★ 鉱山地区・街中・中央通り・サルーン前
山の高台付近に、突如現れた炎の竜巻。
轟音が鉱山地区から街中に鳴り響き、空気が震動し続けている。
竜巻はうねりながら、夜空を焦がして天高く昇っている。
まるで、火山の噴火の如く。
サルーン前の路上で、それを見上げているラーラマリア。
傍らには、サルーン主人。周囲に住人の男性数名。
いずれも銃を携えて、彼方の現象を驚嘆の目線で見続けている。
ラーラマリア「(茫然と眺め)あれが・・・煉獄さんの最大の技・・・凄いね・・・」
サルーン主人「(唖然として)炎の竜巻・・・初めて見ました・・・」
ラーラマリア「よーく目に焼き付けときな。そして語り継いでやるんだ。今晩の出来事も、な」
その発言に、大きく首を上下に振るサルーン主人と住人たち。
凄まじい物量の炎を見詰めながら、ぐっ、と奥歯を噛み締めるラーラマリア。
ラーラマリア「(心配気に)キリエ・・・戻って来いよ」
★ 鉱山地区・岩山の坑道入口付近
炎の竜巻の、内部。
猛烈な渦の対流の中は、台風の目のような空間になっている。
内径は2~3ヤードだが、夥しい業火と熱気が隙間なく充満。
竜巻の根元、炎に巻かれながら、シャガールとドガが、もがいて暴れている。
激突の衝撃で、全身が歪な変形をきたし、動けない。
4本の鋼腕は折れ、関節部が外れ、ドリルは沈黙。
纏わり付く烈火が、体組織を焼き、炭化させていく。
それでも何とか再生しようと、モゴ・・・と伸びようとしている触手。
その端から、紅の炎が燃え移り、崩壊させていく。
ドガ[合体形態]「(悲鳴混じり)ぶガァァッ! 熱ィ! 身体が焼けるゥ!」
シャガール[合体形態]「(耐えながら)落ち着け! 再生は出来てる! 耐えろッ! 炎が消えれ・・・」
突然。
6ヤードほど上空の位置の炎の渦が、割れる。
その高さの前方から、猛炎を押し退けて、何かが進入。
シャガールとドガ、ハッ!と気付いて見上げる。
黒い傘が開いたまま、ボウン!と劫火を掻き分けて、竜巻内に登場。
直後。
くりん、と傘が180度回転し、キリエが現れる。
展開したそれを盾のように使い、炎の壁を通過した模様。
両眼と口を全開にして、彼女を凝視する合体形態の2体。
シャガール[合体形態]「(愕然として)キリエェッ!」
キリエ、柄を握った左腕を、一旦伸ばす。
竜巻内の上昇気流に乗り、ブワアアッ!と更に高度を上げる。
そして、高さが10ヤードを超えた付近で、ぱっ、と左手を離す。
傘はそのまま気流に流され、炎の渦に巻き込まれながら、遥か上空へと消える。
引力がキリエに作用し、落下を始める。
同時に、腰のホルスターに収納してある『武器』を右手で引き抜く。
それは。
ラーラマリアの義手に装備してあった、小型鎌。
普段はワイヤーで繋がっている、折り畳み式の刃の部分。
刃渡りは、10インチほど。
剥き出しの根元、柄に当たる箇所を右掌でしっかり持つキリエ。
間髪を入れず、左掌で刃を包み込むように、ぎゅっ、と握る。
ぶしゅうっ!と、グローブが裂け、鮮血が湧き出す。
キリエ、痛みに顔を一瞬顰めるが、そのまま、ぐいっ、と左掌を刃に沿って滑らす。
ぬるぅっ、と真っ赤に染まる刃物。
何を始めたのか理解出来ず、白濁した眼球を見開くシャガールとドガ。
シャガール[合体形態]「(愕然と)手を斬った!? 何を考えてる!?」
べっとりと自分の血が付着した『武器』を、今度は両手で握り直すキリエ。
落下は続いており、キリエが次の行動を起こす。
身体を丸め脚を纏め、両腕を伸ばし、ぐりん!と回転させる。
両手を刃物ごと、炎の渦に突っ込ませる。
途端。
紫色の炎が、ボウウウウッ!と発生。
刃を塗らしたキリエの血が、赫紫の劫火を噴き上げる。
炎の竜巻を構成する物とは明らかに別の、異色さ。
それは、紅の剛流以上の苛烈な勢いで、彼女の血を燃料に噴き上がる。
だが、キリエの両手も炎に入れた瞬間に焼かれている。
グローブが燃え、皮膚が捲れ、尚も延焼をしている両腕。
声を上げたくなる痛みと熱さ。
だが、キリエは奥歯を、ぎりっ、と噛み締める。
キリエ《熱い! でも! これで決めなきゃ!》
そして、全身を独楽のように、ぐるうっ!と回転。
刃物で、炎の竜巻の内壁を、ボボボボボボッ!と削るように抉る。
真下への加速を伴い、ぐりん、ぐりん、と回転しながら。
紫色の炎が、螺旋を描く。
キリエ、『武器』を凝視する。
刃が、赫紫色の烈火を纏い、赫く灼けている。
キリエ《私の血が、紫に燃えている・・・刃が、焼けて赫く・・・》
杏寿郎の日輪刀のような、赫の刃。
キリエが宙を踊る。
紫炎を引き連れ、舞姫の如き美しい振りで。
片や。
シャガールとドガ、得体の知れない現象に、恐怖を覚える。
そして触手を射出しようと、もがく。
だがそれは、尚も身を焼く業火に阻まれている。
対空攻撃が不可と認識した、その刹那の後。
合体形態のすぐ斜め上に、キリエの身体。
双方の空間距離、1ヤード強。
キリエの刃が、螺旋軌道から水平軌道へと突入。
ぶれずに、一直線に。
紫の焔が、帯となって繋がる。
遂に。
赫紫色の炎ごと、赫刃が、空を劈く。
ゾブシュウッ!と激しい音を立て、シャガールの頸に減り込む。
一息で頸椎付近まで切断され、傾くシャガールの頭部。
シャガール[合体形態]「(悲鳴)げぼぅ!」
ドガ[合体形態]「(顔面蒼白で)頸が! シャガールの頸が!」
キリエ、刃が立った瞬間、全体重を腕の振りに込める。
身体を浮かせたまま、落下と加速の勢いを全部預ける。
激しい炎を噴き出させたまま、ゴリッ!と肉と骨を抉っていく刃。
だが、勢いが鈍る。
その向こうにあるドガの頸にまでは、まだ距離がある。
ギンッ!と両眼を見開くキリエ。
瞳が、今までにないほど赫く、恒星の如き輝きを放つ。
自分の裡の何かが、引火したように跳ね上がる感覚。
ゾブウッ!と、更に深く斬り込みが入る、シャガールの頸。
それを真横で見ているドガの顔が、歪む。
切断の延長線上には、自分の兜と鎧の隙間がある。
かつてない絶望が、迫撃。
ドガ[合体形態]「(絶叫)やめろおおおおッッッ!!!」
キリエの全身に、力が漲る。
人の心と、昏き血が、呼応して無限の気迫を生み出す。
身体の深層部から、突き上げる衝動。
キリエ「(凄まじく響く声で)オオオオオオオオオオオっっっ!!!」
血が、爆ぜる。
更に猛烈な、すべてを焼き尽くす劫火を噴き上げ。
直後。
一閃。
悪鬼を屠る刃の、渾身の斬撃。
ザブシュウウウ―――ッッ!!!という、裂空音。
赫紫色の炎が、空間を真横に薙ぎ払う。