「キリエ~吸血聖女~」二次創作読み物   作:桁石スミオ

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我は欣びて、十字架を負わん【第参章/浅草開戦編】ー5

★ (午前三時)凌雲閣・八階

 

 凌雲閣は、窓寄りに昇降兼用の階段が設置されている。

 そこの七階から上へと昇っていく、キリエとサンタミカエラ。

 八階フロアに、到着。

 中央に六本の柱で囲われた区域、扉と壁で覆われている。

 それ以外は、パーテーションパネルが方々に置かれ、絵画や写真が展示してある。

 ベンチも所々に据えてあり、休憩所でもある様相。

 この時間、館内の照明は消灯されているが、窓の外からの差し込む燭光が強く、視界は明瞭。

 凌雲閣高所のアーク灯に近付いている為か、このフロアはかなり明るい。

 七階から下の層よりもここは、場内の様子がすぐに理解出来る。

 

サンタミカエラ「ここはさっきまでと違うな。下までは、店ばっかだけど、流石にこんな時間にやっちゃいなかったな」

キリエ「(周りを見渡し)そうね。ここは八階・・・まだ、上があるのね」

サンタミカエラ「(キリエを見詰め)へばったか?」

キリエ「(サンタミカエラを見詰め返し)まさか。むしろこれからだもの」

 

 ふっ、と不敵に口角を上げるキリエ。

 にっ、と勇ましく笑むサンタミカエラ。

 同時に踵を返し、斜めに並行して設置してある上層階への階段へと向かおうとする。

 直後。

 ゴオウン!と、重低音。

 思わず立ち止まる、ふたり。

 音の発生した地点に、身体を正対させる。

 場所は、フロア中央の、柱と壁で隔離された領域の中。

 続いて。

 ギ・・・ギ・・・ギギ・・・ギギギギギ・・・と、何かが軋む音。

 更に並列して、ゴウン、ゴウン、ゴウン・・・と等間隔で、重々しい響きが聞こえてくる。

 

キリエ「(訝しげに)何?」

サンタミカエラ「(眉を顰め)オレっちも知らねェ・・・」

 

 混じって、ギュイイイイイィィィィィ・・・と、機械音が轟く。

 3種類の音が重なり、増幅し、けたたましい音響。

 不快ではないが、現在の静まった館内には耳障りほど。

 

サンタミカエラ「(気付いたように)モーターの機動音だ・・・何か動いてやがる・・・」

 

 ふたりが固唾を飲み、注視する中。

 中央区画の片側、扉の窓ガラスを通して、下から競り上がってくる物が見える。

 壁に囲まれた領域の半分の幅に、箱型の物体が姿を現わす。

 そして、この階に到達し、ゴウン!・・・と停止。

 扉中央に縦に透けたガラスの向こう、箱型の内部に、人の形が確認出来る。

 数拍の、後。

 ガッ・・・と、スライド扉が内部から開けられる。

 中には、三畳ほどの広さの鉄製の箱があり、両脇に腰掛け、奥に姿見が備わる。

 フロアと段差のないことを確認してから、中の人物が出てくる。

 黒留袖の、芸岐の女性。

 キリエとサンタミカエラ、息を飲む。

 突然登場した女性と、その佇まいに、少なからぬ驚嘆を覚え。

 しなを作っている訳ではないが、上品で、悠然たる仕草。

 女性は数歩進み、後方の箱型の機器を振り返る。

 キリエとサンタミカエラから、約3メートルほどの位置。

 

芸岐の女性「(平然とした口調)ふむ・・・今日は止まらずに動いたようだ。改装されてからは初めて乗った。折角作ったエレベートルも、すぐに故障するようでは改装の意味がないからな。宝の持ち腐れという訳だ」

 

 ふたりが、別の驚きを覚える。

 外見からは想像出来ない、低音を包括した男性の声質。

 

サンタミカエラ「(独白のように)何だ? 男みてェな声してんな」

キリエ「(声を落として)・・・どなた?」

 

 すいっ、と視線を戻し、キリエに顔を向ける女性。

 二拍、間を置き。

 ゆっくりと口端を上げ、少し目を細める。

 

芸岐の女性「(やや高揚した調子で)思ったより早く逢えた。黒い服に、赫い眼・・・間違いない」

キリエ「(驚いて)私を知ってるの?」

芸岐の女性「(すっ、と右手を上げて、キリエを指差し)陽を浴びても滅びぬ鬼。私の支配下にないが、お前も鬼なのだろう?」

 

 キリエとサンタミカエラ、同時に息を思い切り吸い、停止。

 両目を丸く見開き、驚愕。

 

キリエ「(搾り出すように)どうしてそれを!? 貴方、誰!?」

 

 途端。

 キリエに向けられらた芸岐の女性の右腕が、変形。

 ズォン!と、一瞬で管状に伸び、突撃槍と同形状となり、先端が尖る。

 ボウン!と空間を打ち壊し、キリエの胸部目掛けて。

 振り被らず、予備動作もなしで、瞬く間に。

 直後。

 ザジャッ!と、蒼白い光が炸裂して弾け、バギイッ!と何かが殴打される音。

 キリエの眼前に、右拳をアッパーカットで振り抜いたサンタミカエラの姿。

 その拳の延長線上に吹き飛ばされていく、女性の変形した右腕

 ピク、と女性の眦が、動く。

 抉るような鋭利な目線で、彼女を睨み付けるサンタミカエラ。

 女性の腕は、シュルルッ、と引き戻され、再び人型の形状へと戻っていく。

 

芸岐の女性「何のつもりだ?」

サンタミカエラ「(怒気を含んで)それはこっちの台詞だ。何しやがんだ、てめェ」

芸岐の女性「お前に用はない。邪魔をするな」

 

 キリエ、目の前の展開に、思考が追い付いていない模様。

 

キリエ「(愕然と)今・・・手が変化した・・・何?」

サンタミカエラ「少なくとも人じゃなさそうだな。鬼の仲間か? (大声)何モンだ! 名乗りやがれ!」

芸岐の女性「(ふん、と嘲笑し)仲間? 増やしたくもない同類と一緒にされては困るな。不愉快だ」

キリエ「(反芻するように)増やしたくない?・・・増やす?・・・」

 

 僅かの、後。

 はっ!と顔を上げ、両眼を正円に刮目させるキリエ。

 自分の中の情報が、結び付いたと思しき。

 

キリエ「(息を大きく吸いながら)貴方! 鬼舞辻無惨ね!」

サンタミカエラ「(驚愕しつつ、キリエを見て)マジかよっ!」

キリエ「(サンタミカエラを見て)煉獄さんから聞いた! 鬼を増やせるのは、無惨だけだって!」

サンタミカエラ「オレっちも聞いたけどよ! (改めて女性を見て)こいつがあの! 無惨なのかよ!」

 

 芸岐の女性が、冷酷そうな視線をふたりに向けて来る。

 すいっ、と左手を差し上げ、床と水平の位置で、キリエを人差し指で真っ直ぐ指す。

 

無惨「だったらどうするのだ? 抗うか? 私に挑むか? 時間の無駄でしかないぞ」

 

 無惨に、妖艶で、且つ残酷な微笑が宿る。

 

無惨「(深く響く声)お前は、私が喰らう」

 

 ズウ―――ン・・・と、急速に空気が沈降し、重圧で凹む。

 無惨を中心に、このフロア全域が一気に温度を下げていく。

 温度差で生じる靄が、雲海のように床一面に湧き出てくる。

 それまで人の雰囲気だった者が、明らかな異質の者へと姿を変える如く。

 そこに立っているのは、すべてを飲み尽くすような魔窟そのものの存在。

 鬼舞辻無惨が、降臨。

 キリエとサンタミカエラ、半身になり腰を落とし、正中線を隠して構える。

 ふたりの体表面に、つう、と冷汗が伝っていく。

 

 

 

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