「キリエ~吸血聖女~」二次創作読み物   作:桁石スミオ

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鳴り交わす絃の、相和せる競いよ【前編】-5

★ (数分後)孤児院(教会)・食堂

 

 廊下から食堂に入ってくるハイエロファント。

 続いて、デスとキリエが入室してくる。

 既に、夕餉を取っていた食堂の卓に向かい、ラーラマリアが椅子に腰掛けている。

 3名に気付いて、顔を向けて左手を軽く上げる。

 

キリエ「何かあったの?」

ラーラマリア「ああ。納戸物色してたら、見付けたのさ。キリエは見たことあるかも知れないけど、エロファントとデスは初めて見るんじゃないか?」

 

 彼女に近寄っていく、3人。

 そして、囲むような位置にそれぞれが立つ。

 ラーラマリアは足を組んで座っていて、膝の上にある物を載せて抱えている。

 瓢箪を縦に割ったような形状の木製の型から、幅2~3インチの細長く厚い板が延びる。

 全長は1ヤードほど、先端から瓢箪型の下方の端まで、4本の弦が張られている。

 弦はそれぞれ径が違う。太い物から細い物まで、4種。

 興味津々とした様子でそれを凝視している、デスとハイエロファント。

 キリエは、ラーラマリアとその瓢箪型を交互に見詰め、意外そうな顔付き。

 

デス「(少し考えて)・・・楽器のようだが?」

ラーラマリア「(ヒュウッ、と口笛を吹き)ご名答。よく判ったね? ゴードバンジョーっていう楽器だ」

ハイエロファント「マジカルランドにも弦楽器があるけど、この形ではないし・・・初めて見るよ」

キリエ「私も、初めて見る」

ラーラマリア「(笑顔で)そっか、みんな初見か。アタシはコイツをガキん時から知ってる。よく弾いてもらって、みんなで唄ってたっけなぁ・・・」

デス「どうやって演奏するんだ?」

ラーラマリア「(待ってたように、にひっ、と笑い)弾いてやろうか?」

キリエ「(小首を傾げ)弾けるの? ラーラマリアが?」

ラーラマリア「弾けなきゃ持ってこないさ。ま、いいから座ってなって」

 

 左掌を上にして、右側から左方向に回し、椅子を勧めるラーラマリア。

 銘々が、夕餉を摂っていた時と同じ椅子に座る。

 ラーラマリア、全員が着席するのを待ってから、脚を小さく組み直し、居住まいを正す。

 そして、左手をゴードバンジョーのネックの部分に当て、指を這わせる。

 弦の感触を確かめるように動かし、右手は、だらん、としたように軽く広げる。

 その右の五指を、瓢箪型の上下の間、窪んだ凹み辺りの弦に当て、掻き鳴らす。

 ポロォォン・・・と、何とも心地よい響きを奏でる、4種の弦。

 キリエの眼の色が、綺麗な赫い煌きを発する。

 デスとハイエロファント、瞼を瞬かせ、驚いた表情。

 ラーラマリア、コホン、と一度咳払いをして、自分の左手に目を遣る。

 それから、すう、と息を吸い込む。

 

【 以下、ラーラマリアの演奏と唄 】

(バンジョー奏法は、イントロと間奏はクロウハンマー、歌の部分はストラム)

 

De time is nebber dreary,If de darkey nebber groans;

De ladies nebber wearyWid de rattle ob de bones;

Den come again Susanna By de gaslight ob de moon;

We'll tum de old Piano When de banjo's out ob tune.

Ring, ring de Banjo! I like dat good old song,

Come again my true-lub,Oh! wha you been so long.

Ring, ring de Banjo! I like dat good old song,

Come again my true-lub,Oh! wha you been so long.

 

Oh! nebber count de bubbles While dere's water in de spring,

De darkey hab no troubles While he got dis song to sing.

De beauties ob creation Will nebber lose der charm

While I roam de old plantation Wid my true lub on my arm.

Ring, ring de Banjo! I like dat good old song,

Come again my true-lub,Oh! wha you been so long.

 

Once I was so lucky,My massa set me free,

I went to old Kentucky To see what I could see:

I could not go no farder,I turn to massa's door,

I lub him all the harder,I'll go away no more.

Ring, ring de Banjo! I like dat good old song,

Come again my true-lub,Oh! wha you been so long.

 

Early in de morning Ob a lubly summer day,

My massa send me warning He'd like to hear me play.

On de banjo tapping,I come wid dulcem strain;

Massa fall a napping He'll nebber wake again.

Ring, ring de Banjo! I like dat good old song,

Come again my true-lub,Oh! wha you been so long.

 

My lub, I'll hab to leabe you While de ribber's runnin' high;

But I nebber can deceibe you So don't you wipe your eye.

I's guine to make some money;But I'll come anodder day

I'll come again my honey,If I hab to work my way.

Ring, ring de Banjo! I like dat good old song,

Come again my true-lub,Oh! wha you been so long.

 

Ring, ring de Banjo! I like dat good old song,

Come again my true-lub,Oh! wha you been so long.

 

 

【 ラーラマリアの演奏と唄 終了 】

 

 (演奏中のシーン)

 両肘を卓上に乗せ、両掌を頬に当てて頬杖をつき、目を閉じているキリエ。

 静かで、穏やかで、心地よさそう。

 僅かながら、唇の端が上がっている模様。

 デス、ラーラマリアの演奏の手付きなどに目線を固定し、腕組みをして耳を傾けている。

 ハイエロファント、掻き鳴らされるバンジョーの弦に視線を結び、両手をテーブルの上で組んで、聴く。

 (演奏終了後)

 キリエ、ゆっくりと瞼を開ける。

 明確ではないが、感動を秘めた眼差し。

 彼女に一度目をやり、ふっ、と微笑むデス。

 にこ、と柔らかい笑みをラーラマリアに向けるハイエロファント。

 

ハイエロファント「(感心して)・・・いい曲だね。明るい調子だけど、郷愁に溢れている。君の演奏も、歌声も素晴しかったよ」

ラーラマリア「(照れて左頬を掻きながら)いやぁ、世話になった人が教えてくれた曲でね、アタシが気に入って何度も弾いてもらった曲なんだよ。スティーブン=フォスターって人が作った『バンジョーをかき鳴らせ』って歌でさ、フルコーラス覚えたのは、この歌が初めてかね」

デス「あたしの知ってる弦楽器は、弦の一本一本を別々に弾いて演奏する。一度に4本の弦を掻き鳴らす楽器とは、面白いな。(ハイエロファントと視線を合わせ)鍵盤を同時に弾く『和音』のような感じか?」

ハイエロファント「(デスと視線を合わせ、頷いて)そうだね。4種類の弦をいっぺんに鳴らすから、そんな風だよね」

 

 ふと、デスとハイエロファントがキリエを見る。

 何となく、夢見心地の雰囲気の彼女。

 ラーラマリアもそれに気付き、キリエに目線を繋げる。

 

ハイエロファント「どうしたの? キリエ」

キリエ「(深い声質で)・・・驚いた・・・ラーラマリアにこんな特技があったなんて・・・凄いじゃない」

ラーラマリア「(物凄く嬉しそうな顔で)おおっ、キリエに褒められるとはね! どーだ? 惚れ直したか?」

キリエ「(カアッ、と真っ赤になって)だっ! 誰が惚れ直したのよっ! ウザいっ!」

デス「惚れ直したかどうかはともかく、気持ち良さげに聴いていたのは間違いなさそうだな」

 

 ビクッ、と肩が跳ねるキリエ。

 それから、他の3名に次々に視線を放っては戻し、キョロ、キョロ、と慌ただしく顔を動かす。

 キリエ、カアアアッ・・・と、沸騰したように朱に染まる。

 この上なく恥ずかしそうな表情となり、俯く。

 直後。

 ガタン!と椅子を思い切り跳ね退け、席を立つキリエ。

 

キリエ「(赤くなったまま)もう寝るっ!」

 

 キリエ、3人に目もくれず、両肩をいからせて、ダン! ダン!と靴の踵を鳴らし、部屋を出て行く。

 離れていく足音を聞き、視線を重ね合うラーラマリア、デスとハイエロファント。

 ラーラマリアは、少し苦笑いを浮かべる。

 デスとハイエロファントは、静かに笑みを湛えている。

 

ラーラマリア「んじゃ、アタシらも寝とくとするか。明日はまず、駅舎に寄ってみる」

デス「話に出ていた『鉄道』と『汽車』があるところか?」

ラーラマリア「(頷き)そうさ。きっと驚くと思うぞ」

ハイエロファント「判ったよ、ラーラマリア。寝る前に素敵な演奏と唄を、ありがとう」

 

 ガタ、と同時に椅子から立ち上がるデスとハイエロファント。

 そして、ハイエロファントの先導で廊下へと歩を進めていくふたり。

 寝室の方向へと移動していく靴の音。

 ラーラマリア、ふう、と息を継いで、ゴードバンジョーのネックを左手で握ってから起立しようとする。

 途端。

 何かの気配。

 食堂の窓の外、ずっと向こうから、得体の知れない感覚。

 ぞわ・・・と背筋に戦慄が、一瞬だけ走る。

 バッ!と、素早く窓に走り寄るラーラマリア。

 流れるような動作で、窓枠の横、身体を隠すような場所に立つ。

 ゴードバンジョーのネックを右手に持ち替え、左手でホルスターの拳銃を素早く抜く。

 眼前に構える流れで、既に撃鉄も起こしている。

 そ・・・と窓から外の庭に、鋭利な目線を投げるラーラマリア。

 ガラス越しの闇には、ただ沈黙がある。

 先程感じた寒気のような感じは、既にない。

 ラーラマリア、そのまま待機する。

 暫くの、間。

 暫くの、間。

 やがて。

 ふううう、と長い溜め息を吐き、緊張を解く彼女。

 それでも尚、慎重な足取りで窓から離れ、食堂のランプの灯を、フッ、と吹き消す。

 注意深さを保った様子で、部屋から出るラーラマリア。

 室内に、静寂が戻る。

 夜の沈黙が、訪れる。

 

 

 

【 To be continued...『鳴り交わす絃の、相和せる競いよ(後編)』】

 

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