「キリエ~吸血聖女~」二次創作読み物   作:桁石スミオ

50 / 111
閃光少女【後編】ー5

 光球も稲光も打撃音も消滅した後、アヴィスパの躯体が可視化。

 今回も、バヂバヂッ・・・バヂバヂッ・・・と、異形の表皮に放電が残る。

 まるで、身体全体が帯電した如く。

 アヴィスパ、だら・・・と両腕を身体前面に垂らし、体軸が左右に、ふら、ふら、と揺れる。

 よく見ると、腕と脚があらぬ方向を向いて捻じれている。

 先程は恐らく、移動しての四連撃。

 漸く身体の向きを変え、サンタミカエラを視界に映すアヴィスパ。

 双方の距離、現在5ヤード。

 眼前の少女から、凄まじい気迫と重圧。

 アヴィスパ、急に小刻みに全身を震わし始める。

 

サンタミカエラ「煙になろうが何だろうが、もう逃げられねェし、逃がさねェ。見えるんだよ、てめェの動きなんざ」

アヴィスパ「(ブルッ、と大きく震え)う、嘘だ! 我輩の動きが見える筈など、な、ない!」

サンタミカエラ「(更に圧を込めた口調)オレっちの姿は見えてっか?」

 

 ぐうっ、と言葉を一瞬飲み込むアヴィスパ。

 僅かの、後。

 何とか言い返そうと、口を開く異形の吸血鬼。

 

アヴィスパ「(必死さを伴い)な、何故ぇ・・・何故そんなに速いぃ!? 光の筋しか見えないぃ!」

 

 アヴィスパ、言葉尻が覚束なくなっている。

 サンタミカエラは、それに返事をしない。

 代わりに、彼女の両拳のナックルダスターの電極が、バチイッ!と音で返信する。

 異形体の口端が、引き攣り出す。

 両手の爪先まで伝わった震えが、治まらない。

 目の前の少女に、ある感情を覚えてしまった模様。

 恐怖。

 それも、生命連鎖の上位から受ける理と、等しき。

 天敵を目の当たりにした、問答無用さ。

 何をどう足掻いても超えられないという、絶対。

 腰を落として、拳を体側に着けたサンタミカエラが、ゴーグルの奥から睨む。

 

サンタミカエラ「(重圧を含んだ声で)さぁて・・・こっから本気出すぜ・・・」

 

 ビクウッ!と、意図せず身体を跳ねさせるアヴィスパ。

 最早、感情は限界を突破寸前。

 サンタミカエラ、すううう・・・と肺いっぱいに空気を充満させる。

 全身を包むように、薄明るい白色光がオーラの形状で纏わり出す。

 一段身体を屈め、しいぃぃぃ・・・と深い呼吸を、食い縛った歯の間から吐く彼女。

 

サンタミカエラ「(覇気を込め)全集中・・・」

 

 アヴィスパ、口を全開にする。

 遂に。

 

アヴィスパ「(怯え)ヒイイイ――――ィッ!!!」

 

 異形の悲鳴。

 尊厳どころか、恥も外聞もかなぐり捨てた、心底の叫び。

 とうとう。

 アヴィスパ、下策を取る。

 あらぬ方向に曲がった自分の右足で、地面を思い切り掃き、横薙ぎに蹴り上げる。

 ズザアッ!と赤土が抉れ、土埃が湧き、砂粒と小石が空間を吹っ飛ぶ。

 それは、サンタミカエラの顔面に直接到達する。

 ゴーグルの防御で目には入らなかったが、細かな石と砂は、幾分彼女の歯と唇に当たる。

 反射的に、顔に被った砂を右手で拭い、歯に付着した分を唾と一緒に、吐き出す。

 

サンタミカエラ「(不快そうに)ぺっ!・・・んにゃろうっ!」

 

 ハッ!と、即座に気が付くサンタミカエラ。

 アヴィスパが、いない。

 一方。

 彼女から後方、約10ヤードに片膝立ちの状態を維持している、杏寿郎。

 ふううう・・・と、大きな呼吸音を放ち、息を長く伸ばす。

 日輪刀を、スッ、と身体の右の脇構え。

 着いた左膝を浮かし、ずいっ、と左足裏を地面に擦り付ける。

 

杏寿郎「(静かに、深く響く声で)炎の呼吸、弐の型・・・」

 

 前方のサンタミカエラ、ぐるん!と鮮やかに踵を返す。

 そして間髪を入れず、ダンッ!と地面を蹴る。

 

サンタミカエラ「(杏寿郎を凝視して)アニキぃっ!」

 

 途端。

 くわあっ!と、爛々とした眼光で見開かれる、杏寿郎の両目。

 彼の身体が瞬間だけ沈み、その反作用のように、全身を伸び上げ、一気に跳躍。

 

杏寿郎「(破裂するような発声)昇り炎天!」

 

 日輪刀が、唸る。

 ボオオオオッ!と猛烈な烈火を放ち、下から真上に、焔で半円の軌道を描く。

 その斬撃の、先の宙。

 突如、アヴィスパが出現。

 ブイン・・・と羽音が湧いた空間の点に、襲い掛かる紅蓮。

 まるで、実体化する空域を予知していたような、杏寿郎の剣技。

 眼前の炎を見て、息を飲んで、驚愕で固まる異形の顔。

 大きく跳んだアヴィスパの真下から、日輪刀が薙ぐ。

 直後。

 ザシュウウウッ!!!と、股下から胸元まで、情け容赦なく斬り上げられる異形の吸血鬼。

 

アヴィスパ「(絶叫)ギャアアッッッ!!!」

 

 炎は、速攻で異形を喰らう。

 全身を炎塗れで、空間を吹き飛ばされていくアヴィスパ。

 それは放物線を描き、背中側から地面に落下していく。

 着地した杏寿郎、途端に左膝から崩れ、がくり、と項垂れる。

 しかし、振り絞った気迫を放ち、顔を上げ、サンタミカエラを凝視する。 

 

杏寿郎「(突き抜けるような声で)行け! サンタミカエラ!」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。