがこの雨に濡れてたら自分の傘とか渡しちゃうタイプ?」
「いやまぁ、風邪ひきそうなら渡すかな。って言うかそんな作品名なのこの世界」
「アウト。やっぱあんたここで殺すわ」
「めちゃくちゃすぎるだろ!?」
人助けしようとしたら殺される世界なんてあってたまるかと思いながら目の前のイカれキューピットに力いっぱい吠えたてる。善意で殺意が返ってくる世界なんて滅んでしまえと一瞬思ってしまった。
「……あんた、本当に私と同じ様に転生してきたわけじゃないの? 天使様に近づくためとかじゃなく?」
「何者もなにも、多分普通の人生過ごしてきた一般人だと思うけど……天使云々は、まぁ別に。綺麗だなとは思うけど、どうこうなりたいとかは思わないな」
「傘を貸すかもしれない、天使様を認知してるけど興味があまり無い。アウト2点目ってところね。次はその頭蓋叩き割るわよ」
「どう答えれば正解なんだよこの理不尽クイズはッ!!?」
惚れても駄目、興味なくても駄目。じゃあ一体どうすればいいのか。そんな鬼畜難易度の恋愛ゲーム一体誰がクリアできるのかと問いただしたい。というか、もしかして駄目人間と天使様ってそんな狭き門通ったの?まじ?
「とにかく、私の目的に貴方は邪魔なのよ。視界の端でウロチョロされても困るし、かと言って物語に入ってこられるのはもっと迷惑」
「んなこと言われても、どうすりゃいいんだよ……」
「だから、あんたには私と一緒に行動してもらう」
「……冗談だろ?」
朝比奈の言った言葉が理解できなくて、引き攣った顔で聞き返すが当たり前でしょ?とでも言いたげな表情を浮かべる朝比奈を見て、さっきの言葉が嘘じゃないことを理解した。嘘であってほしかった。勘弁してほしい。
「あんたがあの2人の、もっと言えばこの世界の邪魔にならない様にこの私が徹底的に監視するのよ。先に言うけど、あの2人に関わらなければそれで終わりっていうわけでもないの。少しでも私の意に沿わない行動をした瞬間、命はないものと思ってなさい」
「あー、これあれか。俺の青春どころか学校生活まで終わったパターンか」
「当然。というか元より貴方の自由なんて存在しないのよ。貴方はだまって私の言うことを聞くワンちゃんで居なさい」
「……もう、どうにでもしてくれ」
こうして、俺とイカれたキューピットの恋愛観察劇が幕を開ける。
ついでに包丁が突き刺さった床は綺麗に治っていた。チートすげぇ
「し、柴崎……これは、そのっ」
「あー、いや大丈夫だ藤宮。おれは何も知らないし何も見てない。だから俺の事は気にせず椎名の頭を撫で続けてやってくれ」
「へ、ぇ、あのっ、柴崎さんっ!?」
「いっくん、あーん!」
「あー、んっ」
「ほあぁぁつきちさ尊いいぃぃぃ……」
「お前まじで見境ないな……」
「はわわわわ天使様天使様天使様!」
「やべぇ朝比奈がぶっ壊れたっ!?」
「あ、周君も見てないで助けて下さいっ!」
「いや、助けろっていわれても……」
「驚いたな、藤宮や椎名さんだけじゃなく柴崎や朝比奈さんにまで出会うなんて」
「おれは門脇が1人でゲーセンにいる事の方が驚きだ。あと邪推すんなよ。少なくとも俺とこいつの関係はそんな甘い物じゃないからな」
「そう、主人と下ぼ……友人です」
「あれ、俺もしかして変な薮つついた?」
「光輝はその……朝比奈の事、どう思ってるんだ?」
「じゃあ逆に聞くけど、周は椎名の事をどう思ってるんだよ。ほら言い出しっぺなんだから答えてみろ。あ、濁すなよ」
「ぐっ……卑怯だろそれ」
「最近は、今の俺とお前の関係もそう悪いもんじゃないと思ってるんだけどな?」
「……バカじゃないの。あんたの事これだけ縛りつけてる女に何言ってんのよ」
「……なによ、似合わないって文句つけにきたの?」
「いや別に?よく似合ってるぞ。いいじゃん可愛くて」
「っ……あんたほんっとにムカつく!」
「こころ」
「見るなッ……見ないで。こんな私の事、見ないでよ……ッ」
このふざけた関係は、やがて大きなうねりとなる事を、まだ俺は知らない。っていうかわかるわけねぇじゃんそんなもん。
誰でもいいから続き書いて。
各オリキャラの容姿はみんなの想像に任せる。