「キリエ~吸血聖女~」二次創作読み物   作:桁石スミオ

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閃光少女【後編】ー2

 サンタミカエラ、目線を登り坂の上部に向け、ダッ!と思い切り地面を蹴る。

 そして、大きな歩幅で、飛ぶような勢いで疾走し始める。

 アンナロッテ、彼女の姿が夜と同化するまで、視界を向けて見詰めている。

 面越しの表情は、窺い知れない。

 すっ、と正面に顔を向ける。両手は修道服の下、体側に下ろしたまま。

 眼前には、死兵の軍団。

 総勢30体ほど。

 相対距離、現在10ヤード程度。

 こちらを圧し潰すような団子状となり、塊となって群れ動く。

 アンナロッテ、極めて冷静な動作で、修道服の中から一丁の銃を取り出す。

 砲身が太い、全長20インチほどのガスグレネードランチャー。

 両手で持ち直し、スイッ、と70度くらいの仰角に構える。

 死兵たちが、ゴオオオオオオッ!と咆哮。

 それを合図に、弾かれたように一斉に、両腕を広げて襲い掛かって来る。

 途端。

 アンナロッテ、引鉄に掛けた指に力を入れる。

 ドッゴォォ―――ン!!!と、大音響を放ち、カートリッジが発射。

 硝煙を引き連れ、一度急上昇し、弓形の放物線を描いて、落下軌道に入る。

 死兵軍団の上空に到達。

 直後。

 ゴバン!と、カートリッジが炸裂。

 一瞬で10ヤード四方の空間に、小型ダイナマイトが撒き散らされる。

 しかもそれらは、爆竹のように10数本が連なった束。

 その束がいくつも空域を舞い、落ちていく。

 繋がった導火線には、既に点火されている。

 目も呉れずに襲撃する死兵の群れの頭上に、雨霰と降り注ぐ。

 刹那の、後。

 ババババババババババババババババババンンッ!!!と、耳が割れそうな音。

 爆竹型ダイナマイトが、連鎖して爆発。

 一本が弾ける毎に、死兵一体一体が砕ける。

 ある者は、頭部が炸裂。

 ある者は、腕が吹き飛ぶ。

 ある者は、胸が大きく抉られ、体液を四散させる。

 ある者は、足元で炸裂した爆破で両脚が歪に曲がる。

 時間差を持って、ダイナマイトが、バン! バン!と発破を続ける。

 暫く、続く。

 アンナロッテ、その様を、じっ、と凝視している。

 やがて。

 爆発を逃れた後方の数体を残し、死兵の大部分が地に伏す。

 7割ほどは浄滅した模様。

 ただ、爆破を受けて躯体を損壊させても、地面を蠢く者が多数。

 行動は不能となったが、オオオオオオ・・・と呻きながら、のたうち回っている。

 グレネードランチャーを、ポイ、と横に放り投げるアンナロッテ。

 

アンナロッテ[面の奥から]「チャイナタウンで買った爆竹を改造した物ですが、音が大きい割に破壊力は今ひとつですね。更なる改造の余地がありそうです」

 

 台詞を言い終える前に、ホルスターから銃を引き抜くアンナロッテ。

 ヴォゾーンッ!と、銃声。

 残兵の一体の頭部の眉間が正確に射抜かれ、真後ろに倒れていく。

 ヴォゾッ! ヴォゴッ!と連続した音と共に、リボルバーが回り、銃弾が空を裂く。

 アンナロッテの銃が、人ならざる者を次々と餌食にしていく。

 辛うじて起立していた最後の一体の頭部を、砕く。

 その躯体が、ドザッ・・・と、地に崩れ、そして動かなくなる。

 死兵の軍、行動不可。

 ふう、と息を吐いて、銃を持った右腕を体側に下ろすアンナロッテ。

 ゆっくりと、右側に身体を返す。

 遺体の山から離れた場所に、一体の影。

 既に絶命している筈の、基地司令官『大尉』が立っている。

 血塗れの身体、白濁した両眼を剥き、顎を落として牙を曝け出し。涎を垂らす。

 皮膚はまだ人の色をしているが、生体としての雰囲気ではない。

 正対した距離、6ヤードほど。

 双方動かず。

 そのまま、少しの時間。

 ズズッ・・・と足を引き摺り、死兵となった大尉が接近し始める。

 アンナロッテ、その様を見詰めている。

 

アンナロッテ[面の奥から]「(憐憫さを湛えた口調で)脅されていたのなら、ひと言相談して下さってもよろしかったのですよ。防疫修道会と陸軍が連携している今なら、救えたかも知れませんのに・・・」

 

 大尉は、何も答えない。

 両腕を上げ、アンナロッテに方向を定めて近付くのみ。

 相対、4ヤード。

 右手の銃をホルスターに仕舞い、別のホルスターから別の銃を抜くアンナロッテ。

 チャキッ、と銃身を真っ直ぐに、大尉の眉間に照準を合わせる。

 僅かの、後。

 

アンナロッテ[面の奥から]「(清廉な響きの声)お然らばです、大尉」

 

 ヴォゾーンッ!!!・・・と、長く尾を引く銃声。

 一発の銃弾が、大尉の眉間に刺さる。

 それは浄銀弾でも、通常の弾丸でもない。

 注射器の形状をした、特殊な弾。

 針の部分が根元まで抉り込み、即座に、チューッ・・・と何かを注入する。

 次の、瞬間。

 ドッバァァァン!!!と、大尉の頭が、風船みたいに破裂し、爆散。

 ゆら・・・と首から下の躯体が揺れ、緩やかに背後に倒れていく。

 その後、ドザッ・・・と仰向けに伏し、大尉は完全に沈黙する。

 アンナロッテ、銃口の硝煙に揺らめきを、暫く眺めている。

 長い、間。

 更に、間。

 漸く。

 銃を懐に仕舞い、徐にペストマスクを上げ、煙草を一本咥え、マッチで火を点ける彼女。

 すう・・・と一度吸い、唇の端から、ふう・・・と煙を吐く。

 目の前では、今も藻掻く死兵の呻きが、オオオオォォン・・・と湧いている。

 アンナロッテ、2本の発火筒を右手で取り出し、右手と左手で1本ずつ持ち直す。

 咥えている煙草で、導火線に点火。

 そして、ブン、ブン、と左右交互に腕を振り抜き、発火筒を放り投げる。

 それが放物線を描き、死兵の躯体の山に落下。

 直後。

 ボボボオオオオッ!!!と、紅蓮の猛火が噴出。

 落ちた周辺の死兵を黒炭化しながら、一瞬で死兵全体を飲み込む。

 断末魔の悲鳴が、方々から上がる。

 地獄の業火で焼かれる、亡者の如く。

 煙草を静かに燻らし、沈着で静かな目線を向けているアンナロッテ。

 暫く、そのまま。

 尚も、そのまま。

 やがて。

 誰の声もしなくなり、赤銅色の烈火が盛る音だけが、鳴っている。

 アンナロッテ、ふううう・・・と、溜め込んだ息をすべて吐き出す。

 瞳が、慈愛を湛える。

 それから両手を胸の前で合わせて組み、少し俯き、瞼を閉じる。

 

アンナロッテ「(深遠な響き)主よ、憐み給え・・・」

 

 天をも焦がす勢いで、紅蓮の焔が立つ。

 アンナロッテの祈りの、透明で澄んだ声が、慰めのように纏われている。

 

 

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