「キリエ~吸血聖女~」二次創作読み物   作:桁石スミオ

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輝く暁の明星の、いと美わしきかな【中編】ー5

 ドガの両足の裏から、ズモッ!と車輪が吐出。

 ほぼ同時に、肩に載せてある推進装置のアフターバーナーが、ボボボッ!と火を噴く。

 地面を、ギャギャギャ!と抉り、ドガが急発進。

 杏寿郎、ドガを睨み付ける。

 全身の闘気を更に滾らせ、身体を低く構える。

 

杏寿郎「(重厚な声で)炎の呼吸、参の型・・・」

ドガ「バカめ! 返り討ちだ!」

 

 両腕を伸ばし、手甲で固めた両掌を合わせ、槍のように尖らせるドガ。

 馬車の残骸を吹き飛ばして、一気に襲い掛かる。

 ダン!と地面を蹴って、前方に大きく跳び上がる杏寿郎。

 

杏寿郎「(突き抜ける声で)気炎万象!」

 

 赫刀が、唸る。

 ボオオオオンッ!!!と爆裂音と大量の炎を放ち、大上段からドガ目掛けて弧を描く。

 高温の刃が、ドガの兜と両腕を巻き込んで、垂直に振り下ろされる。

 ドガ、猛進の勢いのまま、ドゴボンッ! メギッ!と地面に叩き付けられる。

 肩口の推進装置が、ボフン、と停止する。

 

ドガ「(顔を歪めて)ぶぎょう!」

 

 ズン!と着地した杏寿郎。

 続け様に、ゴオッ!と彼の炎刀が、左真横からドガを急襲。

 慌てて身体を起こしながら、ガギイッ!と左籠手で防ぐドガ。

 甲冑と刀の擦れる金属音が、ギギギギギ・・・と鳴り響く。

 睨み合う双方。

 方やシャガール、フン、と苛立たし気に鼻息をつく。

 

シャガール「(不快気にドガを睨み)愚かにも挑発に乗せられおって・・・」

 

 途端。

 キュルキュルキュルッ!と、軽快な音で闇を裂く、銀色の刃物とワイヤー。

 その対角線、真後ろから、ヴォゾーンッ!と轟く銃鳴。

 シャガールの後頭部に、キリエの撃った浄銀弾が命中。

 ラーラマリアの右腕、義手の手首が外れた内側から射出された小型鎌が、シャガールに到達。

 ドゴボッ!と大きく凹む、シャガールの後ろ頭。

 ザシュウッ!と、真横から水平に切断される、シャガールの頸。

 いつの間にか、キリエとラーラマリアが、左右に展開して攻撃。

 ギュイッン!と、ワイヤーで銀の刃を引き戻しつつ、鋭利な目線を放るラーラマリア。

 仕込み傘を構えた状態で、呼吸を鎮めるキリエ。

 だが、シャガールは倒れず。頭部も落下しない。

 後ろ頭より硝煙を立てながら、ニヤ、と歪に嗤う。

 ラーラマリアが斬った頸の内側と、キリエに撃たれた後頭部に、触手が被さって伸びる。

 ウジュルウジュルウジュル・・・と不気味極まりない、蠢く音。

 その、直後。

 ドッバァァン!と、シャガールの背中の服が、破裂する。

 突如、その中から顔を出す、4本のドリル。

 三段関節で構築された、異様に長い4本の鋼の腕の先端に備わっている。

 更に、それに赤黒い触手が、蛇のように絡み付く。

 ドリルが、一気にキリエに向かって襲撃する。

 即座に、キリエが後方に跳躍。

 だが鋼腕は、グイン、と想定以上に延伸する。

 高速で回転している尖った先端が、左腕と右脚に到達。

 ゾシュウッ! ブジュンッ!と、キリエの肌が裂け、鮮血が迸る。

 顔を顰め、地面に転がるキリエ。

 広場の一部に、彼女の生き血が撒き散らされる。

 シャガールの金属腕、速い動きで空を抉り、キリエに再度襲い掛かろうと伸びる。

 

ラーラマリア「(息を飲み)キリエっ!」

 

 左腕を上げ、提げていた銃をシャガールに向けるラーラマリア。

 引鉄が引かれ、ヴォゾッ!という音を立て、銃身が跳ねる。

 顔をこちらに向けているシャガールの、眉間の中心を、ゴボン!と抉る浄銀弾。

 頭が後方に、グイン、と大きく傾き、停止するシャガール。

 背中の4本の鋼腕も、ピタ、と動きが停まる。

 しかし切断された筈の頸は、既に再生が終わっており、頭部が落ちることはない。

 シャガール、ゆっくりと顔を元に戻し、ラーラマリアを白濁した眼球で見る。

 眉間に深く穿たれた穴からは、体液すら流れていない。

 ニンマァ・・・とVの字に、シャガールの口の両端が上がる。

 その銃創も、ジュルゥ・・・と湧いた触手で塞がれる。

 反対側に倒れたキリエが、いない。

 はっ、とラーラマリアが、傍らに立っている彼女に気付く。

 一瞬で、こちらに回り込んで移動した模様。

 キリエ、シャガールに傘の銃口を向けて、ふーっ・・・と長い息を継ぐ。

 ドリルで受けた傷は、既に瘡蓋になって固まっている。

 ほっ、と安堵で微かに笑むラーラマリア。

 

ラーラマリア「傷はどうだい?」

キリエ「(不敵に口角を上げ)平気よ、夜だもの。援護助かったわ」

ラーラマリア「どういたしまして。お安い御用さ」

 

 シャガールの被弾した箇所から、ポロ・・・と弾丸が落下する。

 肉が既に盛り上がって、体内から押し出した様子。

 

シャガール「(厭らしい口調)こおらこおら、不意打ちとは失礼ではないか?」

ラーラマリア「失礼とか、どの口が抜かすんだよ・・・(チッ、と舌打ち)頸を斬ったんだが、やっぱ普通の鎌ではすぐに再生するか・・・浄銀弾も効かないのは解ってんだけどな」

キリエ「でも、まったく同じ状態には再生しない。傷口に、ただ肉を被せただけみたい」

ラーラマリア「決定的じゃないが、無駄でもない、って訳か・・・」

 

 ふたりの銃口が、月光に輝く。

 ラーラマリアは右手義手のワイヤー鎌を、いつでも射出出来る構え。

 シャガールの鋼の腕が、蟹のように左右に広がり、尖端を彼女たちに向ける。

 片や。

 杏寿郎が、何度も日輪刀でドガに斬り付ける。

 全身甲冑に刃が当たり、ガギィ! ガギャン!と、凄まじい金属音を響かせる。

 ドガは、顔と身体の前面を、下腕部を盾のように翳して防御。

 

ドガ「(圧されて、焦りつつ)ブぬぅぅ・・・いつまで剣技を出すつもりだ、こいつ!」

 

 直接の受傷はないが、ドガの鎧の中に熱気が溜まり始める。

 それは、杏寿郎の剣技の炎がもたらしている物。

 ドガ、余りの猛攻を受け切るだけで、攻撃を出すことが出来ない。

 ブフゥ・・・と熱さに耐え兼ねて、ドガが息を漏らした、瞬間。

 日輪刀が、閃く。

 ガードを固めていたドガの両腕の隙間に滑り込み、ガギガキッ!と左右に振られる。

 

ドガ「(驚愕)ブフォッ!」

 

 バアッ!と、両手を思い切り広げた姿勢になってしまう、ドガ。

 呆気に取られた彼の眼前、杏寿郎の身体が、すっ、と沈む。

 

杏寿郎「炎の呼吸、弐の型・・・(破裂するような声で)昇り炎天!」

 

 後方に引いた日輪刀が、劈く。

 ゴオオオッ!と紅の炎が、縦の円の軌道で真下から急襲する。

 宙に描かれる、鮮やかな炎の真円。

 それはドガの下腹部目掛けて激突し、ゴドオォォォンン!!!と炸裂。

 足下の車輪が真上に思い切り跳ね上がり、両脚から、グリン!と空に浮くドガ。

 振り抜いた炎刀の爆炎を纏って、『くの字』になりながら回転して吹っ飛ぶ。

 

ドガ「(顔を歪めながら)ブホォォォォッ!」

 

 その様はまるで、地獄の火車の如き。

 ゴン!と地面に激突した後、ゴロゴロゴロゴロ・・・と距離を開いていくドガ。

 全身炎塗れで、転がる。

 10ヤード以上跳ばされ、地に伏すかと思われた、刹那。

 ドガ、予想以上に素早く体勢を立て直し、ズガッ、と踵を鳴らして立ち上がる。

 しかし、その直後。

 背中を向け、ボボボッ!と推進装置に点火するドガ。

 ギャギャギャッ!と轟音を立てて、一目散に広場を疾走し始める。

 そして鉱山地区への坂道の方向に、一気に離れていく。

 僅かの間で、小さくなるドガの姿。

 杏寿郎、日輪刀を後方下段に構え、両足を、ぐっ、と踏み締める。

 途端。

 ドンッ!と爆裂音がして、土煙が上がり、杏寿郎が消える。

 シャガール、濁った両眼でそれを確認し、忌々し気な表情。

 

シャガール「あちらの剣士が厄介と見た。斃すのが先だな」

 

 身体をキリエとラーラマリアに向けたまま、4本の鋼腕を地面に突き刺す。

 いきなり、グイーン・・・と宙に引き上がる、シャガールの身体。

 ドリル先端を地に刺して、金属の腕を伸ばした反動で、大きく跳ねる。

 5ヤードを越える高さで、クル、と鉱山方向に身を翻らせる。

 そして身を浮かせたまま、4本の鋼の腕を蜘蛛の脚のように使い、急に走り始める。

 ギュインガン! ギュインガン!と、けたたましい金属音で、相当な速度で。

 驚くキリエとラーラマリア。

 すぐに、銃の照準を合わせる。

 だが既に、シャガールとの距離はかなり離れている。

 姿が、あっと言う間に、坂道の方に小さくなっていく。

 ラーラマリア、キリエに視線を繫げながら、右義手の手首を、カチン、と嵌め直す。

 

ラーラマリア「キリエ、悪いが先にシャガールを追ってくれ。アタシは別の武器を取ってくる。煉獄さんがやられるとは思えないが、なるべく急いで合流する」

キリエ「(頷いて)判ったわ」

 

 爪先をサルーンの方に向け、タッ、と広場を走り出すラーラマリア。

 対して、シャガールの移動した方向に、駆け出そうとするキリエ。

 ふと、眼の端に映る、地面の一部の異様な光景。

 思わず身体を返し、その場所を凝視する。

 2ヤードほどの直径範囲で、点々と、何かが地上で燃えている。

 赫紫色の炎。

 杏寿郎が放った技の炎は、紅と朱色。

 

キリエ《紫の炎?・・・彼の技から出た炎とは違う色・・・》

 

 小走りにその場に駆け寄るキリエ。

 そこは、先程シャガールに攻撃され、自分が流血した位置。

 片膝を着けて屈んで、じっ、と見詰めてみる。

 地面に染み込んだ鮮血から、立ち昇る紫色の炎。

 キリエ、思わず息を飲む。

 

キリエ《さっき落ちた私の血が・・・燃えている・・・彼の炎が移って、燃えた?》

 

 まるで燈油が燃えるように、キリエの血の跡から登り立つ炎。

 灯りよりも力強く、勢いのある赫紫色の炎。

 キリエの両の瞳が、何かに呼応するように赫く輝く。

 

 

 

【 To be continued...『輝く暁の明星の、いと美わしきかな(後編)』】

 

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