「キリエ~吸血聖女~」二次創作読み物   作:桁石スミオ

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輝く暁の明星の、いと美わしきかな【前編】ー2

 少しの、間。

 更に、間。

 発言の意味が解らず、眉を顰めるキリエ。

 

キリエ「(胡散臭そうに)・・・ごめんなさい。誰のこと?」

 

 その台詞の、すぐ後。

 対峙しているふたりの近くに、騎乗したラーラマリアが戻ってくる。

 男性剣士が下げてる剣を確認した途端、目を見開いてかなり驚いた顔になる。

 即、下馬してキリエの傍らに歩み寄っていくラーラマリア。

 正面の男性剣士は、悠然とした雰囲気で、こちらのふたりを見ている。

 

ラーラマリア「(少し興奮した口調)その剣! 『カタナ』か?」

男性剣士「如何にも! これは俺の日輪刀だ!」

ラーラマリア「もしかして・・・『サムライ』か!? 最近本営から、今“イワクラ使節団”って連中がジャパンって国から来てる、っつー連絡が前にあって・・・あんた、その一行のひとりかい!?」

男性剣士「使節団ではない! それに俺は侍ではない! 鬼殺隊だ!」

ラーラマリア「そっかい。詳しくはアタシも知らないケド、そういう武器を持って闘うのは、ジャパンのサムライだって聞いたことがあるんでね・・・(朽ちた異形の遺骸を見て)それにしてもコイツらを一撃で斬って仕留めるとは、あんた、相当腕が立つねぇ」

男性剣士「鬼殺隊の炎柱であるからには最低限の責務だ! 空を飛ぶ『鬼』とは初めて闘った!」

ラーラマリア「この、蝙蝠みたいな羽根が生えたヤツか? 防疫修道会の連中は『ムルシェラゴ』って呼んでたっけ。(キリエに目を遣り)あんたもソリアで闘ったんだよな?」

キリエ「(目線を返し)そうよ」

男性剣士「『むるせらご』という名か! ここも『鬼』の脅威に晒されているのだな!」

ラーラマリア「(にひっ、と笑って)いちいち声がでかいケド、気持ちいい喋りだね!」

キリエ「(ややうんざりしたように)もうちょっと音量落としてくれないと、ウザい・・・」

 

 視線を宙で繋いだまま、向かい合う3人。

 

男性剣士「名乗るのが遅れた! 俺の名は煉獄杏寿郎! 鬼殺隊、炎柱だ!」

ラーラマリア「アタシはラーラマリア=クリストフォロス。アメリカ合衆国陸軍第一葬兵連隊、葬兵少佐さ。(キリエに顔を向け、右手親指で指し)こっちはキリエ、アタシの相棒。一緒に旅をしている」

 

 こくん、と小さく首を上下に振るキリエ。

 ただ、微かな警戒を瞳に宿したまま。

 対して杏寿郎、口角を上げたままで、大きな動作で頷く。

 それから、右手に下げた日輪刀を、カシュン、と鞘に収める。

 更に腕組みをして、両足を肩幅に広げてしっかりと立つ。

 

杏寿郎「ところで尋ねたい! ここは日本ではなく、米国なのか?」

ラーラマリア「米国? あ、そっか。あちらじゃそう呼ばれてんだっけ・・・ここはアメリカ合衆国ネバダ州ってトコさ。ええと、レンゴ・・・ちょっともっかい名乗ってくれるかい?」

杏寿郎「煉獄杏寿郎! 煉獄、で構わない! サンタマリア女史!」

ラーラマリア「(苦笑い)ラーラマリア、だよ、煉獄さん・・・あんたはジャパンから来た、のは間違いないか?」

杏寿郎「米国での日本の呼び名だな! (頷き)うむ! そうだ!」

ラーラマリア「使節団の一行じゃないって言ってたケド・・・個人でこの国まで来たのかい?」

杏寿郎「個人だが! 実はどうやって来たのか判らんのだ!」

キリエ「(訝し気に)・・・どういうこと?」

杏寿郎「俺は上弦の参、猗窩座との闘いで死んだ! だが気が付いた時! 赤茶けた岩山に囲まれた大地にいた! それから一昼夜経って、今ここにいるという訳だ!」

 

 キリエとラーラマリアの表情が、凍て付いたように固まる。

 さも当然のような顔の杏寿郎を、見開いた両眼で見詰めている。

 沈黙。

 沈黙。

 更に、間をおいて。

 

キリエ「(眉を顰め)何・・・それ・・・」

ラーラマリア「(眉を顰め)死んだ? 嘘だろ? だってアタシたちは生きてるし死んだことはない!」

杏寿郎「俺が死んだのは事実! 鳩尾に奴の右腕が貫通し、出血も止められなかった! 竈門少年たちに後事を託し、亡くなった母上にも逢った!」

 

 理解力を超越した話が、杏寿郎から連続して語られる。

 最早、何と応対して良いか完全に見失う、キリエとラーラマリア。

 再度の、沈黙。

 間。

 尚も、間。

 漸く。

 ラーラマリア、ふーっ、と長い溜め息をつく。

 

ラーラマリア「(眉間に皺を寄せ)やばいね・・・久々に頭が混乱してきたよ」

キリエ「おかしな話だけど・・・(横目でラーラマリアを見て)嘘はついてないと思う」

 

 キリエの落ち着いた表情。冷静さを既に取り戻している模様。

 視線を合わせたラーラマリア、自分の裡にも沈着さが回帰してくるのを感じる。

 そして、正面の杏寿郎を再度見る。

 杏寿郎、変わらず悠然とした佇まい。

 その、直後。

 幌馬車に乗っていた中年男性が、歩み寄って来る。

 キリエとラーラマリア、杏寿郎の立ち位置と三角形を成す地点で停まる。

 中年男性、安心した顔で3人を見回す。

 

中年男性「話の最中悪いけど・・・さっきは本当に救かった。礼を言わせてもらう」

ラーラマリア「(安堵した笑みで)怪我は大丈夫かい?」

中年男性「(首を上下に振って)お陰さんで・・・馬車から落っこちた時に打ったけど、大したことはない。(キリエに目を向け)黒髪のお嬢さんが、身体張ってあの化け物から護ってくれたからな」

キリエ「(ぷい、と顔を背け)別に・・・大層なことやってない」

杏寿郎「いや! キリエ少女の身を挺した行動! 傘を用いて鬼を仕留めた技! 実に見事だった!」

キリエ「(杏寿郎を見て)わざわざ少女って付けないで。キリエ、でいいわ」

 

 頬を微かに薄く染めるキリエ。

 中年男性、左手の人差し指で、前方に見える山脈を示す。

 

中年男性「自分はこの先のバトルマウンテン鉱山の街で、サルーンを経営してる者だ。仕入れから戻る途中で、あの化け物に襲われたところを、貴方らに救けてもらった、って訳なんだ・・・(3人を見渡し)お礼と言っちゃ何だが、せめて夕餉くらいは食ってってくれないかね?」

杏寿郎「それはかえって申し訳ない! 当然の責務を果たしたまでだからな!」

中年男性「いやいや、このまま帰してしまってはこっちが申し訳ない。(再度3人を見渡し)救けてもらった礼をさせてくれ。(頭を下げ)この通り!」

 

 90度の角度まで、深々と頭部を下ろし、懇願した表情の中年男性。

 ふっ、と口元を緩めて、目を細めるラーラマリア。

 

ラーラマリア「そこまで言われちゃあ、お邪魔するのもアリかもな」

キリエ「(ラーラマリアを見て)でも・・・」

ラーラマリア「(キリエに目線を送り返し)“そん時”は、アタシたちで何とかしよう」

キリエ「(渋々という感じで)・・・解ったわ」

 

 中年男性、バッ、と顔を上げ、晴れ晴れとした顔になる。

 良い機会を得たとばかりに、嬉しそうな笑みを浮かべる。

 

中年男性「(杏寿郎に目を遣り)ジャパンからのおサムライさんも、是非来て頂きたい」

ラーラマリア「(頷いて)そうだね、煉獄さんも来な。いろいろと聞きたいこともあるし」

杏寿郎「(即答)判った! そこまでの誘いを無下に出来ん! お相伴に与ろう! アヴェマリア女史!」

 

 一瞬、ラーラマリアの微笑みが引き攣る。

 それから見る見る呆れたような表情へと転化し、杏寿郎に据えた目線を放る。

 

ラーラマリア「(ジト目で)・・・覚えづらい名前だって解ってっけどさぁ・・・」

 

 はあ、と息を継いでから、キリエを促して自分たちの馬の近くへと移動する。

 歩きながら、暫く杏寿郎の姿を、じっ、と見詰めているキリエ。

 杏寿郎は中年男性と共に、先で待機している幌馬車の方向に歩いている。

 

キリエ《変わった人・・・だけど、悪い感じはしない・・・》

 

 そして、キリエとラーラマリア、再度馬上の人となる。

 ふたりが、パシ、と手綱を打つ。

 宵の口の薄暗さが増している街道を、並足で前進し始める3頭の馬。

 

 

 

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