「キリエ~吸血聖女~」二次創作読み物   作:桁石スミオ

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 杉村麦太先生「キリエ~吸血聖女~」と、吾峠呼世晴先生「鬼滅の刃」のクロスオーバー書き物の『前編』として執筆。作品世界は「キリエ~吸血聖女~」、そこに「鬼滅の刃」から煉獄杏寿郎が来訪者として登場する物語。2023年5月脱稿。
 タイトルは、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ作曲、教会カンタータBWV001「輝く暁の明星の、いと美わしきかな Wie schön leuchtet der Morgenstern」より。
 登場人物:「キリエ~吸血聖女~」より、キリエとラーラマリア。「鬼滅の刃」より、煉獄杏寿郎。他モブキャラ数名。
 注:小説ではなく、台本風読み物です。残酷なシーンあり。

同一内容を、下記サイトにも掲載しております。
 pixiv: https://www.pixiv.net/novel/member.php?id=323663


【挿絵表示】



輝く暁の明星の、いと美わしきかな【前編】ー1

「キリエ~吸血聖女~」×「鬼滅の刃」クロスオーバー脚本風読み物

【 輝く暁の明星の、いと美わしきかな(前編) 】

Wie schön leuchtet der Morgenstern

 

 

★ 1872年・アメリカ合衆国・ネバダ州・バトルマウンテン南西

 

 夕刻。太陽が西の山脈に隠れ、たなびく雲を朱に染めている。

 段々と薄暮が帳を下ろし始めている。

 剥き出しの岩山を遠くに見る、開けた赤土の大地。

 轍が多数刻まれた街道が、霞んでいる彼方から伸びている。

 その上空を、異形の生物が飛行中。3体。

 身体は人間の大人ほど、肌は灰褐色、背中に大きな蝙蝠のような羽根。

 大きな角のような突起が頭に2本、裂けたような口から覗く並んだ無数の牙。

 両手足には鋭い爪、長く伸びた尻尾も槍先のような先端。

 魔物を模った石像『ガーゴイル』によく似た風体。

 まるで街道に沿うように、高さ10ヤードほどを、滑空と羽ばたきを繰り返して飛ぶ。

 その後方、20ヤードほど離れた位置に、街道を追随して疾走する3頭の馬。

 土埃を後方に靡かせ、異形の生物との距離を詰めようと、加速を続けている。

 1頭の馬上には、キリエ。

 その馬に綱で繋がっている、荷を背負っている別の1頭。

 更に別の1頭には、ラーラマリア。

 3頭が、荒い息を上げながら、異形の生物の後方を疾駆。

 キリエは、左手で手綱を持ち、右手に銃を握っている。

 ラーラマリアは、右手で手綱を持ち、左手に銃を握っている。

 馬上で平衡を保ちつつ、飛行異形の姿を睨む。

 ラーラマリア、スチャッ、と銃を上げて構える。

 馬の走りで照準がぶれる。

 すぅ、と短く息を吸い、止めるラーラマリア。

 引鉄が引かれ、ヴォズッ!と音を残し、銃弾が宙を裂く。

 一直線に、異形の1体に向かう弾。

 次の瞬間、慌てる様子もなく、スウッ、と身体を空中で流す生物。

 その後の空間を、銃弾が虚しく通過して、やがて見えなくなる。

 こちらに目配せもせず、相手にしない様子で飛行を続ける異形たち。

 ラーラマリア、厳しい表情で左腕を下ろす。

 

ラーラマリア「(チッ、と舌打ちして)やっぱ走りながらじゃ当たらないか!」

キリエ「もう少し近付かないと・・・」

 

 バシ、と手綱を馬の背に当て、加速を促すふたり。

 3頭が、更に速度を増していく。土埃が一際多く舞い上がる。

 徐々に縮まる、3体の飛行異形との空間距離。

 キリエ、銃を構えようと右手を動かす。

 途端。

 進行中の街道上、ずっと先に、白い幌で覆われた荷車の姿。

 それが、馬の並足程度の速度で、ゆっくりと前方に移動している。

 

キリエ「(はっ、として)幌馬車!?」

ラーラマリア「マズいな、襲われちまう・・・急げっ!」

 

 同時に、パシィ!と手綱で馬の背を叩くふたり。

 走駆する3頭の馬、蹄で、ズン!と地を踏み、最後の追い込みとばかりに速度を上げる。

 異形の飛行体の視界が、先を行く幌馬車を捉える。

 馬車に近寄ろうと高度を下げ始める、その内の1体。

 クイ、と後方の状況を見ようと、振り向く。

 その濁った眼に、馬上で銃をしっかりと構えるラーラマリアの姿が映る。

 思った以上に高度が下がっており、空間距離5ヤードほど。

 瞬時に顔が歪む、1体の飛行異形。

 ドゴッ!と火を噴く、ラーラマリアの銃。

 銀色の銃弾が瞬きの内に、点と点を繋ぐ。

 悲鳴を上げる間もなく、ボズッ!と砕ける飛行体の頭。

 銃撃の勢いのままに、身体ごと錐揉みしながら吹き飛んでいき、やがて離れた地面に墜落する異形。

 

ラーラマリア「(ニッ、と笑み)よし1体!」

 

 残る2体、異変に気が付き、チラ、と後ろを見る。

 キリエとラーラマリアが自分たちに銃口を向けているのを、確認。

 再び前方を向き、羽根を大きく羽ばたかせ、グワッ、と急上昇する。

 30ヤードくらいの高度まで昇り、一旦宙で留まる。

 内1体、突然急降下。

 一気に幌馬車の前方に回り込む。

 馬車は1頭立て、テンガロンハットを被った、中年と思しき小太りの男性が操っている。

 後方での銃声に気付いていたのか、不安気に周囲を見回している。

 そして、急に姿を晒した、蝙蝠の羽根を持つ異形生物を目にする。

 一瞬で恐怖に引き攣る、中年男性の顔。

 

中年男性「(悲鳴)うわああ! 何だコイツ!」

 

 すかさず、異形の腕が空を裂く。

 間一髪、それを避ける男性。しかし、走行中の馬車の荷台から落下する。

 ドスン、と強かに身体を打つ音。街道上に転がる身体。

 幌馬車を引いていた馬が、ヒヒヒィィン!と怯えて嘶く。

 そして恐怖の余り、急加速してその場を離れていこうとする。

 男性を襲った異形が幌馬車を避け、地面に伏している彼に急接近する。

 ラーラマリア、キリエに目線を送る。

 

ラーラマリア「アタシは幌馬車を止める! あんたはあのおっさんを頼む!」

 

 キリエ、素早く頷く。

 再度手綱で馬の背を叩く、ふたり。

 グン、と凄まじい加速をする3頭の馬。

 一息で、中年男性が襲撃されている地点まで達する。

 疾駆する馬上で、右手の銃をホルスターに仕舞い、代わりに仕込み傘を手にするキリエ。

 そして軽やかな動作で、馬の背に両足を乗せて踏ん張り、蹴る。

 馬の加速の勢いそのままに、瞬時に宙を跳ぶ。

 キリエ、ブーツの爪先に仕込んでいる刃物を、ジャッ!と吐出させる。

 まるで空中で舞い踊るように、キリエの右脚が綺麗な円を描く。

 それは、今まさに中年男性の背に鉤爪を振り下ろそうとした、異形の頸に突き刺さる。

 ギイイヤァ!と、この世のものとは思えない絶叫。

 キリエの蹴りの勢いのまま、1体が頸元から体液を噴出させて真横に吹き飛ぶ。

 トッ、と着地し、仕込み傘を両手で構え、銃口を異形に向けるキリエ。

 ラーラマリア、視線を前方に固定して、逃げ出す幌馬車を追走する。

 何度目かの手綱打ちで、ラーラマリアの馬は限界近い速度を出し始める。

 ぐん、と幌馬車との距離が一気に詰まり、更に追い越そうとしている。

 

ラーラマリア「よし! もうちょい!」

 

 遂に、幌馬車の馬の真横に並走。

 すかさず左手を伸ばし、逃げる馬の手綱を掴み、ぐい、と引く。

 ヒヒン!と、短く嘶き、その馬が少しの間で落ち着きを取り戻す。

 ゆっくりと速度を下げていき、やがて並足、そして完全に進行を停止する幌馬車。

 一方。

 街道上に伏していた中年男性が、ググググ・・・と、上半身を起こしていく。

 ハッ、と気付いて、自分に背を向ける黒髪の少女の後ろ姿を凝視する。

 羽根の生えた異形と自分との間に、庇うように立ち塞がっている少女。

 キリエは中年男性のすぐ傍らに立ち、キリエと異形1体の距離、約3ヤード。

 キリエに頸を刺された異形は、ギイイイ・・・と奇妙な呻きを上げながら、こちらを睨む。

 頸元から大量の体液を流しながら、尚も生存し、両手を振り翳す。

 そして、バッ、と羽根を広げて、一旦後方に大きく跳ねる。

 

キリエ「(重めの声で)しぶといわね。まだ飛ぶつもり?」

 

 距離を取ろうと、羽根を、バサッ、と羽ばたかせて身体を浮かせる飛行体。

 10ヤードほどの空間距離になった後、ギシャァ!と口を開いて牙を剥き出す。

 僅かの後、キリエが仕込み傘の引鉄に掛けた指に力を入れる。

 ヴォムッ!と、銃弾が射出。

 異形の頭部目掛けて撃たれたそれを、異形が素早く躱す。

 弾丸が、避けた空域を貫いて後方へ消える。

 間髪入れず、身体を浮遊させて一気にキリエに襲い掛かる飛行異形。

 まったく動じることなく落ち着いたキリエ。

 足下の中年男性が、両腕で頭を覆って慌ててうずくまる。

 直後。

 キリエ、仕込み傘を素早く動かす。

 キシン! ガギャッ!と、異形の両腕の爪を左右に弾き飛ばす。

 まるで鮮やかで華麗な剣技の如く。

 両腕を大きく広げたまま、驚きで固まる飛行異形。その距離、1ヤード。

 刹那。

 凄まじい速度で、キリエが仕込み傘の石突を真っ直ぐに突き出す。

 突撃槍(ランス)と見紛う勢いで、グボッ!と異形の腔内に減り込む先端。

 キリエの右手が、軽やかな動作を見せる。

 傘が、ボンッ!と開く。

 同時に、石突の銃口が、ドゴボッ!と火を噴く。

 悲鳴すら上げられず、1対の異形の頭部が粉砕され、体液の飛沫が傘と後方の地面を濡らす。

 宙に浮いた状態の身体も、銃撃の勢いで吹き飛び、すぐ後に地に転がって、静かになる。

 キリエ、傘を閉じつつ、バサバサ、と動かして、異形の体液を落とす。

 その音で、我に返ったように、中年男性が恐る恐る顔を上げる。

 敵を仕留め終え、悠然と傘を閉じて手元に構え直すキリエの姿。

 茫然と、彼女の背中を見詰める中年男性。

 突然。

 

ラーラマリア「(大声)キリエッ! 上だ!」

 

 離れた位置から聞こえる、ラーラマリアの声。

 はっ!と、視線を真上に向けるキリエ。

 自分の垂直延伸上、ぶれない軌道で真っ逆様に突っ込んで来る、残る1体の異形。

 右腕を大きく後方に振り被り、牙を剥き出した殺意満々の表情。

 気付くのが遅れ、次の動作までやや時間を要したキリエ。

 あっという間に、異形と自分の空間距離は縮まる。

 その間、2ヤード弱。

 キリエが仕込み傘の銃口で、その頭部を狙おうとした矢先。

 街道から離れた右方の空間に、ボウッ・・・と朱色の炎が湧く。

 途端。

 右側から左側へ一直線に、飛行異形の頸を目掛けて白銀色の光が走る。

 同時に、その光は炎を纏って、キリエの眼前の空間を瞬きの間に通過。

 シュイン・・・と残響を放ち、宙が割ける。

 後を追うように、紅の炎が帯状となって、目の前を舞いながら飛翔していく。

 

キリエ《・・・炎?・・・》

 

 キリエ、思わず両の瞳を大きく開く。

 奔った光と炎が通過した、刹那の後。

 ズルゥ・・・と異形の頭部が、ずれ始める。

 それが切断されたのだと、キリエが気付いた時には、既に飛行体の頭と身体は分離し、吹っ飛んでいく。

 ドサ、ドサ、と連続して地面に転がる異形の頭部と躯体。

 次の瞬間、ボウウッ!と頸の切断面から発火。

 見る見る異形の骸を燃やし、炭化させていく。

 そして、チリチリチリ・・・と燻りながら、遺骸の体組織が崩落し始める。

 

キリエ《首が、砂みたいに崩れていく・・・身体も・・・》

 

 唖然とした表情で、それを凝視するキリエ。

 誰かの気配。

 キリエ、はっ!として、左側方、約10ヤードの位置に顔を向ける。

 若い男性が、こちらに身体を正対させ立っている。

 山吹色の、炎が逆巻いたような髪型。一部、赫色。梟のように大きく開かれた菱形の両眼。

 黒い詰襟の軍服と思しき着衣に、白地に赫の縁取りで炎を模したような羽織。

 腰から下は黒い袴、足元は炎の文様が入った脚絆、そして草履。

 右手に、片刃の剣を抜き身で下げている。刃の色は、鮮やかな赫。それの鞘らしき物を腰に差している。

 その男性が、真剣な顔でこちらを、じっ、と見詰めている。

 瞬きひとつせず、身動ぎもせず。

 キリエ、気圧されたように、半歩右足を退く。

 暫く、そのまま。

 突然。

 口角を緩やかに上げる男性剣士。

 

男性剣士「(よく通る張りのある声で)君から『鬼』の気配がする!」

キリエ「(少し驚いた後、怪訝そうに)・・・『オニ』?」

男性剣士「『鬼』だが、身を挺して人を護った! 竈門妹と同じだ!」

 

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