「キリエ~吸血聖女~」二次創作読み物   作:桁石スミオ

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閃光少女【前編】ー6

★ チャイナタウン・ドラゴンゲート付近

 

 既に陽が落ち、宵の口。

 薄暗い帳が空を覆い、巨大な街全体に影を落とし始める。

 街灯に灯が入り、煌々と光を放ち、デュポンストリートの路面を照らし出す。

 通りを南下した、チャイナタウンの南の端に、巨大な門がある。

 黒塗りの中華風建築の門。上部には、2頭の龍が向かい合っている像が乗る。

 『唐人街』サンフランシスコチャイナタウンの看板と言うべき、ドラゴンゲート。

 サンタミカエラと杏寿郎が街中から、肩を並べて歩いて来る。

 そして、門を数歩出た場所で、示し合わせたように立ち停まる。

 

サンタミカエラ「(腹部を撫でながら)はーっ、食った食った・・・ちっと食い過ぎたかなぁ」

杏寿郎「(満足そうに)大変美味だった! どの料理も素晴しかった! うまかった!」

 

 振り向いて、ドラゴンゲートを見上げる杏寿郎。

 

杏寿郎「実は日本の横浜新田という場所にも、南京街があるのだ! 俺が日本にいた時には一度も行ったことがなくてだな! 中国の料理は初めて食した!」

サンタミカエラ「(杏寿郎を見て)へえー、そうなんだ。ハポンにもチャイナタウンが、ねェ」

 

 ふと、視線を外すサンタミカエラ。

 何事か考えている雰囲気を、少しの時間醸し出す。

 頬が、綺麗な紅色に染まる。

 僅かに唇が動くが、言葉が出て来ない。

 杏寿郎、顔を戻してサンタミカエラに向き直る。

 数秒の、間。

 

サンタミカエラ「(言いづらそうに、照れ臭そうに)もしさ、オレっちがハポンに行く時があったらさ・・・一緒に行かねェか?」

杏寿郎「(頷き、通る声で)よかろう! また食べに行こう!」

 

 くるっ、と鮮やかな仕草で、身体を返して杏寿郎に向くサンタミカエラ。

 ぱあっ・・・と快晴の空のような、爽快な笑顔。

 

サンタミカエラ「(凄く嬉しそうに)おうっ!」

 

 その言葉を合図にしたかのように、再度、通りを歩き始めるふたり。

 モンゴメリー地区へ向かう道沿いに、街路灯が点々と燃え、導いているかのよう。

 

 

★ (同時刻)チャイナタウン・薬局

 

 一軒の、看板も出していない、極めて狭い薬局の引き戸が、ガラ、と開く。

 真っ直ぐに細長く、奥に延びる店内。

 両脇には細かく段が刻まれた棚が、天井まで備えられている。

 棚には、紙袋が無数に、極めて無造作に詰め込まれている状態。

 中には、薬包紙を折って袋状にした物が、管理すら怪しくそのまま放置。

 そこの入口に、アンナロッテが現れる。

 店舗の一番奥、書類や何かの紙束が堆く山積した机の、更に奥。

 でっぷりとした体格の男性が、丸い小さな眼鏡を擦り下げ、こちらを見る。

 黄色いシャツにサスペンダー、オールバックの髪には白いものが混じる。

 椅子に座ったまま身体を揺らし、厭らしい目付きでアンナロッテに顔を向ける。

 

店主「(ニイ、と笑い)誰かと思ったら・・・久し振りですなァ、薬読サン。いいブツあるよ?」

アンナロッテ[面の奥から]「(ふう、と溜め息をつき)私は阿片はやらないと、何度も言ってますよね?」

 

 カツ、カツ、とブーツの足音を高く、店内を一気に奥へと進むアンナロッテ。

 そして店主の机の前で、懐に右手を差し入れる。

 

アンナロッテ[面の奥から]「いつもの煙草を、いつものカートン分・・・それと・・・情報を頂きたい」

店主「(ねめつける目線で)人ですかィ? 物ですかィ?」

アンナロッテ[面の奥から]「ひとりの人物の、ここ1ヶ月ほどの動静と行動先を、出来るだけ詳細に」

 

 言葉が終わるのと同時に、アンナロッテの右手が動く。

 修道服の内側から表われたのは、掌大の小袋。

 それを、店主の眼前の卓上に、ジャラン!と据え置く。

 店主の両目が、丸く大きく開かれて固定される。

 それは、過去にアンナロッテから差し出された中でも、最大の大きさの袋。

 袋の口から、金貨の一部が見えている。恐らく、ダブルイーグル金貨。

 驚愕の表情のまま、口を半開きにして、アンナロッテを凝視する店主。

 

店主「(ゴクリ、と唾を飲み込み)こんなに・・・ってことは・・・ヤバ目の人ってことです?」

アンナロッテ[面の奥から]「(頷き)ええ、それなりに。期限は六日・・・いえ、五日で。成功報酬は別途払います」

 

 店主、信じ難い、と言いたげな顔。

 金貨の袋とアンナロッテのペストマスクを交互に、何度も見る。

 急に、真剣な表情に変わって、鋭利な目線を飛ばす店主。

 

店主「(重厚な声で)で・・・相手は?」

 

 

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