「キリエ~吸血聖女~」二次創作読み物   作:桁石スミオ

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輝く暁の明星の、いと美わしきかな【後編】ー2

 片や。

 鉱山方面から、ドガが回帰。

 推進装置の、ボボボボボボッ!という爆音と、ギャギャギャッ!という車輪の回転音。

 砲弾より速く、派手に土煙を立て、地に轍を刻み。

 こちらに背を向けている杏寿郎目掛けて、一気に距離を詰める。

 急に。

 杏寿郎とシャガールが対峙する側面、ビュウッ!と、一陣の風と影。

 街の方向から、教会真横、そして鉱山への坂道を猛烈な勢いで、奔る。

 あっという間に、ドガの走駆直線上に現れるキリエ。

 両手で仕込み傘を、ぎゅっ、としっかり構えている。

 ブフゥ、と勝ち誇った嗤いのドガ。

 

ドガ「バカめ! 自分から跳び込むか! このまま殺してやるゥ!」

 

 20ヤード、15ヤード、10ヤードと、瞬く間に接近する双方。

 キリエ、動じることなく冷静な表情。凄まじい脚速。

 ドガのアフターバーナーの噴出口から、燃料の爆炎が尾を引く。

 衝突する点まで、あと5ヤード。

 右腕を、ガバアッ、と大きく振り翳すドガ。

 

ドガ「(割れるような声)喰らええぃっ!!!」

 

 ドガ、右手甲を槍のように尖らせ、ボン!と前面に突き出す。

 瞬間。

 キリエが、地を蹴る。

 疾走の勢いを、綺麗に跳躍に組み込み、鮮やかに宙を舞う。

 スカッ・・・と空振りとなり、右腕を伸ばし切って、愕然となるドガ。

 ドガの頭上を掠めるほどのギリギリの高さを、キリエが身体を真横にして回転して通過する。

 くる、くる、と重力から開放されたように、一枚羽根のように軽やかに。

 そして、ドガの背後側を滑り落ちる軌道に入る。

 身体を回しながら、既にキリエは傘の引鉄に指を掛け、構えている。

 ドガの背中と、キリエの身体が、向き合った刹那。

 その距離、2ヤード弱。

 ヴォゾーンッ!と、傘の銃口から、浄銀弾が射出。

 瞬きの間に、ドガの右脚、膝の真裏に着弾。

 フルプレートアーマーで最も装甲の薄い、膝当ての真後ろ。

 ボゴォン!と、炸裂する膝関節。

 バランスを失い、右方向に、ガックン、と傾くドガ。

 重心が一気に右側に負荷を掛け、身体全体が吹っ飛び、地面に放り出される。

 肩の推進装置の燃焼の力のまま、ドザザザザザァァァ・・・と、遥かな距離を開いていく。

 キリエ、狙撃した後、道路を数回跳ねるように転がる。

 そして目線をドガに固定した状態で、スタッ、と地を蹴って身を起こす。

 推進が停止し、俯せに、大の字で横臥しているドガ。

 全身で滑走した轍を残し、朦々と土煙が漂う。

 既に、仕込み傘を構え終えているキリエ。

 石突の銃口が、月光に、ギラ・・・と鋭く光る。

 相対、約5ヤードの間隔。

 ガバ、と無理矢理に上半身を起立させ、ズリズリズリ、と地に座したまま回るドガ。

 撃たれた膝関節、回復の為の触手が、ジュルウジュル・・・と中で蠢く。

 キリエが、ドガの眉間に照準を合わせている。

 

ドガ「(歯軋りをして)キリエェ! よくも我の脚をォ!」

キリエ「動きは速いけど、単調。突進を避ければ隙も多いわね・・・(冷酷な目線を向け)ほら、脚もすぐ再生出来るんでしょ? 早くしないと次をブチ込むわ」

ドガ「(激怒)ブガアアアッ! 圧し殺してやるぅ!」

 

 何とか再生を終えた、ドガの右膝。

 ズダン!と両足で地面を踏み、再びアフターバーナーに点火。

 キリエ、たっ、と赤土を蹴って、後方に跳ねる。

 猛烈な殺意で襲い掛かるドガ。

 貫手を槍と等しい武器と化し、肩口からタックルするように突っ込んでくる。

 鮮やかで浮遊するようなステップで、攻撃を躱すキリエ。

 華麗な傘捌きで、ドガの顔面狙って銃撃を繰り返す。

 一方、杏寿郎とシャガールも、応酬の最中。

 ふたつの激闘が、少しの間膠着する。

 突如。

 

ラーラマリア「(大声で)キリエ! 煉獄さん!」

 

 教会前を通過し、坂道を駆け上がってくるラーラマリアの姿。

 両腕で円筒形の武器を抱えている。

 双方の相手との闘いと続けたまま、ちら、と彼女を視界に捉えるキリエと杏寿郎。

 そして、キリエは杏寿郎を、杏寿郎はキリエを瞬間見遣る。

 互いの状況を、即座に確認した模様。

 キリエとドガの位置、鉱山側の坂の上部。

 杏寿郎とシャガールの位置、それより下方、坂の中程の地点。

 空間距離、20ヤード以上。

 キリエ、少しずつ歩幅を変え、気付かれないように立ち位置を移動する。

 杏寿郎、猛烈な剣技を繰り出しながら、摺り足で方向を修正している。

 僅かの、後。

 坂の上から、ドガ、キリエ、シャガール、杏寿郎が一本の直線の延長上。

 杏寿郎が、一瞬刀を後方に引く。

 シャガール、4本の鋼腕を唸らせ、杏寿郎に襲い掛かる。

 キリエ、すっ、と身体を沈み込ませて、両足を強く踏み締める。

 ドガ、推進装置に点火して、一息でキリエに突進。

 かっ、と見開かれたキリエの両の瞳が、赫々と輝く。

 ドンッ!という炸裂音と共に、キリエの姿が消える。微かに舞う、土埃。

 目標を見失い、息を飲むドガ。

 だが、轟輪は急に止まれない。

 そのまま、シャガールの背中目掛けて突進。

 ズド―――ンッッ!と、激突。

 ドガから背中を強烈に押されて、弓形になり、よろめくシャガール。

 

ドガ「(頬を歪め)ブぎょぅ!」

シャガール「(口を全開にして)ゲはあっ!」

 

 瞬きの後、杏寿郎の後方に、ズザッ!と足を擦りながら、キリエが再出現。

 位置が変わり、鉱山側から、ドガとシャガール、杏寿郎、キリエ、そして走り寄るラーラマリア。

 2体の眼前の杏寿郎、ズン・・・と気迫を全周囲に放つ。

 

杏寿郎「炎の呼吸、伍の型・・・(突き抜ける声で)炎虎!」

 

 背中から一拍で、大上段から刃を叩き付ける杏寿郎。

 日輪刀が、爆ぜる。

 ドゴオオオオンンッッッ!!!と、身体の何十倍の大きさの炎が発生。

 紅の炎が、虎の姿となり出現。

 直後。

 振り下ろした刀の軌跡の延伸で、突撃していく炎の虎。

 ゴオオオオオオッッ!と、延焼音を咆哮として。

 さながら生きているかの如く。

 そのまま、シャガールとドガに齧り付くように牙を剥き、激突。

 2体の顔が、炎圧で歪む。

 ボゴォ――――ンンンッッ!!!と炎上して吹っ飛ぶ、シャガールとドガ。

 杏寿郎は、技を決めて身体を戻す。

 刹那の、後。

 見事に合致した呼吸で、バッ!と左右に飛び跳ね、展開するキリエと杏寿郎。

 その中央、待ってましたと言わんばかりに、ラーラマリアが飛び出してくる。

 持参した武器を、ジャギンッ!と両手でしっかりと構える。

 それは、月光に銀色に光り輝く、ガトリング砲。

 地面に燻った煙と火の粉を上げて転がる2体に、銃口が向けられる。

 

ラーラマリア「(腹の底からの発声で)浄銀弾の大盤振る舞いだ! 喰らいなあっ!!!」

 

 ラーラマリアの眼光が、ギラ、と煌く。

 彼女の右手が銃のクランクをしっかり握り、凄まじい速さで回し始める。

 ガガガガガガガガガガガガッッッ!!!と、耳を塞ぎたくなる轟音。

 銃口が猛烈な回転をし、無数の銃弾を射出。

 雨霰と周囲に降ってくる、空薬莢。

 膨大な数の浄銀弾が、すべてを打ち滅ぼす鉄槌となり、2体に浴びせ掛けられる。

 ドガブドドドガガガガブブブガガッッッ!!!と、数種の音が混濁して響く。

 シャガールとドガの肉が抉られ、顔が弾け、服が裂け、鎧に当たった弾が跳ねる。

 やがて。

 200発にもなろうという弾丸が、箱型弾倉から供給を終える。

 銃身からの熱が空気の揺らぎを作って、ラーラマリアの目の前に漂う。

 クランクの回転を止め、ふーっ、と長い、長い溜め息をつく彼女。

 射撃の標的付近は、朦々とした燻煙と土煙が充満している。

 暫しの、間。

 更に、間。

 驚嘆の余り目を丸くしたキリエが、ラーラマリアを見詰める。

 

キリエ「(唖然として)全部浄銀弾?・・・」

ラーラマリア「(ニッ、と口角を上げ)こんなこともあろうかと、ガトリング砲改造して、浄銀弾撃てるようにしたんだよ。予算もへったくれもない、後先考えない趣味の改造だったけど・・・さあて、効果はどうかね?」

 

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