「キリエ~吸血聖女~」二次創作読み物   作:桁石スミオ

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我は欣びて、十字架を負わん【第壱章/横濱編】ー7

 溌溂として、可愛らしい声。

 4人が一斉に、店員に注目する。

 

蜜璃「(明るく)くるりちゃん! お久し振りー!」

くるり「(顔を上げ、笑顔で)お帰りなさいませ、蜜璃お嬢様。お元気そうで何よりです」

 

 キリエ、戸惑った雰囲気で、隣のサンタミカエラに顔を寄せる。

 

キリエ「(声を落として)こういう挨拶のお店ってさっき聞いたけど・・・ちょっと慣れないわね」

サンタミカエラ「そっか? なかなか面白ェと思うぜ」

 

 ふと、キリエが何かに気が付く。

 くるりを、じっ、と凝視して、眉を寄せて更に見詰める。

 

キリエ「ごめんなさい、貴方・・・ひょっとして・・・男の子?」

くるり「(にこ、と笑って)ええ、ボクは男ですよ」 

サンタミカエラ「(ガタ!と椅子を鳴らし、再度立ち上がり)な! マジかよ!」

 

 唖然として、くるりに、じーっ、と視線を固定し始めるサンタミカエラ。

 目を細めて笑顔を見せるくるり。

 小芭内、腕組みを解き、左手人差し指でサンタミカエラ、その後にくるりを指差す。

 

小芭内「ふたりで並んで立ってみろ」

 

 サンタミカエラ、言われた通りに、くるりの隣に立つ。

 身長は、くるりがやや高い。

 片や、男子と見紛う姿と雰囲気のサンタミカエラ。

 片や、少年の様子を残しながらも、女子と見紛う姿と雰囲気のくるり。

 並んだふたりが、横目に視線を交差させている。

 少し恥ずかし気に眉を下げ、頬を染めているくるり。

 何と言っていいか判らない様相で、太い眉を顰めているサンタミカエラ。

 他の3人の視線が、比較するように起立するふたりを行き交う。

 間を置いて。

 キリエと蜜璃に視線を投げる小芭内。

 サンタミカエラに、手首を、鎌首をもたげるような様で、左手人差し指を向ける。

 

小芭内「俺が最初にこいつを男だと思った理由が解るか?」

 

 蜜璃は、思い当たらない様子で、きょとん、として小首を傾げる。

 キリエ、納得したように、深く頷く。

 

キリエ「・・・比較対象がいた、ってことね」

サンタミカエラ「(赤くなって、ダン、と右足を踏み出して)納得してんじゃねェっ!!!」

 

 身体を起こし、若干拗ねたような表情で、椅子に、ドカ!と荒っぽく腰を下ろすサンタミカエラ。

 口を尖らせているが、立腹している感じではない。

 くるり、困ったように眉を寄せるが、すぐに、明るくにこやかな笑顔。

 自分の背後の銀色のワゴンを、ガラ、と引き寄せ、4人を見渡す。

 

くるり「はい、ご注文のスペシャルパンケーキです!」

 

 そしてワゴンに乗った、大きな皿をふたつ、軽々と持って卓上に据える。

 蜜璃とサンタミカエラの眼前に、ゴト、と置かれる食器。

 ひとつの皿に、塔が建っている。

 直径25センチほど、厚さ5センチのパンケーキが、5段。

 頭頂から透明な光を放つ蜂蜜が、滝のように垂れ流されている。

 天辺の中央には、バターの塊が鎮座。既に粗方蕩け落ち、蜂蜜と共に流れ落ち続ける。

 蜂蜜の黄金色、バターの乳白色が、パンケーキの茶色と薄褐色の表面に帯となる、見事な色彩。

 サンタミカエラ、絶句して皿を凝視。

 蜜璃、待ってましたと言わんばかりに、瞳を輝かせている。

 くるり、配膳を進める。

 小芭内の前に、唐津焼の半筒茶碗。濃緑色の茶が収まっている。

 キリエの前に、白陶磁のマグ。湯気を立てる、牛乳が収まっている。

 我を取り戻したように、サンタミカエラが息を思い切り吸う。

 

サンタミカエラ「(目を見開き)すっげー・・・何つーデカさだよ。しかも分厚いな! 5段乗ってやがる!」

蜜璃「(にこ、と笑って)凄いでしょ! 私も家でパンケーキ作るんだけど、ここのパンケーキは最高なの!」

 

 ふと、キリエが小芭内に目線を向ける。

 

キリエ「貴方は食べないの?」

小芭内「(キリエに目線を返し)俺は元々少食だ。茶があれば良い。そういうお前も食わないのか? もっとも、血は店に置いてないが」

キリエ「(小さく笑みを浮かべ)私も、ミルクがあればいいわ」

 

 左の眉を、ピク、と上げて、キリエに視線を注ぐ小芭内。

 何となく、思い通りの反応を返されず、薄い苛立ちを覚えている雰囲気。

 自分の斬り込みの太刀を躱されている如く。

 配膳を終えて、くるりがこちらに向き、両手を前で組み直す。

 

くるり「ご主人様、お嬢様方、ごゆっくりお過ごし下さい」

 

 ぺこ、と頭を下げ、踵を返し、ワゴンを押してフロアの奥へと戻っていく、くるり。

 サンタミカエラと蜜璃、両の瞳に煌きを包括させ、ナイフとフォークを手に取る。

 

サンタミカエラ・蜜璃「「(元気良く)いっただっきまーす!」」

 

 ふたりが、同時にナイフをパンケーキの最上段に下ろす。

 手際良く一番上の段を四分割し、更に一切れを二分割、その一切れにフォークを突っ込む。

 流れるような動きで、口腔内に運ぶサンタミカエラ。

 モグ、モグ、モグ、と数回咀嚼。

 蜜璃、一旦手を停めて、彼女が頬張っているのを見詰めている。

 サンタミカエラの喉が、ごっくん・・・と大きな音を立てる。

 直後。

 くわっ!と両眼を思い切り開き、満面の笑みになるサンタミカエラ。

 

サンタミカエラ「(腹の底からの大発声)うっっっっめェェェェ!!!」

 

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