「キリエ~吸血聖女~」二次創作読み物   作:桁石スミオ

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閃光少女【前編】ー4

★ カリフォルニアストリート・在サンフランシスコ日本国領事館・玄関ホール受付

 

 目抜き通りであるカリフォルニアストリートに面する、2階建ての木造のこじんまりとした建屋。

 入口と思しきの扉の左右に、日章旗と星条旗が掲揚されている、日本領事館。

 扉を入ってすぐに、小規模な玄関ホールがあり、受付のカウンターが鎮座している。

 ホールの中程に立ち、カウンターの机に向いて立つ3人。

 しん・・・とした沈黙だけが、部屋中に満ちる。

 それはその部屋だけではなく、建屋全体を支配している様相。

 アンナロッテ、懐中時計の蓋を、パカ、と開けて時間を確認する。

 

アンナロッテ[面の奥から]「(怪訝そうに)おかしいですね。まだ受付の終わる時間ではないのですが・・・」

サンタミカエラ「(大声で)おーい! 誰もいねェのか?」

 

 パチン、という、アンナロッテが時計の蓋を閉める音が響く。

 ややあって。

 ホールから右手奥に延びる廊下の奥から、パタパタパタ・・・と足音。

 中肉中背の、中年と思しき男性が、小走りにこちらに寄って来る。

 立派な揉み上げが耳の前面に伸び、髭は伸ばしていない。

 全体的に、威厳を帯びたような雰囲気の動作。

 ただ今は、何となく急いたような、慌てた空気を纏っている。

 

中年男性「・・・どちら様ですか?」

アンナロッテ[面の奥から]「防疫修道会のアンナロッテと申します。旅券を再発行して頂きたく伺ったのですが、今日の受付は終了してますか?」

中年男性「(思い出したように)あ、いえ、そろそろ時間が近いですが、まだ受付出来ます」

アンナロッテ[面の奥から]「ではお願いします。急で申し訳ありませんが、(杏寿郎を右手で示し)こちらの方がハポンに帰国する為の旅券を紛失してしまい、再発行を申請しに参りました」

杏寿郎「煉獄杏寿郎という! 日本国東京府荏原郡駒澤村在住! 二十歳!」

中年男性「(杏寿郎を見てから)これはこれは・・・我輩はここの領事を務めております、チャールズ=ブルックスと申します」

 

 ピク、とアンナロッテの被っているペストマスクの長鼻が、動く。

 そのまま、領事の姿に目線を向け、短い時間停止する。

 サンタミカエラと杏寿郎、真っ直ぐにブルックスを凝視している。

 

アンナロッテ[面の奥から]「・・・貴方がセニョールブルックスですか。お名前とお噂は耳にしております。大変な親ハポン家で、ハポンから渡航してきた船で亡くなった水夫を弔い、石碑まで建立したとか」

杏寿郎「(感心したように)何と! それはありがたいことだ! 水夫の御霊も浮かばれよう!」

ブルックス「(首を左右に振り)いえいえ、大したことでは・・・」

 

 謙遜した顔付きで、薄く笑うブルックス。

 彼の目線が、チラ、と後方に向けられ、すぐさま元に戻る。

 そして杏寿郎に視線を放り、愛想笑いのような固い表情となる。

 

ブルックス「旅券の再発行ですね? では、書類をお持ちいたしますので、ご記入頂けますか?」

杏寿郎「承知した! 世話を掛ける!」

 

 ブルックス、空かさず踵を返し、再び廊下を小走りに戻り出す。

 その後ろ姿が奥に消えるまで、ずっと目線を固定し続けるアンナロッテ。

 それに気付き、アンナロッテの横顔を見るサンタミカエラ。

 

サンタミカエラ「どうかしたんか?」

アンナロッテ[面の奥から]「(重めの声で)いえ・・・少し気になることが・・・」

 

 サンタミカエラ、アンナロッテと同じ方向に視界を移す。

 暫く、そのまま。

 アンナロッテ、ふう、と大きく息を継ぐ。

 

アンナロッテ[面の奥から]「今は、手続きが先です」

 

 

★ カリフォルニアストリート・在サンフランシスコ日本国領事館・玄関前路上

 

 領事館の扉から、3人が姿を現す。

 既に陽は相当傾き、林立する無数の建屋の影が、路上に長くなり始めている。

 ただ、日没までにはまだ時間があるようで、晴れた空が頭上に明るく拡がる。

 くりん、と軽やかな回転で、アンナロッテと杏寿郎を振り向くサンタミカエラ。

 

サンタミカエラ「少し早ェけど、飯、行かねェか?」

アンナロッテ[面の奥から]「(少し考えて)・・・そうですね。(杏寿郎に視線を向け)如何ですか? エンバシラ」

杏寿郎「俺は一向に構わん!」

サンタミカエラ「(笑顔で)うしっ! んじゃあ、行くか! 一度食ってみたかったモンがあるんだよ! (アンナロッテを見て)前から言ってたヤツ、店の心当たりねェか?」

アンナロッテ[面の奥から]「では、チャイナタウンに行きましょう。ちょうど私も別件で用事がありますので」

 

 今度は、アンナロッテが先導して通りを歩き始める。

 サンタミカエラと杏寿郎、肩を並べて彼女に追いていく。

 杏寿郎の横顔を、ちら、と見て、心底嬉しそうな笑顔を浮べるサンタミカエラ。

 

 

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