「キリエ~吸血聖女~」二次創作読み物   作:桁石スミオ

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輝く暁の明星の、いと美わしきかな【後編】ー5

★ 鉱山地区・街中・中央通り・サルーン前

 

 山の高台付近に、突如現れた炎の竜巻。

 轟音が鉱山地区から街中に鳴り響き、空気が震動し続けている。

 竜巻はうねりながら、夜空を焦がして天高く昇っている。

 まるで、火山の噴火の如く。

 サルーン前の路上で、それを見上げているラーラマリア。

 傍らには、サルーン主人。周囲に住人の男性数名。

 いずれも銃を携えて、彼方の現象を驚嘆の目線で見続けている。

 

ラーラマリア「(茫然と眺め)あれが・・・煉獄さんの最大の技・・・凄いね・・・」

サルーン主人「(唖然として)炎の竜巻・・・初めて見ました・・・」

ラーラマリア「よーく目に焼き付けときな。そして語り継いでやるんだ。今晩の出来事も、な」

 

 その発言に、大きく首を上下に振るサルーン主人と住人たち。

 凄まじい物量の炎を見詰めながら、ぐっ、と奥歯を噛み締めるラーラマリア。

 

ラーラマリア「(心配気に)キリエ・・・戻って来いよ」

 

 

★ 鉱山地区・岩山の坑道入口付近

 

 炎の竜巻の、内部。

 猛烈な渦の対流の中は、台風の目のような空間になっている。

 内径は2~3ヤードだが、夥しい業火と熱気が隙間なく充満。

 竜巻の根元、炎に巻かれながら、シャガールとドガが、もがいて暴れている。

 激突の衝撃で、全身が歪な変形をきたし、動けない。

 4本の鋼腕は折れ、関節部が外れ、ドリルは沈黙。

 纏わり付く烈火が、体組織を焼き、炭化させていく。

 それでも何とか再生しようと、モゴ・・・と伸びようとしている触手。

 その端から、紅の炎が燃え移り、崩壊させていく。

 

ドガ[合体形態]「(悲鳴混じり)ぶガァァッ! 熱ィ! 身体が焼けるゥ!」

シャガール[合体形態]「(耐えながら)落ち着け! 再生は出来てる! 耐えろッ! 炎が消えれ・・・」

 

 突然。

 6ヤードほど上空の位置の炎の渦が、割れる。

 その高さの前方から、猛炎を押し退けて、何かが進入。

 シャガールとドガ、ハッ!と気付いて見上げる。

 黒い傘が開いたまま、ボウン!と劫火を掻き分けて、竜巻内に登場。

 直後。

 くりん、と傘が180度回転し、キリエが現れる。

 展開したそれを盾のように使い、炎の壁を通過した模様。

 両眼と口を全開にして、彼女を凝視する合体形態の2体。

 

シャガール[合体形態]「(愕然として)キリエェッ!」

 

 キリエ、柄を握った左腕を、一旦伸ばす。

 竜巻内の上昇気流に乗り、ブワアアッ!と更に高度を上げる。

 そして、高さが10ヤードを超えた付近で、ぱっ、と左手を離す。

 傘はそのまま気流に流され、炎の渦に巻き込まれながら、遥か上空へと消える。

 引力がキリエに作用し、落下を始める。

 同時に、腰のホルスターに収納してある『武器』を右手で引き抜く。

 それは。

 ラーラマリアの義手に装備してあった、小型鎌。

 普段はワイヤーで繋がっている、折り畳み式の刃の部分。

 刃渡りは、10インチほど。

 剥き出しの根元、柄に当たる箇所を右掌でしっかり持つキリエ。

 間髪を入れず、左掌で刃を包み込むように、ぎゅっ、と握る。

 ぶしゅうっ!と、グローブが裂け、鮮血が湧き出す。

 キリエ、痛みに顔を一瞬顰めるが、そのまま、ぐいっ、と左掌を刃に沿って滑らす。

 ぬるぅっ、と真っ赤に染まる刃物。

 何を始めたのか理解出来ず、白濁した眼球を見開くシャガールとドガ。

 

シャガール[合体形態]「(愕然と)手を斬った!? 何を考えてる!?」

 

 べっとりと自分の血が付着した『武器』を、今度は両手で握り直すキリエ。

 落下は続いており、キリエが次の行動を起こす。

 身体を丸め脚を纏め、両腕を伸ばし、ぐりん!と回転させる。

 両手を刃物ごと、炎の渦に突っ込ませる。

 途端。

 紫色の炎が、ボウウウウッ!と発生。

 刃を塗らしたキリエの血が、赫紫の劫火を噴き上げる。

 炎の竜巻を構成する物とは明らかに別の、異色さ。

 それは、紅の剛流以上の苛烈な勢いで、彼女の血を燃料に噴き上がる。

 だが、キリエの両手も炎に入れた瞬間に焼かれている。

 グローブが燃え、皮膚が捲れ、尚も延焼をしている両腕。

 声を上げたくなる痛みと熱さ。

 だが、キリエは奥歯を、ぎりっ、と噛み締める。

 

キリエ《熱い! でも! これで決めなきゃ!》

 

 そして、全身を独楽のように、ぐるうっ!と回転。

 刃物で、炎の竜巻の内壁を、ボボボボボボッ!と削るように抉る。

 真下への加速を伴い、ぐりん、ぐりん、と回転しながら。

 紫色の炎が、螺旋を描く。

 キリエ、『武器』を凝視する。

 刃が、赫紫色の烈火を纏い、赫く灼けている。

 

キリエ《私の血が、紫に燃えている・・・刃が、焼けて赫く・・・》

 

 杏寿郎の日輪刀のような、赫の刃。

 キリエが宙を踊る。

 紫炎を引き連れ、舞姫の如き美しい振りで。

 片や。

 シャガールとドガ、得体の知れない現象に、恐怖を覚える。

 そして触手を射出しようと、もがく。

 だがそれは、尚も身を焼く業火に阻まれている。

 対空攻撃が不可と認識した、その刹那の後。

 合体形態のすぐ斜め上に、キリエの身体。

 双方の空間距離、1ヤード強。

 キリエの刃が、螺旋軌道から水平軌道へと突入。

 ぶれずに、一直線に。

 紫の焔が、帯となって繋がる。

 遂に。

 赫紫色の炎ごと、赫刃が、空を劈く。

 ゾブシュウッ!と激しい音を立て、シャガールの頸に減り込む。

 一息で頸椎付近まで切断され、傾くシャガールの頭部。

 

シャガール[合体形態]「(悲鳴)げぼぅ!」

ドガ[合体形態]「(顔面蒼白で)頸が! シャガールの頸が!」

 

 キリエ、刃が立った瞬間、全体重を腕の振りに込める。

 身体を浮かせたまま、落下と加速の勢いを全部預ける。

 激しい炎を噴き出させたまま、ゴリッ!と肉と骨を抉っていく刃。

 だが、勢いが鈍る。

 その向こうにあるドガの頸にまでは、まだ距離がある。

 ギンッ!と両眼を見開くキリエ。

 瞳が、今までにないほど赫く、恒星の如き輝きを放つ。

 自分の裡の何かが、引火したように跳ね上がる感覚。

 ゾブウッ!と、更に深く斬り込みが入る、シャガールの頸。

 それを真横で見ているドガの顔が、歪む。

 切断の延長線上には、自分の兜と鎧の隙間がある。

 かつてない絶望が、迫撃。

 

ドガ[合体形態]「(絶叫)やめろおおおおッッッ!!!」

 

 キリエの全身に、力が漲る。

 人の心と、昏き血が、呼応して無限の気迫を生み出す。

 身体の深層部から、突き上げる衝動。

 

キリエ「(凄まじく響く声で)オオオオオオオオオオオっっっ!!!」

 

 血が、爆ぜる。

 更に猛烈な、すべてを焼き尽くす劫火を噴き上げ。

 直後。

 一閃。

 悪鬼を屠る刃の、渾身の斬撃。

 ザブシュウウウ―――ッッ!!!という、裂空音。

 赫紫色の炎が、空間を真横に薙ぎ払う。

 

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