「キリエ~吸血聖女~」二次創作読み物   作:桁石スミオ

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閃光少女【後編】ー4

 突然。

 ドゴオオオオオオオオォォォンンン!!!!と、大爆発の音。

 ひとつ、サンタミカエラの位置から、直径3ヤードの雷が、天に駆け上がる。

 大自然の理とは逆の方向。

 地面から天の頂へ、月に届かんばかりの高さまで。

 無数のプラズマと放電を、四方八方に撒き散らし、垂直に。

 ふたつ、サンタミカエラと、杏寿郎の背後までの50ヤードが、光で直結。

 人間大の寸法の、蒼白色の光線の帯が、刃物のような形状で。

 それはまるで、急に地面から巨大な刀身が湧き出して横たわったかのよう。

 三つ、光の帯の端部、杏寿郎の背中の辺りから、黒い姿が弾き跳ばされる。

 人型の影が、全身を電光塗れにして、腹部から“くの字”になって吹っ飛ぶ。

 何と。

 この3種の現象は、まったく同時。

 時間差、寸分違わず。

 3つの現象の発する爆音が合体し、たったひとつの音となって丘陵部全体に轟く。

 音速を超越した“何か”が、アヴィスパを射る。

 

アヴィスパ「(苦悶)ゴボアッ!!!」

 

 アヴィスパ、口を全開に、吐瀉物を撒き散らし、宙を舞う。

 ダン! ダンッ!と、石切で水面を切るように跳ね、転がり、離れていく異形の身体。

 やがて。

 15ヤードほどの距離で、漸く停止する。

 その軌道上、赤土の煙が朦々と浮遊している。

 杏寿郎、正眼の構えで、茫然と凝視。

 アヴィスパの躯体が地面に横臥しているのを確認して、振り向く。

 サンタミカエラが、いる。

 杏寿郎を庇う立ち位置で、左脚を軸に、右脚で蹴りを放った姿勢の状態で。

 地面と水平に真正面に突き出し、ぴくりとも振れない、見事に安定したポーズ。

 彼女のブーツの金具と、それに仕込まれている滑車が、キリキリキリ・・・と回転して戻る。

 右足先から、パチッ・・・と、残留電気が放たれる。

 すいっ・・・と右脚を下ろし、両足を肩幅に広げ、体軸を立てるサンタミカエラ。

 杏寿郎、言葉もなく、ただ彼女の横顔と姿を両眼に焼き付けている。

 サンタミカエラ、杏寿郎を見ていない。

 ゴーグル越しに、アヴィスパに視線を固定している。

 表情は、極めて冷静なもの。

 ただひたすら幾度も繰り返される、深い呼吸音が続く。

 少しの、間。

 我に返ったように、ガバアッ!と素早く立ち上がるアヴィスパ。

 サンタミカエラの姿を目にして、見る見る憤怒の形相。

 

アヴィスパ「(怒声)きっ・・・貴様ァ!」

 

 口の端に付着した、血の塊が混じった吐瀉物を、喋りで撒き散らす異形体。

 まだ蹴りを受けた苦痛が消えないのか、酷く歪んだ顔。

 相対するサンタミカエラ、目線を外さず、正面を見たまま。

 

サンタミカエラ「(静かな口調)アニキは休んでてくれ。あとは、オレっちがやる」

 

 杏寿郎の表情が、僅かに緩む。

 弟子から発せられた、勇ましく頼もしい言葉。

 ふっ、と、それまで張り詰めていた両眼の緊張を、解く杏寿郎。

 対して。

 痛みが和らいできたのか、やや畏敬高に胸を反らし、鼻で嗤うアヴィスパ。

 

アヴィスパ「(嘲笑しつつ)たかだか一度蹴りを入れたくらいで図に乗るな! 我輩の速度に翻弄されて! 毒を喰らってその剣士と同じ目に遭うといい!」

サンタミカエラ「(口端を上げ、はん、と鼻息をつき)速度ぉ? あんなモンで威張るのか? 蝶々の方がよっぽど速ェぜ? 第一てめェ、速ェっつーよか、煙みてェになって逃げ回ってるだけじゃねェか?」

 

 一転。

 アヴィスパ、あっという間に怒りで顔を満たしていく。

 間を置かず。

 

アヴィスパ「(切れた様子で)誰が逃げ回ってるだとォォォォ!」

 

 瞬間湯沸かし器の如き、激昂。

 サンタミカエラ、あくまで冷徹さを保った雰囲気。

 煽りの言葉を口にした時も、感情を抑えながら。

 

サンタミカエラ「(冷静な声で)アニキ、毒はアンナロッテが解毒出来る。来るまでもうちょっと辛抱してくれ。それまでに、あの野郎を片付ける」

杏寿郎「(サンタミカエラを見詰め)判った。少しの間、任せる」

 

 そして、ゆっくりと左膝を地に着き、片膝立ちになる杏寿郎。

 その姿勢で日輪刀を両手で握り締めたまま、下段の構え。

 顔色が、悪い。

 それでも呼吸は深く、静かに、確実に繰り返されている。

 目線は落とすことなく、異形体に据えられたまま。

 サンタミカエラ、アヴィスパに目を向けた状態で、すっ、と右手を真正面、水平に挙げる。

 右掌を上に向け、人差し指と中指を、ちょいちょい、と内側に折る。

 同時に、見下すような視線で異形の吸血鬼を見る。

 余りにも明らかな、挑発。

 更に一層、顔全部を歪めて憤怒を表すアヴィスパ。

 

サンタミカエラ「どうした? 早く見せてくれよ? 蝶々より速いとこをよ!」

アヴィスパ「(激怒)舐めるなガキがァァァ!」

 

 ブウォン・・・と、アヴィスパが変化。

 漆黒の流動体になった後、完全に不可視となる。

 サンタミカエラ、一瞬身体を屈め、腰を落として据え、構えを取る。

 途端。

 ズッドオオオォォォンンン!!!と、空間を震撼させる爆音。

 ひとつ、彼女の位置に、光球が膨れ、弾ける。

 ふたつ、左45度前方に、一直線の白銀色の光が、奔る。

 長さ10ヤードほどの、刃のような形状の光線。

 三つ、その中程で、別の光の球が発生。電光を四散させる。

 内側で、黒い人影が顔から地面に叩き付けられ、バウンド。

 これらも、まったくの同時の出来事。

 爆裂音が鎮まるより早く、連動した事象が区切られる。

 

アヴィスパ「(顔を歪めて)ブゴォォッ!」

 

 アヴィスパが、頭を赤土に減り込ませ、反動で全身を側転させ、転がる。

 全身から、バヂバヂイッ・・・と、電光を撒き散らし。

 光線の伸びた先に、既にサンタミカエラがいる。

 腰を落とし、次の構えを構築し、しいぃぃぃ・・・と唇の両端から霧の如き呼吸。

 もう、身体をアヴィスパに正対させている。

 どう考えても、瞬間移動したとしか思えない、時間差。

 何が起こったのか、何がどうなっているのか。

 誰の目にも見えていない。

 アヴィスパ本人にも、杏寿郎にも。

 光が帯を成し、地上と宙を奔った事実しか、認識出来ていない。

 ふら・・・と平衡を崩しながらも、立ち上がるアヴィスパ。

 頬が大きく穿たれ、頭部全体がやや歪になっている。

 

アヴィスパ「(愕然と)な!・・・何だ貴様ァ!」

 

 相対、6ヤード。

 微かに、アヴィスパの輪郭が、ぼやける。

 即座。

 ガギャアアアアァァァァンンン!!!と、鋭利さを含んだ炸裂音。

 ひとつ、サンタミカエラ、光球で覆われる。

 ふたつ、アヴィスパの身体に光線が縦の帯状に伸び、120度の角度で反射する。

 異形体の全身が、蒼白色の稲光を纏う。

 三つ、反射した光線はそのまま元来た軌道を走駆し、別方向に120度で線を描く。

 異形の吸血鬼が、もう一度白銀色の光球と電光を被る。

 その内側、顔が大きく左に曲がり、腹部が逆に右側にへし折られるアヴィスパ。

 これらもまた、すべて同時。

 半拍の、後。

 爆音が鳴り終わる、前に。

 サンタミカエラ、光の筋の軌道が終わった先に、アヴィスパの背後に出現。

 戦闘の構えを取っており、しいぃぃぃ・・・という、深遠の如き呼吸が漏れる。

 彼女の両拳のナックルダスターが、バチイッ!と火花を放つ。

 アヴィスパの体躯が、S字のような形態で動きを停めている。

 今度も、バヂバヂバヂイッ・・・と、余韻の如きプラズマを全身に滞留させ。

 推測するに、拳の左右を喰らったと思しき。

 恐らく、二連撃。

 放電が鎮まった、後。

 よろ・・・と身体を返し、サンタミカエラに向き直るアヴィスパ。

 立ってはいるが、辛うじて、としか言えない様子。

 

アヴィスパ「(茫然と)は・・・速いなんてものではない! 残像も見えない! あり得ない!」

 

 ブウーン!と、力を振り絞るような動作で、変化する異形の吸血鬼。

 またもや、不可視の形態。

 直後。

 ドゴンンッッ!!!と、一度の重低音。

 ひとつ、サンタミカエラが真後ろに翻り、全身が光を纏い、消える。

 元の位置から、光線が5ヤードほど延伸。

 ふたつ、伸びた光の先に、人間大の光球が発現。稲光が天に向かって伸びる。

 三つ、そこから右60度方向に光の帯が折れ、5ヤード進み、そこで再び白光の柱が噴き上がる。

 四つ、更に反時計回りに90度、5ヤード延伸する光線。またもや光が炸裂。

 五つ、反射する如く、その地点から尚も右30度の角度を成し、蒼白の帯が疾走。

 並行して、ドガドゴドガドガゴンッッッ!!!と、連鎖して聞こえる打撃音。

 全部の光線の先で、真っ白な光が爆ぜ、漆黒のシルエットが捻じれ、踊る。

 サンタミカエラが、爆音が消えない内に、ダンッ!と再出現。

 彼女の移動の軌跡が、上空から見るとジグザグの光の形状で残留している。

 すべての事象を併せても、三拍にも満たない。

 見えていたのは光の線のみで、彼女の姿は捉えられない。

 まさに、神速。

 何度目かの、戦闘の構えを取り直しているサンタミカエラ。

 深い位置から届くような、しいぃぃぃ・・・という呼吸音が、彼女から発せられる。

 これだけの攻撃を繰り返しているのにも係わらず、息が乱れていない。

 

サンタミカエラ「(冷酷な声色で)遅ェよ、のろま」

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